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うさぎつけ
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エレベーターを降りると
ホテルのロビーのような空間が広がっていた
私たちはエレベーターの前で立ち尽くす
大きな丸いテーブルの周りに
1人用のソファーが4つ置かれている
目の前の壁には壁を覆うようにモニターがある
その横の右側には木の扉がある
「とりあえずソファー座って
そしたら、ゲームの説明するね」
大きなモニターにチャシカーが高画質で映される
映っているところから場所の手がかりを
得ようとするが、ただの白い壁しかない
それが壁かすらはっきりとしない
ランも私と同様情報を探っているように見える
「じゃあ、座ろ!」
フジノがソファーに座ろうと歩き始める
「待って」
ツユキがフジノの前に手を出して止めた
ツユキの顔は見えないが空気に怖さを感じる
チャシカーを睨んでいるのが伝わった
「保障は?」
ツユキから伝わる怖さが増す
チャシカーはそれを気にも留めず笑っている
「ああ、罠のことかな?
気にしすぎだよ。大丈夫、保障する」
その笑顔にはどうしても信用が欠ける
やはりツユキもそうらしい
「本当?」
確認をするのも当然だった
「罠があった場合はゲームを全て中止する」
空気が揺らいだ
チャシカーの言葉にみんなが衝撃を受ける
ツユキから怖い雰囲気が少し消える
それでもチャシカーを睨んでいるのがわかる
「わかった」
ツユキはそう言うと歩き始める
「ツユキだけじゃないでしょ」
ランが笑顔を浮かべ隣に並んだ
「死ぬのも一緒だよ」
私はフジノがしてくれたように手を握る
「そうしよ!みんなで、だね」
フジノは確認するように頷いた
みんなで歩き始めた、一歩ずつ
ソファにはさっきと同様
私の隣にフジノ、向かいにツユキ、斜め向かいにランで座る
「座ったね。じゃあ、説明を始めるよ」
誰かが唾を飲み込んだ、みんなが覚悟を決める
「それではゲーム“うさぎつけ”の説明を今から始める。」
その声と共にチャシカーが先ほど以上に、にやりと笑った
「君たちには今から時間を稼いでもらう」
チャシカー以外の誰もが唖然とする
それをモニターに映る人物が見回し、一つの間を置いた
「手を繋いで時間を稼ぐ。
でも、せっかちな“うさぎ”は時間が稼げない。
だから誰かに“なすりつける”手を繋いで。
手を繋ぐか繋がないかは自分で決めることができる。
ただ、忘れちゃダメだよ。時間が1番少ない人は死ぬ。
デスゲームだってことをね。」
顔が空気が凍った
それは私だけではなく全員
覚悟を決めたはずなのに
こんなにも儚く散る程度の物だったのか
足が震える
それをどうにか止めようと踏ん張ってみるが
怖さが止まることなく震わせる
空気が凍りついたぐらいにチャシカーが口を開いた
「他にも説明はあるからさ、通してみるね。」
モニターが紺色の壁の部屋に切り替わる
椅子と机が置いてあり机の上にはタブレットが白い光を出している
「まず、タブレットで1か2か選択する。
1だったら、1の方の部屋に
2だったら、2の方の部屋に繋がる
誰が一緒かはわからないようになっているよ。
部屋についての話をしていた場合は速攻で死んでもらうから。」
「部屋?」
フジノが疑問を口にする
「手を繋げる時間は最高で1分まで
その中で話だってできるだろう?
