42 / 44
42
しおりを挟む
結婚式当日の朝、王都は祝福の光に満ち溢れていた。空はどこまでも青く澄み渡り、街の家々の窓には、ロイヤル王国の旗と、ヴェルディア家の紋章旗が並んで掲げられている。大聖堂へと続く道は、歴史的な瞬間を一目見ようと集まった民衆で埋め尽くされ、その熱気は、王宮にまで伝わってくるようだった。
支度を終えたイヴは、父であるアルフォンス辺境伯のエスコートを待ちながら、静かに鏡の中の自分を見つめていた。星空を纏ったかのような純白のドレス、ヴェールの下で輝くティアラ。それは、夢見ていた以上の、完璧な花嫁姿だった。
「綺麗だよ、イヴ」
部屋に入ってきた父は、娘のあまりの美しさに、一瞬、言葉を失った。その目には、誇らしさと、娘を嫁がせる父親特有の寂しさが入り混じっている。
「お父様……」
「立派になったな。……さあ、行こうか。未来の国王陛下が、お前を待っておられる」
アルフォンス辺境伯に腕を引かれ、イヴは大聖堂へと向かった。
荘厳なパイプオルガンの音色が響き渡る中、大聖堂の巨大な扉が開かれる。その先に広がるのは、真紅のバージンロードと、それを埋め尽くす王侯貴族たち。そして、祭壇の前で、自分を待つ、愛しい人の姿。
ハーデスは、純白の軍礼服に身を包み、その姿は神々しいまでに凛々しかった。彼は、ゆっくりと歩みを進めてくるイヴの姿を、まるで奇跡を見るかのように、愛情に満ちた瞳で見つめている。
父の手からハーデスの手へと、イヴの手が渡される。ハーデスは、その手を強く、そして優しく握った。
「綺麗だ、イヴ。世界で一番……」
その囁きに、イヴは最高の笑顔で応えた。
神の前で、二人は永遠の愛を誓う。
「健やかなる時も、病める時も……」と続く、形式的な誓いの言葉。だが、二人が交わす言葉は、それだけではなかった。
「私は、イヴ・ヴェルディアを、生涯、私の唯一の妻とし、その笑顔を、涙を、強さを、そして弱さを、私のすべてを懸けて愛し、守り抜くことを誓います」
ハーデスの、心の底からの誓い。
「私は、ハーデス・ロイヤル様を、生涯、私の唯一の夫とし、その喜びを、悲しみを、栄光を、そして孤独を、私のすべての愛をもって分かち合い、支え続けることを誓います」
イヴの、揺るぎない決意の言葉。
それは、神にではなく、互いの魂に直接語りかけるような、二人だけの誓いだった。
指輪が交換され、ハーデスがそっとイヴのヴェールを上げる。そして、誓いの口づけ。その瞬間、大聖堂は、割れんばかりの拍手と、祝福の歓声に包まれた。国王も、イヴの両親も、そしていつも苦労を共にしてきたギルバートも、その目には光るものがあった。
式典の後には、王都を巡る馬車でのパレードが待っていた。沿道を埋め尽くした民衆から、色とりどりの花びらと、祝福の紙吹雪が、雨のように降り注ぐ。
「聖女様、おめでとう!」
「王太子殿下、万歳!」
かつては、恐れ、避けていた人々の視線。それが今、これほどまでに温かく、優しいものとして自分に向けられている。イヴは、馬車の中から、その一人一人の顔を見つめた。そして、心の底からこみ上げる喜びのままに、人々に手を振り、微笑みかけた。
その、聖女の微笑みに、民衆の熱狂は、最高潮に達した。
ハーデスは、そんなイヴの横顔を、どこまでも愛おしそうに見つめていた。彼女が、自分の殻を破り、世界に愛されている。その事実が、彼に、王となるべき者としての、新たな誇りと責任感を与えていた。
この国を、そして、この世界で一番愛する女性を、必ず幸せにしてみせる。ハーデスは、心の中で、改めて固く誓うのだった。
支度を終えたイヴは、父であるアルフォンス辺境伯のエスコートを待ちながら、静かに鏡の中の自分を見つめていた。星空を纏ったかのような純白のドレス、ヴェールの下で輝くティアラ。それは、夢見ていた以上の、完璧な花嫁姿だった。
「綺麗だよ、イヴ」
