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2巻
2-5
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料理を円状に囲んで、いざ出陣。
「さて、それではみなさん」
「ん? なんじゃ。まだか? もういいじゃろう?」
「タケル、俺は肉をさばいたのだから、食う権利はあるだろう?」
「そ、それならワシは葉っぱを皿に並べたぞ?」
そんな目の色をギラギラさせて言わなくても。
どんなに腹が空いていようが、糧に感謝することを忘れてはならない。
両手をパンッと合わせて――
「いただきます!」
「ピュ!」
ビーと揃って食事の挨拶をすると、飢えた三人も見よう見真似で手を合わせた。
「「「いただきます!」」」
「はい、召し上がれ」
合図とともに一斉に飛びつく野獣たち。
一口食べて目を見開き、無言で次も次もと食べ続ける。本当に美味いと思ったときは、言葉なんていらない。とにかく食べ続けるんだ。
「ううううっ、うまいいっ!」
「こいつはすげぇよ! タケルの旦那、どうなってんだ!」
「いや、そんなに凄いわけでもないんだけど」
「お前はいつもこんな飯を食うておるのか……」
「食うことが生きがいでしてね」
あつあつの肉を野菜でくるんで食べるという食べ方が斬新らしく、その食感も楽しんでもらえているようだ。
大皿に山盛り盛った肉がどんどん消えていく。面白いくらいに。
スープは残るかと思ったのに、争いながらすべてを飲んだようだ。凄いな、こいつらの食欲。
「ピュー、ピュイ」
「そうか、美味かったか。それは良かった」
自分の身体の三倍は食べたであろうビーが、律儀にごちそうさまを言ってくれた。可愛い。
他の連中も肉の切れ端一つ残さないで食べてくれたようだ。
「はあーーー! 食った食った! まさか玄武道の中でこんな美味い飯が食えるとは思わなかったぜ。ありがとうよ、タケルの旦那」
ザンボがぽっこりお腹を叩きながら豪快に笑う。
俺にとっては毎度お馴染みの料理だったが、皆大喜びしてくれた。大量に作った飯が瞬く間に消えていく様を見るのは、作り手としても嬉しい。
「喜んでもらえて何よりだ。やっぱりソースやスープの素が美味いんだよな」
「旦那が作ったのかい?」
「いや、これはトルミ村の宿屋で作ってもらったんだ。他にも味がある」
「……なんじゃと。他にどんな味があるのじゃ」
「他にもあるというのか?」
ブロライトとクレイも食いついてきた。やはり食に関することはどの種族でも等しく興味があるのだろう。固形のスープの素を見せ、どんな味がするのか説明する。
食べることは俺にとって娯楽になる。食べるために生きると言っても決して過言ではない。干し肉と硬いパンと酸っぱいワインで済ませる食事はイヤなんだ。
俺と同行してもらう以上、食事に関しては決して不自由させないからな。
大鍋一式を清潔で綺麗にし、鞄に入れる。忘れ物はないかなと辺りを見渡し、いざ奥へ再出発。
玄武の寝床を抜けると、更に広い道になっていた。
ポイズンスパイダー数匹が徒党を組んで襲ってきたり、ジャイアントバットなる肉食コウモリが襲ってきたり、スカルラットなるホネホネなネズミの集団が襲ってきたりと、忙しくなった。
反応の早いブロライトが先行逃げ切りでちぎって投げ、野生の勘鋭いクレイが的確に会心の一撃。俺とザンボ氏は体育座りで応援。無論、盾や速度上昇などのバフを撒いた。
はじめこそいちいち怯えていたザンボ氏だったが、今は慣れてしまい二人の素晴らしい戦いっぷりを興味深げに観戦する余裕すら出てきた。
ほんと、力強い用心棒だよなあ。俺より高い戦闘能力だけでもありがたいのに、報酬面で一切揉めないなんてさ。
「探査…………イルドラの反応あった!」
「おお! やっと見つかったか!」
坑道の最奥、そろそろ行き止まりになる頃に、壁の奥からイルドラ石の反応があった。まだ採掘されていない壁だ。
「ザンボさん、この壁の向こうにあるみたいだ」
「うううむ、確かにイルドラの層が見える。だが採掘用の魔道具を持って来ていないからなあ」
「俺流の採掘の仕方で採ってもいいかな。地図を変えてしまうのは困る?」
「いや、採掘が目的なんだ。できるのなら穴を空けても構わん……」
よし、許可をもらったぞ。
壁に再度集中し、ガスや地下水が溜まっていないことを確認する。崩落の危険、なし。この先しばらくイルドラの層が続いているらしく、強い反応があった。ランクCくらいは期待してもいいかな。
「それじゃあ俺の出番な。ブロライト、クレイ、ザンボさん、俺の後ろに来てくれ」
「何をするのじゃ」
「ちょっと壁をぶち壊す」
「は?」
ボルさんのおうちに行くまでに鉱石採取は経験している。完全自己流だけど。
