71 / 89
65.夜会②
しおりを挟む
シャルルアンは、私に9歳児以下と断じられ、返す言葉もなくギリギリと顔を歪めている。
恐らく私に、これ以上、教育を受けてこなかったことを深堀りされたくないのだろう。
「シャルルアン、私はお前に会ったこともなければ、なんの接点もないのに、どうして私が憎いの?」
「アンタなんか、本当に大きらいよっ!小さい頃から大っきらい!リチャードさま、早くあの人を地下牢に入れましょう!?」
「小さい頃から… なぜ会ったこともない幼い頃から嫌われるのかしら?不思議ね?それも嘘よね?」
「嘘じゃないわよっ!アンタなんか本当に大っきらいっ!みんなして、ユリアナユリアナって、アンタの話ばっかりして、うるさいのよ!」
「私の話って、会話に少し私のことが出たくらいで嫌いなんて、やっぱりお前は嘘つきだわ」
「嘘じゃないって言ってるでしょっ!?ユリアナは優秀だ、勉強してるって、剣も馬もできるって、嘘ばっかり!そのせいで私も勉強しろって言われて、アンタなんか大っきらいなのよ!」
「私が勉強して、剣術、馬術の訓練をして、それがなぜ、お前の勉強に繋がるのよ。そんなわけないわ」
「なんで、わかんないのよっ!?アンタが優秀だって、もう初等部の勉強も終わったって、嘘ばかり言われて勉強させられたのよっ!アンタのせいでっ!」
「私のせいで、できない勉強をさせられて腹が立ったということ?」
「で、できない!?できるわよっ!そんなもの、私だって!」
「でもしなかったわよね?お勉強。何度もマナー講師をすぐに辞めさせて。知ってるよの、すべて」
「…!アンタのせいでしょっ!?アンタはもうマナーはできてるって言われて、私は、それで、大っきらいなのよっ、アンタが!」
「お前は私を妬んでたのね?ユリアナは優秀だと聞かされて、自分と比べられて?それは妬みと言うのよ?お前は私が羨ましかったのよ。自分と比べて、勉強もマナーもできる私が」
「羨ましくなんかないわよっ!!アンタが大っきらいなだけよ!」
「侯爵家のユリアナは勉強ができる、マナーも完璧で、隣国の言葉も話せる。それに比べてお前は、勉強もマナーも覚えるのは嫌だと、泣いて嫌がったのでしょ?」
「う、うるさいっ!!だまれっ!」
「ユリアナは何でもできて、みんなが褒める。本当はそれが羨ましくて仕方ないのに、自分は全然できない。その努力もしなかったくせに。
それを私のせいにして逆恨みをして、挙げ句の果てに、冤罪まで作り上げて断罪する。お前の思考が恐ろしいわ」
「わ、悪いのはアンタよっ!アンタが嫌なヤツだからよっ!わざと私に見せつけたでしょっ!?」
「優秀な私と誕生日が同じだったというのは同情するわ、何かと私と比べられて、お可哀想にね?
でもね、私がどれだけ勉強してきたと思ってるの?私がなんの苦労もなく育ってきたとでも思っているの?
私はお前が泣いて嫌だと喚いている間に、どれだけ勉強したと思ってるの?私だって泣いて嫌だと言いたい時だってあったわ。それでも自分に与えられた役割を果たしてきた。
お前は努力したこともないくせに、自分の怠惰な生活を棚に上げて、その結果をすべて私のせいにして、私を逆恨みした愚かで自分勝手な化け物だわ」
「ば、化け物…!?」
「人としての最低限の知性も教養もマナーもない上に、こんな愚かな行いを恥じることなくやってのける。化け物以外、なんなの?」
シャルルアンは、喚くこともできず、歪んだ表情のまま、私を睨みつけ固まっている。ようやく人間らしい反応を見せたわね。
うるさいのを黙らせたから、今度は馬鹿王子だわ。
「殿下、王命による殿下の今現在の婚約者は誰ですか?」
私は久しぶりに、貴族令嬢の作られた表情では無い、穏やかな淡い愛情を抱いていたあの頃の表情でリチャードに聞いた。
「……ユリアナ 今は、確かに、ユリアナ、お前だ」
驚いた顔のあと、少し表情を和らげ私を見つめている。
「殿下は今現在の婚約者は私だと、このユリアナだと仰いました。それでは、私からは冤罪ではなく、実際の罪になる証拠をお出しします」
私はルイ師団長が作製した、音声記録の魔道具を、私の影に持たせていた。
そして、そう、この二人の情事の音声を記録してもらっていた。
「これから流す音声は、とても不快でおぞましいものです。ご夫人、ご令嬢は耳を塞いで頂いた方がよろしいかと思います」
私はその魔道具に魔力を流した。
『シャルル、勉強とは言ってるけど、本当に勉強するのかな?
