わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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妖狐の里編

5話 アルラウネの里

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 俺達はアルラウネの里に向け出発した。

 メンバーは俺、ケットシー、ルカ、そしてオーガである。



 ルカはどうしてもついて行くと聞かなかった。本当は危険と分かっていたから連れて行きたくはなかったのだが仕方無い。危なくなったらすぐに隠れることを約束して連れて行くことにした。

 里を出ると、律儀にもオーガは待っていたので、もうこれは戦力として連れて行く以外ないだろう。ルカも最初こそ怯えていたが、オーガにもう敵意はなく、また、オーガのテリトリーに先に入ってしまったのはルカだったようで、お互い和解と言うことで場は収まった。



 お調子者のケットシーはテオというらしい。そしてオーガには名前はないとのことである。

「みんながみんな、名前を持っているわけではないんだな」

――名前を持っているのはそれなりの文明を持っているものだけじゃからな。むしろないものの方が多いのじゃ

「流石に名前がないのは不便だろ。 ……ヤマトとかどうだ?」

――なんじゃそれはださいの

「いいんじゃない!ヤマト!」

 ルカはなんて天使なのだろう。そしてオーガもなんだか嬉しそうにしている。

「ヤマト……オレノナ……」

 まあサクヤとヤマトがいれば負けることも無いだろう。

「そういえば、ケットシーって魔法を使えるって言ってたよな。テオはどんな魔法が使えるんだ?」

 今度はテオに話を振る。

「そうなのニャ!大体の魔法はつかえるのニャ!炎を出すのだって凍らせるのだってまかせてニャ!」

 これは心強い味方だ。しかし、俺はここで一つ疑問に思う。

「魔法と神通力って何が違うんだ?」

――まあ同じようなものじゃが……

「ここはぼくが説明するニャ!知能が高いボクらみたいな生き物は魔法が使えることが多いのニャ!でもその中でも特別にすさまじい魔力を持っている一族が4ついるのニャ!それが、妖狐、大神、大蛇、そして夜叉族と呼ばれる鬼の一族なのニャ!そして、その長は4神と呼ばれて、知らない者がいないくらい有名なのニャ!その一族が使う魔法を神通力というのだニャ!」

「えっ?九尾ってそんなすごい奴だったの……?」

――あたりまえじゃろ、わらわを誰だと思っておる?

「九尾様の力を借りれば敵わぬ者はいないのニャ!」

 テオは意気揚々と話す。

「そして、今やイーナ様は九尾同然!すなわち、4神の1人なのニャ!」

 なんか、俺今とんでもないことになってない……?



 さらに歩みを進めると、森の木々はうっそうと生い茂り、地面へと届く日の光もだんだんと弱くなってきた。

「こんなとこにあるのか……」

「そうなのニャ!普通は道に迷ってぼくらの里にたどり着くことはできないのニャ!でもなぜか今度の鬼達は何回もくるのニャ……」

「なかなか妙な話だな、何か目的があるのか?」

「わからないのニャ……ボクらに分かるのは薬草のことしかないのニャ……」

 薬草で思い出した。

「なあテオ、ヒポクラテスの実って知ってるか?」

「知ってるニャ!ボクらの里の近くにあるのニャ!あれは食べると気持ちよくなる素晴らしい実なのニャ!」

 気持ちよくなる実……?とりあえずは、ヒポクラテスの実も手に入りそうだし、里に帰ったら調べてみるか……

 そう考えていると、突然、ルカが道端に咲いていた花に興味を示した。うっそうとした森に咲く紫色の花は確かに綺麗に咲き誇っていた。そして、俺はその花に見覚えがあった。どこで見たっけ……

「駄目なのニャ!危ないのニャ!その花は強烈な毒をもっているのニャ!」

「えっ!」

 テオの今までにない強い口調に、ルカは驚いたようだ。

 猫……毒……

 そして、俺はどこでその花を見たか思いだした。

「そうか……」

――どうしたのじゃ?