「盾展開、剛炎展開、待機。ビー、破片が散らばらないように風精霊に頼んでくれるか」
「ピュイーイ!」
「そーれいけ!」
小さな炎の塊は、壁に当たると同時に爆発する仕組みだ。表面だけを弾き飛ばしたあとで次々と剛炎を当て続ける。
ビーの風精霊の防御術で破片は飛び散らず、薄い緑の膜に弾かれた。破片の中にも小さな鉱石があるのを目ざとく見つけ、それもいそいそと回収。
続いて、ヴォズラオの雑貨屋で購入しておいたツルハシを片手にごんごんと壁を叩き、状態の良い塊を取り出した。
【イルドライト ランクA】
イルドラ鉱石の結晶。武具に利用され、ドワーフ族が扱いに長けている。特殊な魔力に
よりその形と強度を変える。微量な魔素を含んでいる。
ブルー・マラカイトという石に似ている。藍銅鉱だ。深く青いその結晶体はベルカイムの職人街でも見たが、こっちのほうが綺麗だ。青一色じゃなくて緑や水色、黄色もところどころに混じっていた。
どうせなら綺麗な石のほうがいいのかな。強度を選ぶべきか? まあいい、状態が良いものを選べばグルサス親方をぎゃっふん言わせられるだろう。あのゲンコツみたいな顔が驚くところを見るのは今から楽しみだ。
爆破の衝撃で辺り一面ほこりまみれになったが、それも晴れるとその壁の向こうが巨大なイルドラ石の層になっているのがわかる。層に沿って青い石がひしめき合う様は見事だ。
「すげえ! すげえよ旦那! イルドライトの巨大石群だ!」
えっ?
「何これイルドラ石じゃないの?」
「イルドライトってんだ! すげえ石なんだぞ!」
そういえばランクAって出ていたな。イルドラ石は庶民の味方であり、どの都市でも流通している鉱石だから、基本的にはランクDとかEになる。
はしゃぐザンボ氏は自分のツルハシで同じく壁を叩き、大きな塊を取り出した。片目にルーペをはめ、じっくりと観察。
「うーん、うんうんうんっ! 最高の状態だ……凄い、こんな透明度の高いイルドライトははじめて見た。こりゃ宝石にも加工できるぞ」
なんか凄いの見つけたみたい。
「これ、武具にはできないのか? イルドラ石を頼まれたのに」
「何言うんだい! こいつはイルドラ石と加工方法はまったく同じだ。だがこれは、俺たちの魔力に素直に反応する、更に加工がしやすい石なんだ」
「それじゃあ、これを持って帰っても怒られない? 注文と違うって言われないかな」
「言うわけないだろう! こんな凄いもん持ってこられて断る職人がいるもんか! そんなヤツがいたら俺がぶん殴ってやる!」
よくわからないが、ともかくこれで良さそうだ。
依頼の品を忠実に採取するのが俺のモットーだったが、より良いものが見つかったのならそれでいい。
「はあー……わたしは石のことはよくわからぬが、これは見事じゃな。美しい」
「うむ。俺でさえわずかな魔力を感じる。タケル、これは魔鉱石に近いのではないか?」
クレイに指摘され、そういえばと手にしたイルドライトを再度見つめる。
俺にとって魔鉱石の基準はミスリル魔鉱石のみ。他の魔鉱石と比べられないからなんとも言えないが、確かにほんの少しだけ魔素を感じる。石の中にもじょもじょした何かの反応、という程度だけど。
魔鉱石は魔素が凝縮されて作られる魔力の結晶。つまりこの坑道内にも魔素溜まりがあったということだ。
魔素が集まるところのモンスターは更に強さを増し……
「ピュイイイィ! ピュイ! ピュイーーイィ!」
突然、ビーがいつになくけたたましく鳴いた。ばさばさと飛び、なぜか興奮している。
俺の髪を引っ張り、後頭部をつつき、顔面べろり。
「ぺぺっ! 生臭いから! わかったから! 落ち着け何があった!」
「ピュイ! ピュピュ!」
「ん? 待望の? 待望の何があるんだ。もっとゆっくり」
「ピュイイ!」
高々と響き渡るその鳴き声で、俺は我が耳を疑った。
ビーは今…………なんて言った?
「タケル、ビー、何があったのじゃ!」
「何か……察知したようだな。ブロライト」
「…………うむ? 得体の知れない何かが近づいておる」
即座に警戒態勢を取る三人。ザンボ氏は心得たとばかりに壁を背にして体育座り。俺を手招くが、俺はそっちに行かない。
「二人とも、ここは俺に任せてくれないか……」
「ぬ? 何を申す! ビーがこれほど慌てておるのじゃぞ? きっと今までにない強敵が来るに違いない!」
「いいや頼む、俺にやらせてくれ!」
だって。
だって。
「アイツだ! 坑夫たちが見た恐ろしい悪魔ってぇのは、アイツだあああ!」
ザンボ氏の特大の悲鳴とともに現れたるは、巨大な青い悪魔。
ごつごつとした外装と無数の脚、恐ろしげな鋭い刃を振り回し、奇声を発して近づく。
「よっしゃ来ぉぉぉい!!」
「ピュイイイーーーーッ!」
待望の……
カニィィィーーーーーッ!!
