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11.聖人の仕事②
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ローズマリア様の経験を日記で知っていたから、私は動揺せずにいられる。
小さな聖人は見た目だけで馬鹿にされ、信じてもらえず、治せる人も治せず悔しかった、ローズマリア様が聖人の仕事を始めた頃に書かれていた通りだった。
ユリアナが聖人として最初に怪我人のもとに訪れた日、1人目は信じてもらえず拒否された。
2人目は馬鹿にして笑い続けた。
3人目はその患者の家族がふざけるなと怒りだし、ユリアナに掴みかかった。
幸い触れられる寸前でタイラー先生が火魔法で撃退したが、まる焦げ状態になってしまった。
「いやー久し振りに火魔法使ったからなー、困ったな…。でもこの男が絶対に悪いしなー ユリアナ様…そのー…あの…これ… (マズイよこれは師団長にバレたら始末書と始末書と始末書と魔力鍛練で、ひと月は寝れない……)」
ユリアナが子供ながらに何となく察し、その男を綺麗に回復させると、それを見た患者が、私の傷もお願いしますと頭を下げた。
ローズマリア様ありがとうございます、先に知れたから私のやるべき事に集中できます。
「院長先生、次の患者はどちらにいますか?」
ユリアナは無作法だとわかっているが、会話に割って入る。
「ああ、そうでしたね、ユリアナ様!あー、でも……でもねぇ、次の患者も第二騎士団の者ですよ?タイラー魔法師どうします?私は先に王宮に報告に行って、宰相から陛下に報告してもらって──」
先ほど暴言を吐いていた騎士は、慌てて院長の前に行き頭を下げ、
「まっ、待ってくれ!頼む!ほかの仲間の怪我も治してくれ!頼むよ、陛下に報告するまでもないだろ?俺のせいで怪我したヤツもいるのに、俺のせいで治してもらえないんじゃ俺は、俺は…」
院長が大きなため息をつく。
「治してもらいたい態度ではないですね。先ほどの奇跡の力を目の前で見てもこれですか?これはダメですね、タイラー魔法師」
タイラー先生は見たことの無い恐い顔をしていた。
「君は覚悟したのではないのか?魔物の討伐に行くとき、もしかしたら今日死ぬかもしれない、自分じゃなくても仲間が死ぬかもしれないと。
そしてまさに目の前の彼が死にかけた。
奇跡的に助かったとしても、彼の左腕は無いままだ。
片腕が無ければ騎士は続られないだろう。騎士を辞めてどうする?これから家族が増えるとわかっているのに。
騎士としてしか生きてきてないのに、片腕が無いとなると妻や子供に苦労させる確率が上がるんだ。
でも見てみろ、彼の腕は再生された。誰にだ?お前たちが馬鹿にした彼女にだ。
見ただろ?君たち騎士にとっては、神の力のようなものだ、違うか?
だから彼女は準王族として扱われるんだ。
でもお前たちの愚かな言動で、彼の腕は無いままになったかもしれない。
腕どころじゃない、命だって失っていたかもしれない。
そうなったら、お前は彼を、彼の家族の面倒をみるのか?一生?
お前その覚悟があったのか?
まさか新しい聖人の存在を知らなかったとは言わせない。500年前から今日まで、聖人の恩恵を一番に受けていたのは第二騎士団だからだ」
タイラー先生は、途中で口を挟むことは許さず一気に告げた。
騎士二人は言葉を発することすら許されない状況だとわかったのか、帯剣していた剣を外し、床に剣の握りの方をタイラーに向けて置いた。
そして両膝を床に落とすと、手を前に出し両手の甲を床に付けた。
これは騎士の、敵に対し負けを認め、殺すなり捕虜にするなり、この命を好きにして構わないという意思表示の姿勢だ。
「お前たちがまずしなければならなかった事は、ユリアナ様に誠心誠意謝罪することだった。こいつらを捕縛しろ」
聖人に関することに、タイラーにはあらゆる権限が与えられていた。
そして聖人が行動する時は必ず王家の影が付いているのだ。影はおそらく陛下に報告するだろう。あとは陛下に任せればいい。
「ユリアナ様、次の患者のところに案内いたします。まだ診て頂きたい患者がたくさんいまして」
ユリアナに全く非がなくても、騎士が捕縛される場面は見せたく無いと思ったのか、院長が声をかけてきた。
ユリアナは小さく頷いた。
今は怪我人が優先だ。
私は、私にしか出来ないことを誠実に、地道に続けて行くしかない。