「大丈夫だよ。その花はジギタリスって言って、その葉っぱからはジゴキシンって言う心臓病に効く薬が作れるんだ。もちろんそのまま食べたら危ないけどね」

「そうなのニャ?でもぼくらは、絶対その花に近づいちゃ駄目って言われてるニャ……」

「ケットシーはどうなのか分からないけど、猫は基本的に薬を代謝する機能が弱いからね。でも、毒は上手く使えば薬になるんだよ」

 そう言うと、テオもルカも興味深そうにこちらを見ていた。ヤマトは興味なさそうだったが……

――ふむ、猫は弱いのか

 こちらは謎の優越感に浸っている。

「それなら取って帰ろうよ!良いでしょ?」

「そうだね、後で薬にしよう!使えるかは分からないけど……」

 そう言うとルカはジギタリスの葉っぱを集めた。



 その後1時間くらい歩いたのだろうか、樹齢何年なのか分からないような大木の元にあるアルラウネの里へと俺達は到着した。

 アルラウネの里につくと、テオは俺達を族長の元へと案内してくれた。木の上にアルラウネの家は存在していたが、その中でも最も高い位置に族長の家はあった。

「族長様、九尾様の協力を得られましたのニャ!」

 族長とおぼしきその女性は、大変美しい見た目をしていた。髪はいばらで出来ており、まさに森の中に咲き誇る一輪のバラのようだった。

「ふむ、テオありがとう。そして妖狐の皆様、あと鬼かな?ようこそ,アルラウネの里へ。
私が族長のローザと申します」

「ご紹介いたしますニャ、まず外にいるのが、オーガのヤマト殿ですニャ!建物に入れなかったのですニャ……それと、この妖狐の女の子がルカちゃんですニャ!そして、なんとここにおられる人間様がイーナ様で、九尾様なのですニャ!」

「なんと、人間が九尾様?そのようなことが……?」

――まあいろいろな事情があるのでの

 サクヤの声が聞こえたのだろう、ローザは跪いて続けた。

「確かに九尾様ですね。これは大変失礼を致しました。ご無礼をお許しください」

――よいよい、して故あって、わらわはイーナと共にあるのじゃ

「なるほど、それではイーナ様九尾様、それとお連れ様、テオから事情は聞いていると思いますので、端的に申し上げます。恥を忍んでお願い申し上げます。何卒お力お貸し頂けないでしょうか?」

――そのために来たのじゃ。その代わりと言ってはなんだが、水を綺麗にする薬草とやらとヒポクラテスの実とやらを分けてもらえないかのう?

 サクヤは答えた。

「もちろんでございます。奴らを無事追い払えたあかつきには、薬草の方提供いたします故」

 こうして、サクヤとローザの間で締結はなされた。俺はなにもしていなかったが。



 早速、テオに案内され、作戦司令部の方へと向かった。作戦司令部にはアルラウネ族の美女とケットシーが集っており、まるで猫カフェのようだった。素晴らしい目の保養だ。

「奴ら、だんだんと攻撃のペースが早くなってきています。そろそろいつ来てもおかしくないかと……」

 最後の襲撃は2日前だったらしい。

 アルラウネやケットシーの予想によると、今晩か明日の朝早く辺りに来そうだとのことだ。

「イーナ様一行は、お休みになっていてください。大丈夫です。常に防衛の為の布陣は強いています故」

 そう言って、仮眠部屋へと案内されたが、とうてい休めた気分ではない。

 仮眠部屋では何人かのアルラウネ、ケットシーが休んでいた。

「ルカはここにいてね」

「えールカもイーナ様のお役に立ちたい!」

――イーナよ、大丈夫じゃ、妖狐は強いぞ

「そうだよ!」

「そうか……」

 あまり納得は行っていなかったが、仕方が無い。サクヤが言うのならそうなのであろう。

――それよりもじゃ、イーナよこの戦い、そちに任せたぞ!



 えっ?



……俺が戦うの?
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