もおっ、リチャードさまったら!でもね、リチャードさまぁ、お願い……
シャルル、きみって人は、
っん、……ふっ、あっ、リチャードさまっ!あっ、んん…
あぁシャルル!素晴らしいよ、君の身体は…
あん、リチャードさまぁ、私もリチャードさまに気持ち良くなって欲しいですぅ… リチャードさまぁ、ここ気持ち良いですかぁ?
あぁぁ、シャルル!最高だよ、もっと…ああ!シャルル!……ううっ』
キャーッとご夫人たちの悲鳴が聞こえたところで魔力を流すのを止めると、そのおぞましい会話は止まった。
「ユ、ユリアナーっ!お、お前は、なんて、なんて、はしたないんだっ!この悪女が…!」
リチャードが顔を赤黒くして叫んだ。
はしたない…?誰が?私が?
本当に怖いわ。それを、学院内のあちこちでしていた人が、よく声高に言えたわね?理解不能な人が存在するという事実、まさにこの男が証明している。
「これは私の侯爵家の影が記録したものです。なぜか私が学院中のどこにいても、この二人が現れて、毎度この音声のような行為をなさるので、その都度記録しておりました。
高等部図書館で17回、医療室で5回、ガゼボで3回、同様の記録をしております。
ただ、王族専用の部屋は、さすがに我が侯爵家の影も入れませんので、それは数えておりませんが」
周りの貴族たちが、
「完全な不貞行為の証拠だ!」
「気持ち悪いわ…やっぱり噂は本当だったのね!」
「こんな人が第三王子だなんて…なんて不潔なの!?」
と、怒りや失望、失笑まで聞こえる。
「第三王子リチャード·カイザル殿下、私との婚約式の際、様々な約束事を確認し、誓約書にサイン致しましたね?不貞行為に関しては、それを行った者の有責で慰謝料を支払う、となっております。その額50億リリンです」
またもや貴族たちから悲鳴が上がる。
50億リリンは、この国の最高位である役職、宰相が生涯働いて得る報酬が1億リリンなので、この額の慰謝料に悲鳴が上がるのは当然だろう。
払えるわけがないのだ。
それは、王命による婚約で不貞行為はあり得ないし、する訳がないと、誰もが理解しているからこその金額なのだ。
「…っ!なっ!そんな、50億リリンなんて…払える訳ないだろ!?ふざけるな、そんな魔道具を使って、そんなもの、お前が俺に嫉妬して、作り上げた嘘だ!」
自分の欲を満たすことに、立場も忘れのめり込み、婚約式での誓約内容にあった、不貞行為による慰謝料のことを覚えてもいなければ、サインしたことの意味すら理解していない。
「殿下、婚約式で正式に取り交わした誓約です。サインしたこともお忘れなんですね?