6 目指せご馳走、その名は刺身
【トランゴクラブ ランクA】
モンブランクラブの上位種。
魔鉱石を糧とし魔素をその外装に蓄積させる。暗い場所を好み地下に巣食う。獰猛であり、
外装はアダマンタイト並みの硬さがある。
[備考]食用に適している。煮てよし焼いてよし生でよし。
ご馳走。
じゃない! 獰猛なモンスターはっけーーーん!!
敵意むき出しにこっちに向かってくる! たった一体だけど、ランクAの超大物! しかも食用ですよ!
生で食えるとか、それなんていうご褒美だよ!
「ピュイ! ピュイイィ!」
「イデッ、待て、痛いって、おち、おちちゅけビー! 俺もヨダレがダダ漏れる!」
「ピュピュピュピュ、ピューイピュー」
「ああ、ああ、刺身で食えるぞ! 刺身だ!」
ばんざーい、ばんざーい。
俺とビーが半泣きで万歳三唱中、ブロライトとクレイは呆気に取られていた。
そりゃそうだ。高い天井につきそうなほどの巨大な青いカニが恐ろしげな殺気を放ち、物騒なハサミをしゃきんしゃきんしながらこっちに向かってきているのだから。
「タケル!! あれはトランゴクラブだ!」
「獰猛なランクAモンスターじゃぞ! 早よう逃げろ!」
逃げるなんて冗談じゃない。俺には最高のメインディッシュにしか見えない。
恐ろしい? なんてことない!
その見た目は立派なズワイガニ!!
両手のハサミはタラバ並み!
あそこはお肉がギッシリです!
「ビー! 火炎術はご法度だぞ! 坑道内が崩落しないようにあんまり暴れるな! お前の力を抑えきれないかもしれない!」
「ピューイッ!」
「一面結界展開! 速度上昇展開、軽量展開、両手両足に硬化展開!」
ユグドラシルの枝を取り出し、杖にする。
あまり大きな動きはできないから、気をつけないといけない。限られた空間内で大立ち回りなんかしたことがないが、そんなこと迷っている暇はない。
「対象物に防御力低下、行動停滞展開! …………? あんまり効かないな。魔素の影響か? まあいいや。そおおおい!」
「ピイイーーーーーッ!」
ビーの超音波攻撃でカニの三半規管を麻痺させ、行動を一瞬止める。その間に弱点である巨大な目を潰す。
「ギュアアアアアア!!」
「良いお返事! ビー、足元を凍らせろ!」
「ピュイッピー!」
モンブランクラブは狩り慣れている。それの上位種と言ったって性質は同じだろう。横にしか歩けないし関節の間は意外と脆い。そして寒さに弱く、強烈な打撃に弱い!
足元の氷に戸惑う間に一気に距離を縮め……
「ぬおおおおおっ!」
ユグドラシルの杖を両手に構え、いっせーので振り下ろす!
「ギュア! ギュアアア!」
「あれ硬いな。くっそ、もいっちょー!」
ゴムタイヤを叩いているような感覚。硬いというより手ごたえがない。外装が割れる気がしない。ユグドラシルの杖も相当な硬さがあるのだが、アダマンタイト並みって、そんなに硬いのかアダマンタイト。
それだったら雷撃で一気に攻撃すればいいが、今回はお刺身が所望なのです。
「調査」
関節に繋がる神経と、大脳位置を把握。どんな生き物でも脳みそを壊されたら動けないはずだ。
あれっ、脳みそあんなとこにあるの? やだそこお股じゃない。
「ビー、俺が関節を貫くから、お前は鎌鼬で股間を狙え!」
「ピュッ?」
「そこに頭があるんだと。ちょっとヒュンとするが致し方ない。脳みそツブせ!」
「ピュイイイーー!」
ビーの風精霊が圧縮した空気をカニの股間に撃ちつける。うおおおいヒュンとしたああ。
「ギュア! ギュアアア!!」
磯の香りがする体液を撒き散らし、カニが悶え打つ。己の欲望(食欲)のために殺すのは些か心苦しいが、許せお前の肉が美味いからだ。
それに坑道内の平和を保つため!