一緒の部屋になった人と次は何を選ぶか聞いたり
部屋を合わせた場合は即死ってことだよ」
フジノは頷いた
「部屋が同じだった子がうさぎじゃなかった場合
合わせればなすりつけられることがない
それを避けるためでしょ?」
ランが禁止される理由を述べるとフジノが感嘆の声を上げた
「そういうこと、部屋を変えるね」
チャシカーがランの推理を肯定すると、モニターが違う部屋を映す
真っ白な壁と床に映えない灰色のボタンが壁にある部屋だった
「1も2も部屋は一緒だよ。違うのは人だけだね。
ここで手を繋ぐ、3秒は手を繋ぎ続けること
もういいかなと思ったらボタンを押して、部屋に戻るから
1分したら強制で戻されるから注意してね」
ツユキが手を挙げ、口を開いた
「一回で2人以上は繋げるのか?」
チャシカーが首を振る
「1ターンで1人と繋いでね」
「片手だけで大丈夫か?」
続いてツユキが質問する
「ああ、大丈夫だよ。
他に質問は?」
全員一致で首を振った
「部屋を戻すね」
チャシカーの言葉と同時くらいに部屋が変わる
モニターを埋め尽くす白が紺に変わる
「タブレットでうさぎになったかどうかを確認してね
右上には今の時間が表示されるよ」
チャシカーが一呼吸置いた
「じゃあ、時間の換算のされ方を説明するね
1人と手を繋げば10分ずつ時間が稼げる
もちろん繋がなければ0だよ
うさぎをなすりつけるために手を繋いだ場合10分は稼げない」
「どういうこと?」
私がわからず聞いたが
みんなの顔も状況を理解できないように見える
「うーん、例えば
AがうさぎでBになすりつけたとしよう
そのとき、Aは0分、Bは10分になる
次のターンにBはCにうさぎをなすりけられなかった
そのときは、Bは0分、Cも手を繋いでないから0分」
みんなが頷く
フジノが首を傾げる
「何ターンあるの?」
「6ターンだよ」
チャシカーが答えた
それとともにモニターがチャシカーを映す
「説明は終わりだよ
そろそろ始めよう。」
指パッチンの音が聞こえたころには
私は座り、目の前には紺色が広がっていた
うさぎはハートの女王のために急いでいた
結局うさぎは何に焦っているのだろう
それよりも
君たちは何のために時間を稼いでいるのか
時間が欲しいくらい焦っていることがあるのか
さあ、始めよう
“うさぎつけ”開演だ
紺色が映る目の端に白い光が見える
視線を下に向けるとタブレットが机の上に置いてあった
タブレットには白い画面だけが映っている
これはうさぎじゃないと考えて良さそうだ
右上には0分と表示されている
白い画面に黒で1と2が出てきた
なんとなく1を押してみる
ガチャという鍵の開く音がする
椅子を立ち木の扉の方へ向かう
扉を開けると一面の白が飛び込んできた
中に入り扉を閉めると扉は消えた
見渡すとツユキとランがいた
「とりあえず手、繋がない?」
私は提案をする
いきなり手を繋ぐのは危険なのかもしれないが、行動しようと思った
みんなと一緒にいるために行動しないと始まらないとそう思った
「そうだね、そうしよう」
ランが私に賛成する
「私はいい」
ツユキがそう言うと空気が少し重くなったように感じた
私はみんなを疑いたくない
みんなで笑っているためにはそれが必要だと思った
それでも疑心が出てくるのは仕方ないのだろうか
「わかった」
私は噛みしめるように言った
右手を差し出し、そこにランの左手が重なる
温かい体温が伝わる、それとともに震えが伝わる
しばらくの間の後、温かい体温が手から離れる
「みんな、一緒にまた笑って話そう。だから、頑張ろう」
2人が感情を動かさずにそれを聞いた
沈黙が余計に不安を運ぶ
「ボタン押すよ?」
ランが思い出したようにそれを口にする
焦っているように見えた
それに私とツユキは頷く
ボタンを押す音とともに目の前が紺色に変わる
机の上の液晶に目を向けると色が脳髄へと絡みついた
紺と白に慣れた目を刺激する鮮やかな赤
真ん中に白いうさぎがいる
右上は10分を表示していた
なぜかすんなり事実が頭に伝わる
それどころか決意が大きくなる
ここで死ぬわけにはいかない
みんなで一緒に生きるんだから
赤い画面に黒で1と2が出る
2を押そうとするが手が震えて上手く押せない
左手で支えるようにしてなんとか押せた
怖い気持ちがあるのはわかっている
どれだけ上手く事実を飲み込めようと、怖さを隠すことは難しい
だからみんなで生きる未来を反芻して自分を鼓舞した
カチャという音が既に空気と混ざったくらいに扉を開ける
白が広がるその景色には誰1人としていなかった
孤独を告げる真っ白が続いていた
まっさらが絶望で埋まっていく
誰もいないことが私の頭を支配する
私は結局1人だ
それでも
「生きたい、みんなと一緒に…みんなで約束したじゃない」
今1人だとしても、約束が結ばれている限り
私はまだ1人じゃないから
どうにか前を向こうと踏ん張ってみる
「私はまだ死ねない」
ボタンを押した
白色が紺色に変わって赤い光が目に映る
黒で数字が表示されるのを待つ
1か2、ほぼこれで運命が決まる
1を選択する
鍵の開く音がやけに重いように聞こえる
扉を開ける、白を切り裂くように進んだ
ただ、目に映る物は先ほどよりも酷かった
「ねえエルラ、聞いていい?」
ランの表情に感情というものが見えない
質問の内容なんて尚更だ
私は素直に頷いた
「私たちは一緒に生きられると思う?」
「もちろん、やってみせる」
私は力強く答えた
「そう」
興味が無さそうに相槌が打たれた
「手は繋がない。ボタン押すよ」
ランはそう言って私の言葉は聞かずボタンを押した
紺色に帰ってくると黒い数字が表示されている
2を押し、扉の鍵が開く
息を吸う一つの間の後扉を開けた
白とともに映った人物に体が愛想のいい笑顔を貼り付ける
「フジノとは初めてだね」
挨拶がわりの言葉を吐く
「そうだね!」
フジノの言葉に少し元気が欠けていることに気づく
まあ、そんなの知ったことないけど
「とりあえず、手を繋ごう」
「うん!」
フジノが右手を差し出したそれに左手を重ねる
フジノの指が私の指と絡む、恋人繋ぎになる
噛み締められた唇、今にも涙が溢れそうな目
手は手汗で濡れていて、震えが止まることを知らない
後悔が渦を巻く、全てを飲み込む
私はなぜ手を繋いだ?
