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しおりを挟むごしごし、と目をこすってみても、ぱちぱちと瞬きをしてまた目をこすってみても、そのモヤは確かにそこにある。その上、そのモヤの中では……。
『うっ、ぁ……ん、ばか、やめろ……だれかきたら……ンっ』
『どうせ誰も来ないよ。知ってて僕に会いにきたくせに』
『ちがっ……はなせよばかっ! おれはただ……ンっ、おすそわけを……ぁんっ』
『本気? 千夏くんのカラダは、全然離して欲しそうじゃないけど……?』
『ぁ、あん、んっ……!』
玄関ドアに手をついて、着衣のまま尻だけを突き出している俺。
そしてその俺を玄関ドアに押し付け、余裕の笑みを浮かべつつ立ちバックで攻めまくっている諒太郎。
……というAVでよく見る感じの映像が、はにかんだ表情を浮かべるリアル諒太郎の頭上に、見える。
『ぁ、や……っ! ちんぽさわんなっ……っ、ぁん、ん……ッ!』
『へぇ、前と後ろ、一緒にされるのが好きなんだ? ああ……気持ちいい、絞り取られそう』
『ん、んんっ、ちが……! や、やめろってばぁ……っ』
『ああ、イキそ……出すよ……!』
『このばか……っ、なかだしするなんて……んんっ』
——おいおいうそだろ……ピュアそうな諒太郎が、無許可で中出し……っていうか、相手、俺!?
諒太郎が、妄想の中で俺を抱いてくれている!!
喜びのあまり全身が粟立ち、俺はあんぐり開いた口を片手で押さえた。
なんということだ。つまり諒太郎は、男の俺を、そういう目で見ているってことだ。
ただ親愛なる兄気分として懐いてくれているだけではない。シチュエーションなどについては一旦置いておくとして、諒太郎は俺を、性愛の対象と捉えているに違いないということだ。
『ああ……可愛い、可愛いよ千夏くん。上の口では僕を責めるのに、下の口では全然僕を離さないんだから』
『うるさいっ……ばかやろう、こんなことして……んっ、ただじゃおかないんだからな……っ、あん、あっ』
『ほら、またそういうこと言うだろ? もっと僕を責めてもいいんだよ? やめてあげないけどね』
言葉責めのチョイスがちょいちょい気にはなるけれど、こんなものを見せられても、俺は全然不快じゃなかった。
むしろ、こういうことをされてみたいと身体が騒ぎ始めている。諒太郎がそういうことをしたいのなら、喜んでこの身を差し出したっていい……!
モヤの中の諒太郎は、萎えを知らないスーパー攻め様さながらの余裕の笑みと雄々しい腰つきで、あいも変わらず俺をズコバコ犯し続けている。
そして当の俺はというと、口では『ばかやめろ抜け』などと言っているけれど、表情は完全にトロトロのとろけ顔。ずんずん突き上げられるたびに口から漏れる喘ぎの語尾には、確実に『♡』がついていそうな甘え声だ……。
——いつから俺でこんな妄想をしてたんだろ。……っていうか、なんか、こんなもん見せられたら、俺のほうも……。
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