「とどめだ!」
カニの関節すべてに氷結針を放つ。無数の鋭い針状のそれは、カニの神経を貫いた。
「ギュアアアアア!!」
坑道内を揺さぶるほどの大絶叫。
カニは巨体を暴れさせ、ハサミを振り回し、壁に身体を打ちつけてやっとのことで絶命した。
巨体が暴れまくったわりに壁や天井は無傷。結界や盾を施さなければ、確実に崩落していただろう。それだけカニがデカかったのだ。
「カニよ、安らかに眠れ……」
「ピュイ……」
「お前は美味しくいただきます!」
「ピュイイイ!!」
合唱したあと両手に硬化を展開させ、さっそくいそいそと解体作業を……
「タケル……」
しようと思ったら、クレイがこっち睨んでいる。
ブロライトは目をキラキラさせて巨大カニを珍しそうに眺め、外装に触れてその硬さに驚いている。ザンボ氏も驚き、喜び、まだ恐ろしげに震えていた。
「これは俺がその……食べたかったので……」
「これを食うのか!? ……いや、いい。それは構わぬ。お前の嗜好はどうでもいい。だがな、タケル。俺は何だ?」
おっきな恐竜?
「俺はお前の用心棒だろうが! お前の身を守るのが俺の務め! それなのに何だ!!」
キョトン顔で首を傾げたのがまずかったようだ。クレイの逆鱗に何か触れちゃった。何で急に怒るんだよ。
「いや、これは俺のほうが戦い慣れているから」
「慣れておるのか!? ランクAの強敵だぞ!」
「モンブランクラブって下位種がおりまして」
「……スタヴロウでお前が振り回していたハサミか」
「それ言わないで黒歴史」
そこから懇々とクレイの説教が始まってしまった。
要約するに、俺が無謀だと。何のための用心棒だ、と。
そりゃ久々のご馳走……カニに目がくらんでちょっとテンション上がったけども、一応周囲の安全は守っていた。特にザンボ氏の位置を常に把握して、絶対に巻き込まないように注意していた。
「お前の強さはわかる。ランクFなどとふざけた基準はどうでもいい。お前の魔力は常軌を逸しているし、規格外なのもわかる。だがな、戦士たるものああいうときこそ冷静さを保ち、仲間の力を借り連携を」
「俺べつに戦士じゃ」
「単独で突っ込むのは無謀だと言っておるだろうが!!」
「顔怖いからやめて!!」
つまり、クレイやブロライトの手を借りれば良かったんだ。
俺一人でも確実に仕留めることができた。でもそれは結果に過ぎず、複数で行動するにはもっと仲間を信頼するべきだと。今まで単独でカニ狩をしていたから絶対の自信はあったんだけど、それを知らないクレイやブロライトは、多少なりとも心配したのだろう。
複数で動くということは、仲間を頼るということなんだ。
カニに目がくらんだ俺が悪い。それはわかるんだが、そんなに怒鳴ることないじゃないか。
「ピュッイ~♪ ピュィ~」
ビーはハイテンションだが、ザンボ氏がなぜかやたら止めるのでカニの解体は帰ってすることにし、鞄にしまう。ちょっとはみ出た肉をつまみ食ってみた。
やっばい……なにこれ超美味しい……
醤油欲しい。カニ酢欲しい。わさび欲しい。
でもこのままでも美味しい。
ザンボ氏が苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、この味を知らないからだ。知らなくていい。美味いとわかるのは、俺とビーだけでいい。
「あらかた採り終えたが……この先にまだ反応があるみたいだ」
イルドライトを見える範囲だけすべて採り終えると、ザンボ氏はほくほく顔で振り向いた。この鉱脈発見が相当嬉しいらしい。とはいえ、まだ壁の奥に反応があるから、イルドライトはあと数十倍採掘ができるはず。
更に、カニが来た方向の先にも反応があった。
「まだあるのか? 何の層なのかわかるか?」
「うーんと……」
反応は間違いなくイルドラ石だった。
しかもイルドライトよりも巨大な層になっており、この奥を掘り進めば何百万トンもの採掘が見込めるだろう。
ふと、あのカニがこの坑道に出たのを、こう推測する。まあ言うまでもなく、ボルさんのせいだ。
いや、そうじゃなくて。
ボルさんの周囲で停滞していた魔素を浄化した影響でリュハイ鉱山に何らかの影響が出て、地震となって現れた。地震で崩壊した坑道の一部にトランゴクラブが眠っており、目覚めてしまったと。カニはイルドライトの魔素を糧にして巨大化。坑夫が気づいたときには手におえないほどの獰猛なモンスターになってしまったのだ。
今まで大型のモンスターが出なかったのは、溜まっていた魔素がモンスターを眠らせる役目を帯びていたから。これボルさんのときと同じ事情。
俺はモンスターの生態に詳しくないし、魔素についてはさっぱりだ。ただし、これだけは言える。今後、この坑道内には大型のモンスターが出没することとなるだろう。