院長と部屋を出る間際、捕縛されている騎士を横目でみると、二人ともほの暗い目でユリアナを見ていた。
小さな聖人は見た目だけで馬鹿にされ、信じてもらえず、治せる人も治せず悔しかった、ローズマリア様が聖人の仕事を始めた頃に書かれていた通りだった。
ユリアナが聖人として最初に怪我人のもとに訪れた日、1人目は信じてもらえず拒否された。
2人目は馬鹿にして笑い続けた。
3人目はその患者の家族がふざけるなと怒りだし、ユリアナに掴みかかった。
幸い触れられる寸前でタイラー先生が火魔法で撃退したが、まる焦げ状態になってしまった。
「いやー久し振りに火魔法使ったからなー、困ったな…。でもこの男が絶対に悪いしなー ユリアナ様…そのー…あの…これ… (マズイよこれは師団長にバレたら始末書と始末書と始末書と魔力鍛練で、ひと月は寝れない……)」
ユリアナが子供ながらに何となく察し、その男を綺麗に回復させると、それを見た患者が、私の傷もお願いしますと頭を下げた。
ローズマリア様ありがとうございます、先に知れたから私のやるべき事に集中できます。
「院長先生、次の患者はどちらにいますか?」
ユリアナは無作法だとわかっているが、会話に割って入る。
「ああ、そうでしたね、ユリアナ様!あー、でも……でもねぇ、次の患者も第二騎士団の者ですよ?タイラー魔法師どうします?私は先に王宮に報告に行って、宰相から陛下に報告してもらって──」
先ほど暴言を吐いていた騎士は、慌てて院長の前に行き頭を下げ、
「まっ、待ってくれ!頼む!ほかの仲間の怪我も治してくれ!頼むよ、陛下に報告するまでもないだろ?俺のせいで怪我したヤツもいるのに、俺のせいで治してもらえないんじゃ俺は、俺は…」
院長が大きなため息をつく。
「治してもらいたい態度ではないですね。先ほどの奇跡の力を目の前で見てもこれですか?これはダメですね、タイラー魔法師」
タイラー先生は見たことの無い恐い顔をしていた。
「君は覚悟したのではないのか?魔物の討伐に行くとき、もしかしたら今日死ぬかもしれない、自分じゃなくても仲間が死ぬかもしれないと。
そしてまさに目の前の彼が死にかけた。
奇跡的に助かったとしても、彼の左腕は無いままだ。
片腕が無ければ騎士は続られないだろう。騎士を辞めてどうする?これから家族が増えるとわかっているのに。
騎士としてしか生きてきてないのに、片腕が無いとなると妻や子供に苦労させる確率が上がるんだ。
でも見てみろ、彼の腕は再生された。誰にだ?お前たちが馬鹿にした彼女にだ。
見ただろ?君たち騎士にとっては、神の力のようなものだ、違うか?
だから彼女は準王族として扱われるんだ。
でもお前たちの愚かな言動で、彼の腕は無いままになったかもしれない。
腕どころじゃない、命だって失っていたかもしれない。
そうなったら、お前は彼を、彼の家族の面倒をみるのか?一生?
お前その覚悟があったのか?
まさか新しい聖人の存在を知らなかったとは言わせない。500年前から今日まで、聖人の恩恵を一番に受けていたのは第二騎士団だからだ」
タイラー先生は、途中で口を挟むことは許さず一気に告げた。
騎士二人は言葉を発することすら許されない状況だとわかったのか、帯剣していた剣を外し、床に剣の握りの方をタイラーに向けて置いた。
そして両膝を床に落とすと、手を前に出し両手の甲を床に付けた。
これは騎士の、敵に対し負けを認め、殺すなり捕虜にするなり、この命を好きにして構わないという意思表示の姿勢だ。
「お前たちがまずしなければならなかった事は、ユリアナ様に誠心誠意謝罪することだった。こいつらを捕縛しろ」
聖人に関することに、タイラーにはあらゆる権限が与えられていた。
そして聖人が行動する時は必ず王家の影が付いているのだ。影はおそらく陛下に報告するだろう。あとは陛下に任せればいい。
「ユリアナ様、次の患者のところに案内いたします。まだ診て頂きたい患者がたくさんいまして」
ユリアナに全く非がなくても、騎士が捕縛される場面は見せたく無いと思ったのか、院長が声をかけてきた。
ユリアナは小さく頷いた。
今は怪我人が優先だ。
私は、私にしか出来ないことを誠実に、地道に続けて行くしかない。
院長と部屋を出る間際、捕縛されている騎士を横目でみると、二人ともほの暗い目でユリアナを見ていた。
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