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52.ユリアナの怒り②
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ジュリアンと会える日になった。
私は、ナイジェルお兄様、侯爵家私兵長のカムデンと私兵2名、執事のマーカスを連れ、王宮にやって来た。
「ユリアナ、ジュリアンに会うのにこの人選は物々しいというか、騎士団に警戒されそうだね」
ナイジェルお兄様は、何か察しているところがあるようで心配そうに話すが、お兄様はお兄様で、ルイ・エンバリー魔法師団長に今日の面会の付き添いをお願いしていた。
廊下の向こうから、ルイ師団長が歩いてきた。
「聖人ユリアナ様、お久しぶりですね。ご活躍はランから聞いていますよ」
「ルイ師団長、お久しぶりです。ラン・タイラー先生にご指導していただき、多くを学べました。今日はジュリアンのためにお時間を頂戴しありがとうございます」
と丁寧に挨拶をした。
ルイ師団長はクスクスと笑うと、
「ユリアナ様、本当に12歳とは思えないほどご立派になられましたね。大切な弟子のジュリアンのためです、いつでも駆け付けますよ」
私たちは第二騎士団棟の応接室に案内された。
長椅子に、私とお兄さま、ルイ師団長が座り、その後ろに私兵長と私兵二人、マーカスが立った。
少しして、お仕着せを着た女性がお茶を運んできた。私たちの前にカップを並べると、そそくさと退室した。
そのカップをじっと見ていたルイ師団長は、カップを手に持ったお兄さまに、
「ナイジェル様、カップを置いて」
と言い、
「これは飲めません。飲んだら無事には帰れないでしょう」
と低い声で言った。
ルイ師団長は、過去に食事に毒を入れられたことがあり、それからは鑑定魔法で食事や飲み物を視る事にしているそうだ。
「これは幻覚作用のある薬と催眠作用のある薬か…?混ぜて入れられている。私たちをどうする気だったのかな」
許せない、今日はルイ師団長も付き添うと伝えているのに、このような愚かなことを!
「マーカス、父上は今日登城しているよね?私兵と一緒に父上の執務室へ行ってくれ」
マーカスがわかりましたと言い、私兵一人と出て行くと、すぐに第二騎士団団長ジミールが部下とともに入ってきた。
私たちの前のソファーにドカッと座り足を組むと、
「これはどうも聖人様。今日は何用でしたかな?」
相変わらず不遜な態度は、陛下に忠告されているとは思えない。後ろにいる部下もニヤニヤと笑っている。
お兄様が、
「ジミール団長、今日はジュリアンと面会できると約束した日です。ジュリアンはどこですか?」
するとジミールは、
「まあまあそんなに焦らないで、まずはお茶でも飲んだらいかがです?」
とニヤニヤした。
ルイ師団長がソファーの背にずっしりともたれ、足を乱暴に組み、低い声で、
「これは飲めませんよ団長。私が鑑定魔法を使えることは知らなかったのですか?」
ジミールの表情が無くなった。
「どういう事だ?」
「私は飲み物でも食べ物でも魔法でも、それが何かわかるんですよ。例えばこのお茶の中には大変危険な何かが入っているとか」
「な、なんだと?そ、そんなことは俺は知らない!誰か薬を入れた奴を捕まえておけ!」
ルイ師団長は何かと言ったのに、ジミールは薬と言った。指示したのは間違いなくこの男ね。
ルイ師団長が居てくれ良かった。私たちだけなら今頃どうなっていたかと考えるとゾッとする。
わかりやすく動揺している団長の事はどうでもよかった。これでこの男の罪が増えたわ。
二度とこの男を騎士と名乗らせない。
「ジミール団長、この事はすでに父を通して陛下にも報告しております。これ以上私たちに危害を加えようとするのは無理ですよ。
それに何度も言いますが、今日はジュリアンに面会に来たのです。約束を違えるおつもりですか?」
ジミールはお兄様もルイ師団長もいるのに、私を睨み付け、
「今日は会えませんよ。アイツには特別な仕事をさせてますから」
と言い、ふんっと笑った。
そうなのね、わかったわ。
