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その言の葉に想いを乗せて
その言の葉に想いを乗せて1
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「よお、久しぶりだな。悠人」
電話の向こうから聞こえてくる弁当屋の店主の声は入院していた頃よりずっと元気そうだった。その声に安心しつつ、ちょっとだけ緊張している自分がいた。
「お久しぶりです。元気そうですね」
「おお。お医者さんからも経過は順調って言われれてな。十二月になったら少しずつ弁当屋も再開しようと思うんだ」
その言葉に緊張感がすっと高まる。元々言の葉デリバリーで働き始めたのは、それまでのバイト先であった弁当屋が休業状態になってしまったことも一つの理由だった。今はほとんど毎日言の葉デリバリーで働いてるけど、弁当屋が再開したらどうするか決め切れていなかった。
「まあ、いきなり無理すんなって口酸っぱく言われててな。まずは店頭でやれる分だけにしようと思ってる。だから、バイクはまだしばらく使ってていいぞ」
店主の言葉と気遣いに強張っていた体から力が抜ける。別に問題が解決したわけじゃなくて、弁当屋の宅配が再開すれば身の振り方を考えなければいけないけど、とりあえずは明日からもこれまで同様言の葉デリバリーで働ける。
「むしろ、バイク使ってくれてて感謝してんだ。お前、うちの弁当屋のロゴそのままで乗っててくれてるだろ。それで、休業しててもそれを見かけて連絡してくれている常連さんもいてな。とっとと元気にならなきゃなって励まされたよ」
言の葉デリバリーの宅配手段として弁当屋のバイクを借りていたけど、荷台部分の弁当屋のロゴはそのままにしていた。その効果とかを考えていたわけじゃなくて、借りているバイクのロゴを隠したりするのは違うだろうと思ったからだけど、期せずして宣伝になっていたのか。
「言の葉デリバリー、だっけ。俺もそのうち頼んでみっかな」
「是非。心を込めてお届けしますよ?」
「言うじゃねえか。楽しみにしてるぞ」
ガハハと豪快に笑った店主に改めてバイクを借りてるお礼を伝え、電話を終える。
顔をあげると、不安と緊張が入り混じった目で夏希さんと雪乃さんがこちらを見ていた。今日の宅配を終えてそろそろ解散というときに店主からかかってきた電話にいつの間にか事務所の空気が張り詰めていた。
「弁当屋は再開するけど、しばらくは店頭だけで販売するようなのでバイクは借りてていいそうです」
二人とも僕がどうなるかを気にしてくれているんだろうけど、ちょっと気恥しくてバイクのことにして伝える。夏希さんが安堵の息をついて、部屋の空気が緩んだ。
「よかったあ。ね、鈴ちゃん?」
「なんで私に振るの?」
「別にー。ただ、心配そうにじっと見てたから気になってるのかなって」
「最近注文増えてるし、夏希一人だと宅配が大変だなって思っただけだから」
雪乃さんの言葉に夏希さんがニッと笑う。とととっと僕の傍に寄ってくるとわざとらしく僕の手を取った。
「ふうん。私は“悠人君”がまだまだ残ってくれしいけどなー」
僕の名前をそれらしく呼びながら僕の手を握る夏希さんに対し、雪乃さんはムッとした視線をなぜか僕の方に向けるとプイっと顔を背けてしまう。
言の葉デリバリーの夏休みから一ヶ月ほどがたち十一月になると、しつこく残っていた暑さも鳴りを潜め、一気に冬の気配を漂わせるようになっていた。
雪乃さんの言う通り、僕が入った頃より宅配の注文は増えていた。元々新規よりは常連の人のリピートの方がメインだったけど、最近はそのリピートの頻度も高くなっている。理由をちゃんと聞いたことはないけど、もしかしたら雪乃さんの物語の変化もあるのかもしれない。
「わわっ、鈴ちゃん。拗ねないでよー」
「拗ねてないっ!」
夏希さんはパッと僕の手を離すと、今度は雪乃さんを後ろからギュッと抱きしめる。雪乃さんは迷惑そうな顔をしつつも抵抗せずに夏希さんにされるがままにされていた。
夏休み以降、物語も雪乃さん自身もどこか柔らかくなったと思う。元々夏希さんと雪乃さんの間には通じているようなものを感じていたけど、最近は更に親密な感じになったと思うし、僕と雪乃さんの間も――。
「悠人君。顔がだらしない」
雪乃さんからピシャリと言葉が飛んでくる。雪乃さんが僕に張っていた壁みたいなものがなくなったと思うと同時に、なんだか容赦もなくなったような気がする。だけど、それさえも何だか信頼されているように感じられた。
「なんで、もっとだらしなくなるの」
いけない。ペチペチと頬を叩いて真面目な顔を作ってみる。だけど、雪乃さんから向けられたのはどことなくじとっとした視線だった。