この音声がなくても、あなたが不貞行為をしていたのは明らかです。そこの無礼な女が、リチャード様と恋人同士だと公言しましたし、この学院の生徒が証言してくれるでしょう。
そして、この魔道具を否定なさるとは、魔法省のルイ·エンバリー師団長の魔法を侮辱されるということでよろしいですね?」
「…なっ、なんだと!?ちっ、違う…それは!でも、それは俺じゃない!」
今度は顔を青くさせながら否定するが、
「ルイ師団長の魔道具をお認めになるなら、この情事の中で出てきたシャルルという名前、及びそれを呼ぶ声、リチャード様という名前、及びそれを呼ぶ声は、あなた方しかいません。リチャード殿下、あなたの有責で慰謝料を請求致します」
リチャードが表情を無くし、真っ青な顔で反論できずにいると、さすがシャルルアンである。
このような自身のはしたない声を公開されても、普通ならそれはこの上ない恥辱であるが、それを理解できないし、そういった感覚もない。
本人は小声のつもりなのだろうが、この会場にいるすべての者が聞いていた。
「リチャードさま?よくわかりませんけど、私たちの愛がユ、あの人もわかったのでしょ?それなら50億リリン?でしたっけ?それくらいリチャード様なら出せますよねぇ?」
王族が、国民からの税金である国費によって、生活を賄っていることすらも理解できていないシャルルアンは、頭の悪い、下品な悪女として、さらに貴族たちの侮蔑と嫌悪の対象となった。
「シャルル、やめるんだ…」
リチャードは、身体の震えまでわかるほどに動揺しているが、シャルルアンは続ける。
「リチャードさまぁ、ユリ、…あの人は私の物を全部奪ったけど、それは返してもらったし、可哀想だから多少のお金を恵んで差し上げても良いと思います!」
そう言うと、リチャードに縋り付きながら、私の方を見てニヤッと笑った。
ここまで世の中の道理を理解できないとは、恐怖しかないわ。
「シャルルアン、お前は頭が悪いから何もわからないけど、ここにいる貴族の皆様も、お前の隣にいる第三王子も、皆わかっているの。
お前は、上位貴族である私に、許されることのない無礼な態度をとり、私の聖人という爵位を自分のものだと語り、私の婚約者とおぞましい行為をしていた。
私のものを奪い、酷いことをしたのはお前よ?シャルルアン」
たった今、私に向けた優越感で満たされた表情が、また醜く歪んでいく。
「ふざけないでっ!ズルくて酷いのはアンタよっ!!」
言葉が通じない者にかける時間は、何より無駄だわ。
私は、控えていたキイラに目配せした。
恐らく私に、これ以上、教育を受けてこなかったことを深堀りされたくないのだろう。
「シャルルアン、私はお前に会ったこともなければ、なんの接点もないのに、どうして私が憎いの?」
「アンタなんか、本当に大きらいよっ!小さい頃から大っきらい!リチャードさま、早くあの人を地下牢に入れましょう!?」
「小さい頃から… なぜ会ったこともない幼い頃から嫌われるのかしら?不思議ね?それも嘘よね?」
「嘘じゃないわよっ!アンタなんか本当に大っきらいっ!みんなして、ユリアナユリアナって、アンタの話ばっかりして、うるさいのよ!」
「私の話って、会話に少し私のことが出たくらいで嫌いなんて、やっぱりお前は嘘つきだわ」
「嘘じゃないって言ってるでしょっ!?ユリアナは優秀だ、勉強してるって、剣も馬もできるって、嘘ばっかり!そのせいで私も勉強しろって言われて、アンタなんか大っきらいなのよ!」
「私が勉強して、剣術、馬術の訓練をして、それがなぜ、お前の勉強に繋がるのよ。そんなわけないわ」
「なんで、わかんないのよっ!?アンタが優秀だって、もう初等部の勉強も終わったって、嘘ばかり言われて勉強させられたのよっ!アンタのせいでっ!」
「私のせいで、できない勉強をさせられて腹が立ったということ?」
「で、できない!?できるわよっ!そんなもの、私だって!」
「でもしなかったわよね?お勉強。何度もマナー講師をすぐに辞めさせて。知ってるよの、すべて」
「…!アンタのせいでしょっ!?アンタはもうマナーはできてるって言われて、私は、それで、大っきらいなのよっ、アンタが!」
「お前は私を妬んでたのね?ユリアナは優秀だと聞かされて、自分と比べられて?それは妬みと言うのよ?お前は私が羨ましかったのよ。自分と比べて、勉強もマナーもできる私が」
「羨ましくなんかないわよっ!!アンタが大っきらいなだけよ!」
「侯爵家のユリアナは勉強ができる、マナーも完璧で、隣国の言葉も話せる。それに比べてお前は、勉強もマナーも覚えるのは嫌だと、泣いて嫌がったのでしょ?」
「う、うるさいっ!!だまれっ!」
「ユリアナは何でもできて、みんなが褒める。本当はそれが羨ましくて仕方ないのに、自分は全然できない。その努力もしなかったくせに。
それを私のせいにして逆恨みをして、挙げ句の果てに、冤罪まで作り上げて断罪する。お前の思考が恐ろしいわ」
「わ、悪いのはアンタよっ!アンタが嫌なヤツだからよっ!わざと私に見せつけたでしょっ!?」
「優秀な私と誕生日が同じだったというのは同情するわ、何かと私と比べられて、お可哀想にね?
