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83.カイザル国のその後
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西の巨木を解術してから1週間が経ち、南の巨木の解術に行く日となった。
前回同様、ナナカとルイ師団長、ラン先生、私とジュリと第三騎士団が行くことになった。
今回はライナルト殿下も同行することになった。
もしかしたら、我が国に出没する、魔物の終わりを見られるかもしれないという思いのほかに、
レオンハルト殿下に、皆の安全を優先し、必要であればすぐに撤退命令を出せと言われていた。
西の森を管理していたキャリック子爵家は、家族全員が処刑となった。
それを知っているのは、この場ではルイ師団長と私だけだ。
お腹に子のいるナナカに、不要な情報は聞かせたくないと言うルイ師団長の思いを優先し、秘密裏に処分し、それを公にはしなかった。
いつかわかることではあるが、ルイ師団長が、ナナカを大切に思っていることがよくわかった。
西の巨木と同じように、第三騎士団の先鋒隊とジュリを先頭に進んで行った。
同じような魔物が次から次へと現れたが、西の巨木の魔物とは、出没の速さも量も違った。浄化しても一瞬で現れる速さと、種類も多く苦戦した。
しかし、ジュリと第三騎士団が、それを薙ぎ払いながら巨木に向かった。
「俺が魔物を引きつけます。その間にお願いします」
ジュリがスキルを使いながら、先鋒隊の騎士に指示を出し、良いタイミングを報せてくれた。
それは誰も対応出来ない状況だった。
解術のために、ナナカがその巨木に左手をあてた瞬間、そのあてた手を待ち構えていたかのように、その巨木から魔物の顔が、大きな口を開けてナナカの左手を食い千切った。
「ナナカ!!」
私はすぐその巨木に結界を張った。ルイ師団長が、ナナカの食い千切られた手首を強く握り、止血している。
「ナナカ!早く手を!治癒魔法を掛けるからっ…!!」
「お待ちくださいっ!ユリアナ様、解術が先ですっ!!そのために私は来たのです!」
ナナカは、左手首から滴り落ちる血をものともせず、ルイ師団長の手を振りほどき、素早く右手を巨木にあて、解術の呪文を唱えた。
しかし、その呪文が言い終わるかどうかの時、さらに巨大な魔物が、巨木の根本から出没した。
「ルイ!これ以上はダメだっ!ナナカを巨木から引き離せっ!これは私の命令だ!」
ルイ師団長に身体を抱えられ、その巨木から引き離されたナナカかは、叫び声を上げた。
「いやぁーっ!!まだですっ!まだ終わっていないっ!私を離して!離してっ!!」
「ナナカ!もうダメだ、これ以上は危険過ぎる!撤退しないとならないんだっ!」
「いやー!離して、解術させて、お願いっ!お願いします!!」
私はナナカのそばに駆け寄り、まずは手首から先が欠損した左手を、再生しようとした。
すると、ナナカは激しく抵抗した。
「いけませんっ!ユリアナ様っ!私は解術していないっ!解術が終わっていないのに、私を治してはいけません!!」
目を真っ赤に充血させ、お腹に子がいるにもかかわらず、物凄い力でナナカを抱えるルイ師団長を振りほどこうとしている。
「ナナカ!ダメよっ!お願い暴れないで、出血が増えるから…!おなかの子に障るわ!」
「お願いです!離してっ!私に解術をさせてーっ!!」
そこにジュリが凄い速さで現れた。そしてナナカを抱えると、巨木の前にいた巨大な魔物をスキルで抑え込み、巨木にナナカを近付けた。
ナナカが巨木にあてた手のすぐ横に自分の手もあて、また同じようにナナカの手を食い千切られないように、巨木に威嚇の魔力を流した。
魔物はそのジュリが手をあてた木の部分からは出没できず、根本の方から湧いて出てきた。
第三騎士団が連携してその魔物を斬ると、ナナカの解術が終わったが、かなり少ない数ではあるが、まだ魔物はゆっくりと湧いてきた。