もう遅い反省をつらつら並べて罪から逃れようとする
言葉に詰まった
フジノに何を言えばいいのか
考えているうちに手が離れた
止めれば、よかったのだろうか
「ボタン押すよ!」
それはもうフジノだった
紺色に混ざる白い光が憎かった
「やあ、聞こえてる?」
どこからか声が入り込む
「次からうさぎの人は-10分だよ、がんばってね」
チャシカーが楽しそうに言う
怒りが沸き上がってくる
黒い数字を適当に押す
力に任せて扉を開けた
「手を繋がない?」
まるで業務のように言葉が出てくる
「じゃあ、私繋いでいい?」
ランの言葉にツユキが静かに頷いた
ランと手を繋ぐ
「ボタン押すね」
そして業務のように締めの言葉を言いながらボタンを押す
毎度のごとく聞かれる側に拒否権は存在しない
紺色に戻る、白い液晶は20分を表示する
1を選択すると鍵の開く音がやけに響いた
扉を開く、これが最後だ
白へと進んだ
絶望へと辿り着いてしまった
「エルラちゃん」
フジノの声は落ち着いている
まるで誰かわからない
「フジノには無理みたい」
呟くような声を必死に耳で拾う
「どういうこと?」
疑問が口から溢れる
フジノが苦笑いを浮かべた
「みんなで生きること…かな?」
フジノはその言葉の直後、笑顔が歪む、涙が溢れ出る
それが目に纏わりつく
思わず手を伸ばす
フジノに生きて欲しい
手を取るが、振り払われた
「フジノ、楽しかった、嬉しかった、幸せだったよ
みんなと一緒にいれたんだもん
フジノはいなくてもみんなは幸せでいて」
涙でぐしゃぐしゃになった笑顔が紺色に変わる
フジノはボタンを押していたらしい
私は手を離してしまったのだ
「じゃあ、今から結果発表をするよ
ロビーに戻すね」
チャシカーの声の後、指パッチンとともにロビーに戻る
モニターにチャシカーが映っていた
相変わらず高画質である
「まず、1位は」
ドラムロールがうるさく鳴った後チャシカーが口を開く
「ツユキ、40分
次に、2位」
ドラムロールがさっきよりは小さく鳴る
「ラン、30分
運命の4位は」
ドラムロールの音が聞こえる気がするがわからない
不安と恐怖に今にも殺されそうだ
目を瞑る、もう何を言われてもいい
「フジノ、10分
3位はエルラ、20分」
放心状態だった
何も考えたくない
「敗北者には死んでもらうよ
みんなが稼いでくれた時間でね」
チャシカーのとんでもない発言をもう誰も聞き返さない
私たちの舞台を今乗っ取られた気分だ
ずっとチャシカーの手のひらだったという点では
私たちの舞台など初めからなかったのかもしれないが
「フジノは稼いでくれた時間内は生きられる」
少しだけみんなの顔に光が見えた
「110分後に死ぬ毒で死んでもらうよ」
チャシカーが表情を変えず淡々と口にした
「毒なんて、長く苦しみ続けないといけないだろ!」
ツユキが立ち上がり怒りを吐く
顔には涙を浮かべていた
「君たちは時間を稼いだだろう?
あれは、生きてほしかったんじゃないのかな?」
チャシカーはわざとらしく首を傾げた
「そういうことじゃねぇ!」
ツユキがモニターへとよろけた足取りで歩く
ランが腕を掴む
「ツユキ、落ち着いて」
強い眼差しで言う
それは圧のような怖さがあった
ツユキは歯をくいしばって座る
ランの手は離されてない
「じゃあ、なんで時間を稼いでいたの?」
ツユキの顔が固まる
他のみんなも居心地が悪そうにしている
空気が重くなっていく
「死ぬ覚悟はもうできてるから、
みんな、大丈夫だよ!」
フジノが笑う
手が無意識にフジノの手を掴む
「あの時に繋げなくてごめんなさい」
言葉が口から抑えられなかった
顔を伏せて涙を必死に我慢する
「ありがとうの方がいいんだけど!」
フジノがいつもの口調で言う
顔を上げると涙を目にいっぱいに溜めていた
フジノは最後まで元気でいるんだ
元気を明るさをくれるんだ
なら、せめて
「…私もフジノといれて幸せだよ
みんなで生きられないかもしれない
それでも私たちは幸せなんじゃん」
我慢した涙なんてもうどうでもいいから
もう溢れてもいいから
フジノに笑ってほしい
その思いだけが言葉を紡ぐ
「幸せなんだよね
一緒には生きれないけど、それでも」
フジノの目が抱えきれなくなった涙を流していく
涙が流れるたびに胸に針が刺さるような感覚がする
「フジノは私たちの中で生き続けるよ
だから、一緒にいれるよ」
フジノが嗚咽を零す
堤防が崩壊し、涙が止めどなく溢れていく
繋いでない方の手で背中をゆっくりさする
しばらくした後フジノは口を開く
「約束して、みんなで一緒に生きるって」
フジノの繋いでない手が小指を差し出す
私は背中をさすっていた手で小指を絡ませた
「約束する。みんなで一緒に生きよう」
私の言葉にフジノは笑っていた
それはだいぶ元の笑顔に近い
満足そうに笑っている
そしてフジノが小さな声で恥ずかしそうに言葉を溢した
「フジノは…みんなが、大好きだよ」
それにみんなが頷く
「私も、フジノもみんなも大好きだよ」
「私ももちろんみんなが大好きだよ」
「もちろんみんな大好きだよ」
私、ラン、ツユキの順で言う
ツユキからはさっきの怒りが消えていた
そしてフジノは深呼吸をした
「チャシカー、毒は?」
チャシカーが手をパンパンと叩くと
フジノの手にはとても小さい小瓶があった
フジノはしぶしぶ繋いでいた手を離すと小瓶を開け毒を飲んだ
まるで水を飲むように、そこに怖さは感じられなかった
その姿は美しく、誰もがただ見ることしかできなかった
好きな物を好きと言うのが怖い
誰かに否定されるかもしれない
誰かにバカにされるかもしれない
フジノは世間一般で言うオタクだ
小さいことから大きなことまで何度悪口を言われたことか
だからか悪口なんていつのまにかへっちゃらになってしまった
1番辛かったのは中学時代
今でも鮮明に残っている
オタクだと言われ、いじめられた
そのときは暗い性格だったし、
弱い存在を憂さ晴らしにいじめたくなったのだろう
きっとそれぐらいの軽い気持ちで行われたいじめは
フジノの心には消えない傷となった
もう、オタクだと言わないようにした
好きなことを好きと気づいたら言えなくなっていた
それから時間がたち、推しが好きなタイプについて言っていたことがあった
ショートカット、元気でどんな時も明るい子
フジノはずっと伸ばしていた特徴でもある髪をその場で切った
そして元気であることを心がけた
気づいたらここにいた
エルラ、ツユキ、ラン
知らない子だったけど、直ぐに仲良くなれた
デスゲームと言われたとき約束してくれた
フジノもずっと一緒にいたいと思った
だから、頑張った、足掻いた
4ターン目だった、うさぎがなすりつけられたのは
頭が真っ白になって生きた心地がしなかった
でも次のターンで1人だったときに覚悟が決まった
みんなが一緒に生きてほしい
そこにフジノはいなくてもいい
みんなに笑っていてほしい
だから、エルラちゃんの手を振り払った
泣いちゃったのは誤算だったけど
フジノ、きっと元気でいるのは
みんなと一緒にいるためだったんじゃないかなって
推しよりもみんなは大切な友達だから
エルラちゃん、約束だよ?