でもランクCの冒険者だったら苦戦することもなく倒せるだろうし、注意すべきはポイズンスパイダーくらい。それについては解毒の薬を持っていけばいい。護衛を付けながら採掘作業を続けることも可能だ。
「さて、それではみなさん」
「ん? なんじゃ。まだか? もういいじゃろう?」
「タケル、俺は肉をさばいたのだから、食う権利はあるだろう?」
「そ、それならワシは葉っぱを皿に並べたぞ?」
そんな目の色をギラギラさせて言わなくても。
どんなに腹が空いていようが、糧に感謝することを忘れてはならない。
両手をパンッと合わせて――
「いただきます!」
「ピュ!」
ビーと揃って食事の挨拶をすると、飢えた三人も見よう見真似で手を合わせた。
「「「いただきます!」」」
「はい、召し上がれ」
合図とともに一斉に飛びつく野獣たち。
一口食べて目を見開き、無言で次も次もと食べ続ける。本当に美味いと思ったときは、言葉なんていらない。とにかく食べ続けるんだ。
「ううううっ、うまいいっ!」
「こいつはすげぇよ! タケルの旦那、どうなってんだ!」
「いや、そんなに凄いわけでもないんだけど」
「お前はいつもこんな飯を食うておるのか……」
「食うことが生きがいでしてね」
あつあつの肉を野菜でくるんで食べるという食べ方が斬新らしく、その食感も楽しんでもらえているようだ。
大皿に山盛り盛った肉がどんどん消えていく。面白いくらいに。
スープは残るかと思ったのに、争いながらすべてを飲んだようだ。凄いな、こいつらの食欲。
「ピュー、ピュイ」
「そうか、美味かったか。それは良かった」
自分の身体の三倍は食べたであろうビーが、律儀にごちそうさまを言ってくれた。可愛い。
他の連中も肉の切れ端一つ残さないで食べてくれたようだ。
「はあーーー! 食った食った! まさか玄武道の中でこんな美味い飯が食えるとは思わなかったぜ。ありがとうよ、タケルの旦那」
ザンボがぽっこりお腹を叩きながら豪快に笑う。
俺にとっては毎度お馴染みの料理だったが、皆大喜びしてくれた。大量に作った飯が瞬く間に消えていく様を見るのは、作り手としても嬉しい。
「喜んでもらえて何よりだ。やっぱりソースやスープの素が美味いんだよな」
「旦那が作ったのかい?」
「いや、これはトルミ村の宿屋で作ってもらったんだ。他にも味がある」
「……なんじゃと。他にどんな味があるのじゃ」
「他にもあるというのか?」
ブロライトとクレイも食いついてきた。やはり食に関することはどの種族でも等しく興味があるのだろう。固形のスープの素を見せ、どんな味がするのか説明する。
食べることは俺にとって娯楽になる。食べるために生きると言っても決して過言ではない。干し肉と硬いパンと酸っぱいワインで済ませる食事はイヤなんだ。
俺と同行してもらう以上、食事に関しては決して不自由させないからな。
大鍋一式を清潔で綺麗にし、鞄に入れる。忘れ物はないかなと辺りを見渡し、いざ奥へ再出発。
玄武の寝床を抜けると、更に広い道になっていた。
ポイズンスパイダー数匹が徒党を組んで襲ってきたり、ジャイアントバットなる肉食コウモリが襲ってきたり、スカルラットなるホネホネなネズミの集団が襲ってきたりと、忙しくなった。
反応の早いブロライトが先行逃げ切りでちぎって投げ、野生の勘鋭いクレイが的確に会心の一撃。俺とザンボ氏は体育座りで応援。無論、盾や速度上昇などのバフを撒いた。
はじめこそいちいち怯えていたザンボ氏だったが、今は慣れてしまい二人の素晴らしい戦いっぷりを興味深げに観戦する余裕すら出てきた。
ほんと、力強い用心棒だよなあ。俺より高い戦闘能力だけでもありがたいのに、報酬面で一切揉めないなんてさ。
「探査…………イルドラの反応あった!」
「おお! やっと見つかったか!」
坑道の最奥、そろそろ行き止まりになる頃に、壁の奥からイルドラ石の反応があった。まだ採掘されていない壁だ。
「ザンボさん、この壁の向こうにあるみたいだ」
「うううむ、確かにイルドラの層が見える。だが採掘用の魔道具を持って来ていないからなあ」
「俺流の採掘の仕方で採ってもいいかな。地図を変えてしまうのは困る?」
「いや、採掘が目的なんだ。できるのなら穴を空けても構わん……」
よし、許可をもらったぞ。
壁に再度集中し、ガスや地下水が溜まっていないことを確認する。崩落の危険、なし。この先しばらくイルドラの層が続いているらしく、強い反応があった。ランクCくらいは期待してもいいかな。
「それじゃあ俺の出番な。ブロライト、クレイ、ザンボさん、俺の後ろに来てくれ」
「何をするのじゃ」
「ちょっと壁をぶち壊す」
「は?」
ボルさんのおうちに行くまでに鉱石採取は経験している。完全自己流だけど。