「なぜ…!?なぜなのっ!?どうして…?解術の呪文を掛けたのに…!」
「ナナカ、私に手を治させて」
「ナナカ、ユリアナ様に手を、早くしなければ、毒があるかもしれない」
ルイ師団長が、ナナカに縋るように言った。
ナナカは放心したように私を見たが、
「ユリアナ様、申し訳ありません… ユリアナ様のお力を、貴重なお力を授けていただけるのに…私はそれを受けることはできません。…解術が、上手くいかなかった…」
解術の途中で呪文が途切れたり、最後までその言葉を繋げることができなければ、完全な解術はできないらしい。
最初に行った解術は、ナナカの手が食い千切られたために中止せざるを得なかった。その後、ジュリと共に行った解術は効果をなさなかった。
一度失敗した場合、新たな解術の呪文を、その闇魔術を掛けた術者が作り直さなければならないのだ。
そのことが、あの魔術の本に書かれていたため、一度のチャンスに神経を尖らせていたナナカは絶望した。
そして、どんなにルイ師団長が説得しても、頑としてわたしの治療を拒み、ラン先生が持っていた、怪我用の薬をなんとか受け入れた。
その薬を使ってしまうと、傷口が綺麗に皮膚で覆われしまうため、傷口がむき出しの状態でしか、失った部分を再生できない私の治癒魔法は使えないのだ。
ナナカは、西の巨木を解術し、人々を苦しめていた魔物の出没を、その闇魔術を解術して抑え込んだ。
歴史上誰も為し得ないことをしたのだ。
それなのに…
「南の巨木の解術は、中途半端に終わってしまいました。
私は、この解術をしようと決めた時、魔物に襲われるかもしれない、そのことで命を落とすかもしれない、もしかしたら、見るに耐えない姿になるかもしれない。それでも、そのことを受け入れようと思っていました」
ルイ師団長が悲しい顔を隠さず、
「どうして!?どうしてなんだい… ナナカ、私を一人にするつもりだったのか?」
「ルイ様、申し訳ありません。でも、ルイ様もユリアナ様もいる、それにこの度はジュリアン様が協力してくださった。さすがに命を落とすことはあり得ませんが、もしかして、このように手を…足を… どこかを失った場合は、それを受け入れようと決めておりました」
ナナカは、まだ自分で自分を許せないでいた。
ナナカには、この解術の旅に出る前に、本当のことを話していた。
私は知っていてあなたの魔術を受けた、それとレオンハルト様ではなく、あれはレオンハルト様の影だったのだと。
それでもナナカは、術を、誤解ではあったが己の怒りを乗せて、闇魔術を使ったことを、その自分を許せないでいた。
「伯爵の奸計に嵌められたから、という言い訳を、自分にはできませんでした。これで良いのです。私はこの左手を失い、これでやっと、自分を許せる気がします。
お腹のこの子にも、やっと、生まれてくれてありがとうと、心から言える気がします。これで良いのです」
ナナカの功績により、このカイザル国の魔物の数は激減した。
南の巨木からは、魔物が未だ湧き出るが、第三騎士団、私とジュリがその都度討伐し、国民に被害が出ることは無くなった。
魔物に怯える時代は終わったのだ。
ナナカはあの後、ルイ師団長にそっくりな元気な女の子を出産した。
ルイ師団長は、いつまでもその子を見つめ泣き続けた。
失った左手が誇らしいんです、と言い、器用に赤ちゃんのお世話をし、愛情をかけて育てた。
自分が大好きだったお母さんにされたように。
前回私は絶望の中、処刑された。
その時は、まさかまた同じ瞬間をやり直すとは思いもしなかった。
魔物たちは殲滅し駆逐し、まだ人を襲い傷付けようとするなら、二度とその感情を抱くことができないほど、じっくりと思い知らせてやった。
あの魔物たちが二度と湧いて出てこないよう、私は目を光らせ、早い段階で浄化し、浄化できなければ殲滅する。二度と魔物として、生きていられないように。
無実の人間に向ける悪意には、徹底して躾をし、それでもまだ歯向かう魔物は、容赦なく地獄を見せる。