みんなで生きて、幸せでいてね
「オタク、なめんじゃねぇ」
強い毒に侵されながら耐えるために呟いてみる
「推しのためなら、何だってするんだ」
毒を忘れるためなのかもしれない
逃れられないことはわかっているけど
「でも推し以上にフジノは
大切な友達のためなら命だって捧げられる」
声を絞り出す、言わない方が楽なのはもうとっくに知っている
それでも抗ってみようとしたかった
「フジノ、大丈夫か?」
ツユキが心配をしてくれた
その後ろで2つの顔が曇っている
「大丈夫じゃない!漫画読みたい!」
毒を隠して笑う、元気にいつも通りに
「こんなときまでお子様かよ」
ツユキは笑った、みんなもつられて笑う
笑顔が広がった
みんなには笑っていてほしいから
幸せでいてほしいから
ホテルのロビーのような空間が広がっていた
私たちはエレベーターの前で立ち尽くす
大きな丸いテーブルの周りに
1人用のソファーが4つ置かれている
目の前の壁には壁を覆うようにモニターがある
その横の右側には木の扉がある
「とりあえずソファー座って
そしたら、ゲームの説明するね」
大きなモニターにチャシカーが高画質で映される
映っているところから場所の手がかりを
得ようとするが、ただの白い壁しかない
それが壁かすらはっきりとしない
ランも私と同様情報を探っているように見える
「じゃあ、座ろ!」
フジノがソファーに座ろうと歩き始める
「待って」
ツユキがフジノの前に手を出して止めた
ツユキの顔は見えないが空気に怖さを感じる
チャシカーを睨んでいるのが伝わった
「保障は?」
ツユキから伝わる怖さが増す
チャシカーはそれを気にも留めず笑っている
「ああ、罠のことかな?
気にしすぎだよ。大丈夫、保障する」
その笑顔にはどうしても信用が欠ける
やはりツユキもそうらしい
「本当?」
確認をするのも当然だった
「罠があった場合はゲームを全て中止する」
空気が揺らいだ
チャシカーの言葉にみんなが衝撃を受ける
ツユキから怖い雰囲気が少し消える
それでもチャシカーを睨んでいるのがわかる
「わかった」
ツユキはそう言うと歩き始める
「ツユキだけじゃないでしょ」
ランが笑顔を浮かべ隣に並んだ
「死ぬのも一緒だよ」
私はフジノがしてくれたように手を握る
「そうしよ!みんなで、だね」
フジノは確認するように頷いた
みんなで歩き始めた、一歩ずつ
ソファにはさっきと同様
私の隣にフジノ、向かいにツユキ、斜め向かいにランで座る
「座ったね。じゃあ、説明を始めるよ」
誰かが唾を飲み込んだ、みんなが覚悟を決める
「それではゲーム“うさぎつけ”の説明を今から始める。」
その声と共にチャシカーが先ほど以上に、にやりと笑った
「君たちには今から時間を稼いでもらう」
チャシカー以外の誰もが唖然とする
それをモニターに映る人物が見回し、一つの間を置いた
「手を繋いで時間を稼ぐ。
でも、せっかちな“うさぎ”は時間が稼げない。
だから誰かに“なすりつける”手を繋いで。
手を繋ぐか繋がないかは自分で決めることができる。
ただ、忘れちゃダメだよ。時間が1番少ない人は死ぬ。
デスゲームだってことをね。」
顔が空気が凍った
それは私だけではなく全員
覚悟を決めたはずなのに
こんなにも儚く散る程度の物だったのか
足が震える
それをどうにか止めようと踏ん張ってみるが
怖さが止まることなく震わせる
空気が凍りついたぐらいにチャシカーが口を開いた
「他にも説明はあるからさ、通してみるね。」
モニターが紺色の壁の部屋に切り替わる
椅子と机が置いてあり机の上にはタブレットが白い光を出している
「まず、タブレットで1か2か選択する。
1だったら、1の方の部屋に
2だったら、2の方の部屋に繋がる
誰が一緒かはわからないようになっているよ。
部屋についての話をしていた場合は速攻で死んでもらうから。」
「部屋?」
フジノが疑問を口にする
「手を繋げる時間は最高で1分まで
その中で話だってできるだろう?
