原初のスライム〜初めての生命体になって世界を創造しよう〜

雲霓藍梨@うんげいあいり

文字の大きさ
14 / 31
差し迫った危機

春の芽吹き

しおりを挟む
 凍てつく冬を乗り越え、春になった。
 海の中ではあまり季節の変化は感じられなかったのだけれど、陸に居たスライムたちが感覚共有で教えてくれたのだ。

(おお…生えてた草は、ほとんど全滅か)

 地上に出ていた葉の部分は、冬の寒さで凍りつき、冬を越す事はできなかったみたいだ。

(でも、タネは土の中にある。……それに、)

 土を少し掘り返してみると、根っこが残っている。
 温かい土の中で生き残ったこの部位で、もしかしたら生命も繋げられるのかも知れない。

(球根という程ではないし、地下茎みたいなものなのかな?)

 そうじゃなくても、今は黒いばかりの地面だが、しばらくすればまた緑が覆うようになるだろう。

(久し振りに、楽しみな“進化”だな)

 夏からずっと、生存を賭けた“進化”ばかりと向き合ってきた。
 この春はきっと、嬉しい事が待っているはずだ。

(お、お?おおお……なんだコレ?!)

 生き残ったスライムたちを確認する為、生存者に集合を掛けていたのだが、ここでまさかのモノが視界に飛び込んできた。

(でっ、でっか……!!)

 それは、スライム十匹以上が寄り集まって出来た、ビッグスライムとも言うべき生き物だった。

「えっ、どうしたんだよお前ら…!」

 思わず通じもしないはずの思念を飛ばし、聞いてしまう俺。
 しかし、返ってこないと思っていた返答が、まさかの返ってきたのである。

(からだ、あたためる、まりょくいる……。でも、まりょく、たりない……。みんなであつまる、あたたかい……)

「!そうか、外側のスライムが保温していれば、内側のスライムは魔力を温存できたのか!表面さえ温かいままなら凍る心配もない……。よく考えたな……!」

 危機に陥って知性が芽生えた事もそうだが、なにより生き残ってくれた事が嬉しい。
 俺が喜んでいると、周囲に集まってきた冬眠スライムや不凍液スライムたちも、ぴょんぴょん飛び跳ねて感動に彩りを添えてくれる。

(なかま、いっぱい、きえた……。でも、ハジメ、ありがとう。いきるためのこと、ハジメ、みんなに、おしえた)

「そ、そうか……。俺がした事、無駄じゃなかったんだな……」

 仲間に感謝を告げられて、泣きそうになる。
 俺は“死”をもたらした訳じゃない。
 “生き残るすべ”を教えたんだって。
 相手から肯定される事が、苦しいほどに嬉しかった。
 ——ようやく、死なせてしまった命に、顔向けできるような気がした。

(……お前たちの死は、無駄じゃなかったよ。全ての犠牲の上で、今、みんなが生きている)

 吹き抜ける風が、暖かさを運んできたような気がした。



***



『知性の芽生えかぁ…』

 ノムスはぽつり、呟く。

『思ったより早かったな…。スライムはハジメくんと関わる事が多かったから、かな?』

 ハジメの事を見守っていたノムスは、神としても想定できなかった“それ”を、それでも喜ばしく思った。

『……これで、ハジメくんも独りじゃなくなった。それならもうそろそろ、私もお役御免なんだろうか……』

 話し相手が居なくなるのは、神だとしても寂しい。
 自分の事を忘れないでいて欲しいと、誰にともなく神ノムスは願った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...