人間に戻ろうとしている者には、手を差し出す。
死に戻り、私は前回の時のユリアナとは違い、強くなった。
このまま、ローズマリア様が目指した世界を私が維持して行くのだ。
それが、私が聖人として選ばれた理由だと思っている。
家族を、大切な人たちを、自分を守っていくことが、この日々の平和を作っていくことになるのだろう。
「そろそろナイジェルの婚約者も決めないとならないな?そうしないと、いつまでもユリアナを嫁がせられない。毎日毎日、山のような釣書を燃やすのも飽きた」
「そうですわね、あなた。でもねぇ、ナイジェルはあの初恋の子を今でも思っているのよねぇ」
お兄様は、幼い頃に、レオンハルト様のお母様、正妃様がご実家に帰国する際に一緒に同行し、その時、正妃様の姪っ子にあたる、王女シャルロッテ様に一目惚れしたそうだ。
天真爛漫で、人懐っこい王女様は、レオンハルト様の側近として同行したお兄様にも、分け隔てなく接してくれて、お兄様はその王女様に心を撃ち抜かれた。
しかし、お兄様のその恋は叶うことなく、最近になってシャルロッテ様が他国の王子に嫁いだ話を聞いたお兄様は、それはそれは落ち込んでいたそうだ。
「だからね、しばらくあの子には婚約だとかの話は無理だと思いますよ?あなた、ナイジェルに嫁いでくれる奇特な方を待つのは長期戦ですわ。先にユリアナの婚約を進めてはいかがかしら?」
「そうか、そうするか… ユリアナを… 嫁がせるか、くそっ、アイツに嫁がせるのか…」
「あら、あなた、まだ言ってるの?ユリアナを守れるのは、世界中探してもあの子しかいないでしょ?最強の強さを持つ者にしか、私たちの天使を任せられないじゃない。
ただねぇ…あの子たち、自分たちの気持ちは本当に疎いから…。でも、私も早く孫の顔が見たいし!あなた、早く進めてくださいね!」
「ま、孫ぉ!?…くっ、くそぉ、ジュリアンめぇ…私のユリアナを…ユリアナを… グスッ、グスッ……」
「あなた、これ以上グズるなら、私が明日にでも二人を婚約させますわよ?」
私たちの知らないところで、色々と決まっていたようだ。
その話はまたいつかできたら。
前回同様、ナナカとルイ師団長、ラン先生、私とジュリと第三騎士団が行くことになった。
今回はライナルト殿下も同行することになった。
もしかしたら、我が国に出没する、魔物の終わりを見られるかもしれないという思いのほかに、
レオンハルト殿下に、皆の安全を優先し、必要であればすぐに撤退命令を出せと言われていた。
西の森を管理していたキャリック子爵家は、家族全員が処刑となった。
それを知っているのは、この場ではルイ師団長と私だけだ。
お腹に子のいるナナカに、不要な情報は聞かせたくないと言うルイ師団長の思いを優先し、秘密裏に処分し、それを公にはしなかった。
いつかわかることではあるが、ルイ師団長が、ナナカを大切に思っていることがよくわかった。
西の巨木と同じように、第三騎士団の先鋒隊とジュリを先頭に進んで行った。
同じような魔物が次から次へと現れたが、西の巨木の魔物とは、出没の速さも量も違った。浄化しても一瞬で現れる速さと、種類も多く苦戦した。
しかし、ジュリと第三騎士団が、それを薙ぎ払いながら巨木に向かった。
「俺が魔物を引きつけます。その間にお願いします」
ジュリがスキルを使いながら、先鋒隊の騎士に指示を出し、良いタイミングを報せてくれた。
それは誰も対応出来ない状況だった。
解術のために、ナナカがその巨木に左手をあてた瞬間、そのあてた手を待ち構えていたかのように、その巨木から魔物の顔が、大きな口を開けてナナカの左手を食い千切った。
「ナナカ!!」
私はすぐその巨木に結界を張った。ルイ師団長が、ナナカの食い千切られた手首を強く握り、止血している。
「ナナカ!早く手を!治癒魔法を掛けるからっ…!!」
「お待ちくださいっ!ユリアナ様、解術が先ですっ!!そのために私は来たのです!」
