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第十三章 終幕

石田三成ー終幕ー

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「それが君の答えなんだね」

「うん。私はこの世界に残ることを選ぶよ」

「それが君の選んだ選択なら、僕は止めたりしないよ。行っておいで、君の選んだら武将の元へ」

「今までありがとう、刻」



私は刻に背を向け広間へと向かった。



「君と出会って、君と話して…。僕も君に惹かれていた一人だったのかもしれないな……」



私がいなくなった部屋で、刻が切なげに呟いた言葉は、刻と共に消えてしまった。


そのころ私は広間へと向かうと、その人は部屋へ戻ったと聞き、その人の自室へと向かった。



「御影です。少しお話よろしいでしょうか」

「入れ」



部屋の中へと入ると、三成さんの手には本が握られていた。



「薬草の書物ですか?」

「ああ。甲斐、越後と同盟を結んだとしても、戦がなくなることはないからな」



戦はなくならない、わかってはいたことだけど、顔を伏せずにはいられなかった。



「だが、同盟を結んだことで戦はかなり減る。あんたのお陰だ」



三成さんの優しい声音が私へと届き、伏せていた顔を上げると、口許に笑みを浮かべる三成さんの姿が瞳に映った。



「ところであんたは俺に用があったんじゃないのか?」

「えっと、この前のお返事を伝えに来たんですが」

「っ、そうか……」



返事を伝えに来たことを話すと、三成さんはピクッと肩を跳ねさせ、少し強張った表情で私の言葉を待った。

三成さんはとても真面目で、ほっておくと休まずに調べものをするような人だと知った。

でも、その真面目さも皆のためで、私が風邪を引いたときには心配をしてくれたり、薬を作ってくれたりとしてくれた。

知れば知るほど、私は三成さんに惹かれていくのを感じていた。



「私は、三成さんのことが好きです」

「………」



想いを伝えるが、何故か返事がなく三成さんを見詰めていると、突然三成さんは腕を顔の前に持っていき隠した。



「どうかされましたか?」



心配で近づこうとすると、来るなとだけ言われ、何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうかと顔を伏せた。



「っ……きっと今、俺の顔は赤い……」



三成さんは小さな声で呟き、私は伏せていた顔を上げ三成さんへと視線を向けると、耳まで赤くしている三成さんの姿があった。


ー終幕ー
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