愛を騙るな

篠月珪霞

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中編

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宰相との会話で、久しく顔を合わせていなかった息子を思い出した。
食事の席もここのところ別だったが、王妃にしか関心がなかったエドリュートは気付きもしていなかったのだ。







「リュートよ、息災であるか」
「…国王へいかにごあいさついたします。どのようなご用件でしょうか」

まだ3歳という幼少の年齢であるにも関わらず、父である国王を見る目は冷めきっている。口上もとても3歳児とは思えない。授業を中断させてしまったことが理由ではないだろう。可愛げがないと思った。
生まれたときはあまりの嬉しさと喜びで、自分の名の一部を与えたほどだったというのに。

「いや、勉学の方は順調であるか」
「すすめています」
「武芸の方はどうか。勉学だけでは身体がなまってしまうからな」
「今はきそを中心に、体力をつけています」
「…そうか」

こちらが尋ねることには答えるが、話しが広がらない。一言で会話が終わってしまう。改めて、至近距離から息子を見る。国王が育児というものに関わることは皆無だ。育児、教育等は報告を受けるのみ。だからなのだろうか。
見れば見るほど、自分には似ていないように思える。髪も目もセシリアの色を受け継いではいるが、性差のためなのか他に共通項があまり見当たらない。
セシリアが純潔であったことは、エドリュート自身が一番よく分かっているので、間違いなく王妃との子なのだが。

「その、セシリアとはどうか」

王妃との交流はどうであろうと窺ってみると、ぴくりと反応がある。

「母上が、なにか」
「どうというわけではないのだが…」
「なにかあったわけではないのですね?」
「ああ、体調を崩したり臥せっているわけでもない」
「ならば、もんだいありません」

こういう冷たさ、素っ気なさはよく似ている。口調や態度が、エドリュートに対するセシリアそのもののように。
一度、2人がお茶会を開いているときに、先触れなしに乱入したことがあった。
執務室の窓の外から、楽しそうな笑い声が聞こえていて、最初は耳を疑った。笑い声など、セシリアのものも、この息子のものも聞いたことがなかったからだ。
軽くはない嫉妬心と興味を抱き、現れたエドリュートの姿を見ると、2人揃って感情がなくなった。感情のコントロールどころではなく、完璧な無表情だった。
無言で席を立った2人を呼び止める間もなく、侍女も侍従も続いていった。
その日以来、中庭でお茶会を開いているのを見たことがない。

「もうよろしいですか、へいか。じゅぎょうを再開させたいので」
「あ、ああ。急にすまなかった」

追い出される形になったエドリュートは、何か、どこかが釈然としないまま、首をひねりながら執務室に戻った。


















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