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恐怖の開幕
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真っ暗な中、1人で
恐怖だけが支配した
暗闇に呪いが蘇る
フラッシュバックする
鮮やかな色が
こっちを見るもう誰かわからない顔が
私はこんな景色は見たことなどない
それでも鮮明に記憶されていることが
このことがあった記録になっている
忘れようとしたことだと自覚させる
私は死にたかった
きっと疲れたんだろう
だから死ねる機会を探してる
だって自殺できるほど、勇気はないんだ
暗闇から意識を戻す
私は今座っている
きっと簡素な椅子だろう
座り心地はあまり良くはない
私は自分がここまで冷静なのに驚いている
だが、一つ気づいたことで事態は逆転した
動けないのだ
別に縛られてはいない
故に焦りが増す
それを消すように暗闇が光に変わる
目にパーティーのような光景が見えた
視線を動かすと座っている子と目が合う
左に2人,右に1人同い年くらいの少女が座っているのだ
左隣の子が微笑んだ
その顔は少し引き攣っている気がする
視線を真っ直ぐ向けると
階段で繋がれた舞台のような
ほぼ2階くらいの高さの場所がある
いきなり光がそこに降り注がれる
スポットライトが1人の人を照らす
執事の服を着崩したような服を着て
首元にトランプの全てのマークがついたチョーカーがある
薄い黄色の髪はベリーショートと言うべき長さではねていて
髪から黒とも紫とも言いがたい猫耳が出ている
ズボンとトップスの間には同じ色の尻尾が揺れている
そこまで観察してやっと誰かという疑問が浮かぶ
「やあ、こんにちは。僕はチャシカー
それじゃあ椅子から立ってパーティーを楽しんでね。
あの時計が12時になったら始めるから」
驚く暇すらも与えず、話が進む
チャシカーは自分の頭上を指した
そこにはなかったはずの時計が11時を指している
時計に目を向けている間にチャシカーは暗闇に消えていた
言う通り疑いつつ椅子から立とうとする
さっきまでが嘘のようにいつも通り立てた
他の子も気づいたら立っていた
誰が言ったわけでもないが私達は目の前にある屋敷特有の長いテーブルの前に集まる
1人が口を開いた
「まず、どうこうあるだろうけど自己紹介をしましょう」
自己紹介の提案が出される
みんながそれぞれ頷いた
最初に提案した本人が口を開いた
「私はランと申します。」
ランの後に続くように少しの間なく声が響く
「はーい!フジノですっ!仲良くしてね」
元気な明るい声に押されるように
私も声を上げた
「エルラです。よろしくお願いします」
少しの沈黙の後、最後の1人が呟くように言葉を溢した
「…ツユキです」
それぞれが十人十色の自己紹介を済ませる
寡黙な少女、ツユキ
紫色の髪を横の位置で高く結んでいる
いわゆるサイドテールというやつだ
髪と同じ色の目には怠さが見える
元気な少女、フジノ
茶色の髪はショートカットで黄色のピンが目立っている
黄色の目は曇りがなく明るさで満ちている
積極的な少女、ラン
胸くらいまである長い紺色の髪はハーフアップになっている
水色の目からは何の感情も見えなかった
それぞれ首にトランプのマークがついたチョーカーがついている
ツユキがスペード、フジノがクローバー、ランがダイヤ
消去法で行けば私はハートになる
「えーと、敬語じゃなくていいよね?」
ランはとりあえず確認をした
その中に圧があったような気がしたが置いておく
「もっちろん!」
「うん、いいよ」
私とフジノが肯定の意思を言った後
ツユキが半分目で頷いた
「どうする?」
ランがみんなの気持ちを代弁した
その問題は誰もが首を捻っていただけに、
この場の全員が言葉に詰まる
私達の間に沈黙が絡まりつく
少しずつ空気が重くなっていく
私がそろそろ焦りを感じ、言葉を探し始めたところで
明るい声が空気を軽くした
「せっかく、パーティーなんだし、楽しもうよ!
美味しそうなご馳走もあるし、みんなで食べよう!」
その能天気さがこの場を救った
問題ばかりな答えだったが、頷くに他なかった
これに否定したって他の道が導ける保証がない
「そうしよう、どうせだから仲良くしないとね」
私は肯定であることを言う
視線をランに向けて意見を求めた
「確かにそうだね、他にある?」
その言葉に異論は出なかった
私の隣にフジノ、向かいにツユキ、斜め向かいにラン
の位置にそれぞれ座って並べられたご馳走を口にする
毒が気になるが、鉄の食器だったためある程度は防げるという話になった
「これ、おいしー!」
静かな空間の中に元気な声が響く
「ねえ!みんな、何か好きな食べ物ある?」
続けて場を変えるような質問が漂う
質問には灯りが灯っていた
「フジノは?」
カウンターのごとく質問がランによって返された
それでも顔色一つ変えず、フジノは答えを言った
「うーん、すき焼きとか、ケーキとか、ハンバーグとか…」
「やけにお子様だな」
ツユキがもっともなことを言葉にした
「確かに」
これにはランも小さく頷いて同意の言葉を思わず溢す
顔を隣に向けるとフジノが分かりやすく頬を膨らませていて
怒っているのがわかる
それでも空気がさっきよりもずっと明るくなっていた
「ひっどーい!エルラちゃん!フジノ、お子様じゃないよね!」
「お子様じゃないかな?あれは」
私への同意を求める言葉にすぐに反対意見の同意を伝える
「えぇーみんなぁ!」
散々な言われようなため、助けを求めるが誰も反応しない
空間が笑いで埋まる
いつのまにか凍りつくような空気は温かい空気へと姿を変えていた
「ねえ、どうして私達ここにいると思う?」
ランが質問をする
それは自問してるようにも思えた
沈黙が続く
しかしさっきよりも空気は軽かった
「知らない」
ツユキがあっさりと沈黙を破る
「フジノも」
それに続くように同意の言葉が出る
「私も」
もちろん私も同意した
私だって知る訳ない
気づいたら暗闇だ
わかることがあるとしたら
私は死にたいってことだけだろう
まるで参考にならない
「でもさ!フジノたちここに来たから会えたんだよ
フジノはみんなに会えて嬉しいから悪くないと思う!」
純粋さが、素直さが溢れている
誰もが失い、誰もが欲しがるそれを彼女は持っている
私は言葉を抱きしめた
温かさが胸に滲む、広がる
しばらく温かい沈黙がこの場を抱きしめるように優しく包む
沈黙の意味など知らないフジノはたまらず口を開いた
「フジノ、悪いこと言った?」
「ううん、…確かにって思って」
私は沈黙の意味を教える気にならなかった
それでも言葉によかったということだけは伝えたかった
フジノを褒めたら調子に乗りそう
ということは他の二人もなんとなく理解していたのかもしれない
だからか、誰もこれ以上言わなかった
「みんなは趣味とかある?」
私は新たな話題を投げかけた
「フジノはどうせおままごとだろ」
「ちっがいますぅー!」
ツユキのお子様な趣味の予想に
速攻で否定が出された
「じゃあ、何だよ」
ツユキの目からは「どうせお子様だろ」という言葉が聞こえてくる
あまり興味があるとは思えない
フジノは珍しく考える間をとった後
驚きの言葉を口にした
「…読書かな?」
ツユキは呆然としている
いや、この場にいる全員が目を開いている
あまりの驚きに沈黙が訪れたが、
すぐにランが結論を出した
「まさか、漫画とかじゃないよね?」
ランは的確な指摘をした
証拠にフジノの目が泳いでいる
しばらくして空白の時間が続き
原因であるフジノは口を開いた
「フジノのことお子様って言うけど、
ツユキちゃんはどうなの!」
フジノはツユキに向かってビシッと指を指した
どうやら反撃をするようだ
「ゲームだけど」
あっさりとした答えだった
趣味自体はフジノとどんぐりの背比べのような感じではあるが、
フジノとの違いは反抗する気がないところだろうか
少しフジノの方が大人な気がするが
変わりなど誤差の範囲内だろう
「同じじゃん!!ツユキちゃんもお子様じゃん」
「大人なゲームをしてるんですが?」
ツユキは負けじと抵抗する
フジノとツユキでは言動が違うらしい
痛いところを突かれたフジノは
反論できる予知がなく黙りこむ
しかし、フジノはフジノである
黙ったのも数秒だった
「認めます!…いや、認めたくないけど!