ナナカは、左手首から滴り落ちる血をものともせず、ルイ師団長の手を振りほどき、素早く右手を巨木にあて、解術の呪文を唱えた。
しかし、その呪文が言い終わるかどうかの時、さらに巨大な魔物が、巨木の根本から出没した。
「ルイ!これ以上はダメだっ!ナナカを巨木から引き離せっ!これは私の命令だ!」
ルイ師団長に身体を抱えられ、その巨木から引き離されたナナカかは、叫び声を上げた。
「いやぁーっ!!まだですっ!まだ終わっていないっ!私を離して!離してっ!!」
「ナナカ!もうダメだ、これ以上は危険過ぎる!撤退しないとならないんだっ!」
「いやー!離して、解術させて、お願いっ!お願いします!!」
私はナナカのそばに駆け寄り、まずは手首から先が欠損した左手を、再生しようとした。
すると、ナナカは激しく抵抗した。
「いけませんっ!ユリアナ様っ!私は解術していないっ!解術が終わっていないのに、私を治してはいけません!!」
目を真っ赤に充血させ、お腹に子がいるにもかかわらず、物凄い力でナナカを抱えるルイ師団長を振りほどこうとしている。
「ナナカ!ダメよっ!お願い暴れないで、出血が増えるから…!おなかの子に障るわ!」
「お願いです!離してっ!私に解術をさせてーっ!!」
そこにジュリが凄い速さで現れた。そしてナナカを抱えると、巨木の前にいた巨大な魔物をスキルで抑え込み、巨木にナナカを近付けた。
ナナカが巨木にあてた手のすぐ横に自分の手もあて、また同じようにナナカの手を食い千切られないように、巨木に威嚇の魔力を流した。
魔物はそのジュリが手をあてた木の部分からは出没できず、根本の方から湧いて出てきた。
第三騎士団が連携してその魔物を斬ると、ナナカの解術が終わったが、かなり少ない数ではあるが、まだ魔物はゆっくりと湧いてきた。
「なぜ…!?なぜなのっ!?どうして…?解術の呪文を掛けたのに…!」
「ナナカ、私に手を治させて」
「ナナカ、ユリアナ様に手を、早くしなければ、毒があるかもしれない」
ルイ師団長が、ナナカに縋るように言った。
ナナカは放心したように私を見たが、
「ユリアナ様、申し訳ありません… ユリアナ様のお力を、貴重なお力を授けていただけるのに…私はそれを受けることはできません。…解術が、上手くいかなかった…」
解術の途中で呪文が途切れたり、最後までその言葉を繋げることができなければ、完全な解術はできないらしい。
最初に行った解術は、ナナカの手が食い千切られたために中止せざるを得なかった。その後、ジュリと共に行った解術は効果をなさなかった。
一度失敗した場合、新たな解術の呪文を、その闇魔術を掛けた術者が作り直さなければならないのだ。
そのことが、あの魔術の本に書かれていたため、一度のチャンスに神経を尖らせていたナナカは絶望した。
そして、どんなにルイ師団長が説得しても、頑としてわたしの治療を拒み、ラン先生が持っていた、怪我用の薬をなんとか受け入れた。
その薬を使ってしまうと、傷口が綺麗に皮膚で覆われしまうため、傷口がむき出しの状態でしか、失った部分を再生できない私の治癒魔法は使えないのだ。
ナナカは、西の巨木を解術し、人々を苦しめていた魔物の出没を、その闇魔術を解術して抑え込んだ。
歴史上誰も為し得ないことをしたのだ。
それなのに…
「南の巨木の解術は、中途半端に終わってしまいました。
私は、この解術をしようと決めた時、魔物に襲われるかもしれない、そのことで命を落とすかもしれない、もしかしたら、見るに耐えない姿になるかもしれない。それでも、そのことを受け入れようと思っていました」
ルイ師団長が悲しい顔を隠さず、
「どうして!?どうしてなんだい… ナナカ、私を一人にするつもりだったのか?」
「ルイ様、申し訳ありません。でも、ルイ様もユリアナ様もいる、それにこの度はジュリアン様が協力してくださった。さすがに命を落とすことはあり得ませんが、もしかして、このように手を…足を… どこかを失った場合は、それを受け入れようと決めておりました」