「盾展開、剛炎展開、待機。ビー、破片が散らばらないように風精霊に頼んでくれるか」
「ピュイーイ!」
「そーれいけ!」
小さな炎の塊は、壁に当たると同時に爆発する仕組みだ。表面だけを弾き飛ばしたあとで次々と剛炎を当て続ける。
ビーの風精霊の防御術で破片は飛び散らず、薄い緑の膜に弾かれた。破片の中にも小さな鉱石があるのを目ざとく見つけ、それもいそいそと回収。
続いて、ヴォズラオの雑貨屋で購入しておいたツルハシを片手にごんごんと壁を叩き、状態の良い塊を取り出した。
【イルドライト ランクA】
イルドラ鉱石の結晶。武具に利用され、ドワーフ族が扱いに長けている。特殊な魔力に
よりその形と強度を変える。微量な魔素を含んでいる。
ブルー・マラカイトという石に似ている。藍銅鉱だ。深く青いその結晶体はベルカイムの職人街でも見たが、こっちのほうが綺麗だ。青一色じゃなくて緑や水色、黄色もところどころに混じっていた。
どうせなら綺麗な石のほうがいいのかな。強度を選ぶべきか? まあいい、状態が良いものを選べばグルサス親方をぎゃっふん言わせられるだろう。あのゲンコツみたいな顔が驚くところを見るのは今から楽しみだ。
爆破の衝撃で辺り一面ほこりまみれになったが、それも晴れるとその壁の向こうが巨大なイルドラ石の層になっているのがわかる。層に沿って青い石がひしめき合う様は見事だ。
「すげえ! すげえよ旦那! イルドライトの巨大石群だ!」
えっ?
「何これイルドラ石じゃないの?」
「イルドライトってんだ! すげえ石なんだぞ!」
そういえばランクAって出ていたな。イルドラ石は庶民の味方であり、どの都市でも流通している鉱石だから、基本的にはランクDとかEになる。
はしゃぐザンボ氏は自分のツルハシで同じく壁を叩き、大きな塊を取り出した。片目にルーペをはめ、じっくりと観察。
「うーん、うんうんうんっ! 最高の状態だ……凄い、こんな透明度の高いイルドライトははじめて見た。こりゃ宝石にも加工できるぞ」
なんか凄いの見つけたみたい。
「これ、武具にはできないのか? イルドラ石を頼まれたのに」
「何言うんだい! こいつはイルドラ石と加工方法はまったく同じだ。だがこれは、俺たちの魔力に素直に反応する、更に加工がしやすい石なんだ」
「それじゃあ、これを持って帰っても怒られない? 注文と違うって言われないかな」
「言うわけないだろう! こんな凄いもん持ってこられて断る職人がいるもんか! そんなヤツがいたら俺がぶん殴ってやる!」
よくわからないが、ともかくこれで良さそうだ。
依頼の品を忠実に採取するのが俺のモットーだったが、より良いものが見つかったのならそれでいい。
「はあー……わたしは石のことはよくわからぬが、これは見事じゃな。美しい」
「うむ。俺でさえわずかな魔力を感じる。タケル、これは魔鉱石に近いのではないか?」
クレイに指摘され、そういえばと手にしたイルドライトを再度見つめる。
俺にとって魔鉱石の基準はミスリル魔鉱石のみ。他の魔鉱石と比べられないからなんとも言えないが、確かにほんの少しだけ魔素を感じる。石の中にもじょもじょした何かの反応、という程度だけど。
魔鉱石は魔素が凝縮されて作られる魔力の結晶。つまりこの坑道内にも魔素溜まりがあったということだ。
魔素が集まるところのモンスターは更に強さを増し……
「ピュイイイィ! ピュイ! ピュイーーイィ!」
突然、ビーがいつになくけたたましく鳴いた。ばさばさと飛び、なぜか興奮している。
俺の髪を引っ張り、後頭部をつつき、顔面べろり。
「ぺぺっ! 生臭いから! わかったから! 落ち着け何があった!」
「ピュイ! ピュピュ!」
「ん? 待望の? 待望の何があるんだ。もっとゆっくり」
「ピュイイ!」
高々と響き渡るその鳴き声で、俺は我が耳を疑った。
ビーは今…………なんて言った?
「タケル、ビー、何があったのじゃ!」
「何か……察知したようだな。ブロライト」
「…………うむ? 得体の知れない何かが近づいておる」
即座に警戒態勢を取る三人。ザンボ氏は心得たとばかりに壁を背にして体育座り。俺を手招くが、俺はそっちに行かない。
「二人とも、ここは俺に任せてくれないか……」
「ぬ? 何を申す! ビーがこれほど慌てておるのじゃぞ? きっと今までにない強敵が来るに違いない!」
「いいや頼む、俺にやらせてくれ!」
だって。
だって。
「アイツだ! 坑夫たちが見た恐ろしい悪魔ってぇのは、アイツだあああ!」
ザンボ氏の特大の悲鳴とともに現れたるは、巨大な青い悪魔。
ごつごつとした外装と無数の脚、恐ろしげな鋭い刃を振り回し、奇声を発して近づく。
「よっしゃ来ぉぉぉい!!」
「ピュイイイーーーーッ!」
待望の……
カニィィィーーーーーッ!!
