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第1章 私はただの掃除婦です

第1話

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 ここは、シュバルツ国。わたしの生まれた国。
でも、生まれたところは、端っこにある田舎町。
だから、都会に憧れる少女のように少しは興味はあった。少しはね。

そんなところから、なんで王城にいるかというと、貴族の令嬢は15歳になると行儀見習いとして一年間学ばなければいけないという国の決まりでいるわけだ。今年15歳になった私も、4月からお城に上がった子爵令嬢だったりする。

 このシュバルツ国は、昔から少年少女の育成に力を入れてきた。
この行儀見習い制度もその一つ。この国の成人は16歳だが、たった1年間で” 淑女 “になれるかということではない。

 大半の貴族の子は幼少の時から学びを始める。子息は12歳の年に国立学園の入学を義務としていた。学園の入学は子息だけの特権なため、その代わりに子女には1年間の行儀見習い制度が適用されていた。

 言葉のとおり王侯マナーを学ぶだけがこの制度の目的ではない。実はもっと奥が深かった。
未来を担う子供たちのために、人脈作りの場を設けるだけではなく、貴族としての結束力を高めるといった推敲な目標もあるらしい。みんなが国の狙いを理解しているのかは微妙なところだけど、それでも国の政策としては良策なのではないかとつくづく思う。

だって、わたしのような田舎貴族には、出会いは少ないから。 
それに、結婚はまだでも、王城の女官や侍女としての道が開ける可能性も高いのだ。

それでも、大多数の令嬢の目的は『将来のお婿さん』探しなのではないかと私は思っていたりする。
地方貴族の婚約者のいない子女たちにとって、有力子息を捕まえる絶好の機会だから。




※※※




わたしの名はジュリア・ランドール。

一応子爵令嬢の私だが、正直いうと貴族らしい生活ってよくわからない。
田舎で育ったし、貴族らしい生活ってあまりしてこなかったから。

だから、王城の行儀見習いにきて、あの令嬢集団の中に本当はいなくちゃならなかったと思うと憂鬱しかないけど、なぜか登城した初日に” 下働き ”と勘違いされて掃除婦をしている。
一応、侍女長に訴えてみたけど、なぜか取り合ってくれなかった。

「兄さんには心配されたけど・・・」

でもそれでいい。
地味にこの一年を過ごして、そして何事もなく田舎に帰る。
これが一番と思っている。







業務終了の挨拶を終え、目指す先は女子用宿舎。
ナイリーンの姿はなかったから、きっともう宿舎に戻っているだろう。

「た、ただいまーー。」
「お疲れ~。もぐ・・・ご飯いこ」

ぷっ、なにこの短い会話。夕食前の会話はいつもこんな感じ。

同室のナイリーンとは、ここにきて・・・というか初めての友人。
ナイリーンじゃなかったら、わたしに友人なんてできなかったと思う。
わたしには、兄しかいなかったから・・・。


ナイリーンは、食いしん坊でいつも何かを食べている。ぽっちゃりしているのはこれが原因かな。
口数が少ない人なのか、というとそうではない。いつもをもっとしゃべる楽しい人なのだ。
お菓子ばかり食べて夕飯は入るのだろうか?

「うん!わたしもお腹空いたよ。」
「もぐ・・」
 
これは『うん、わたしも』とういう返事だと思う。



実はナイリーンもわたしと同じ掃除婦だったりする。
彼女は準男爵の令嬢で、本当は行儀見習いできたはず。でもなぜかわたしと同じ掃除婦。
理由は、聞いてたけどごまかされたような?・・・なのではっきりわからない。

クリンとした丸い目が可愛くて、性格も明るくてなんでも知っていて、お城での情報はナイリーンから聞くのがほとんどだ。そんな彼女の実家がすごいのだ。
実家は商売していているらしく、かなり繁盛しているみたいでとても裕福。
月2回、実家から送られてくるお菓子の数々に、わたしもお世話になってたりする。


あ、そういえばここに来る少し前に、トラブルがあった話を教えてくれた。なんでもある上位貴族から縁談を申し込まれた相手がかなりの年上で、ナイリーンの父と差ほど変わりなかったらしい。さすがに、どう断ろうかと悩んでいたところにこの行儀見習い。本当は参加しないつもりそうだけど、これ幸いと逃げ込んだそうだ。
それでも一年しか猶予がないのに、本人曰くいわ「一年あれば、きっといい案が浮かぶ」と楽観的だ。ほんわかしている外見とは違ってなんとも逞しい。
着替えを終わらせて、待っていた友人に声をかける。

「はい、お待たせー」
「もぐ・・・」

ホント、夕食前はこんな感じ。いつも通りのナイリーンにクスっと笑う。
そんな友人と連れ立って食堂へ向かうのだった。
















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