私は今までも我慢して、この度も陛下に忠告してもらい猶予を与えたわ。
それなのにこれね。
もう許さない。
「ジミール、私は第一騎士団のジョーデンに指示して、この日ならジュリアンに会えると約束させたの。あなたはジョーデンから何を聞いていたの?」
ジミールはいきなりユリアナに詰め寄られ、顔を真っ赤にし怒鳴った。
「ジミール?ジミールだと!?俺を呼び捨てるとはこのガキ!!何様だっ!」
私の後ろの私兵が剣に手を掛けた。
するとジミールの部下は真っ直ぐ私を睨みながら剣を抜き、一歩踏み出そうと前に出た。
((保護結界))
私はテーブルを挟んで、ジミールと部下の前に結界を張った。部下たちは一歩もこちらに来ることは出来ない。
「ジミール、あなたも理解していないので教えてあげるわ。聖人である私は、国王陛下に次ぐ爵位なの。わかる?あなたなんか私の一言でどうにでもなるのよ?今まで我慢したけどもう許さない。
その者たち、聖人の私に対して剣を抜いたわね。処罰がどういったものか知ってる?陛下に剣を向けたのと同じよ」
「な、なんだと?国王陛下の次?ただ運良く魔力があるだけだろ!このガキ、嘘をつくな!」
お兄様がため息をついた。
「ユリアナ、ごめんよ。こんな頭の悪い奴らの中にいて仕事をしていたんだね。悔しかったろ?助けてやれなくてすまなかった」
お兄様が情けない顔をして私の頬を優しく撫でた。
「ジミール団長、今のやり取りはすでに魔道具で記録している。あとで陛下の前で取り繕う事はできない。今までの行いを悔いるんだな。それ以外に、ジュリアンに何かあったら私も黙ってはいない」
ルイ師団長は、胸元から小さな魔道具を取り出した。
「エンバリーだまれ!たかが運の良かったガキが偉そうに!そのうち男を侍らす淫乱な娼婦になるくせに、そんな奴が陛下の次に偉いわけないだろ!」
何を言っているの、この男は。
「ジミール、なぜ私が娼婦になるの?なぜ言いきるの?」
「うるさいだまれっ!親父から聞いてる、聖人の女はすぐに男を誘惑して、何人もの男に色目を使うと。
だから、聖人なんかこき使って、男を侍らして遊ぶ暇なんて無いようにわからせてやれと!」
親父とは前団長のことね。
ライエム団長だったわ。そう、ローズマリア様の日記に出てきた男。
思い込みが激しく、ローズマリア様が自分に求婚したと妄想していて、不気味だったと書いてあったわ。
それを自分の子供に話していたのね。個人の逆恨みがここまで広まって、第二騎士団全体が聖人に対する敵意を持っている。
何の疑問も持たず、弱い毒が浸透するように騎士団員のほとんどが聖人に悪意を持っていた。
「それはあなたに関係あるの?私が将来あなたが言うように男性を侍らせたとして、あなたに何の関係があるの?」
「はぁ?…知らねぇよ!お前は、悪い奴なんだよ!そんな奴が聖人なんて許せねーんだよ!」
「私は今までも自分の生活を犠牲にして働いているわ。今あなたが言う娼婦のようなこともしていない。あなたたちは私がしてもいないことで暴言を吐いたり、暴力を振るったのよ?」
「うるせえっ、だまれ!お…お前は悪い奴だから仕方ないんだよ!」
「私は討伐に同行する時、あなたの言う悪い事をしたかしら。男性を連れてきた?騎士に色目を使った?仕事をサボった?」
「…っ!知らねぇよっ、これからするんだろ!その前からわからせてやってるんだよっ」
「では私はまだ悪いこともしていないのに、あなたたち第二騎士団に、してもいないことで暴言を吐かれ、暴力を受けたのね?」
ジミールの後ろで、剣を抜いた騎士が真っ青な顔をしている。
「せ、聖人様、お、俺たちは団長から、聖人は悪女で仕事もサボるような奴だから、しっかり鍛えてやれと言われ続けて……」
「きっ、貴様ーっ!」
ジミールが自分の部下に向かって剣を抜いた瞬間、
「ユリアナ様、こいつらを捕縛します」
ルイ師団長が魔法で拘束した。
「くっそーっ!離せ!親父が言ってたんだ!ずっとずっと、聖人は淫乱な悪女だと!畜生!何でだ、俺は言われた通りにしただ───ぐぅっ」
ルイ先生は口も魔法で拘束し声が出ないようにした。
悪意が呪いのように受け継がれていた。
なぜ誰も疑問を持たなかったの?