6 目指せご馳走、その名は刺身
【トランゴクラブ ランクA】
モンブランクラブの上位種。
魔鉱石を糧とし魔素をその外装に蓄積させる。暗い場所を好み地下に巣食う。獰猛であり、
外装はアダマンタイト並みの硬さがある。
[備考]食用に適している。煮てよし焼いてよし生でよし。
ご馳走。
じゃない! 獰猛なモンスターはっけーーーん!!
敵意むき出しにこっちに向かってくる! たった一体だけど、ランクAの超大物! しかも食用ですよ!
生で食えるとか、それなんていうご褒美だよ!
「ピュイ! ピュイイィ!」
「イデッ、待て、痛いって、おち、おちちゅけビー! 俺もヨダレがダダ漏れる!」
「ピュピュピュピュ、ピューイピュー」
「ああ、ああ、刺身で食えるぞ! 刺身だ!」
ばんざーい、ばんざーい。
俺とビーが半泣きで万歳三唱中、ブロライトとクレイは呆気に取られていた。
そりゃそうだ。高い天井につきそうなほどの巨大な青いカニが恐ろしげな殺気を放ち、物騒なハサミをしゃきんしゃきんしながらこっちに向かってきているのだから。
「タケル!! あれはトランゴクラブだ!」
「獰猛なランクAモンスターじゃぞ! 早よう逃げろ!」
逃げるなんて冗談じゃない。俺には最高のメインディッシュにしか見えない。
恐ろしい? なんてことない!
その見た目は立派なズワイガニ!!
両手のハサミはタラバ並み!
あそこはお肉がギッシリです!
「ビー! 火炎術はご法度だぞ! 坑道内が崩落しないようにあんまり暴れるな! お前の力を抑えきれないかもしれない!」
「ピューイッ!」
「一面結界展開! 速度上昇展開、軽量展開、両手両足に硬化展開!」
ユグドラシルの枝を取り出し、杖にする。
あまり大きな動きはできないから、気をつけないといけない。限られた空間内で大立ち回りなんかしたことがないが、そんなこと迷っている暇はない。
「対象物に防御力低下、行動停滞展開! …………? あんまり効かないな。魔素の影響か? まあいいや。そおおおい!」
「ピイイーーーーーッ!」
ビーの超音波攻撃でカニの三半規管を麻痺させ、行動を一瞬止める。その間に弱点である巨大な目を潰す。
「ギュアアアアアア!!」
「良いお返事! ビー、足元を凍らせろ!」
「ピュイッピー!」
モンブランクラブは狩り慣れている。それの上位種と言ったって性質は同じだろう。横にしか歩けないし関節の間は意外と脆い。そして寒さに弱く、強烈な打撃に弱い!
足元の氷に戸惑う間に一気に距離を縮め……
「ぬおおおおおっ!」
ユグドラシルの杖を両手に構え、いっせーので振り下ろす!
「ギュア! ギュアアア!」
「あれ硬いな。くっそ、もいっちょー!」
ゴムタイヤを叩いているような感覚。硬いというより手ごたえがない。外装が割れる気がしない。ユグドラシルの杖も相当な硬さがあるのだが、アダマンタイト並みって、そんなに硬いのかアダマンタイト。
それだったら雷撃で一気に攻撃すればいいが、今回はお刺身が所望なのです。
「調査」
関節に繋がる神経と、大脳位置を把握。どんな生き物でも脳みそを壊されたら動けないはずだ。
あれっ、脳みそあんなとこにあるの? やだそこお股じゃない。
「ビー、俺が関節を貫くから、お前は鎌鼬で股間を狙え!」
「ピュッ?」
「そこに頭があるんだと。ちょっとヒュンとするが致し方ない。脳みそツブせ!」
「ピュイイイーー!」
ビーの風精霊が圧縮した空気をカニの股間に撃ちつける。うおおおいヒュンとしたああ。
「ギュア! ギュアアア!!」
磯の香りがする体液を撒き散らし、カニが悶え打つ。己の欲望(食欲)のために殺すのは些か心苦しいが、許せお前の肉が美味いからだ。
それに坑道内の平和を保つため!