一緒の部屋になった人と次は何を選ぶか聞いたり
部屋を合わせた場合は即死ってことだよ」
フジノは頷いた
「部屋が同じだった子がうさぎじゃなかった場合
合わせればなすりつけられることがない
それを避けるためでしょ?」
ランが禁止される理由を述べるとフジノが感嘆の声を上げた
「そういうこと、部屋を変えるね」
チャシカーがランの推理を肯定すると、モニターが違う部屋を映す
真っ白な壁と床に映えない灰色のボタンが壁にある部屋だった
「1も2も部屋は一緒だよ。違うのは人だけだね。
ここで手を繋ぐ、3秒は手を繋ぎ続けること
もういいかなと思ったらボタンを押して、部屋に戻るから
1分したら強制で戻されるから注意してね」
ツユキが手を挙げ、口を開いた
「一回で2人以上は繋げるのか?」
チャシカーが首を振る
「1ターンで1人と繋いでね」
「片手だけで大丈夫か?」
続いてツユキが質問する
「ああ、大丈夫だよ。
他に質問は?」
全員一致で首を振った
「部屋を戻すね」
チャシカーの言葉と同時くらいに部屋が変わる
モニターを埋め尽くす白が紺に変わる
「タブレットでうさぎになったかどうかを確認してね
右上には今の時間が表示されるよ」
チャシカーが一呼吸置いた
「じゃあ、時間の換算のされ方を説明するね
1人と手を繋げば10分ずつ時間が稼げる
もちろん繋がなければ0だよ
うさぎをなすりつけるために手を繋いだ場合10分は稼げない」
「どういうこと?」
私がわからず聞いたが
みんなの顔も状況を理解できないように見える
「うーん、例えば
AがうさぎでBになすりつけたとしよう
そのとき、Aは0分、Bは10分になる
次のターンにBはCにうさぎをなすりけられなかった
そのときは、Bは0分、Cも手を繋いでないから0分」
みんなが頷く
フジノが首を傾げる
「何ターンあるの?」
「6ターンだよ」
チャシカーが答えた
それとともにモニターがチャシカーを映す
「説明は終わりだよ
そろそろ始めよう。」
指パッチンの音が聞こえたころには
私は座り、目の前には紺色が広がっていた
うさぎはハートの女王のために急いでいた
結局うさぎは何に焦っているのだろう
それよりも
君たちは何のために時間を稼いでいるのか
時間が欲しいくらい焦っていることがあるのか
さあ、始めよう
“うさぎつけ”開演だ
紺色が映る目の端に白い光が見える
視線を下に向けるとタブレットが机の上に置いてあった
タブレットには白い画面だけが映っている
これはうさぎじゃないと考えて良さそうだ
右上には0分と表示されている
白い画面に黒で1と2が出てきた
なんとなく1を押してみる
ガチャという鍵の開く音がする
椅子を立ち木の扉の方へ向かう
扉を開けると一面の白が飛び込んできた
中に入り扉を閉めると扉は消えた
見渡すとツユキとランがいた
「とりあえず手、繋がない?」
私は提案をする
いきなり手を繋ぐのは危険なのかもしれないが、行動しようと思った
みんなと一緒にいるために行動しないと始まらないとそう思った
「そうだね、そうしよう」
ランが私に賛成する
「私はいい」
ツユキがそう言うと空気が少し重くなったように感じた
私はみんなを疑いたくない
みんなで笑っているためにはそれが必要だと思った
それでも疑心が出てくるのは仕方ないのだろうか
「わかった」
私は噛みしめるように言った
右手を差し出し、そこにランの左手が重なる
温かい体温が伝わる、それとともに震えが伝わる
しばらくの間の後、温かい体温が手から離れる
「みんな、一緒にまた笑って話そう。だから、頑張ろう」
2人が感情を動かさずにそれを聞いた
沈黙が余計に不安を運ぶ
「ボタン押すよ?」
ランが思い出したようにそれを口にする
焦っているように見えた
それに私とツユキは頷く
ボタンを押す音とともに目の前が紺色に変わる
机の上の液晶に目を向けると色が脳髄へと絡みついた
紺と白に慣れた目を刺激する鮮やかな赤
真ん中に白いうさぎがいる
右上は10分を表示していた
なぜかすんなり事実が頭に伝わる
それどころか決意が大きくなる
ここで死ぬわけにはいかない
みんなで一緒に生きるんだから
赤い画面に黒で1と2が出る
2を押そうとするが手が震えて上手く押せない
左手で支えるようにしてなんとか押せた
怖い気持ちがあるのはわかっている
どれだけ上手く事実を飲み込めようと、怖さを隠すことは難しい
だからみんなで生きる未来を反芻して自分を鼓舞した
カチャという音が既に空気と混ざったくらいに扉を開ける
白が広がるその景色には誰1人としていなかった
孤独を告げる真っ白が続いていた
まっさらが絶望で埋まっていく
誰もいないことが私の頭を支配する
私は結局1人だ
それでも
「生きたい、みんなと一緒に…みんなで約束したじゃない」
今1人だとしても、約束が結ばれている限り
私はまだ1人じゃないから
どうにか前を向こうと踏ん張ってみる
「私はまだ死ねない」
ボタンを押した
白色が紺色に変わって赤い光が目に映る
黒で数字が表示されるのを待つ
1か2、ほぼこれで運命が決まる
1を選択する
鍵の開く音がやけに重いように聞こえる
扉を開ける、白を切り裂くように進んだ
ただ、目に映る物は先ほどよりも酷かった
「ねえエルラ、聞いていい?」
ランの表情に感情というものが見えない
質問の内容なんて尚更だ
私は素直に頷いた
「私たちは一緒に生きられると思う?」
「もちろん、やってみせる」
私は力強く答えた
「そう」
興味が無さそうに相槌が打たれた
「手は繋がない。ボタン押すよ」
ランはそう言って私の言葉は聞かずボタンを押した
紺色に帰ってくると黒い数字が表示されている
2を押し、扉の鍵が開く
息を吸う一つの間の後扉を開けた
白とともに映った人物に体が愛想のいい笑顔を貼り付ける
「フジノとは初めてだね」
挨拶がわりの言葉を吐く
「そうだね!」
フジノの言葉に少し元気が欠けていることに気づく
まあ、そんなの知ったことないけど
「とりあえず、手を繋ごう」
「うん!」
フジノが右手を差し出したそれに左手を重ねる
フジノの指が私の指と絡む、恋人繋ぎになる
噛み締められた唇、今にも涙が溢れそうな目
手は手汗で濡れていて、震えが止まることを知らない
後悔が渦を巻く、全てを飲み込む
私はなぜ手を繋いだ?
