『転生モブと魔獣の相棒ごはん屋 秘密を抱えた常連様に惹かれて』

miigumi

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2章

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◆第33話 「静かな波紋のはじまり」

「……すみません。ここ、“許可証”見せていただけますか?」

開店準備中のミレイアの店に、役人が訪れたのは突然だった。

「許可証……ですか?」

「はい。店舗営業に関する登録証と、魔物飼育管理票。あと、この敷地の所有証明を確認したくて」

丁寧な口調。穏やかな笑顔。
だが、その背後には三人もの役人が控えていた。

ミレイアは慌てて帳簿と引き出しを探る。
以前、町でまとめて手続きしたときに提出したはず――
だが、「正式な王都登録」は通っていなかったらしい。

「……それ、わたしたちの町では必要ないって」

「王都の法が適用されるのは時間の問題です。
この店は近年、魔族の出入りも確認されてますし……安全のために必要な措置です」

ラテが扉の向こうで小さく唸った。

ただの書類確認。
ただの制度導入。

でも、それがこの店をじわじわと締めつけていることを、ミレイアは理解しはじめていた。

* * *

「……魔物飼育って言われて、ラテのこと疑われるなんて」

リデルがカウンター越しにプリンをつつきながら呟いた。

「うちだって、猫三匹飼ってるのに何も言われないよ?
どう考えても、あんたの店が狙われてる」

「そう……かもね」

ミレイアは苦笑したが、内心はどこか、じんわりと重く沈んでいた。

町の人たちも気づいている。
「誰かが来た」だけでは済まされない何かが、
この町に入り込んでいることに。

「ミレイア、逃げる?」

「……逃げたくない」

でもこのままじゃ、
「誰かを巻き込むことになる」
それも、確かだった。

* * *

その夜。
魔族の隠れの間――静かに火が揺れる地下の空間に、ディアボロスの姿があった。

シュヴァルツと、数名の魔族参謀たちが顔を揃えている。

「やはり、“法”を使ってきたか」
シュヴァルツが低く呟く。

「こちらが力を使えぬことを知っている。
だが、それをあえて利用するとは……つまらぬ連中だ」

「……王よ。指示を」

ディアボロスはしばし黙り、
そして言った。

「我が名の下に、“反転の術式”を構築せよ。
彼らの正義が法にあるのならば――
我々は“魔族の法”で、正義を返す」

静かに、しかし確実に。

魔族の手が、再び動き出す。
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