貴方たちの悪意は倍にしてお返しします

翡翠と太陽

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64.夜会①

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 その夜会会場には、大勢の貴族たちが集まっていた。

 ただ、国王陛下と正妃である王妃様は、隣国の更に向こう側の、正妃様のご実家に行っており不在だった。

 私を断罪したいのに、国王陛下からの横槍は自分たちの行いを完遂できない。前回と同じ、アイツらがわざわざこの日を選んだのは明らかだった。

 第一王子のレオンハルト様は、キイラの闇魔術で意識を奪われていた。
 しかしそれは、レオンハルト様にそっくりの影だった。

 私は自らまた闇魔術を掛けられたが、さすがにレオンハルト王太子殿下本人が、闇魔術を掛けられるわけにはいかない。
 前回の悪夢を知っていて、今回、闇魔術を敢えて掛けられた私とは違い、万が一、王太子殿下の解術ができない事態にでもなれば、私は死罪に値する罪となる。

 私が死に戻ったとは言わず、私が闇魔術をかけられていること、恐らくリチャードはレオンハルト様にも同じように闇魔術を掛けに来るだろう、私はそのリチャードの罪を、生きていることを後悔するくらい償わせたいと伝えた。

 すると、「リチャードをすぐ殺せないのか、うーん」と考えたレオンハルト様は、俺の影に掛けさせるか、その闇魔術を掛けられたらどうなるか見ておきたいし、俺の影は変態だから大丈夫だ!と言った。変態…?
 
 その影の方にお会いすると、レオンハルト様に顔も体型もそっくりだった。

 「聖人ユリアナ様、私にこのような機会を与えてくださって、ありがとうございます」
と言って嬉しそうに微笑んでいた。 
 その顔もレオンハルト様に似ていた。

 「ユリアナ、言った通りだろ?顔が似てるし、忠誠心も強いから重宝してるけど、未だにコイツがわからないんだ、あははは!」

 と笑い、その場にいたルイ師団長も、研究対象としか見ておらず、とても嬉しそうに笑っていた。


 そして、先ほど秘密裏に、レオンハルト様の影の解術が成功したと、ライナルト殿下がこっそり教えてくれた。

 昨日、キイラに会った。
 キイラは手枷をされ、腰は太い縄で縛られていた。
 
 私を見ると、すぐに私の前に土下座し、死んでお詫びします、その前に解術させてくださいと、涙声で言った。

 私は、前回私が処刑された時と同じ姿のキイラを見ていることができず、すぐに手枷も縄も解いてもらった。

 「キイラ、貴女のしたことは許されないことだわ。でも貴女はこうして、自分の過ちを理解して、それを正そうとしている。貴女をお育てになったお母様は立派な方だったのね」

 キイラは声をあげて泣いた。
 ごめんなさい、申し訳ありませんと何度も何度も謝りながら。

 それから、私たちは計画通りに事を進めた。

 キイラから、リチャードとシャルルアンの計画もすべて聞き、やはり前回のように、第一王子レオンハルト様の意識を奪い、帰国した国王陛下と王妃様も同様に呪う予定だった。

 キイラは、実際に呪ったのはレオンハルト様の影だとは知らないが、泣きながら謝罪し、影の解術をしたそうだ。

 その後、キイラは私の侍女として夜会に同行し、その時がくるまで待機してもらった。

 私は、何かあってもすぐに対応できるようと、ルイ師団長にエスコートしてもらうことになった。


 リチャードが、玉座にシャルルアンを伴って現れた。シャルルアンはリチャードの腕に、これ以上ないくらい優越感で満たされた表情をしてしがみついている。

 「皆、今宵は集まってくれて感謝する。急遽この日に集まってもらったのには訳がある。私の婚約者である聖人ユリアナが、ここにいる女性、シャルルアン·ゴルドー伯爵令嬢に酷い仕打ちと嫌がらせを繰り返していた!
 その事をここにいる皆に証人になってもらいたい。ユリアナ!いるのだろう!前に出てこい!」
 