でもね、私がどれだけ勉強してきたと思ってるの?私がなんの苦労もなく育ってきたとでも思っているの?
私はお前が泣いて嫌だと喚いている間に、どれだけ勉強したと思ってるの?私だって泣いて嫌だと言いたい時だってあったわ。それでも自分に与えられた役割を果たしてきた。
お前は努力したこともないくせに、自分の怠惰な生活を棚に上げて、その結果をすべて私のせいにして、私を逆恨みした愚かで自分勝手な化け物だわ」
「ば、化け物…!?」
「人としての最低限の知性も教養もマナーもない上に、こんな愚かな行いを恥じることなくやってのける。化け物以外、なんなの?」
シャルルアンは、喚くこともできず、歪んだ表情のまま、私を睨みつけ固まっている。ようやく人間らしい反応を見せたわね。
うるさいのを黙らせたから、今度は馬鹿王子だわ。
「殿下、王命による殿下の今現在の婚約者は誰ですか?」
私は久しぶりに、貴族令嬢の作られた表情では無い、穏やかな淡い愛情を抱いていたあの頃の表情でリチャードに聞いた。
「……ユリアナ 今は、確かに、ユリアナ、お前だ」
驚いた顔のあと、少し表情を和らげ私を見つめている。
「殿下は今現在の婚約者は私だと、このユリアナだと仰いました。それでは、私からは冤罪ではなく、実際の罪になる証拠をお出しします」
私はルイ師団長が作製した、音声記録の魔道具を、私の影に持たせていた。
そして、そう、この二人の情事の音声を記録してもらっていた。
「これから流す音声は、とても不快でおぞましいものです。ご夫人、ご令嬢は耳を塞いで頂いた方がよろしいかと思います」
私はその魔道具に魔力を流した。
『シャルル、勉強とは言ってるけど、本当に勉強するのかな?
もおっ、リチャードさまったら!でもね、リチャードさまぁ、お願い……
シャルル、きみって人は、
っん、……ふっ、あっ、リチャードさまっ!あっ、んん…
あぁシャルル!素晴らしいよ、君の身体は…
あん、リチャードさまぁ、私もリチャードさまに気持ち良くなって欲しいですぅ… リチャードさまぁ、ここ気持ち良いですかぁ?
あぁぁ、シャルル!最高だよ、もっと…ああ!シャルル!……ううっ』
キャーッとご夫人たちの悲鳴が聞こえたところで魔力を流すのを止めると、そのおぞましい会話は止まった。
「ユ、ユリアナーっ!お、お前は、なんて、なんて、はしたないんだっ!この悪女が…!」
リチャードが顔を赤黒くして叫んだ。
はしたない…?誰が?私が?
