眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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それからのこと ②

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俺は、アヤメと職場にすぐに連絡を入れる。気力、体力共に十分だったが、退院後すぐに仕事とはならなかった。

俺の眷属業、ヴァンパイアポリスへの復帰は週明けからになった。週明けまでは5日ある。
いつもの日常に戻りたい気持ちもあった。でも、その前に調べるべき事があったので、この予定のない5日間のお休みはありがたかった。俺は自分のアパートには戻らず、実家に留まって、この調査をすることにした。

まずは、ペンダントと共に入っていた紙切れに書いてあった住所を訪ねると決めていた。
なぜなら、その住所は夢の中で見た安芸の実家あたりの住所だったからだ。俺は、退院した足で、駅の近くにある電気自動車のレンタカー店に向かい、小型電気自動車を3日間の契約で借りた。

車に乗って、自動運転ナビに住所を入力する。
ピピピッ。
電子音がが鳴り「ご指定の住所が正しくありません 確認して入力しなおしてください。」と画面にメッセージが現れる。
父がこの紙切れに住所を書いたのは、大昔の事だ。合併や地番編成で住所が変わっているのかもしれない。仕方なく目的地付近を地図から探し出し、目的地を手動で設定した。
辺りは、爺さんの時代と違い、郊外型のショッピングモールや量販店が並ぶエリアに様変わりしていた。でも、道路自体が変わっていないことを祈りながら、車を走らせる。

商業施設エリアを抜け、真新しい住宅地を抜けて、30分ほど走ると不思議な事に辺りの景色ががらりと変わった。家や店がなく林道だけが延々と続いている。この道は間違いなく、あの日、爺さんがバイクでこけて安芸と出会ったあの道だ。この道路とその周辺だけは、まるで時代から取り残されたように昔のまんまそこにあった。大丈夫だ。この道は爺さんの運転で何度か通っている、(夢の中でだけど、、。)ここから安芸の家まで行く自信はある。

安芸に驚いた爺さんのバイクがこけた場所を通り過ぎる。
もうすぐだ。

林道が開けその先に、安芸の実家である杜人家が見えて来た。
やっぱりあった。俺は、家の前の空き地に車を止める。門も家も古くなっていたが、よく手入れされていて、重厚なつくりが際立って見える。

俺は、門の前に立ちインターフォンを押す。これは、じいさんがいた時代にはなかった。

「今、門を開けますので、お入りください。」

(えっ?扉が開いたら入っていいのか?)
門が開いたので、俺は遠慮なく中に入ることにした。

門の中に入り玄関まではすぐだ。実際に来たのは初めてだけど、じいさんとともに何度か来ているのでなれたもんだ。

俺の到着に合わせたかのように玄関が開く。
玄関を開けた和服の女性が「お入りください」と言って、俺の為にスリッパをを揃えた。
「お邪魔します。」俺は恐縮しながら家に入る。

案内されたのは、この家では入ったことのない大きな広間だった。
「お待ちください」そう言って女性が出て行く。

程なく、小柄な和服姿の老人が3人広間に入って来た。
じいさんの体に入っていた時も見たことがない3人だ。というか、3人とも顔に白い布を掛けており、その表情を窺い知ることは出来ない。

「ようこそいらっしゃいました。本田さん。このような姿ですみませんね。」
見た目から受ける奇異な感じとは異なり、温和な話し方だった。

「いいえ。でも、今日こちらには突然伺ったのに、なんで私がお邪魔することをご存じだったんですか?」

「ほほほほ。本田さんが今日ここに来ることは、昔から決まっていたんですよ。」

(そんなことがあるのか?でも、この不思議な一族なら何でもありかも知れない。)

「本田さんの頭の中では、いろんな疑問が渦巻いているんでしょうね。我々3人は、あなたの疑問にお答えするべくここにおります。それに、本田さんにも聞いていただきたい話があります。よろしいですかな。」

俺に断る理由は全くない。

「はい。」

「よろしい。ではまず本田さんの質問からお伺いしましょうか。」
今まで口を開いていなかった3人のうちの一人が口を開く。驚いたことに、その声は女性の声だった。この3人組のうち一人は女性らしい。俺は聞きたいことが沢山あったが、まずはこの質問からと決めていた質問をぶつけてみることにした。

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