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9.最期の別れ
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ローズマリアが女神様の元へ戻った1ヶ月後、ローズマリアの国葬が執り行われた。
そしてその翌月に、次の聖人として、ユリアナの御披露目の儀が行われた。
ローズマリアは、神殿の最奥にある『女神の間』と呼ばれる部屋に安置されていた。
窓も灯りも無いのに部屋はとても明るく、天井は高くて美しい装飾が施されている。
壁には歴代の聖人の名前が刻まれていた。
扉を開けた正面に、天井に届きそうなほど大きな女神像がある。
女神像の前にローズマリアの眠る棺があった。
棺の中のローズマリアは、綺麗にお化粧をして、お気に入りだったドレスを着て、胸の上で組んでいる手には7本の薔薇のブーケを持っていた。
生前のローズマリアが、
「そうね、こんなおばあちゃんになってしまったけど、アランに会ったら私ともう一度結婚してって花束を渡したいわ」と娘のエリカに話していた。
国葬の日の朝、エリカと夫のウィリアン、その子供たち5人が、フォード伯爵邸の庭から、ローズマリアという名の薔薇を1本ずつ選んでブーケにしたものだった。
エリカと神官長が、最後に別れの挨拶をする。
女神の間には、神官長と親族の中で選ばれた者1名だけが入室を許される。
神官長が先にローズマリアに声をかける。
「貴女の人生を我々に捧げてくれたことに感謝しかない。国民全員が貴女を愛していた(私もその一人だ)。ありがとうローズマリア」
(最後に触れることを許しておくれ)
ロランドは指先でローズマリアの頬を愛おしそうにそっと撫でた。
声が震えないうちに、
「それではエリカ夫人、私は部屋の外で待つよ」と言うと扉の方に振り向いた。
エリカに気付かれなかっただろうか、涙がこぼれてしまったことを。
部屋の外に出ると、いつもの神官長の顔に戻した。
エリカはローズマリアの手にそっと自分の手を添えて、
「お母様、私の母は聖人ですって世界中で私だけが言えることが、嬉しくて誇らしかったわ。
聖人のお仕事が忙しくて寂しい時もあったけど、何より私を愛してくれていたから辛くなかった。
私もいつか、アランお父様に初めて会う日が来たら、3人でたくさんお話ししましょ。それまで子供たちをしっかり育てあげるから見守っててね。愛してる」
エリカはローズマリアの額に口づけた。
エリカの涙がローズマリアの顔にポタポタとこぼれ落ちる。
ローズマリアの化粧が取れないようにハンカチでそっと拭って、最後にローズマリアの頬を撫でた。
『愛してる』
男の人の声が聞こえた気がした。
エリカが部屋から出てきた。
女神の間がローズマリアだけになり、この扉を閉めてしまうと、もう二度と扉は開かなくなってしまう。
次に扉が開くときは、次代の聖人ユリアナが女神のもとへ帰る時だ。
その時にはローズマリアも棺も跡形もなく消えているのだ。
「それではエリカ夫人、良いかね?貴女のタイミングで扉を閉めるんだ」
エリカの目からは涙が止まらず、声は嗚咽となり言葉にならないが、神官長を見てうなずくと、ゆっくり両手で扉を押し閉めた。
「ありがとう」
ロランドがエリカの後ろから声をかけた。
エリカはゆっくりと振り返ると、引き寄せられるようにロランドの胸に顔を埋め、声をあげて泣いた。
ロランドは、大きな体で包み込むようにエリカを優しく抱き締めた。
ロランドの分もエリカが泣いてくれているようで、エリカが泣き止むまでいつまでも抱き締めていた。
神殿の応接室には、夫と5人の子供たちが待っていた。
一番上の子はエリカの身長を優に越えている。皆がエリカに抱きついた。
「お母さま、ローズおばあさまとさようならできた?」
一番下の子は疲れて眠っていたのか、2番目の娘に抱かれており心配そうに私を見ている。
「ええ、あなたたちのおばあさまにお別れのご挨拶をしてきたわ。待っててくれてありがとう」
『ありがとう』
さっきの神官長様の声、お母様に最後に触れた時に聞こえた声に似ていたような…
「お母さま、もうおうちに帰るの?ぼく神官長さまにもう1回抱っこして高くするのして欲しい」
随分と懐いているのね。
「ヨヒト、神官長様は今日このあと、おばあさまのために祈ってくれるの。私たちも帰って、おばあさまのことを静かに思う夜にするのよ」
聞き分け良く、コクリとうなずく我が子にまた涙が溢れてくる。
夫のウィリアンが私のそばに来て、私を軽く抱き締めたあと額に口づけた。