本当に聖人は団長の言うような人なのか、自分の目で確かめるまでは信じない、と。
愚かな人たち。
でも、それよりも早くジュリアンの状態を確認しなければ。
捕縛した騎士の一人、先ほど真っ青な顔していた騎士に、
「ジュリアンのところに案内をして。今までのジュリアンの状況をすべて正直に説明すれば、あなたの罪を少し軽くできる。あなたのせいであなたの家族も同じ罪になるけど、軽くしてあげられるかもしれない。ジュリアンのところに案内できる?」
その騎士は真っ青だった顔色が白くなり、涙を浮かべながら何度もうなずいた。
私はルイ師団長に、この騎士の口の拘束だけ解いてもらい、ジュリアンのもとへ歩かせた。
私は、ナイジェルお兄様、侯爵家私兵長のカムデンと私兵2名、執事のマーカスを連れ、王宮にやって来た。
「ユリアナ、ジュリアンに会うのにこの人選は物々しいというか、騎士団に警戒されそうだね」
ナイジェルお兄様は、何か察しているところがあるようで心配そうに話すが、お兄様はお兄様で、ルイ・エンバリー魔法師団長に今日の面会の付き添いをお願いしていた。
廊下の向こうから、ルイ師団長が歩いてきた。
「聖人ユリアナ様、お久しぶりですね。ご活躍はランから聞いていますよ」
「ルイ師団長、お久しぶりです。ラン・タイラー先生にご指導していただき、多くを学べました。今日はジュリアンのためにお時間を頂戴しありがとうございます」
と丁寧に挨拶をした。
ルイ師団長はクスクスと笑うと、
「ユリアナ様、本当に12歳とは思えないほどご立派になられましたね。大切な弟子のジュリアンのためです、いつでも駆け付けますよ」
私たちは第二騎士団棟の応接室に案内された。
長椅子に、私とお兄さま、ルイ師団長が座り、その後ろに私兵長と私兵二人、マーカスが立った。
少しして、お仕着せを着た女性がお茶を運んできた。私たちの前にカップを並べると、そそくさと退室した。
そのカップをじっと見ていたルイ師団長は、カップを手に持ったお兄さまに、
「ナイジェル様、カップを置いて」
と言い、
「これは飲めません。飲んだら無事には帰れないでしょう」
と低い声で言った。
ルイ師団長は、過去に食事に毒を入れられたことがあり、それからは鑑定魔法で食事や飲み物を視る事にしているそうだ。
「これは幻覚作用のある薬と催眠作用のある薬か…?混ぜて入れられている。私たちをどうする気だったのかな」
許せない、今日はルイ師団長も付き添うと伝えているのに、このような愚かなことを!
「マーカス、父上は今日登城しているよね?私兵と一緒に父上の執務室へ行ってくれ」
マーカスがわかりましたと言い、私兵一人と出て行くと、すぐに第二騎士団団長ジミールが部下とともに入ってきた。
私たちの前のソファーにドカッと座り足を組むと、
「これはどうも聖人様。今日は何用でしたかな?」
相変わらず不遜な態度は、陛下に忠告されているとは思えない。後ろにいる部下もニヤニヤと笑っている。
お兄様が、
「ジミール団長、今日はジュリアンと面会できると約束した日です。ジュリアンはどこですか?」
するとジミールは、
「まあまあそんなに焦らないで、まずはお茶でも飲んだらいかがです?」
とニヤニヤした。
ルイ師団長がソファーの背にずっしりともたれ、足を乱暴に組み、低い声で、
「これは飲めませんよ団長。私が鑑定魔法を使えることは知らなかったのですか?」
ジミールの表情が無くなった。
「どういう事だ?」
「私は飲み物でも食べ物でも魔法でも、それが何かわかるんですよ。例えばこのお茶の中には大変危険な何かが入っているとか」
「な、なんだと?そ、そんなことは俺は知らない!誰か薬を入れた奴を捕まえておけ!」
ルイ師団長は何かと言ったのに、ジミールは薬と言った。指示したのは間違いなくこの男ね。
ルイ師団長が居てくれ良かった。私たちだけなら今頃どうなっていたかと考えるとゾッとする。
わかりやすく動揺している団長の事はどうでもよかった。これでこの男の罪が増えたわ。
二度とこの男を騎士と名乗らせない。
「ジミール団長、この事はすでに父を通して陛下にも報告しております。これ以上私たちに危害を加えようとするのは無理ですよ。
それに何度も言いますが、今日はジュリアンに面会に来たのです。約束を違えるおつもりですか?」
ジミールはお兄様もルイ師団長もいるのに、私を睨み付け、
「今日は会えませんよ。アイツには特別な仕事をさせてますから」
と言い、ふんっと笑った。
そうなのね、わかったわ。
私は今までも我慢して、この度も陛下に忠告してもらい猶予を与えたわ。
それなのにこれね。
もう許さない。
