【R18】それでも殿下は婚約破棄したいとお望みですか?

きららののん

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結婚式当日の朝、王都は祝福の光に満ち溢れていた。空はどこまでも青く澄み渡り、街の家々の窓には、ロイヤル王国の旗と、ヴェルディア家の紋章旗が並んで掲げられている。大聖堂へと続く道は、歴史的な瞬間を一目見ようと集まった民衆で埋め尽くされ、その熱気は、王宮にまで伝わってくるようだった。

支度を終えたイヴは、父であるアルフォンス辺境伯のエスコートを待ちながら、静かに鏡の中の自分を見つめていた。星空を纏ったかのような純白のドレス、ヴェールの下で輝くティアラ。それは、夢見ていた以上の、完璧な花嫁姿だった。

「綺麗だよ、イヴ」

部屋に入ってきた父は、娘のあまりの美しさに、一瞬、言葉を失った。その目には、誇らしさと、娘を嫁がせる父親特有の寂しさが入り混じっている。

「お父様……」

「立派になったな。……さあ、行こうか。未来の国王陛下が、お前を待っておられる」

アルフォンス辺境伯に腕を引かれ、イヴは大聖堂へと向かった。

荘厳なパイプオルガンの音色が響き渡る中、大聖堂の巨大な扉が開かれる。その先に広がるのは、真紅のバージンロードと、それを埋め尽くす王侯貴族たち。そして、祭壇の前で、自分を待つ、愛しい人の姿。

ハーデスは、純白の軍礼服に身を包み、その姿は神々しいまでに凛々しかった。彼は、ゆっくりと歩みを進めてくるイヴの姿を、まるで奇跡を見るかのように、愛情に満ちた瞳で見つめている。

父の手からハーデスの手へと、イヴの手が渡される。ハーデスは、その手を強く、そして優しく握った。

「綺麗だ、イヴ。世界で一番……」

その囁きに、イヴは最高の笑顔で応えた。

神の前で、二人は永遠の愛を誓う。

「健やかなる時も、病める時も……」と続く、形式的な誓いの言葉。だが、二人が交わす言葉は、それだけではなかった。

「私は、イヴ・ヴェルディアを、生涯、私の唯一の妻とし、その笑顔を、涙を、強さを、そして弱さを、私のすべてを懸けて愛し、守り抜くことを誓います」

ハーデスの、心の底からの誓い。

「私は、ハーデス・ロイヤル様を、生涯、私の唯一の夫とし、その喜びを、悲しみを、栄光を、そして孤独を、私のすべての愛をもって分かち合い、支え続けることを誓います」

イヴの、揺るぎない決意の言葉。

それは、神にではなく、互いの魂に直接語りかけるような、二人だけの誓いだった。

指輪が交換され、ハーデスがそっとイヴのヴェールを上げる。そして、誓いの口づけ。その瞬間、大聖堂は、割れんばかりの拍手と、祝福の歓声に包まれた。国王も、イヴの両親も、そしていつも苦労を共にしてきたギルバートも、その目には光るものがあった。

式典の後には、王都を巡る馬車でのパレードが待っていた。沿道を埋め尽くした民衆から、色とりどりの花びらと、祝福の紙吹雪が、雨のように降り注ぐ。

「聖女様、おめでとう!」
「王太子殿下、万歳!」

かつては、恐れ、避けていた人々の視線。それが今、これほどまでに温かく、優しいものとして自分に向けられている。イヴは、馬車の中から、その一人一人の顔を見つめた。そして、心の底からこみ上げる喜びのままに、人々に手を振り、微笑みかけた。

その、聖女の微笑みに、民衆の熱狂は、最高潮に達した。

ハーデスは、そんなイヴの横顔を、どこまでも愛おしそうに見つめていた。彼女が、自分の殻を破り、世界に愛されている。その事実が、彼に、王となるべき者としての、新たな誇りと責任感を与えていた。

この国を、そして、この世界で一番愛する女性を、必ず幸せにしてみせる。ハーデスは、心の中で、改めて固く誓うのだった。
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