 私は言われるがままホールの中央に移動した。

 「リチャードさまぁ…私、怖いです!ユリアナさんが睨んでますぅ!」

 シャルルアンは、甲高い声でそう言うと、リチャードに泣き顔を見せた。

 「大丈夫だよ、シャルル。私がいるからね。それでは証人はここへ!」

 まずは、私がシャルルアンの魔法実技の際に着る、実習服のワンピースとローブを切り裂いたという件だった。

 その後は、学院の二階から大きな石を落とされ殺されそうになった、侯爵家の馬車で轢き殺されそうになった、先日のレストランでのことも、馬鹿にされた!と叫び、他にも3件の冤罪を発表した。 

 前回と同じような、よくもまあひねり出してきたと思えるお粗末な嘘を並べ立て、どこで買収したのか脅したのか、証人も連れて来た。

 私はその都度、そのお粗末な冤罪を、証拠と共に覆し、その証拠を、この夜会に参加していた裁判所の役人に提出した。

 この馬鹿馬鹿しい時間はどのくらい続くのかしら。何度もため息が出そうになったが堪えた。 

 こんな愚かしい冤罪に、前回は嵌められたのね… 悔しいより、情けないわ。
 でも、今回断罪されるのは、リチャード、シャルルアン、あなたたちよ。

 「皆さん!わかりましたか!?ユリアナさんはヒドい人なんですぅ、グスッグスッ…」

 リチャードに縋り付き、リチャードはシャルルアンの肩を抱いている。

 さぁ、私の番ね。

 「はぁ、長かったわ… これですべて終わりましたの?すべて冤罪でしたわねぇ?この恐ろしく無駄な時間、これもシャルルアン·ゴルドー、お前の罪に加えるわよ」

 「な!何よ罪って!?悪いことしたのはアンタよ!ユリアナさん!」

 ジュリが前に出てきた。ずっと我慢していたが限界だったのだろう。

 「お嬢様、アイツの首を斬っても良いですか?」

 「ダメよ、ジュリ。まだよ?私がお願いしてからにしてね?」

 「……!ユリアナ、その、その護衛を下がらせるんだ!」

 リチャードの顔色が、みるみる悪くなる。
 剣術大会でのジュリの強さを目の当たりにしているため、ジュリを見る度に怯えている。

 「私の護衛を私のそばに置かないで、どこに置くというのです?おかしなことを仰いますわね?
 それから、この際申し上げますが、リチャード殿下、あなたは私に指示をしたり、従わせる権限などございませんよ?」

 「何言ってるのよっ!リチャード様は王子様よ?ユリアナさんこそ、その偉そうな態度、やめなさいよ!」

 愚かしいことこの上ない。この女に何を言っても理解出来ないのでしょうけど。

 「シャルルアン·ゴルドー、次に私の名を呼んだら、その指を一本ずつ斬り落とすわよ。脅しじゃないのはわかるかしら?
 私はお前のような、教養も品性も知性もない、ただ名ばかりの頭の悪い伯爵令嬢に、簡単に名を呼ばれるような存在じゃないの」

 「ヒドいわ…!なんて恐ろしいの!皆さん聞きましたかっ!?やっぱりユリ…、この人は悪人よ!」

 「今言ったことも分からないのね?私に無礼な態度を取ることは、許さないと言ってるのよ?
 それに、石を落とした?馬車で轢き殺されそうになった? 
 フフフ、馬鹿馬鹿しい。
 お前ごときを処分しようとするなら、そんなまどろっこしいことなんかしませんよ?ね、ジュリ?」

 「あんな奴を跡形もなく始末するくらい寝ててもできます」

 「イヤッ…!やっぱり…私を殺そうとしてますっ…!ユリ、こ、この方は、人殺しです!」

 「シャルルアン、お前が望んだのでしょ?お前が作り上げた冤罪に、いくつかあったわよね?私があなたを殺すというものが。
 私は、石だの馬車だの、そんな不確実なことはしませんよ?それだけは覚えておいてくださいね?」

