ミカヅキ

ミカヅキは泣くように笑っていた。
二十歳の母になるのかもしれない、と言って。

僕はグラスの表面に付着した水滴を指で拭った。

カラン、カラン。

ミカヅキが頼んだアイスコーヒーの氷たちが鳴いた。
僕はそれでも顔を上げなかった。顔を上げたら、ミカヅキの目を見なくてはいけなくなるから。

だから、また、グラスをつたう水滴を拭う。
先ほどまでその中にあったカフェオレはもう既になくなっている。

冷たくて、寂しくて、切ないような水滴は、まるでミカヅキの涙みたいで。
当の本人は一滴も流していないというのに、僕はまるでミカヅキの涙を拭っているような錯覚に陥る。

「ねぇ、どうしたらいい」
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