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1章
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◆第23話 「調査ではなく、排除へ」
「……もはや、確認は十分だ」
カリスは、手元の報告書を閉じると、部下たちに目をやった。
町の構造、住民の証言、出入りする人物――
すべてが、彼の求める“危険性の証拠”としては物足りない。
だが、それで十分だった。
「魔獣を飼育している時点で、国家管理の対象外。
ましてや、魔族の気配が漂っている。放置する理由がない」
部下が小さく頷く。
「しかし、店の敷地には結界があります。高位の魔力です。
迂闊に踏み込めば、こちらに損害が……」
「――結界ごと、壊すまでだ」
冷静な声で言い切ったカリスの目は、もう笑っていなかった。
(あの女は、何も知らないふりをしているが、確かに“魔”の加護を受けている)
守られている。愛されている。許されている。
その事実こそが、彼にとっては吐き気のする“甘やかされた例外”だった。
(人間は、弱く、規律の中でしか生きられない。
だからこそ、守られる価値のある者は選ばれねばならない)
「次の“視察”は不要だ。
王都の許可を受け、正式な“拘束”を目的とした派遣として動く。
理由は簡単。“魔族との接触の疑い”」
言葉のトーンは変わらない。
だが部下たちは、いつも以上に凍りついた空気を感じ取っていた。
「……本気で?」
「我々は、“正しい人間の秩序”を守る者だ」
淡々とした言葉の裏に、明確な憎しみがある。
(このままでは、あの女は“例外”として受け入れられてしまう。
魔族に、町に、そして……自分自身の感情に)
それが許せない。
それだけが、許せなかった。
「店を潰す必要はない。あくまで“店主を拘束”するだけでいい。
あとは、自白を引き出し、関係者を“処理”すればいい」
「……関係者、というのは?」
「あの黒髪の男。彼の正体を洗い出せ。
魔族であれば排除、人間であれば反逆罪で拘束。
魔獣も……不要なら、処分して構わない」
その時、ふとカリスの視線が虚空を見据えるように逸れた。
(あの笑顔も、無垢さも、魔に与えられた“偽り”だ)
(でなければ、俺がこんなにも心を乱されるわけがない)
彼は、初めて握った拳をゆっくりと開いた。
「始める。次は、“告知”ではなく、“命令”として、あの店を訪れる」
“モフのしっぽ亭”に、嵐が近づいていた。
「……もはや、確認は十分だ」
カリスは、手元の報告書を閉じると、部下たちに目をやった。
町の構造、住民の証言、出入りする人物――
すべてが、彼の求める“危険性の証拠”としては物足りない。
だが、それで十分だった。
「魔獣を飼育している時点で、国家管理の対象外。
ましてや、魔族の気配が漂っている。放置する理由がない」
部下が小さく頷く。
「しかし、店の敷地には結界があります。高位の魔力です。
迂闊に踏み込めば、こちらに損害が……」
「――結界ごと、壊すまでだ」
冷静な声で言い切ったカリスの目は、もう笑っていなかった。
(あの女は、何も知らないふりをしているが、確かに“魔”の加護を受けている)
守られている。愛されている。許されている。
その事実こそが、彼にとっては吐き気のする“甘やかされた例外”だった。
(人間は、弱く、規律の中でしか生きられない。
だからこそ、守られる価値のある者は選ばれねばならない)
「次の“視察”は不要だ。
王都の許可を受け、正式な“拘束”を目的とした派遣として動く。
理由は簡単。“魔族との接触の疑い”」
言葉のトーンは変わらない。
だが部下たちは、いつも以上に凍りついた空気を感じ取っていた。
「……本気で?」
「我々は、“正しい人間の秩序”を守る者だ」
淡々とした言葉の裏に、明確な憎しみがある。
(このままでは、あの女は“例外”として受け入れられてしまう。
魔族に、町に、そして……自分自身の感情に)
それが許せない。
それだけが、許せなかった。
「店を潰す必要はない。あくまで“店主を拘束”するだけでいい。
あとは、自白を引き出し、関係者を“処理”すればいい」
「……関係者、というのは?」
「あの黒髪の男。彼の正体を洗い出せ。
魔族であれば排除、人間であれば反逆罪で拘束。
魔獣も……不要なら、処分して構わない」
その時、ふとカリスの視線が虚空を見据えるように逸れた。
(あの笑顔も、無垢さも、魔に与えられた“偽り”だ)
(でなければ、俺がこんなにも心を乱されるわけがない)
彼は、初めて握った拳をゆっくりと開いた。
「始める。次は、“告知”ではなく、“命令”として、あの店を訪れる」
“モフのしっぽ亭”に、嵐が近づいていた。
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