絶対見返してやるからなっ!」
「せいぜい楽しみにしてるよ」
2人はそう言うと笑った
それにつられるように私たちも笑みが溢れる
この時間がずっと続けばいいな
永遠を願ってしまうのも必然だった
4人でずっと笑っていたい
少ない時間だったがそう願うようになった
時計を気にする間もなく楽しい時間は過ぎた
気づけば、針は12時を指している
暗い舞台にスポットライトが再び灯った
「楽しめたかな?」
声と共にチャシカーが現れる
「楽しかったです!」
フジノは素直に言うと笑みを浮かべた
「そうかい?ならよかったよ
今からゲームを始めようと思う」
チャシカーは口の端を上げた
にやりと笑っている
場は静寂の時が流れた
「デスゲームというやつだよ。」
チャシカーが表情を変えず冷淡に言い放つ
それにみんなの顔は凍りついた
「まだ、一緒にいたいのに」
その言葉に思わず想いが溢れた
だがそれは空気に溶けて誰にも届くことはなかった
チャシカーがこっちを一瞬見た気がしたが
何もなかったように話を続けた
「今から君たちにはゲームをしてもらう
それぞれ犠牲者は1人ずつ。
1ゲームごとに階層が上がっていく。
ルールはそれぞれ、その階層のロビーで説明する。
どうかな?」
チャシカーはにやり笑みのままわざとらしく首を傾げた
言葉の意味を消化できずに聞いていた
「質問いい?」
ランはこの状況を飲み込み1番冷静だった
「もちろん」
チャシカーは頷いた
「それぞれゲームは違うんだよね?」
ランは淡々とスラスラ質問を言う
「ああ」
それにチャシカーが答えた
「もう前の階層には戻れない?」
続いてランは別の質問をした
「戻れるよ。ただ、戻れないと思う」
チャシカーは何かを企む子どものように笑う
「理由は?」
ランは素早く理由を聞いた
「記憶がなくなるから」
それに笑顔はそのままあっさりと答えた
「どういうこと?」
チャシカーは私たちを見回した後、一つ間を置いて答えた
「後々わかるさ。もう質問はいいかい?」
しばらく沈黙が続くが手を挙げる者はいなかった
「この下にエレベーターがあるから乗って。
ボタンは押さなくても2階に行くから、待ってるよ」
舞台の下を見るとエレベーターがあった
きっとさっきまではなかったはずである
エレベーターに目を向けている隙に
チャシカーはもういなくなっていた
「みんな、行こう」
私が口にする
それはまるで決意をするようだった
みんなは頷いて椅子から一斉に立つ
「怖いのはみんな一緒でしょ!」
フジノがそう言って私の手を握る
どちらかわからない手汗が手に伝わる
「お子様は怖いのかもな、一緒にするな」
ツユキが私の肩を叩いて隣にくる
強がっているが言葉が震えている
「ツユキも、怖そうに見えるけど?」
ランが正しい指摘をしてツユキの隣に並んだ
ランは冷静で1番怖さがなさそうに見えるが
笑顔が引き攣っている
「みんな、同じなんだよ。だから、みんなでがんばろ」
私が言うとみんなが頷いて明るい空気が戻る
私たちは怖さを分け合い進んでいく
死にたい気持ちはいつのまにか消え、
それに変わる大きな気持ちが芽生えた
「みんなで生きよう。私はずっとみんなで一緒にいたい」
笑顔がぱあっと広がった
「もっちろん!フジノも」
フジノが繋いでない方の手を上げ元気に答えた
「それは私も」
ツユキは普段は見せない優しい笑みを浮かべる
「そうだね、がんばろう」
ランが微笑んだ。そこに引き攣った感じはもうなかった
みんなで生きる、みんなで進んでいく
それは私の、いや、みんなの決意であった
恐怖だけが支配した
暗闇に呪いが蘇る
フラッシュバックする
鮮やかな色が
