【R18】それでも殿下は婚約破棄したいとお望みですか?

きららののん

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「いえ、なんでも……」

イヴがそう答えようとした時、問題の集団がわざとらしく二人の前に進み出て、優雅にカーテシーをした。

「ごきげんよう、ハーデス殿下。ヴェルディア嬢も」

セリーナは完璧な笑みを浮かべている。

「まあ、ヴェルディア嬢。殿下とお散歩ですの? あなたのような方が殿下のお側にいると、殿下のご威光まで曇ってしまいそうだわ。おーほほほ」

あからさまな嫌味に、取り巻きたちもくすくすと笑う。

イヴは何も言い返せず、悔しさに唇を噛み、俯いてしまった。

その瞬間、場の空気が凍りついた。

ハーデスが、イヴを庇うように一歩前に出たのだ。その空色の瞳は、絶対零度の光を宿してセリーナを射抜いていた。

「私のイヴに何か用か、グレイフィールド公爵令嬢」

地を這うような低い声に、セリーナの顔から笑みが消える。

「私の選んだ妃に意見するとは、不敬も甚だしい。お前は、王家への反逆と見なされても文句は言えんな」

「ひっ……! も、申し訳ございません!」

「二度とそのような口を利くな。――失せろ」

王太子の気迫に完全に呑まれたセリーナたちは、ほうほうの体でその場から逃げ去っていった。

ハーデスは振り返ると、まだ俯いているイヴの顎に手を添え、顔を上げさせた。

「気にするな。お前は私の隣にいるだけでいい」

その優しい声に、イヴは静かに頷いた。
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