わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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東方編

38話 タルキス王国

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 「タルキス王国ってどんなとこなの?」



 私は、勉強の資料として読んでいた本を片付けながら、机に向かっているナーシェに問いかけた。ナーシェ・ルカと共に勉強をするのが、診療後の日課となっていた。



 「アーストリア連邦に属する国の一つですね。位置的にはシャウン王国の東側、トゥサコンを越したところです。イーナちゃんも見たと思うんですけど、トゥサコンは変わった雰囲気の街でしたよね?あれはタルキス王国の影響が強く入っているんです」



 「隣の国かあ……」







 事の発端は昼に遡る。



いつものように、診療を行っていると、なにやら風格のある、がっしりとした男性が数人の屈強な男と共に、来院してきたのである。その見た目は明らかに、患者という雰囲気ではなかった。



 「本日はどうされたのですか?」



 おそるおそる、私はその男に尋ねた。すると男は少し表情を緩め、フッと笑いながら静かに口を開いた。



 「おぬしがイーナか?」



 その問いかけに息をのみながら、私は首を小さく縦に振った。後ろの男達が少しざわついていた。



 「噂を聞いてきたが、本当に少女なのだな。信じられん」



 目の前の威圧感のある男は、私の返答に少し目を見開きながら驚いた様子で呟いたのだった。



 「失礼ですが、あなたは?」



 向こうはこちらのことを知っているような態度であるが、私は一切相手のことを知らない。私は冷静を装って男に問いかけた。



 「大変失礼した。私はタルキス王国国王、リチャードと申す。挨拶が遅れたことお詫び申し上げる」



 タルキス王国……?



 聞いたことのない国名に少し戸惑いながらも、私は続けた。



 「こちらこそ無礼な態度を取ってしまい、申し訳ございません。今日はどのようなご用件でいらっしゃったのでしょうか?」



 「噂はかねがね伺っていてな、帝国軍侵略の混乱を収めた人物がどのようなものかこの目で見てみたかったのだ」



 「噂……」



 「そして、もう一つ先日の礼を伝えに来た。ぬしのおかげで、我が国タルキスも救われた。国を代表して感謝申し上げる」



 すると、リチャードは深々と頭を下げた。そんな高貴な方に頭を下げられてはなんだか心地が悪い。私は慌てて、王様に言った。



 「そんな、王様に頭を下げられては……」



 「いや、直接どうしてもお礼を伝えたかったのだ。そして、一度我が国に来ては頂けないだろうか?まだ、あの戦いから完全に立ち直ったわけではないが……我々に出来る最大限のもてなしをさせて頂きたい」



 王様の突然の提案に、私は少し戸惑ってしまった。すると、その話を聞いていたルカが眼を輝かせ、興奮した様子で言った。



 「えっ?イーナ様!ルカ行ってみたい!」



 「元気でよいなハッハッハ」



 リチャードは無邪気な少女に視線を移すと、先ほどまでの堅苦しい顔とは打って変わって、まるで孫を見るおじいさんの様な顔で笑っていた。なんだか、思っていたより、優しい人そうで少し安心した。そして、私はタルキス王国に向かうことを決めたのであった。



 「分かりました。では伺わせて頂きます」



 私の返答に、リチャードは嬉しそうな表情を浮かべた。



 「そうだな、我々ももてなしに準備が必要な故、一週間後ではいかがかな?」





 そういった経緯で、タルキス王国に向かうことは決まったのは良いが、いかんせんシャウン王国以外のこの世界の事は何も知らない。と言うことで、診療後ナーシェに聞いていたのであった。



 「一週間後かあ……」



 まだ見知らぬ国に行けると言うことで、少しわくわくしている自分がいた。あの騒動のおかげと言っては言い方が悪いが、前よりも人間の世界を歩き回りやすくなったのは確かである。



 「イーナ様!ルカまたトゥサコンに寄っていきたい!温泉行きたい!」



 ルカはあれからずっと無邪気にはしゃいでいる。



 「じゃあ前日から出発ですね!ちょうどトゥサコンは中間くらいの位置ですし!寄っていきましょう!」



 ナーシェもわくわくしているようだ。正直、あの騒動の後、なんやかんやでばたばたした日々が続いていたので、こういった、所謂旅行のようなものは久しぶりであった。



 「じゃあ、明日みんなに予定を確認してみようか」







 もちろん、皆タルキス王国へ向かうとの返事を得られた。特にテオははじめてまともに飛空船を運転すると言うことで、大分張り切っていた。



 「ニャー!それでは、当機はまもなく離陸するのニャ!」



 何でも、テオはあれから1週間この台詞をずっと練習していたらしい。「出発ニャ!」とか、「それでは飛空船、離陸するのニャ!」とか、毎日ぶつぶつ呟いているのが丸聞こえであった。



 「じゃあまずはトゥサコンに向けて……」



 「しゅっぱーつ!」



 皆の出発の声に合わせて、飛空船がゆっくりと宙に浮かぶ。



 「イーナ様、なんだかんだで一番わくわくしてるよね!」



 ルカの言葉に、はにかみながら答えた。



 「そりゃ、もちろん」

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