本当に怖いわ。それを、学院内のあちこちでしていた人が、よく声高に言えたわね?理解不能な人が存在するという事実、まさにこの男が証明している。
「これは私の侯爵家の影が記録したものです。なぜか私が学院中のどこにいても、この二人が現れて、毎度この音声のような行為をなさるので、その都度記録しておりました。
高等部図書館で17回、医療室で5回、ガゼボで3回、同様の記録をしております。
ただ、王族専用の部屋は、さすがに我が侯爵家の影も入れませんので、それは数えておりませんが」
周りの貴族たちが、
「完全な不貞行為の証拠だ!」
「気持ち悪いわ…やっぱり噂は本当だったのね!」
「こんな人が第三王子だなんて…なんて不潔なの!?」
と、怒りや失望、失笑まで聞こえる。
「第三王子リチャード·カイザル殿下、私との婚約式の際、様々な約束事を確認し、誓約書にサイン致しましたね?不貞行為に関しては、それを行った者の有責で慰謝料を支払う、となっております。その額50億リリンです」
またもや貴族たちから悲鳴が上がる。
50億リリンは、この国の最高位である役職、宰相が生涯働いて得る報酬が1億リリンなので、この額の慰謝料に悲鳴が上がるのは当然だろう。
払えるわけがないのだ。
それは、王命による婚約で不貞行為はあり得ないし、する訳がないと、誰もが理解しているからこその金額なのだ。
「…っ!なっ!そんな、50億リリンなんて…払える訳ないだろ!?ふざけるな、そんな魔道具を使って、そんなもの、お前が俺に嫉妬して、作り上げた嘘だ!」
自分の欲を満たすことに、立場も忘れのめり込み、婚約式での誓約内容にあった、不貞行為による慰謝料のことを覚えてもいなければ、サインしたことの意味すら理解していない。
「殿下、婚約式で正式に取り交わした誓約です。サインしたこともお忘れなんですね?
この音声がなくても、あなたが不貞行為をしていたのは明らかです。そこの無礼な女が、リチャード様と恋人同士だと公言しましたし、この学院の生徒が証言してくれるでしょう。
そして、この魔道具を否定なさるとは、魔法省のルイ·エンバリー師団長の魔法を侮辱されるということでよろしいですね?」
「…なっ、なんだと!?ちっ、違う…それは!でも、それは俺じゃない!」
今度は顔を青くさせながら否定するが、
「ルイ師団長の魔道具をお認めになるなら、この情事の中で出てきたシャルルという名前、及びそれを呼ぶ声、リチャード様という名前、及びそれを呼ぶ声は、あなた方しかいません。リチャード殿下、あなたの有責で慰謝料を請求致します」
リチャードが表情を無くし、真っ青な顔で反論できずにいると、さすがシャルルアンである。
このような自身のはしたない声を公開されても、普通ならそれはこの上ない恥辱であるが、それを理解できないし、そういった感覚もない。
本人は小声のつもりなのだろうが、この会場にいるすべての者が聞いていた。
「リチャードさま?よくわかりませんけど、私たちの愛がユ、あの人もわかったのでしょ?それなら50億リリン?でしたっけ?それくらいリチャード様なら出せますよねぇ?」
王族が、国民からの税金である国費によって、生活を賄っていることすらも理解できていないシャルルアンは、頭の悪い、下品な悪女として、さらに貴族たちの侮蔑と嫌悪の対象となった。
「シャルル、やめるんだ…」
リチャードは、身体の震えまでわかるほどに動揺しているが、シャルルアンは続ける。
「リチャードさまぁ、ユリ、…あの人は私の物を全部奪ったけど、それは返してもらったし、可哀想だから多少のお金を恵んで差し上げても良いと思います!」
そう言うと、リチャードに縋り付きながら、私の方を見てニヤッと笑った。
ここまで世の中の道理を理解できないとは、恐怖しかないわ。
「シャルルアン、お前は頭が悪いから何もわからないけど、ここにいる貴族の皆様も、お前の隣にいる第三王子も、皆わかっているの。
お前は、上位貴族である私に、許されることのない無礼な態度をとり、私の聖人という爵位を自分のものだと語り、私の婚約者とおぞましい行為をしていた。
私のものを奪い、酷いことをしたのはお前よ?シャルルアン」
たった今、私に向けた優越感で満たされた表情が、また醜く歪んでいく。
「ふざけないでっ!ズルくて酷いのはアンタよっ!!」
言葉が通じない者にかける時間は、何より無駄だわ。
私は、控えていたキイラに目配せした。
444
あなたにおすすめの小説
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる