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55 1年後
しおりを挟む約1年後。
「——あっ、ああんっ!」
真新しいベッドをきしませながらひまりは喘いだ。
足の間を濡らしながら見慣れない天井を見ていると、よく知る顔がひまりの視界を遮り、一心不乱に腰を振る。
「ひまりっ——」
2人は悲しみを抱きながら果てた。
「はあ、はあ……」
涼太は息を荒げながら、ひまりを横から強く抱きしめる。
「ひまり、寂しい……」
「私も寂しいよ……」
ひまりは涼太の腕の中で涙を流していた。
今2人がいる場所は、涼太のマンションだ。
第1志望の大学に合格した涼太は昨日引越したばかりで、ひまりは手伝いを口実に一泊していた。
1時間後にはここを出て帰宅する予定だ。
両親が帰った昨晩から2人はずっと裸のままで、こうしてベッドをきしませている。
「俺、第1志望に受かって嬉しかったのは一瞬だったよ。ひまりと離れて暮らすんだ、と思ったら辛い感情しか生まれなかった」
「りょうちゃん……」
「俺、長期連休のたびに帰るから。ひまりの勉強の邪魔をしない程度に」
「うん」
「帰るまで、ひまりとこうしてていい?」
「うん」
2人はギリギリまでずっと体を合わせていた。
*
夕方、ひまりは1人で暗い表情を浮かべながら家に帰ってきた。
運良く親が出かけていたので、ホッと息を吐く。
悲しすぎて、寂しすぎて……今は話す気分じゃない。
ひまりは2階に上がると涼太の部屋に行き、ベッドに倒れこんだ。
我慢していた涙が勝手に溢れてくる。
涼太の香りが残るシーツを涙で濡らし、ひまりは声を上げて鳴き始めた。
しばらくして、ひまりの携帯が鳴った。
ひまりは重い体を起こし、カバンから携帯を取り出す。
表示された名前を見てすぐ、沈んだ心を弾ませた。
「はい」
ひまりは涙を拭きながら電話に出た。
『ひまり? もう着いた? たぶん今くらいかと思って電話した』
「もう家に着いたよ」
『おかえり』
「ただいま……」
ひまりは再び涼太のベッドの上に寝転がる。
『ひまり、泣いてる?』
「泣いてない……」
『嘘つき』
こらえていた涙が再び溢れてきた。
「泣いてないもん……」
ひまりは泣きながら言った。
『泣いてるじゃん』
「だって……りょうちゃんがいないんだもん! 私、無理だよ! 全部投げ出したい!」
『ひまり……こんなことで夢を諦めるの? 俺と同じ大学に行って2人暮らししたいだろ?』
「うん……でも、今は夢なんてどうでもいい。りょうちゃんとずっと一緒に居られればそれでいいもん!」
『じゃあ、なんで今日は帰ったんだよ。こっちにいればよかっただろ?』
「だって……帰らないといけなかったから……学校あるし、親が怒りそうだし」
『なんのために学校に行くんだ?』
「……」
ひまりは学校なんてどうでもいい、と思ってしまっていたので答えられなかった。
『もし今、高校やめて俺と住んでも、ずっと後悔すると思うぞ? あと1年我慢すれば、誰に文句言われることなく俺と一緒に住めると思わないか? 最悪浪人したとしても、こっちに住めばいい。俺はひまりが選んだことなら受け入れるよ。でも、ひまりには後悔して欲しくない。たとえ1年我慢しても、俺たちの関係はずっとこのままだろ? 俺は一生、ひまりだけだぞ』
涼太の言葉を聞いたひまりは少しずつ冷静になってきた。
「あと1年頑張る……りょうちゃんと同じ大学に行って、一緒に2人で生活したい」
『わかった。俺はひまりを全力で応援するよ』
「うん。りょうちゃんありがとう」
『気にすんなって。俺もひまりを引き止めたかったから』
「りょうちゃん……エッチしたい」
『ひまり、ローターある?』
「あるよ」
ひまりはカバンから取り出した。
『少しでも寂しさが消えるようにひまりを気持ちよくするから』
「うん」
ひまりは携帯をベッドの背もたれに固定し、涼太の顔が見えるようにした。
『ひまり、ゆっくり服を脱いで』
「うん」
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