もう遅い反省をつらつら並べて罪から逃れようとする
言葉に詰まった
フジノに何を言えばいいのか
考えているうちに手が離れた
止めれば、よかったのだろうか
「ボタン押すよ!」
それはもうフジノだった
紺色に混ざる白い光が憎かった
「やあ、聞こえてる?」
どこからか声が入り込む
「次からうさぎの人は-10分だよ、がんばってね」
チャシカーが楽しそうに言う
怒りが沸き上がってくる
黒い数字を適当に押す
力に任せて扉を開けた
「手を繋がない?」
まるで業務のように言葉が出てくる
「じゃあ、私繋いでいい?」
ランの言葉にツユキが静かに頷いた
ランと手を繋ぐ
「ボタン押すね」
そして業務のように締めの言葉を言いながらボタンを押す
毎度のごとく聞かれる側に拒否権は存在しない
紺色に戻る、白い液晶は20分を表示する
1を選択すると鍵の開く音がやけに響いた
扉を開く、これが最後だ
白へと進んだ
絶望へと辿り着いてしまった
「エルラちゃん」
フジノの声は落ち着いている
まるで誰かわからない
「フジノには無理みたい」
呟くような声を必死に耳で拾う
「どういうこと?」
疑問が口から溢れる
フジノが苦笑いを浮かべた
「みんなで生きること…かな?」
フジノはその言葉の直後、笑顔が歪む、涙が溢れ出る
それが目に纏わりつく
思わず手を伸ばす
フジノに生きて欲しい
手を取るが、振り払われた
「フジノ、楽しかった、嬉しかった、幸せだったよ
みんなと一緒にいれたんだもん
フジノはいなくてもみんなは幸せでいて」
涙でぐしゃぐしゃになった笑顔が紺色に変わる
フジノはボタンを押していたらしい
私は手を離してしまったのだ
「じゃあ、今から結果発表をするよ
ロビーに戻すね」
チャシカーの声の後、指パッチンとともにロビーに戻る
モニターにチャシカーが映っていた
相変わらず高画質である
「まず、1位は」
ドラムロールがうるさく鳴った後チャシカーが口を開く
「ツユキ、40分
次に、2位」
ドラムロールがさっきよりは小さく鳴る
「ラン、30分
運命の4位は」
ドラムロールの音が聞こえる気がするがわからない
不安と恐怖に今にも殺されそうだ
目を瞑る、もう何を言われてもいい
「フジノ、10分
3位はエルラ、20分」
放心状態だった
何も考えたくない
「敗北者には死んでもらうよ
みんなが稼いでくれた時間でね」
チャシカーのとんでもない発言をもう誰も聞き返さない
私たちの舞台を今乗っ取られた気分だ
ずっとチャシカーの手のひらだったという点では
私たちの舞台など初めからなかったのかもしれないが
「フジノは稼いでくれた時間内は生きられる」
少しだけみんなの顔に光が見えた
「110分後に死ぬ毒で死んでもらうよ」
チャシカーが表情を変えず淡々と口にした
「毒なんて、長く苦しみ続けないといけないだろ!」
ツユキが立ち上がり怒りを吐く
顔には涙を浮かべていた
「君たちは時間を稼いだだろう?