「エリカ愛してる。今夜は君を生み育ててくれたお義母さんに感謝して祈るよ」
夫に肩を抱かれ、出口に向かって歩きだした。
そしてその翌月に、次の聖人として、ユリアナの御披露目の儀が行われた。
ローズマリアは、神殿の最奥にある『女神の間』と呼ばれる部屋に安置されていた。
窓も灯りも無いのに部屋はとても明るく、天井は高くて美しい装飾が施されている。
壁には歴代の聖人の名前が刻まれていた。
扉を開けた正面に、天井に届きそうなほど大きな女神像がある。
女神像の前にローズマリアの眠る棺があった。
棺の中のローズマリアは、綺麗にお化粧をして、お気に入りだったドレスを着て、胸の上で組んでいる手には7本の薔薇のブーケを持っていた。
生前のローズマリアが、
「そうね、こんなおばあちゃんになってしまったけど、アランに会ったら私ともう一度結婚してって花束を渡したいわ」と娘のエリカに話していた。
国葬の日の朝、エリカと夫のウィリアン、その子供たち5人が、フォード伯爵邸の庭から、ローズマリアという名の薔薇を1本ずつ選んでブーケにしたものだった。
エリカと神官長が、最後に別れの挨拶をする。
女神の間には、神官長と親族の中で選ばれた者1名だけが入室を許される。
神官長が先にローズマリアに声をかける。
「貴女の人生を我々に捧げてくれたことに感謝しかない。国民全員が貴女を愛していた(私もその一人だ)。ありがとうローズマリア」
(最後に触れることを許しておくれ)
ロランドは指先でローズマリアの頬を愛おしそうにそっと撫でた。
声が震えないうちに、
「それではエリカ夫人、私は部屋の外で待つよ」と言うと扉の方に振り向いた。
エリカに気付かれなかっただろうか、涙がこぼれてしまったことを。
部屋の外に出ると、いつもの神官長の顔に戻した。
エリカはローズマリアの手にそっと自分の手を添えて、
「お母様、私の母は聖人ですって世界中で私だけが言えることが、嬉しくて誇らしかったわ。
聖人のお仕事が忙しくて寂しい時もあったけど、何より私を愛してくれていたから辛くなかった。
私もいつか、アランお父様に初めて会う日が来たら、3人でたくさんお話ししましょ。それまで子供たちをしっかり育てあげるから見守っててね。愛してる」
エリカはローズマリアの額に口づけた。
エリカの涙がローズマリアの顔にポタポタとこぼれ落ちる。
ローズマリアの化粧が取れないようにハンカチでそっと拭って、最後にローズマリアの頬を撫でた。
『愛してる』
男の人の声が聞こえた気がした。
エリカが部屋から出てきた。
女神の間がローズマリアだけになり、この扉を閉めてしまうと、もう二度と扉は開かなくなってしまう。
次に扉が開くときは、次代の聖人ユリアナが女神のもとへ帰る時だ。
その時にはローズマリアも棺も跡形もなく消えているのだ。
「それではエリカ夫人、良いかね?貴女のタイミングで扉を閉めるんだ」
エリカの目からは涙が止まらず、声は嗚咽となり言葉にならないが、神官長を見てうなずくと、ゆっくり両手で扉を押し閉めた。
「ありがとう」
ロランドがエリカの後ろから声をかけた。
エリカはゆっくりと振り返ると、引き寄せられるようにロランドの胸に顔を埋め、声をあげて泣いた。
ロランドは、大きな体で包み込むようにエリカを優しく抱き締めた。
ロランドの分もエリカが泣いてくれているようで、エリカが泣き止むまでいつまでも抱き締めていた。
神殿の応接室には、夫と5人の子供たちが待っていた。
一番上の子はエリカの身長を優に越えている。皆がエリカに抱きついた。
「お母さま、ローズおばあさまとさようならできた?」
一番下の子は疲れて眠っていたのか、2番目の娘に抱かれており心配そうに私を見ている。
「ええ、あなたたちのおばあさまにお別れのご挨拶をしてきたわ。待っててくれてありがとう」
『ありがとう』
さっきの神官長様の声、お母様に最後に触れた時に聞こえた声に似ていたような…
「お母さま、もうおうちに帰るの?ぼく神官長さまにもう1回抱っこして高くするのして欲しい」
随分と懐いているのね。
「ヨヒト、神官長様は今日このあと、おばあさまのために祈ってくれるの。私たちも帰って、おばあさまのことを静かに思う夜にするのよ」
聞き分け良く、コクリとうなずく我が子にまた涙が溢れてくる。
夫のウィリアンが私のそばに来て、私を軽く抱き締めたあと額に口づけた。
「エリカ愛してる。今夜は君を生み育ててくれたお義母さんに感謝して祈るよ」
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