ナナカは、まだ自分で自分を許せないでいた。
ナナカには、この解術の旅に出る前に、本当のことを話していた。
私は知っていてあなたの魔術を受けた、それとレオンハルト様ではなく、あれはレオンハルト様の影だったのだと。
それでもナナカは、術を、誤解ではあったが己の怒りを乗せて、闇魔術を使ったことを、その自分を許せないでいた。
「伯爵の奸計に嵌められたから、という言い訳を、自分にはできませんでした。これで良いのです。私はこの左手を失い、これでやっと、自分を許せる気がします。
お腹のこの子にも、やっと、生まれてくれてありがとうと、心から言える気がします。これで良いのです」
ナナカの功績により、このカイザル国の魔物の数は激減した。
南の巨木からは、魔物が未だ湧き出るが、第三騎士団、私とジュリがその都度討伐し、国民に被害が出ることは無くなった。
魔物に怯える時代は終わったのだ。
ナナカはあの後、ルイ師団長にそっくりな元気な女の子を出産した。
ルイ師団長は、いつまでもその子を見つめ泣き続けた。
失った左手が誇らしいんです、と言い、器用に赤ちゃんのお世話をし、愛情をかけて育てた。
自分が大好きだったお母さんにされたように。
前回私は絶望の中、処刑された。
その時は、まさかまた同じ瞬間をやり直すとは思いもしなかった。
魔物たちは殲滅し駆逐し、まだ人を襲い傷付けようとするなら、二度とその感情を抱くことができないほど、じっくりと思い知らせてやった。
あの魔物たちが二度と湧いて出てこないよう、私は目を光らせ、早い段階で浄化し、浄化できなければ殲滅する。二度と魔物として、生きていられないように。
無実の人間に向ける悪意には、徹底して躾をし、それでもまだ歯向かう魔物は、容赦なく地獄を見せる。
人間に戻ろうとしている者には、手を差し出す。
死に戻り、私は前回の時のユリアナとは違い、強くなった。
このまま、ローズマリア様が目指した世界を私が維持して行くのだ。
それが、私が聖人として選ばれた理由だと思っている。
家族を、大切な人たちを、自分を守っていくことが、この日々の平和を作っていくことになるのだろう。
「そろそろナイジェルの婚約者も決めないとならないな?そうしないと、いつまでもユリアナを嫁がせられない。毎日毎日、山のような釣書を燃やすのも飽きた」
「そうですわね、あなた。でもねぇ、ナイジェルはあの初恋の子を今でも思っているのよねぇ」
お兄様は、幼い頃に、レオンハルト様のお母様、正妃様がご実家に帰国する際に一緒に同行し、その時、正妃様の姪っ子にあたる、王女シャルロッテ様に一目惚れしたそうだ。
天真爛漫で、人懐っこい王女様は、レオンハルト様の側近として同行したお兄様にも、分け隔てなく接してくれて、お兄様はその王女様に心を撃ち抜かれた。
しかし、お兄様のその恋は叶うことなく、最近になってシャルロッテ様が他国の王子に嫁いだ話を聞いたお兄様は、それはそれは落ち込んでいたそうだ。
「だからね、しばらくあの子には婚約だとかの話は無理だと思いますよ?あなた、ナイジェルに嫁いでくれる奇特な方を待つのは長期戦ですわ。先にユリアナの婚約を進めてはいかがかしら?」
「そうか、そうするか… ユリアナを… 嫁がせるか、くそっ、アイツに嫁がせるのか…」
「あら、あなた、まだ言ってるの?ユリアナを守れるのは、世界中探してもあの子しかいないでしょ?最強の強さを持つ者にしか、私たちの天使を任せられないじゃない。
ただねぇ…あの子たち、自分たちの気持ちは本当に疎いから…。でも、私も早く孫の顔が見たいし!あなた、早く進めてくださいね!」
「ま、孫ぉ!?…くっ、くそぉ、ジュリアンめぇ…私のユリアナを…ユリアナを… グスッ、グスッ……」
「あなた、これ以上グズるなら、私が明日にでも二人を婚約させますわよ?」
私たちの知らないところで、色々と決まっていたようだ。
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