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変わりたくない君と変われない僕
変わりたくない君と変われない僕9
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大学の二ヶ月の夏休み明けは特に何も感じなかったのに、言の葉デリバリーの一週間の夏休みはそれ以上に大きな穴が開いたように感じた。昨日いっぱいで言の葉デリバリーの夏休みも終わり、小学生の夏休み明けみたいに少しソワソワしながら事務所に顔を出す。
「お疲れ様でーす」
扉を開けて中を覗き込むと、既に夏希さんも雪乃さんも来ているようだった。雪乃さんとも滝を見に行ってから初めて会う。何かちょっと気恥しいなとも思っていたけど。
僕が入ってきたことに気づいた夏希さんの顔がぶわりと歪む。次の瞬間、夏希さんが駆け寄ってくる。
「悠人くーん、会いたかったー!」
そのまま夏希さんにぎゅっと抱き寄せられる。突然のこと過ぎて思考がついていかない。ただ、また雪乃さんから冷たい視線を浴びせられるのではないかと夏希さん越しに様子を見ると、雪乃さんの瞳に帯びているのは同情だった。
ああ、そうか。これ、雪乃さんもやられたのか。
「寂しかったよお。やっぱり一週間は長すぎたよう……」
こんな夏希さんを見るのは初めてだった。でも、よく考えれば夏希さんはこの言の葉デリバリーでいつも僕や雪乃さんと一緒にいた。もしかしたら、夏希さんはとても寂しがり屋で、それでも雪乃さんの為に夏休みを作ってくれたのかもしれない。
そう思うと無下に引き剥がすこともできず、夏希さんにされるがまま頷く。でも、ずっとこのままでいるわけにもいかない。さて、どうすればいいんだろう。
「夏希、そろそろ宅配の時間」
「うぇっ。今日くらいちょっと遅れても……」
「夏希」
雪乃さんの少しドスの利いた声に夏希さんが首をすくめる。名残惜しそうな表情を残しながら夏希さんは伝票と冊子を持って事務所から出かけて行った。久しぶりに会うと本当に夏の嵐みたいな人だな。
夏希さんが宅配に行って事務所が静かになると、定位置に座る雪乃さんのノートパソコンからカタカタと音がする。いつもと同じように目にもとまらぬ速さで雪乃さんは白紙に物語を描いていく。
「また、書けるようになったんだ」
「……悠人君のせいだから」
辛うじて聞こえるくらいの小さな雪乃さんの声。え、今、名前で。
雪乃さんはこちらを見る事無く、ただノートパソコンの画面を見つめている。だけど、その頬が心なしか赤い。
「もし私の書く物語が変わってしまって、ワケわかんないことになっても悠人君のせい。だから、その時は朗読の方でどうにかして」
じわじわと胸の奥が温かくなる。その温かさにじんわりと瞳も熱くなって。
「任せといてよ。さ、僕も早く勘を取り戻さないと」
休み中朗読の練習をサボっていたわけじゃないけど、このまま雪乃さんを見ていると本当に泣いてしまいそうで、手近な冊子をとりながら雪乃さんに背を向ける。
くんっと、背中から上着を引かれる。上着越しに雪乃さんの指の気配をハッキリと感じた。
「こっち見ないで」
振り返ろうとしていた首が雪乃さんの声でストンと止まる。
「もし、また私が迷っても。変わらずにここにいてくれる?」
その答えは迷わない。
「もちろん。どれだけ雪乃さんが変わっても、僕はそう簡単に変わらないから」
「お疲れ様でーす」
扉を開けて中を覗き込むと、既に夏希さんも雪乃さんも来ているようだった。雪乃さんとも滝を見に行ってから初めて会う。何かちょっと気恥しいなとも思っていたけど。
僕が入ってきたことに気づいた夏希さんの顔がぶわりと歪む。次の瞬間、夏希さんが駆け寄ってくる。
「悠人くーん、会いたかったー!」
そのまま夏希さんにぎゅっと抱き寄せられる。突然のこと過ぎて思考がついていかない。ただ、また雪乃さんから冷たい視線を浴びせられるのではないかと夏希さん越しに様子を見ると、雪乃さんの瞳に帯びているのは同情だった。
ああ、そうか。これ、雪乃さんもやられたのか。
「寂しかったよお。やっぱり一週間は長すぎたよう……」
こんな夏希さんを見るのは初めてだった。でも、よく考えれば夏希さんはこの言の葉デリバリーでいつも僕や雪乃さんと一緒にいた。もしかしたら、夏希さんはとても寂しがり屋で、それでも雪乃さんの為に夏休みを作ってくれたのかもしれない。
そう思うと無下に引き剥がすこともできず、夏希さんにされるがまま頷く。でも、ずっとこのままでいるわけにもいかない。さて、どうすればいいんだろう。
「夏希、そろそろ宅配の時間」
「うぇっ。今日くらいちょっと遅れても……」
「夏希」
雪乃さんの少しドスの利いた声に夏希さんが首をすくめる。名残惜しそうな表情を残しながら夏希さんは伝票と冊子を持って事務所から出かけて行った。久しぶりに会うと本当に夏の嵐みたいな人だな。
夏希さんが宅配に行って事務所が静かになると、定位置に座る雪乃さんのノートパソコンからカタカタと音がする。いつもと同じように目にもとまらぬ速さで雪乃さんは白紙に物語を描いていく。
「また、書けるようになったんだ」
「……悠人君のせいだから」
辛うじて聞こえるくらいの小さな雪乃さんの声。え、今、名前で。
雪乃さんはこちらを見る事無く、ただノートパソコンの画面を見つめている。だけど、その頬が心なしか赤い。
「もし私の書く物語が変わってしまって、ワケわかんないことになっても悠人君のせい。だから、その時は朗読の方でどうにかして」
じわじわと胸の奥が温かくなる。その温かさにじんわりと瞳も熱くなって。
「任せといてよ。さ、僕も早く勘を取り戻さないと」
休み中朗読の練習をサボっていたわけじゃないけど、このまま雪乃さんを見ていると本当に泣いてしまいそうで、手近な冊子をとりながら雪乃さんに背を向ける。
くんっと、背中から上着を引かれる。上着越しに雪乃さんの指の気配をハッキリと感じた。
「こっち見ないで」
振り返ろうとしていた首が雪乃さんの声でストンと止まる。
「もし、また私が迷っても。変わらずにここにいてくれる?」
その答えは迷わない。
「もちろん。どれだけ雪乃さんが変わっても、僕はそう簡単に変わらないから」
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