あれは、生きてほしかったんじゃないのかな?」
チャシカーはわざとらしく首を傾げた
「そういうことじゃねぇ!」
ツユキがモニターへとよろけた足取りで歩く
ランが腕を掴む
「ツユキ、落ち着いて」
強い眼差しで言う
それは圧のような怖さがあった
ツユキは歯をくいしばって座る
ランの手は離されてない
「じゃあ、なんで時間を稼いでいたの?」
ツユキの顔が固まる
他のみんなも居心地が悪そうにしている
空気が重くなっていく
「死ぬ覚悟はもうできてるから、
みんな、大丈夫だよ!」
フジノが笑う
手が無意識にフジノの手を掴む
「あの時に繋げなくてごめんなさい」
言葉が口から抑えられなかった
顔を伏せて涙を必死に我慢する
「ありがとうの方がいいんだけど!」
フジノがいつもの口調で言う
顔を上げると涙を目にいっぱいに溜めていた
フジノは最後まで元気でいるんだ
元気を明るさをくれるんだ
なら、せめて
「…私もフジノといれて幸せだよ
みんなで生きられないかもしれない
それでも私たちは幸せなんじゃん」
我慢した涙なんてもうどうでもいいから
もう溢れてもいいから
フジノに笑ってほしい
その思いだけが言葉を紡ぐ
「幸せなんだよね
一緒には生きれないけど、それでも」
フジノの目が抱えきれなくなった涙を流していく
涙が流れるたびに胸に針が刺さるような感覚がする
「フジノは私たちの中で生き続けるよ
だから、一緒にいれるよ」
フジノが嗚咽を零す
堤防が崩壊し、涙が止めどなく溢れていく
繋いでない方の手で背中をゆっくりさする
しばらくした後フジノは口を開く
「約束して、みんなで一緒に生きるって」
フジノの繋いでない手が小指を差し出す
私は背中をさすっていた手で小指を絡ませた
「約束する。みんなで一緒に生きよう」
私の言葉にフジノは笑っていた
それはだいぶ元の笑顔に近い
満足そうに笑っている
そしてフジノが小さな声で恥ずかしそうに言葉を溢した
「フジノは…みんなが、大好きだよ」
それにみんなが頷く
「私も、フジノもみんなも大好きだよ」
「私ももちろんみんなが大好きだよ」
「もちろんみんな大好きだよ」
私、ラン、ツユキの順で言う
ツユキからはさっきの怒りが消えていた
そしてフジノは深呼吸をした
「チャシカー、毒は?」
チャシカーが手をパンパンと叩くと
フジノの手にはとても小さい小瓶があった
フジノはしぶしぶ繋いでいた手を離すと小瓶を開け毒を飲んだ
まるで水を飲むように、そこに怖さは感じられなかった
その姿は美しく、誰もがただ見ることしかできなかった
好きな物を好きと言うのが怖い
誰かに否定されるかもしれない
誰かにバカにされるかもしれない
フジノは世間一般で言うオタクだ
小さいことから大きなことまで何度悪口を言われたことか
だからか悪口なんていつのまにかへっちゃらになってしまった
1番辛かったのは中学時代
今でも鮮明に残っている
オタクだと言われ、いじめられた
そのときは暗い性格だったし、
弱い存在を憂さ晴らしにいじめたくなったのだろう
きっとそれぐらいの軽い気持ちで行われたいじめは
フジノの心には消えない傷となった
もう、オタクだと言わないようにした
好きなことを好きと気づいたら言えなくなっていた
それから時間がたち、推しが好きなタイプについて言っていたことがあった
ショートカット、元気でどんな時も明るい子
フジノはずっと伸ばしていた特徴でもある髪をその場で切った
そして元気であることを心がけた
気づいたらここにいた
エルラ、ツユキ、ラン
知らない子だったけど、直ぐに仲良くなれた
デスゲームと言われたとき約束してくれた
フジノもずっと一緒にいたいと思った
だから、頑張った、足掻いた
4ターン目だった、うさぎがなすりつけられたのは
頭が真っ白になって生きた心地がしなかった
でも次のターンで1人だったときに覚悟が決まった
みんなが一緒に生きてほしい
そこにフジノはいなくてもいい
みんなに笑っていてほしい
だから、エルラちゃんの手を振り払った
泣いちゃったのは誤算だったけど
フジノ、きっと元気でいるのは
みんなと一緒にいるためだったんじゃないかなって
推しよりもみんなは大切な友達だから
エルラちゃん、約束だよ?
みんなで生きて、幸せでいてね
「オタク、なめんじゃねぇ」
強い毒に侵されながら耐えるために呟いてみる
「推しのためなら、何だってするんだ」
毒を忘れるためなのかもしれない
逃れられないことはわかっているけど
「でも推し以上にフジノは
大切な友達のためなら命だって捧げられる」
声を絞り出す、言わない方が楽なのはもうとっくに知っている
それでも抗ってみようとしたかった
「フジノ、大丈夫か?」
ツユキが心配をしてくれた
その後ろで2つの顔が曇っている
「大丈夫じゃない!漫画読みたい!」
毒を隠して笑う、元気にいつも通りに
「こんなときまでお子様かよ」
ツユキは笑った、みんなもつられて笑う
笑顔が広がった
みんなには笑っていてほしいから
幸せでいてほしいから
0
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