こっちを見るもう誰かわからない顔が
私はこんな景色は見たことなどない
それでも鮮明に記憶されていることが
このことがあった記録になっている
忘れようとしたことだと自覚させる
私は死にたかった
きっと疲れたんだろう
だから死ねる機会を探してる
だって自殺できるほど、勇気はないんだ
暗闇から意識を戻す
私は今座っている
きっと簡素な椅子だろう
座り心地はあまり良くはない
私は自分がここまで冷静なのに驚いている
だが、一つ気づいたことで事態は逆転した
動けないのだ
別に縛られてはいない
故に焦りが増す
それを消すように暗闇が光に変わる
目にパーティーのような光景が見えた
視線を動かすと座っている子と目が合う
左に2人,右に1人同い年くらいの少女が座っているのだ
左隣の子が微笑んだ
その顔は少し引き攣っている気がする
視線を真っ直ぐ向けると
階段で繋がれた舞台のような
ほぼ2階くらいの高さの場所がある
いきなり光がそこに降り注がれる
スポットライトが1人の人を照らす
執事の服を着崩したような服を着て
首元にトランプの全てのマークがついたチョーカーがある
薄い黄色の髪はベリーショートと言うべき長さではねていて
髪から黒とも紫とも言いがたい猫耳が出ている
ズボンとトップスの間には同じ色の尻尾が揺れている
そこまで観察してやっと誰かという疑問が浮かぶ
「やあ、こんにちは。僕はチャシカー
それじゃあ椅子から立ってパーティーを楽しんでね。
あの時計が12時になったら始めるから」
驚く暇すらも与えず、話が進む
チャシカーは自分の頭上を指した
そこにはなかったはずの時計が11時を指している
時計に目を向けている間にチャシカーは暗闇に消えていた
言う通り疑いつつ椅子から立とうとする
さっきまでが嘘のようにいつも通り立てた
他の子も気づいたら立っていた
誰が言ったわけでもないが私達は目の前にある屋敷特有の長いテーブルの前に集まる
1人が口を開いた
「まず、どうこうあるだろうけど自己紹介をしましょう」
自己紹介の提案が出される
みんながそれぞれ頷いた
最初に提案した本人が口を開いた
「私はランと申します。」
ランの後に続くように少しの間なく声が響く
「はーい!フジノですっ!仲良くしてね」
元気な明るい声に押されるように
私も声を上げた
「エルラです。よろしくお願いします」
少しの沈黙の後、最後の1人が呟くように言葉を溢した
「…ツユキです」
それぞれが十人十色の自己紹介を済ませる
寡黙な少女、ツユキ
紫色の髪を横の位置で高く結んでいる
いわゆるサイドテールというやつだ
髪と同じ色の目には怠さが見える
元気な少女、フジノ
茶色の髪はショートカットで黄色のピンが目立っている
黄色の目は曇りがなく明るさで満ちている
積極的な少女、ラン
胸くらいまである長い紺色の髪はハーフアップになっている
水色の目からは何の感情も見えなかった
それぞれ首にトランプのマークがついたチョーカーがついている
ツユキがスペード、フジノがクローバー、ランがダイヤ
消去法で行けば私はハートになる
「えーと、敬語じゃなくていいよね?」
ランはとりあえず確認をした
その中に圧があったような気がしたが置いておく
「もっちろん!」
「うん、いいよ」
私とフジノが肯定の意思を言った後
ツユキが半分目で頷いた
「どうする?」
ランがみんなの気持ちを代弁した
その問題は誰もが首を捻っていただけに、
この場の全員が言葉に詰まる
私達の間に沈黙が絡まりつく
少しずつ空気が重くなっていく
私がそろそろ焦りを感じ、言葉を探し始めたところで
明るい声が空気を軽くした
「せっかく、パーティーなんだし、楽しもうよ!