「とどめだ!」
カニの関節すべてに氷結針を放つ。無数の鋭い針状のそれは、カニの神経を貫いた。
「ギュアアアアア!!」
坑道内を揺さぶるほどの大絶叫。
カニは巨体を暴れさせ、ハサミを振り回し、壁に身体を打ちつけてやっとのことで絶命した。
巨体が暴れまくったわりに壁や天井は無傷。結界や盾を施さなければ、確実に崩落していただろう。それだけカニがデカかったのだ。
「カニよ、安らかに眠れ……」
「ピュイ……」
「お前は美味しくいただきます!」
「ピュイイイ!!」
合唱したあと両手に硬化を展開させ、さっそくいそいそと解体作業を……
「タケル……」
しようと思ったら、クレイがこっち睨んでいる。
ブロライトは目をキラキラさせて巨大カニを珍しそうに眺め、外装に触れてその硬さに驚いている。ザンボ氏も驚き、喜び、まだ恐ろしげに震えていた。
「これは俺がその……食べたかったので……」
「これを食うのか!? ……いや、いい。それは構わぬ。お前の嗜好はどうでもいい。だがな、タケル。俺は何だ?」
おっきな恐竜?
「俺はお前の用心棒だろうが! お前の身を守るのが俺の務め! それなのに何だ!!」
キョトン顔で首を傾げたのがまずかったようだ。クレイの逆鱗に何か触れちゃった。何で急に怒るんだよ。
「いや、これは俺のほうが戦い慣れているから」
「慣れておるのか!? ランクAの強敵だぞ!」
「モンブランクラブって下位種がおりまして」
「……スタヴロウでお前が振り回していたハサミか」
「それ言わないで黒歴史」
そこから懇々とクレイの説教が始まってしまった。
要約するに、俺が無謀だと。何のための用心棒だ、と。
そりゃ久々のご馳走……カニに目がくらんでちょっとテンション上がったけども、一応周囲の安全は守っていた。特にザンボ氏の位置を常に把握して、絶対に巻き込まないように注意していた。
「お前の強さはわかる。ランクFなどとふざけた基準はどうでもいい。お前の魔力は常軌を逸しているし、規格外なのもわかる。だがな、戦士たるものああいうときこそ冷静さを保ち、仲間の力を借り連携を」
「俺べつに戦士じゃ」
「単独で突っ込むのは無謀だと言っておるだろうが!!」
「顔怖いからやめて!!」
つまり、クレイやブロライトの手を借りれば良かったんだ。
俺一人でも確実に仕留めることができた。でもそれは結果に過ぎず、複数で行動するにはもっと仲間を信頼するべきだと。今まで単独でカニ狩をしていたから絶対の自信はあったんだけど、それを知らないクレイやブロライトは、多少なりとも心配したのだろう。
複数で動くということは、仲間を頼るということなんだ。
カニに目がくらんだ俺が悪い。それはわかるんだが、そんなに怒鳴ることないじゃないか。
「ピュッイ~♪ ピュィ~」
ビーはハイテンションだが、ザンボ氏がなぜかやたら止めるのでカニの解体は帰ってすることにし、鞄にしまう。ちょっとはみ出た肉をつまみ食ってみた。
やっばい……なにこれ超美味しい……
醤油欲しい。カニ酢欲しい。わさび欲しい。
でもこのままでも美味しい。
ザンボ氏が苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、この味を知らないからだ。知らなくていい。美味いとわかるのは、俺とビーだけでいい。
「あらかた採り終えたが……この先にまだ反応があるみたいだ」
イルドライトを見える範囲だけすべて採り終えると、ザンボ氏はほくほく顔で振り向いた。この鉱脈発見が相当嬉しいらしい。とはいえ、まだ壁の奥に反応があるから、イルドライトはあと数十倍採掘ができるはず。
更に、カニが来た方向の先にも反応があった。
「まだあるのか? 何の層なのかわかるか?」
「うーんと……」
反応は間違いなくイルドラ石だった。
しかもイルドライトよりも巨大な層になっており、この奥を掘り進めば何百万トンもの採掘が見込めるだろう。
ふと、あのカニがこの坑道に出たのを、こう推測する。まあ言うまでもなく、ボルさんのせいだ。
いや、そうじゃなくて。
ボルさんの周囲で停滞していた魔素を浄化した影響でリュハイ鉱山に何らかの影響が出て、地震となって現れた。地震で崩壊した坑道の一部にトランゴクラブが眠っており、目覚めてしまったと。カニはイルドライトの魔素を糧にして巨大化。坑夫が気づいたときには手におえないほどの獰猛なモンスターになってしまったのだ。
今まで大型のモンスターが出なかったのは、溜まっていた魔素がモンスターを眠らせる役目を帯びていたから。これボルさんのときと同じ事情。
俺はモンスターの生態に詳しくないし、魔素についてはさっぱりだ。ただし、これだけは言える。今後、この坑道内には大型のモンスターが出没することとなるだろう。
でもランクCの冒険者だったら苦戦することもなく倒せるだろうし、注意すべきはポイズンスパイダーくらい。それについては解毒の薬を持っていけばいい。護衛を付けながら採掘作業を続けることも可能だ。
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