2 / 4
中編
しおりを挟む
宰相との会話で、久しく顔を合わせていなかった息子を思い出した。
食事の席もここのところ別だったが、王妃にしか関心がなかったエドリュートは気付きもしていなかったのだ。
「リュートよ、息災であるか」
「…国王へいかにごあいさついたします。どのようなご用件でしょうか」
まだ3歳という幼少の年齢であるにも関わらず、父である国王を見る目は冷めきっている。口上もとても3歳児とは思えない。授業を中断させてしまったことが理由ではないだろう。可愛げがないと思った。
生まれたときはあまりの嬉しさと喜びで、自分の名の一部を与えたほどだったというのに。
「いや、勉学の方は順調であるか」
「すすめています」
「武芸の方はどうか。勉学だけでは身体がなまってしまうからな」
「今はきそを中心に、体力をつけています」
「…そうか」
こちらが尋ねることには答えるが、話しが広がらない。一言で会話が終わってしまう。改めて、至近距離から息子を見る。国王が育児というものに関わることは皆無だ。育児、教育等は報告を受けるのみ。だからなのだろうか。
見れば見るほど、自分には似ていないように思える。髪も目もセシリアの色を受け継いではいるが、性差のためなのか他に共通項があまり見当たらない。
セシリアが純潔であったことは、エドリュート自身が一番よく分かっているので、間違いなく王妃との子なのだが。
「その、セシリアとはどうか」
王妃との交流はどうであろうと窺ってみると、ぴくりと反応がある。
「母上が、なにか」
「どうというわけではないのだが…」
「なにかあったわけではないのですね?」
「ああ、体調を崩したり臥せっているわけでもない」
「ならば、もんだいありません」
こういう冷たさ、素っ気なさはよく似ている。口調や態度が、エドリュートに対するセシリアそのもののように。
一度、2人がお茶会を開いているときに、先触れなしに乱入したことがあった。
執務室の窓の外から、楽しそうな笑い声が聞こえていて、最初は耳を疑った。笑い声など、セシリアのものも、この息子のものも聞いたことがなかったからだ。
軽くはない嫉妬心と興味を抱き、現れたエドリュートの姿を見ると、2人揃って感情がなくなった。感情のコントロールどころではなく、完璧な無表情だった。
無言で席を立った2人を呼び止める間もなく、侍女も侍従も続いていった。
その日以来、中庭でお茶会を開いているのを見たことがない。
「もうよろしいですか、へいか。じゅぎょうを再開させたいので」
「あ、ああ。急にすまなかった」
追い出される形になったエドリュートは、何か、どこかが釈然としないまま、首をひねりながら執務室に戻った。
食事の席もここのところ別だったが、王妃にしか関心がなかったエドリュートは気付きもしていなかったのだ。
「リュートよ、息災であるか」
「…国王へいかにごあいさついたします。どのようなご用件でしょうか」
まだ3歳という幼少の年齢であるにも関わらず、父である国王を見る目は冷めきっている。口上もとても3歳児とは思えない。授業を中断させてしまったことが理由ではないだろう。可愛げがないと思った。
生まれたときはあまりの嬉しさと喜びで、自分の名の一部を与えたほどだったというのに。
「いや、勉学の方は順調であるか」
「すすめています」
「武芸の方はどうか。勉学だけでは身体がなまってしまうからな」
「今はきそを中心に、体力をつけています」
「…そうか」
こちらが尋ねることには答えるが、話しが広がらない。一言で会話が終わってしまう。改めて、至近距離から息子を見る。国王が育児というものに関わることは皆無だ。育児、教育等は報告を受けるのみ。だからなのだろうか。
見れば見るほど、自分には似ていないように思える。髪も目もセシリアの色を受け継いではいるが、性差のためなのか他に共通項があまり見当たらない。
セシリアが純潔であったことは、エドリュート自身が一番よく分かっているので、間違いなく王妃との子なのだが。
「その、セシリアとはどうか」
王妃との交流はどうであろうと窺ってみると、ぴくりと反応がある。
「母上が、なにか」
「どうというわけではないのだが…」
「なにかあったわけではないのですね?」
「ああ、体調を崩したり臥せっているわけでもない」
「ならば、もんだいありません」
こういう冷たさ、素っ気なさはよく似ている。口調や態度が、エドリュートに対するセシリアそのもののように。
一度、2人がお茶会を開いているときに、先触れなしに乱入したことがあった。
執務室の窓の外から、楽しそうな笑い声が聞こえていて、最初は耳を疑った。笑い声など、セシリアのものも、この息子のものも聞いたことがなかったからだ。
軽くはない嫉妬心と興味を抱き、現れたエドリュートの姿を見ると、2人揃って感情がなくなった。感情のコントロールどころではなく、完璧な無表情だった。
無言で席を立った2人を呼び止める間もなく、侍女も侍従も続いていった。
その日以来、中庭でお茶会を開いているのを見たことがない。
「もうよろしいですか、へいか。じゅぎょうを再開させたいので」
「あ、ああ。急にすまなかった」
追い出される形になったエドリュートは、何か、どこかが釈然としないまま、首をひねりながら執務室に戻った。
440
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
夫は私を愛していないらしい
にゃみ3
恋愛
侯爵夫人ヴィオレッタは、夫から愛されていない哀れな女として社交界で有名だった。
若くして侯爵となった夫エリオットは、冷静で寡黙な性格。妻に甘い言葉をかけることも、優しく微笑むこともない。
どれだけ人々に噂されようが、ヴィオレッタは気にすることなく平穏な毎日を送っていた。
「侯爵様から愛されていないヴィオレッタ様が、お可哀想でなりませんの」
そんなある日、一人の貴婦人が声をかけてきて……。
病弱令嬢…?いいえ私は…
月樹《つき》
恋愛
アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。
(ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!)
謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。
このお話は他サイトにも投稿しております。
花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。
断罪された薔薇の話
倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。
ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。
とても切ない物語です。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる