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55.哀れなジミール
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国王陛下の応接室に通された。
そこにはお父様もいた。
ジュリにはまた回復の魔力を流し、お兄様にお願いして侯爵邸に一緒に帰ってもらい、ジュリを早く休ませてほしいとお願いした。
ジュリは、私のそばに居たいと頑張っていたが、立っているのも辛そうだった。
私と私兵長とマーカスで応接室に入った。
「ユリアナ、すまなかった。私もジュリアンがそんな状態だとは知らなかったのだ。第二騎士団は一度解体する。ユリアナとジュリアンに、直接的に危害を加えたものは処刑し、あとは生涯地下牢または鉱山刑とするが、どうだ?これで許してもらえないだろうか?」
そう… 知らなかったと言い切るのね。
そして、ジュリアンをここまで追い込む計画をし、指示した者はお咎め無しなのね。
どこまで私たちを馬鹿にしているのかしら。
いいわ、あなたが身内を庇っても私は許さない。
「わかりました。その罰についての采配には私も加わります。
ただ、そんな第二騎士団の中でも、ジュリアンを助けようとしてくださった騎士様もいます。その方はどうか罰は与えず、希望に沿うようにしてあげてください」
陛下は大きくうなずくと、
「わかった、ユリアナの言う通りにしよう。あとは何か希望はあるか?」
私が何もわからない子供だと思って油断してるけど、そうではないと理解させないとダメね。
「陛下、私は今まで第二騎士団に暴言を吐かれ、暴力を受けました。
今までは、私がその悪意を黙っていたことも、良くなかったと思います。
ですが、誰がこのような状況を想像できたでしょうか?
なぜか、聖人となり働き出した時から暴言を吐かれました。
それならば、私個人が原因ではありませんよね?騎士団とは、会ったことも関わったこともありませんから。
挙げ句に暴力を受けました。
あの時、ジュリアンが助けてくれなければ、私はそのあとどんな目に遭ったか、考えるだけでも恐ろしいです。
でも今度は、その私を助けてくれた恩人のはずのジュリアンが、命を脅かすような仕打ちを受けました。
これは一体、どういったことなのでしょう?」
国王陛下は僅かに眉を寄せると、
「そうだな、ユリアナ。私はお前を守ると言ったが、第二があそこまで愚かだったとは想像できなかった。あの後、厳重注意もしたのだかな… 今後は二度と、お前たちが危険な目に遭わないようにしよう」
ジュリも私も酷い扱いを受けていたことを知っていたのに、何も対応策を取らなかった。
そして、すべてが第二騎士団だけの罪なのね。
この男が信用ならないということがよくわかったわ。
私は敢えてクスクスと笑い、
「そうですね、陛下。私は思いもかけずこの力を授かリました。これは国民のために使わなければなりません。
しかし、それを阻む者がいれば、私はこの力をこの国で使うことはできないでしょう。それはジュリアンも同じです。
この度ジュリアンに深い傷を刻み、私を侮っていた事は許し難いことです。
先日もお伝えしましたが、今後、同じようなことが起きれば、私たちを必要としていないとみなし、安心して暮らせる国へ移ります、よろしいですね?」
私がクスクスと笑い、柔らかい口調で話したことで油断しているのだろう。
私が本気だとつゆ程も思わない表情で、
「ユリアナ、怖い事は言わないでおくれ?ユリアナがいないとこの国は魔物で埋め尽くされてしまうよ?お前たちの安全を徹底させる。それは約束しよう、必ず守る」
ここまで言っても、まだ子供の言葉だと思って甘く考えてるわ。
でももういい、この手の人はその時にならないとわからないんだわ、きっと。
「陛下、今の言葉、どうかお忘れにならないようお願いしますね?」
私の隣に座っているお父様は、私をじーっと見てニッコリと笑った。
陛下との面会が終わったあと、地下牢にいるという、元第二騎士団団長ジミールのところに行った。
平民の重罪人が収監される地下牢。私が二度と来たくなかった場所。
この臭いが、この暗さが、あの時の絶望した感情を思い起こさせる。
ジュリが、カイル様が、虫でも潰すかのように、命を散らされた場所。
私が、地獄の方がまだマシだと絶望した場所。
その場所に、私を、ジュリを、多くの罪のない人を痛めつけ、死に追いやった男がいる。
「ジミール、そのお住まいはいかがかしら?」
ジミールは壁に固定された鎖の先に、右手右足を繋がれていた。
もちろん私の指示だ。
ジミールは怒りのまま、鉄格子越しの私に向かって突進してきたが、もちろん私には届かない。
ガシャンガシャンと鎖が鳴る。
ジュリがあの時、カイル様の絶命する時の声を、私に聞かせないように鳴らした鎖の音。
自分が第二の騎士に剣を突き立てられることを悟られないように、鳴らした音。最期の最後まで、私を思ってくれた。
「このガキがぁ!!貴様ぁ、殺してやるっ!」
「あら、怖い。でもジミール、その哀れな姿で、どうやって私を殺すの?お前は本当に愚かな男ね」
「てめえ…!絶対にお前だけは殺してやる!」
「ねぇジミール、私は10歳でお前に初めて会ったわ。それから2年経った。この間に私はお前に何かしたの?」
「うるせぇっ!たまたまそんな力が使えるだけで、偉そうにするなっ!」
「本物の馬鹿ね?その力に一番頼っていたのは、お前たち第二騎士団よ?聖人に助けてもらわないと、討伐を行えなかったでしょ?」
「それはお前の仕事だ!あたり前だろ!」
「その仕事をまともにさせないようにしたでしょ?お前の父親の言葉をそのまま信じて、その通りだったの?」
「知らねーよ!お前は悪い奴なんだよ!」
「まぁ!10歳の小娘に何か意地悪をされて、泣いていたの?それなら可哀想だから謝るわ?」
「…っ!てめえぇ、黙れっ!!」
「私が悪いことをしていたとして、何かお前に被害があったの?第二騎士団に何か影響はあったの?」
「お前の存在がイラつくんだよ!これから男に色目を使って、仕事しなくなるのがわかってるんだよ!」
「父親の言葉を信じるのはわかるわ。でも、それが本当なのか考えたことはある?それを自分の目で見て確かめたの?調べたことは?
お前は父親の言葉で、人生を歪められた哀れな男よ。
でも自分で考えることはできたはずよ?聖人は本当に父親の言うような人間なのかって。その時間はたっぷりあったわ。お前はいい年をした大人だもの。
しかもお前は、その父親に洗脳された思想を、自分の部下にも共有し、そうあるべきと強要した。
その結果どう?
おまえの部下は全員処刑よ?
お前のしたことが一番悪いことだと思わない?」
「なっ…!う、うるせえっ!!黙れ!俺は間違ってねぇ!俺が正しいんだ!!俺が正しいんだっ!!」
ジミールは鎖に繋がれていることも忘れ暴れている。
この男が何かを考えて理解することは無理だ。
部下が処刑だと伝えても、己のしたことを罪として理解できなければ、こんな獣以下の男をまともに生かしてはおけない。
この男の刑罰は、レオンハルト殿下が提案した刑で良いと伝えよう。
私は一生懸命、万能薬を作るわ。
帰りの馬車でお父様が、
「ユリアナ、なんだかすっかり大人になってしまったような感じだけど、本当にユリアナなのかい?…お父様は心配だよ?」
「いやですわ、お父様。色々あリ過ぎて、しっかりしなくてはと思っています。私は家族を守ってみせます」
普段とぼけてるのに、こういう時は鋭いお父様。でもいつか私の身に起きたことは話したいと思う。
そして、ジュリについては、しばらくは侯爵家で療養し、心身を回復させてから私の護衛をしてもらうことにしようということになった。
その間、私はお兄様にお願いして、ジョーデンが、どうしてあれ程までにジュリを害そうとしたのか調べてもらうことにした。
それからは、なるべく前回と同じように過ごし、リチャードとも同様に交流を続けた。
そこにはお父様もいた。
ジュリにはまた回復の魔力を流し、お兄様にお願いして侯爵邸に一緒に帰ってもらい、ジュリを早く休ませてほしいとお願いした。
ジュリは、私のそばに居たいと頑張っていたが、立っているのも辛そうだった。
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「ユリアナ、すまなかった。私もジュリアンがそんな状態だとは知らなかったのだ。第二騎士団は一度解体する。ユリアナとジュリアンに、直接的に危害を加えたものは処刑し、あとは生涯地下牢または鉱山刑とするが、どうだ?これで許してもらえないだろうか?」
そう… 知らなかったと言い切るのね。
そして、ジュリアンをここまで追い込む計画をし、指示した者はお咎め無しなのね。
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いいわ、あなたが身内を庇っても私は許さない。
「わかりました。その罰についての采配には私も加わります。
ただ、そんな第二騎士団の中でも、ジュリアンを助けようとしてくださった騎士様もいます。その方はどうか罰は与えず、希望に沿うようにしてあげてください」
陛下は大きくうなずくと、
「わかった、ユリアナの言う通りにしよう。あとは何か希望はあるか?」
私が何もわからない子供だと思って油断してるけど、そうではないと理解させないとダメね。
「陛下、私は今まで第二騎士団に暴言を吐かれ、暴力を受けました。
今までは、私がその悪意を黙っていたことも、良くなかったと思います。
ですが、誰がこのような状況を想像できたでしょうか?
なぜか、聖人となり働き出した時から暴言を吐かれました。
それならば、私個人が原因ではありませんよね?騎士団とは、会ったことも関わったこともありませんから。
挙げ句に暴力を受けました。
あの時、ジュリアンが助けてくれなければ、私はそのあとどんな目に遭ったか、考えるだけでも恐ろしいです。
でも今度は、その私を助けてくれた恩人のはずのジュリアンが、命を脅かすような仕打ちを受けました。
これは一体、どういったことなのでしょう?」
国王陛下は僅かに眉を寄せると、
「そうだな、ユリアナ。私はお前を守ると言ったが、第二があそこまで愚かだったとは想像できなかった。あの後、厳重注意もしたのだかな… 今後は二度と、お前たちが危険な目に遭わないようにしよう」
ジュリも私も酷い扱いを受けていたことを知っていたのに、何も対応策を取らなかった。
そして、すべてが第二騎士団だけの罪なのね。
この男が信用ならないということがよくわかったわ。
私は敢えてクスクスと笑い、
「そうですね、陛下。私は思いもかけずこの力を授かリました。これは国民のために使わなければなりません。
しかし、それを阻む者がいれば、私はこの力をこの国で使うことはできないでしょう。それはジュリアンも同じです。
この度ジュリアンに深い傷を刻み、私を侮っていた事は許し難いことです。
先日もお伝えしましたが、今後、同じようなことが起きれば、私たちを必要としていないとみなし、安心して暮らせる国へ移ります、よろしいですね?」
私がクスクスと笑い、柔らかい口調で話したことで油断しているのだろう。
私が本気だとつゆ程も思わない表情で、
「ユリアナ、怖い事は言わないでおくれ?ユリアナがいないとこの国は魔物で埋め尽くされてしまうよ?お前たちの安全を徹底させる。それは約束しよう、必ず守る」
ここまで言っても、まだ子供の言葉だと思って甘く考えてるわ。
でももういい、この手の人はその時にならないとわからないんだわ、きっと。
「陛下、今の言葉、どうかお忘れにならないようお願いしますね?」
私の隣に座っているお父様は、私をじーっと見てニッコリと笑った。
陛下との面会が終わったあと、地下牢にいるという、元第二騎士団団長ジミールのところに行った。
平民の重罪人が収監される地下牢。私が二度と来たくなかった場所。
この臭いが、この暗さが、あの時の絶望した感情を思い起こさせる。
ジュリが、カイル様が、虫でも潰すかのように、命を散らされた場所。
私が、地獄の方がまだマシだと絶望した場所。
その場所に、私を、ジュリを、多くの罪のない人を痛めつけ、死に追いやった男がいる。
「ジミール、そのお住まいはいかがかしら?」
ジミールは壁に固定された鎖の先に、右手右足を繋がれていた。
もちろん私の指示だ。
ジミールは怒りのまま、鉄格子越しの私に向かって突進してきたが、もちろん私には届かない。
ガシャンガシャンと鎖が鳴る。
ジュリがあの時、カイル様の絶命する時の声を、私に聞かせないように鳴らした鎖の音。
自分が第二の騎士に剣を突き立てられることを悟られないように、鳴らした音。最期の最後まで、私を思ってくれた。
「このガキがぁ!!貴様ぁ、殺してやるっ!」
「あら、怖い。でもジミール、その哀れな姿で、どうやって私を殺すの?お前は本当に愚かな男ね」
「てめえ…!絶対にお前だけは殺してやる!」
「ねぇジミール、私は10歳でお前に初めて会ったわ。それから2年経った。この間に私はお前に何かしたの?」
「うるせぇっ!たまたまそんな力が使えるだけで、偉そうにするなっ!」
「本物の馬鹿ね?その力に一番頼っていたのは、お前たち第二騎士団よ?聖人に助けてもらわないと、討伐を行えなかったでしょ?」
「それはお前の仕事だ!あたり前だろ!」
「その仕事をまともにさせないようにしたでしょ?お前の父親の言葉をそのまま信じて、その通りだったの?」
「知らねーよ!お前は悪い奴なんだよ!」
「まぁ!10歳の小娘に何か意地悪をされて、泣いていたの?それなら可哀想だから謝るわ?」
「…っ!てめえぇ、黙れっ!!」
「私が悪いことをしていたとして、何かお前に被害があったの?第二騎士団に何か影響はあったの?」
「お前の存在がイラつくんだよ!これから男に色目を使って、仕事しなくなるのがわかってるんだよ!」
「父親の言葉を信じるのはわかるわ。でも、それが本当なのか考えたことはある?それを自分の目で見て確かめたの?調べたことは?
お前は父親の言葉で、人生を歪められた哀れな男よ。
でも自分で考えることはできたはずよ?聖人は本当に父親の言うような人間なのかって。その時間はたっぷりあったわ。お前はいい年をした大人だもの。
しかもお前は、その父親に洗脳された思想を、自分の部下にも共有し、そうあるべきと強要した。
その結果どう?
おまえの部下は全員処刑よ?
お前のしたことが一番悪いことだと思わない?」
「なっ…!う、うるせえっ!!黙れ!俺は間違ってねぇ!俺が正しいんだ!!俺が正しいんだっ!!」
ジミールは鎖に繋がれていることも忘れ暴れている。
この男が何かを考えて理解することは無理だ。
部下が処刑だと伝えても、己のしたことを罪として理解できなければ、こんな獣以下の男をまともに生かしてはおけない。
この男の刑罰は、レオンハルト殿下が提案した刑で良いと伝えよう。
私は一生懸命、万能薬を作るわ。
帰りの馬車でお父様が、
「ユリアナ、なんだかすっかり大人になってしまったような感じだけど、本当にユリアナなのかい?…お父様は心配だよ?」
「いやですわ、お父様。色々あリ過ぎて、しっかりしなくてはと思っています。私は家族を守ってみせます」
普段とぼけてるのに、こういう時は鋭いお父様。でもいつか私の身に起きたことは話したいと思う。
そして、ジュリについては、しばらくは侯爵家で療養し、心身を回復させてから私の護衛をしてもらうことにしようということになった。
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