そんな僕らを夏希さんがニコニコと眺めたりしながら、今日もいつものように仕事を終えた。
電話の向こうから聞こえてくる弁当屋の店主の声は入院していた頃よりずっと元気そうだった。その声に安心しつつ、ちょっとだけ緊張している自分がいた。
「お久しぶりです。元気そうですね」
「おお。お医者さんからも経過は順調って言われれてな。十二月になったら少しずつ弁当屋も再開しようと思うんだ」
その言葉に緊張感がすっと高まる。元々言の葉デリバリーで働き始めたのは、それまでのバイト先であった弁当屋が休業状態になってしまったことも一つの理由だった。今はほとんど毎日言の葉デリバリーで働いてるけど、弁当屋が再開したらどうするか決め切れていなかった。
「まあ、いきなり無理すんなって口酸っぱく言われててな。まずは店頭でやれる分だけにしようと思ってる。だから、バイクはまだしばらく使ってていいぞ」
店主の言葉と気遣いに強張っていた体から力が抜ける。別に問題が解決したわけじゃなくて、弁当屋の宅配が再開すれば身の振り方を考えなければいけないけど、とりあえずは明日からもこれまで同様言の葉デリバリーで働ける。
「むしろ、バイク使ってくれてて感謝してんだ。お前、うちの弁当屋のロゴそのままで乗っててくれてるだろ。それで、休業しててもそれを見かけて連絡してくれている常連さんもいてな。とっとと元気にならなきゃなって励まされたよ」
言の葉デリバリーの宅配手段として弁当屋のバイクを借りていたけど、荷台部分の弁当屋のロゴはそのままにしていた。その効果とかを考えていたわけじゃなくて、借りているバイクのロゴを隠したりするのは違うだろうと思ったからだけど、期せずして宣伝になっていたのか。
「言の葉デリバリー、だっけ。俺もそのうち頼んでみっかな」
「是非。心を込めてお届けしますよ?」
「言うじゃねえか。楽しみにしてるぞ」
ガハハと豪快に笑った店主に改めてバイクを借りてるお礼を伝え、電話を終える。
顔をあげると、不安と緊張が入り混じった目で夏希さんと雪乃さんがこちらを見ていた。今日の宅配を終えてそろそろ解散というときに店主からかかってきた電話にいつの間にか事務所の空気が張り詰めていた。
「弁当屋は再開するけど、しばらくは店頭だけで販売するようなのでバイクは借りてていいそうです」
二人とも僕がどうなるかを気にしてくれているんだろうけど、ちょっと気恥しくてバイクのことにして伝える。夏希さんが安堵の息をついて、部屋の空気が緩んだ。
「よかったあ。ね、鈴ちゃん?」
「なんで私に振るの?」
「別にー。ただ、心配そうにじっと見てたから気になってるのかなって」
「最近注文増えてるし、夏希一人だと宅配が大変だなって思っただけだから」
雪乃さんの言葉に夏希さんがニッと笑う。とととっと僕の傍に寄ってくるとわざとらしく僕の手を取った。
「ふうん。私は“悠人君”がまだまだ残ってくれしいけどなー」
僕の名前をそれらしく呼びながら僕の手を握る夏希さんに対し、雪乃さんはムッとした視線をなぜか僕の方に向けるとプイっと顔を背けてしまう。
言の葉デリバリーの夏休みから一ヶ月ほどがたち十一月になると、しつこく残っていた暑さも鳴りを潜め、一気に冬の気配を漂わせるようになっていた。
雪乃さんの言う通り、僕が入った頃より宅配の注文は増えていた。元々新規よりは常連の人のリピートの方がメインだったけど、最近はそのリピートの頻度も高くなっている。理由をちゃんと聞いたことはないけど、もしかしたら雪乃さんの物語の変化もあるのかもしれない。
「わわっ、鈴ちゃん。拗ねないでよー」
「拗ねてないっ!」
夏希さんはパッと僕の手を離すと、今度は雪乃さんを後ろからギュッと抱きしめる。雪乃さんは迷惑そうな顔をしつつも抵抗せずに夏希さんにされるがままにされていた。
夏休み以降、物語も雪乃さん自身もどこか柔らかくなったと思う。元々夏希さんと雪乃さんの間には通じているようなものを感じていたけど、最近は更に親密な感じになったと思うし、僕と雪乃さんの間も――。
「悠人君。顔がだらしない」
雪乃さんからピシャリと言葉が飛んでくる。雪乃さんが僕に張っていた壁みたいなものがなくなったと思うと同時に、なんだか容赦もなくなったような気がする。だけど、それさえも何だか信頼されているように感じられた。
「なんで、もっとだらしなくなるの」
いけない。ペチペチと頬を叩いて真面目な顔を作ってみる。だけど、雪乃さんから向けられたのはどことなくじとっとした視線だった。
そんな僕らを夏希さんがニコニコと眺めたりしながら、今日もいつものように仕事を終えた。
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