眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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赤目ファミリー ①

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事件の進展はないものの、俺の日常が戻ってきたことに喜びを感じていたある日。

「本田く~ん。君にお願いがあるんだけど。」
猫なで声を出して赤目が近寄って来た。
(キモイっ。なんだこいつ。何を企んでやがる。)

「嫌だなぁ~。何も企んでないよ~。」
しかも、俺の考えを読んでやがる。俺は無言で、机の引き出しから、この前、宗助所長に会う時に買って使ったきりになっていた、考え読ませませんパッチ”強め”を取り出し、うなじに貼る。

「なんだよ、本田。そんなもん貼って、本田のくせに生意気だぞ!」

「それでいいんだよ。お前がキモイ猫なで声なんか出すからだろ。お願いってなんだよ。」

「あああ。それなんだけど~、今度の日曜日。君を是非ご招待したいんだよね~。」

「招待??何にだよ。」
嫌な予感がする。

「僕のお誕生日会。」

「はぁ~?お誕生日会?無理だよ。俺、仕事だし。」

「それなら、大丈夫。ここにいる捜査官5人と眷属隊の5人全員のお休みはもう取ってあるからさぁ。」

「え?なんで。そんなことできるのか?」

「できるよ。だって僕のパパは、ヴァンパイア政府や警察署に多大なる寄付をしているからね。」
(げっ、お坊ちゃま発言が出たよ。)

「でも、俺。この前、長期で休んだばっかりでまたお休みってのも気が引けるから、いいよ。俺、欠席で。」

「ダメだよ~、本田君。親友の君が来なくちゃ誕生会にならないよ。」

「おい。赤目。お前。頭大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」

「熱なんかないよ~。頼むよ本田君。いや、一宇君!一生のお願い!」
赤目の一生のお願いなんか聞く筋合いはない。

赤目は、そんな俺の顔を読んだのか、無理やり俺の手に立派な招待状を握らせて、そそくさと去って行った。
わけがわからん。赤目は俺がいない方がむしろ嬉しいんじゃないのか?
そんな俺の疑問を、次にやって来た常盤さんが払しょくする。

「本田さん。あの、赤目様のお誕生会の招待状、、、。」
彼女の目が俺の手に握られた招待状で止まる。

「良かったぁ。受け取っていただけたんですね。」

「いや、無理やり渡されたって言うか、、、。」

「はぁ~。やっぱりそうですよねぇ。」

「ねぇ。常盤さん。なんで赤目が俺を誕生会に招待したがるの?」

「それは、、、、。本田さんが誕生会に行かないなら、アヤメ様も行かないって赤目様に言ったからです。」
なるほど、、、、。そう言う理由ね。激しく納得。

俺はアヤメのところに行く。

「一宇。なんで誕生会に行くなんて言ったのよ!」
アヤメの手にも例の招待状が握られていた。

「言ってないよ。俺も無理やり招待状を渡されたんだよ。」
「全く、赤目の奴!一宇が行かないなら私も行かないってって言ったら諦めると思ったのに!だって、あんた達、犬とサルでしょ。まったくも~!」

「まったくも~じゃないよ。俺をだしに使ったのか?」

「私、苦手なのよ。赤目の家の人、、、。と言うか、赤目のお母様。」

「お前にも苦手な人っているんだな。」
俺は意外な事実についつい顔がにやける。

「にやけてるんじゃないわよ!」

「俺たち二人そろって、行かなきゃいいんじゃないか?」

「そうよね。ドタキャンしましょう。」俺たちの意見ががっちり一致した。

「いけません!」
いつからそこに居たのか常盤さんが話に割って入る。

「お願いします。アヤメ様、本田さん。赤目様のお誕生会に出席してください。」
常盤さんは必至だ。

「赤目様。お誕生日をとても楽しみにしてらっしゃるんです。その誕生会にアヤメ様がいらっしゃらなかったら、どんなにガッカリされるか、、、、。」
(あ~あ、はいはい。やっぱりアヤメね。)

「ごめんなさい、でも。私、本当にダメなのよ。赤目のママンが、、。」

「アヤメ様、、、お気持ちお察しします。」
眷属の常盤さんがアヤメに同意する。俺は赤目の母親に急に興味がわいてくる。

「赤目におっかさんってどんな人なの?」

「はぁ~~。」
アヤメと常盤さんが同時にため息をもらす。

「アヤメ様、本田さん。お願いします。常盤サキ一生のお願いです。どうか赤目様の誕生日に来てください。」

いいのか常盤さん、、。一生のお願いをあんな奴ために使ってしまって、後悔しないのか?

「一宇。どうする?」
アヤメが俺を見る。
「どうするも何も、女の子の一生のお願いを無視するなんてことは、俺にはできない。」

「本田さん、、、。」

「わかったわよ。行くわよ。行けばいいんでしょ。」

「アヤメ様、お二人ともありがとうございます。今回は、眷属の為に食事も要してありますから、沢山食べて行ってくださいね。」

赤目の母親に対する興味は尽きない。大体母親と言うものは、どの世界でも強烈なもんだ。俺のお袋だって例外じゃない。子どもを一生懸命に育てるうちに女は強烈になって行くもんだ。

おれは、赤目の誕生日にひそかな楽しみを見つけ、行くのが楽しみになっていた。

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