 私はゆっくりと、この二人に作られた笑顔を見せた。

 「ひ、人殺し!!リチャードさまぁ、あの人を地下牢に入れてくださいっ!」

 リチャードは、私がこんなことを言うとは思っていなかったのだろう。お父様の囁きを思い出しているのかしら、固まっているわ。

 「シャルルアン、私に対しての数々の無礼な言動、私の婚約者との不貞行為、私の魔力を自分の魔力だと偽っていること、そして、この度の冤罪、お前の罪は処刑でも足りないわ」

 「っ!…何言ってるの!?しょ、処刑!?奪ったのはアンタよ!私から聖人もリチャードさまも奪ったのはアンタよ!だから返してもらったのよ!それの何が罪なのよっ!」

 「では聞くけど、お前は10歳の時、神官長様に聖人だと言われたの?」

 「……言われてないけど、でも!…先にアンタが光ったからいけないのよ!私が先に判定してもらったら、私が聖人だったのにっ!」

 「……呆れるわ、…魔力判定の順序で、聖人が決まると思っているの?あまりに予想外で言葉も出ないわ。順番で聖人が決まるわけないのよ?幼い子供でもわかるわ。
 お前は何を学んできたの?あぁ何も学んでないから、何も分からないのね?お前は哀れね」

 「馬鹿にしないで!ヒドいわ!」

 「お前が私のあとに、神官長様に無理を言って、魔力判定をしてもらったことは知ってるのよ?その時、聖人と言われたの?」

 「………」

 「私が聞いたことに答えなさい。黙ることは許可してないわよ。…ジュリ、あの女の右手の―――」

 「い、言われてないわよっ!」

 「聖人と判定されていないと理解しているのに、私がお前から聖人の力を奪ったって… 聖人でないお前から、私が何を奪うの?」
 
 「………」

 「また言わせるの?一度で理解できないのね?……そうね、できないわね、この悪い頭では。ジュリ―――」

 「わ、わかってるわよっ!で、でも私は―――」

 「同じことの繰り返しは許さないわよ?お前が聖人ではないことは、魔力判定の時点で明らかなの。次に聖人を名乗れば、指ではなくお前のその首を斬り落とすわよ」
 
 「なっ…で、わ、私には魔力があるわ!」

 「まだ言うの?そう、いいわ。お前の悪い頭では言葉を理解することが不可能だから、あとでわかりやすく教えてあげるわ。
 それと… リチャード殿下のことは?なぜ私が奪ったことになってるの?答えなさい」

 「…お茶会で、リチャードさまに出会って、私が先に、それで、私の運命の人だと…思ったから、それなのに、婚約したって聞いて、…ズルいって、私の運命の人だと、アンタが知ってて婚約したから…」

 「王命というものも知らないのね?恐ろしいわ。そうね、お前は貴族としての知識も教養もない9歳児と同じだから、何もわからないものね?」

 「9歳ってどうしてよっ!?私は16歳よ!アンタと一緒よ!馬鹿じゃないの!?」

 身体をプルプルと震わせ、顔を赤くし叫び声を上げる。ジュリが剣に手を掛けるが、ダメよと視線を送る。

 「ユ、ユリアナ!…さすがに、それはシャルルを馬鹿にし過ぎだ!」

 リチャードがシャルルアンの肩を抱き、私を睨みつけている。

 「初等部も、中等部も通っておられない。高等部に入学してからも、ほとんどの授業の試験は最下位、魔法実習もすべて欠席… このような方が、9歳児と何が違いますの?
 だからこそ、爵位が上の者に対して平気で無礼な態度をとる、適切な言動ができない、ありもしない聖人の力を奪われたと言い、私の婚約者である殿下と親密以上の関係となっても、それらが重罪であることすら理解できない。
 あら、これは普通の9歳の子に失礼ね、普通の9歳なら、こんなこと、とっくに理解していますものね?
 だったら…馬鹿以外になんと言えばよろしいの?クスクス」 
 
 シャルルアンは、顔を赤黒くし、これ以上ないくらい醜い顔で私を睨んでいた。














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