「ジミール、私は第一騎士団のジョーデンに指示して、この日ならジュリアンに会えると約束させたの。あなたはジョーデンから何を聞いていたの?」
ジミールはいきなりユリアナに詰め寄られ、顔を真っ赤にし怒鳴った。
「ジミール?ジミールだと!?俺を呼び捨てるとはこのガキ!!何様だっ!」
私の後ろの私兵が剣に手を掛けた。
するとジミールの部下は真っ直ぐ私を睨みながら剣を抜き、一歩踏み出そうと前に出た。
((保護結界))
私はテーブルを挟んで、ジミールと部下の前に結界を張った。部下たちは一歩もこちらに来ることは出来ない。
「ジミール、あなたも理解していないので教えてあげるわ。聖人である私は、国王陛下に次ぐ爵位なの。わかる?あなたなんか私の一言でどうにでもなるのよ?今まで我慢したけどもう許さない。
その者たち、聖人の私に対して剣を抜いたわね。処罰がどういったものか知ってる?陛下に剣を向けたのと同じよ」
「な、なんだと?国王陛下の次?ただ運良く魔力があるだけだろ!このガキ、嘘をつくな!」
お兄様がため息をついた。
「ユリアナ、ごめんよ。こんな頭の悪い奴らの中にいて仕事をしていたんだね。悔しかったろ?助けてやれなくてすまなかった」
お兄様が情けない顔をして私の頬を優しく撫でた。
「ジミール団長、今のやり取りはすでに魔道具で記録している。あとで陛下の前で取り繕う事はできない。今までの行いを悔いるんだな。それ以外に、ジュリアンに何かあったら私も黙ってはいない」
ルイ師団長は、胸元から小さな魔道具を取り出した。
「エンバリーだまれ!たかが運の良かったガキが偉そうに!そのうち男を侍らす淫乱な娼婦になるくせに、そんな奴が陛下の次に偉いわけないだろ!」
何を言っているの、この男は。
「ジミール、なぜ私が娼婦になるの?なぜ言いきるの?」
「うるさいだまれっ!親父から聞いてる、聖人の女はすぐに男を誘惑して、何人もの男に色目を使うと。
だから、聖人なんかこき使って、男を侍らして遊ぶ暇なんて無いようにわからせてやれと!」
親父とは前団長のことね。
ライエム団長だったわ。そう、ローズマリア様の日記に出てきた男。
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何の疑問も持たず、弱い毒が浸透するように騎士団員のほとんどが聖人に悪意を持っていた。
「それはあなたに関係あるの?私が将来あなたが言うように男性を侍らせたとして、あなたに何の関係があるの?」
「はぁ?…知らねぇよ!お前は、悪い奴なんだよ!そんな奴が聖人なんて許せねーんだよ!」
「私は今までも自分の生活を犠牲にして働いているわ。今あなたが言う娼婦のようなこともしていない。あなたたちは私がしてもいないことで暴言を吐いたり、暴力を振るったのよ?」
「うるせえっ、だまれ!お…お前は悪い奴だから仕方ないんだよ!」
「私は討伐に同行する時、あなたの言う悪い事をしたかしら。男性を連れてきた?騎士に色目を使った?仕事をサボった?」
「…っ!知らねぇよっ、これからするんだろ!その前からわからせてやってるんだよっ」
「では私はまだ悪いこともしていないのに、あなたたち第二騎士団に、してもいないことで暴言を吐かれ、暴力を受けたのね?」
ジミールの後ろで、剣を抜いた騎士が真っ青な顔をしている。
「せ、聖人様、お、俺たちは団長から、聖人は悪女で仕事もサボるような奴だから、しっかり鍛えてやれと言われ続けて……」
「きっ、貴様ーっ!」
ジミールが自分の部下に向かって剣を抜いた瞬間、
「ユリアナ様、こいつらを捕縛します」
ルイ師団長が魔法で拘束した。
「くっそーっ!離せ!親父が言ってたんだ!ずっとずっと、聖人は淫乱な悪女だと!畜生!何でだ、俺は言われた通りにしただ───ぐぅっ」
ルイ先生は口も魔法で拘束し声が出ないようにした。
悪意が呪いのように受け継がれていた。
なぜ誰も疑問を持たなかったの?
本当に聖人は団長の言うような人なのか、自分の目で確かめるまでは信じない、と。
愚かな人たち。
でも、それよりも早くジュリアンの状態を確認しなければ。
捕縛した騎士の一人、先ほど真っ青な顔していた騎士に、
「ジュリアンのところに案内をして。今までのジュリアンの状況をすべて正直に説明すれば、あなたの罪を少し軽くできる。あなたのせいであなたの家族も同じ罪になるけど、軽くしてあげられるかもしれない。ジュリアンのところに案内できる?」
その騎士は真っ青だった顔色が白くなり、涙を浮かべながら何度もうなずいた。
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