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リネルトさん達と合流
しおりを挟むアマリーラさんの攻撃が加えられた木々はともかく、姿が見えないリネルトさんだ。
ここにいないという事は、別行動でもしているんだろうか?
だから、アマリーラさんが暴れていたとかな。
……俺も似たような事をやっていたので、あまり暴れたとは言いたくないけど、惨状を見るに暴れるが正しそうだ。
「私ならここです、リク様」
突然、高い位置から声が降ってくる。
そちらに視線をやると、アマリーラさんがぶつかった大きな木の上、枝にぶら下がっているリネルトさんがいた。
「な、なんでそんな所に……」
「少々、アマリーラさんを止めるのに苦労しまして。最後は撥ね飛ばされたので」
撥ね飛ばされたから、枝につかまっているのか……どうしてそうなった、としか言えない。
「えーっと、大丈夫ですか?」
「えぇ。アマリーラさんと一緒にいると、こういう事はよくあるので。それに、獣人って頑丈なんですよぉ」
「そ、そうなんですか」
高さで言うと、大体四、五メートルくらいある所まで飛ばされても平気とは……。
いつもののんびりとした雰囲気を出しつつ笑っているし、本当に大丈夫なんだろう。
俺みたいに、魔力がうんぬんかんぬんでよくわからない頑丈さを持っているわけでもないのになぁ。
撥ね飛ばされるのがよくある事の方か、頑丈さの方か、どちらに驚けばいいのかわからないな。
「う、うぅ……はっ! 一瞬だけ意識が飛んでいた! リ、リク様は!?」
木にへばりついて……というか、勢いよくぶつかったんだろう、張り付いているようになっていたアマリーラさんが気付き、木にくっついたままで顔をキョロキョロとさせていた。
大きな木だから、そのままだとほとんど何も見えないだろうに……。
「アマリーラさーん、後ろ、後ろですよぉ~」
「むっ!」
ぶら下がっていた木の枝から降りて着地しつつ、アマリーラさんに声をかけるリネルトさん。
アマリーラさんは、パッと木から飛んで同じく着地してようやく木から離れた。
それはいいんだけど、アマリーラさんがくっついていた木には、アマリーラさんのものと思われる人型に傷というか凹みのような物ができているんだけど……どんな勢いでぶつかったのか。
あ、拳っぽい丸い窪みもあるな……今アマリーラさんが飛んだ時にできた物だろう。
両方空洞とか破壊跡にはなっておらず、ただ窪んでいるだけなので、それだけ力が集約されてうんぬんかんぬん……まぁ、よくわからないけどよくわからない技術的な何かがあったんだろうと思っておくことにした。
「むぅ……?」
地面に降りたアマリーラさんは、体を回転させてこちらへ向きつつ再び顔をキョロキョロと巡らせる。
いや、振り向いたアマリーラさんの正面にいるから、探す必要はないんだけど……あ、目が合った。
ようやく俺を視界に収められたらしい。
「はっ! リク様っ! ようやくお会いできました!!」
「あぁ、えっと……うん。さっきぶり、でいいのかな?」
とりあえず、あちこちの服が破れて枝葉を体中にくっつけているアマリーラさんに、手を上げておく。
森に入る前に別れたけど、あれから数時間程度なのにようやくっていうのは大げさだなぁと思いながら。
ちなみにアマリーラさん……リネルトさんもだけど、服は平均的な物を着ているのはともかく、皮鎧を部分的に身に着けている。
そちらの方は無事みたいだし、二人共特に怪我をしている様子はないから本当に頑丈なんだろう。
部分的な皮鎧は、胸当てと肘、膝を小さく覆うくらいで同じように軽装でいる事の多い冒険者さんよりもさらに軽装だ。
これは、できるだけ身軽でいる方がいいという獣人特有の性質があるとかなんとかで、必要最低限って事らしい。
まぁセンテで戦っていた時もこのスタイルだったから、慣れた恰好なんだろう……できる事なら、皮鎧どころか服も脱ぎ捨てた方が体を動かしやすいとも言っていた。
けどそれはただの裸族にしかならないので、止めて頂きたい。
その何も身に着けない方がという意見はリネルトさんの方が、強く主張していたりもする。
速度重視の戦い方をするリネルトさんは、体にまとわりつく服などで間隔が阻害されるのが嫌だとか。
アマリーラさんは逆に、そんな細かい事は気にせず豪快に動けばいいというスタンスらしいけど。
どちらにせよ、自室などで絶対に他の人に見られないとかならまだしも、外で裸族は色々と不味いからね。
「リク様と再会できるまで、一日千秋の思いでした」
「いやいや、大袈裟ですから……」
「アマリーラさんは相変わらずですねぇ」
スッと俺の前で片膝をつくアマリーラさんに、苦笑するリネルトさん。
モニカさんやも同じく苦笑しているね……フィリーナとカイツさんは、周囲の木々に手を当てたり、森の様子を話し合っているようだ。
……フィリーナ達の方に混ざりたい、と思っててはいけないのだろうか?
ともかく、さすがに数時間離れていただけなのに、一日千秋の思いというのは大袈裟過ぎる。
これまでもこれからも、一日中ずっと一緒にいるわけではないんだから。
「アマリーラさん、冗談はさておいておきましょうねぇ」
「……冗談ではないのだが」
「それでリク様、そちらの方はどうでしたかぁ?」
「そ、そうですね……」
リネルトさんが強引にアマリーラさんをスルーして、話を進める。
といっても、森に入ってからの様子などを報告しあうだけだけど。
俺達の話の後は、リネルトさん達の動向についての話をするだけだね。
そのリネルトさん達は森に入った直後、マンドラーゴと遭遇……というか異常な植物を発見して引き抜き、ラミアウネのなりかけどころではない大きな声というか音に、悶絶していた冒険者を発見したとか。
速やかに、森の周囲を監視している兵士さんに引き渡して避難させた後、ようやく森の中の探索を始めたのだとか。
マンドラーゴの事を、よく知らない冒険者もいたのか……。
俺は昨日今日とこの森に入って、一度も遭遇していないけど、体は蛇でも同じ植物系の魔物に分類される、ラミアウネに森の外側に追いやられているんだろうな。
ちなみにマンドラーゴを引き抜く時は、紐などを括り付けてできるだけ距離を取ってから引き抜く、耳栓をするか、厚めの布などで耳を塞いで音を軽減、または空いている片手だけでも一方の耳を塞ぐなどの軽減策が重要だ。
まともに至近距離であの音を聞くと、平衡感覚が短時間ながら失われるとか、色々と支障が出るからね。
まぁ一番簡単な方法は、マンドラーゴに自分で土の中から這い出てもらう事なんだけど。
方法としては、植物系らしく火に弱いので、燃えている何かなどを近づけると勝手に出て来る。
雑草とか取るに足らない植物だと擬態していても、燃やされるのはたまらないらしいから。
ただ擬態して人間が近づいて捕食、とかではないから植物の振りをしている理由は不明だ。
マンドラーゴは放っておけば、人間には無害な魔物だからね。
土の栄養を吸い取るから、近くにある植物を枯らせたりする事はあるため、そういう意味では害があるんだけども。
あと、自分から這い出すようにすると小さい人の形に近い根っこが襲ってくるため、実は戦闘という意味ではその方法が一番危険だったりする。
とはいえDランクでもさらに弱い方なので、駆け出しの冒険者でもなんとかなるくらいだけど――。
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