美味しそうなご馳走もあるし、みんなで食べよう!」
その能天気さがこの場を救った
問題ばかりな答えだったが、頷くに他なかった
これに否定したって他の道が導ける保証がない
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私は肯定であることを言う
視線をランに向けて意見を求めた
「確かにそうだね、他にある?」
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の位置にそれぞれ座って並べられたご馳走を口にする
毒が気になるが、鉄の食器だったためある程度は防げるという話になった
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「ねえ!みんな、何か好きな食べ物ある?」
続けて場を変えるような質問が漂う
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「フジノは?」
カウンターのごとく質問がランによって返された
それでも顔色一つ変えず、フジノは答えを言った
「うーん、すき焼きとか、ケーキとか、ハンバーグとか…」
「やけにお子様だな」
ツユキがもっともなことを言葉にした
「確かに」
これにはランも小さく頷いて同意の言葉を思わず溢す
顔を隣に向けるとフジノが分かりやすく頬を膨らませていて
怒っているのがわかる
それでも空気がさっきよりもずっと明るくなっていた
「ひっどーい!エルラちゃん!フジノ、お子様じゃないよね!」
「お子様じゃないかな?あれは」
私への同意を求める言葉にすぐに反対意見の同意を伝える
「えぇーみんなぁ!」
散々な言われようなため、助けを求めるが誰も反応しない
空間が笑いで埋まる
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ランが質問をする
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沈黙が続く
しかしさっきよりも空気は軽かった
「知らない」
ツユキがあっさりと沈黙を破る
「フジノも」
それに続くように同意の言葉が出る
「私も」
もちろん私も同意した
私だって知る訳ない
気づいたら暗闇だ
わかることがあるとしたら
私は死にたいってことだけだろう
まるで参考にならない
「でもさ!フジノたちここに来たから会えたんだよ
フジノはみんなに会えて嬉しいから悪くないと思う!」
純粋さが、素直さが溢れている
誰もが失い、誰もが欲しがるそれを彼女は持っている
私は言葉を抱きしめた
温かさが胸に滲む、広がる
しばらく温かい沈黙がこの場を抱きしめるように優しく包む
沈黙の意味など知らないフジノはたまらず口を開いた
「フジノ、悪いこと言った?」
「ううん、…確かにって思って」
私は沈黙の意味を教える気にならなかった
それでも言葉によかったということだけは伝えたかった
フジノを褒めたら調子に乗りそう
ということは他の二人もなんとなく理解していたのかもしれない
だからか、誰もこれ以上言わなかった
「みんなは趣味とかある?」
私は新たな話題を投げかけた
「フジノはどうせおままごとだろ」
「ちっがいますぅー!」
ツユキのお子様な趣味の予想に
速攻で否定が出された
「じゃあ、何だよ」
ツユキの目からは「どうせお子様だろ」という言葉が聞こえてくる
あまり興味があるとは思えない
フジノは珍しく考える間をとった後
驚きの言葉を口にした
「…読書かな?」
ツユキは呆然としている
いや、この場にいる全員が目を開いている
あまりの驚きに沈黙が訪れたが、
すぐにランが結論を出した
「まさか、漫画とかじゃないよね?」
ランは的確な指摘をした
証拠にフジノの目が泳いでいる
しばらくして空白の時間が続き
原因であるフジノは口を開いた
「フジノのことお子様って言うけど、
ツユキちゃんはどうなの!」
フジノはツユキに向かってビシッと指を指した
どうやら反撃をするようだ
「ゲームだけど」
あっさりとした答えだった
趣味自体はフジノとどんぐりの背比べのような感じではあるが、
フジノとの違いは反抗する気がないところだろうか
少しフジノの方が大人な気がするが
変わりなど誤差の範囲内だろう
「同じじゃん!!ツユキちゃんもお子様じゃん」
「大人なゲームをしてるんですが?」
ツユキは負けじと抵抗する
フジノとツユキでは言動が違うらしい
痛いところを突かれたフジノは
反論できる予知がなく黙りこむ
しかし、フジノはフジノである
黙ったのも数秒だった
「認めます!…いや、認めたくないけど!
絶対見返してやるからなっ!」
「せいぜい楽しみにしてるよ」
2人はそう言うと笑った
それにつられるように私たちも笑みが溢れる
この時間がずっと続けばいいな
永遠を願ってしまうのも必然だった
4人でずっと笑っていたい
少ない時間だったがそう願うようになった
時計を気にする間もなく楽しい時間は過ぎた
気づけば、針は12時を指している
暗い舞台にスポットライトが再び灯った
「楽しめたかな?」
声と共にチャシカーが現れる
「楽しかったです!」
フジノは素直に言うと笑みを浮かべた
「そうかい?ならよかったよ
今からゲームを始めようと思う」
チャシカーは口の端を上げた
にやりと笑っている
場は静寂の時が流れた
「デスゲームというやつだよ。」
チャシカーが表情を変えず冷淡に言い放つ
それにみんなの顔は凍りついた
「まだ、一緒にいたいのに」
その言葉に思わず想いが溢れた
だがそれは空気に溶けて誰にも届くことはなかった
チャシカーがこっちを一瞬見た気がしたが
何もなかったように話を続けた
「今から君たちにはゲームをしてもらう
それぞれ犠牲者は1人ずつ。
1ゲームごとに階層が上がっていく。
ルールはそれぞれ、その階層のロビーで説明する。
どうかな?」
チャシカーはにやり笑みのままわざとらしく首を傾げた
言葉の意味を消化できずに聞いていた
「質問いい?」
ランはこの状況を飲み込み1番冷静だった
「もちろん」
チャシカーは頷いた
「それぞれゲームは違うんだよね?」
ランは淡々とスラスラ質問を言う
「ああ」
それにチャシカーが答えた
「もう前の階層には戻れない?」
続いてランは別の質問をした
「戻れるよ。ただ、戻れないと思う」
チャシカーは何かを企む子どものように笑う
「理由は?」
ランは素早く理由を聞いた
「記憶がなくなるから」
それに笑顔はそのままあっさりと答えた
「どういうこと?」
チャシカーは私たちを見回した後、一つ間を置いて答えた
「後々わかるさ。もう質問はいいかい?」
しばらく沈黙が続くが手を挙げる者はいなかった
「この下にエレベーターがあるから乗って。
ボタンは押さなくても2階に行くから、待ってるよ」
舞台の下を見るとエレベーターがあった
きっとさっきまではなかったはずである
エレベーターに目を向けている隙に
チャシカーはもういなくなっていた
「みんな、行こう」
私が口にする
それはまるで決意をするようだった
みんなは頷いて椅子から一斉に立つ
「怖いのはみんな一緒でしょ!」
フジノがそう言って私の手を握る
どちらかわからない手汗が手に伝わる
「お子様は怖いのかもな、一緒にするな」
ツユキが私の肩を叩いて隣にくる
強がっているが言葉が震えている
「ツユキも、怖そうに見えるけど?」
ランが正しい指摘をしてツユキの隣に並んだ
ランは冷静で1番怖さがなさそうに見えるが
笑顔が引き攣っている
「みんな、同じなんだよ。だから、みんなでがんばろ」
私が言うとみんなが頷いて明るい空気が戻る
私たちは怖さを分け合い進んでいく
死にたい気持ちはいつのまにか消え、
それに変わる大きな気持ちが芽生えた
「みんなで生きよう。私はずっとみんなで一緒にいたい」
笑顔がぱあっと広がった
「もっちろん!フジノも」
フジノが繋いでない方の手を上げ元気に答えた
「それは私も」
ツユキは普段は見せない優しい笑みを浮かべる
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