部屋に入ってきた父は、娘のあまりの美しさに、一瞬、言葉を失った。その目には、誇らしさと、娘を嫁がせる父親特有の寂しさが入り混じっている。
「お父様……」
「立派になったな。……さあ、行こうか。未来の国王陛下が、お前を待っておられる」
アルフォンス辺境伯に腕を引かれ、イヴは大聖堂へと向かった。
荘厳なパイプオルガンの音色が響き渡る中、大聖堂の巨大な扉が開かれる。その先に広がるのは、真紅のバージンロードと、それを埋め尽くす王侯貴族たち。そして、祭壇の前で、自分を待つ、愛しい人の姿。
ハーデスは、純白の軍礼服に身を包み、その姿は神々しいまでに凛々しかった。彼は、ゆっくりと歩みを進めてくるイヴの姿を、まるで奇跡を見るかのように、愛情に満ちた瞳で見つめている。
父の手からハーデスの手へと、イヴの手が渡される。ハーデスは、その手を強く、そして優しく握った。
「綺麗だ、イヴ。世界で一番……」
その囁きに、イヴは最高の笑顔で応えた。
神の前で、二人は永遠の愛を誓う。
「健やかなる時も、病める時も……」と続く、形式的な誓いの言葉。だが、二人が交わす言葉は、それだけではなかった。
「私は、イヴ・ヴェルディアを、生涯、私の唯一の妻とし、その笑顔を、涙を、強さを、そして弱さを、私のすべてを懸けて愛し、守り抜くことを誓います」
ハーデスの、心の底からの誓い。
「私は、ハーデス・ロイヤル様を、生涯、私の唯一の夫とし、その喜びを、悲しみを、栄光を、そして孤独を、私のすべての愛をもって分かち合い、支え続けることを誓います」
イヴの、揺るぎない決意の言葉。
それは、神にではなく、互いの魂に直接語りかけるような、二人だけの誓いだった。
指輪が交換され、ハーデスがそっとイヴのヴェールを上げる。そして、誓いの口づけ。その瞬間、大聖堂は、割れんばかりの拍手と、祝福の歓声に包まれた。国王も、イヴの両親も、そしていつも苦労を共にしてきたギルバートも、その目には光るものがあった。
式典の後には、王都を巡る馬車でのパレードが待っていた。沿道を埋め尽くした民衆から、色とりどりの花びらと、祝福の紙吹雪が、雨のように降り注ぐ。
「聖女様、おめでとう!」
「王太子殿下、万歳!」
かつては、恐れ、避けていた人々の視線。それが今、これほどまでに温かく、優しいものとして自分に向けられている。イヴは、馬車の中から、その一人一人の顔を見つめた。そして、心の底からこみ上げる喜びのままに、人々に手を振り、微笑みかけた。
その、聖女の微笑みに、民衆の熱狂は、最高潮に達した。
ハーデスは、そんなイヴの横顔を、どこまでも愛おしそうに見つめていた。彼女が、自分の殻を破り、世界に愛されている。その事実が、彼に、王となるべき者としての、新たな誇りと責任感を与えていた。
この国を、そして、この世界で一番愛する女性を、必ず幸せにしてみせる。ハーデスは、心の中で、改めて固く誓うのだった。
53
あなたにおすすめの小説
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―
柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。
最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。
しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。
カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。
離婚届の上に、涙が落ちる。
それでもシャルロッテは信じたい。
あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。
すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる