【完結】その手をとらせて《完全版》

※(kome)

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ランプの魔人と水族館Ⅰ

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魔人との交流が進んだ。

こう書くと、ずいぶん平穏に事が進んだように見えるかもしれないが、まぁ。

……語らない方が、美しい思い出になるだろう。

俺の説教スキルが、もはやカンスト寸前である。

これだけで、俺の苦労は察してもらえるだろう。



魔人は明るく好奇心旺盛で、なんにでもすぐに首を突っ込んでしまう。
だから、俺が日中不在にしている間も好奇心の赴くまま遊び歩いている。
そう思っていた。

それが蓋を開けてみれば、日がな一日中、寝ているときた。

あぁ、そうだ。
寝ている、で思い出した事がある。
ちょっと話が逸れるが、関係あることなのでここで話しておこう。

いつのことだったか。
魔人の定位置であるクッションソファの上で、丸くなって眠る大型犬がいて大変に驚いた。

ペット可物件であり、一階の一番奥の角部屋とはいえ、大型犬となればそれなりの配慮が必要になる。

まずは大家さんへの報告、隣部屋への挨拶からはじまり、と頭の中を高速で対処法が回っていた。
もちろん、それと並列思考で家主に無断で良くも犬を拾ってきたな、と元凶への怒りに飲まれてもいたが。

その最中に突然、犬が起きたかと思うと。
大きく伸びをしながら見慣れた男の姿へ変わったものだから、安堵と、更なる怒りを覚えたのだった。


閑話休題。
とまぁ、こういったことはあれど、魔人が買い出し以外にこれといった外出をしないのは、たぶん。

例の悪癖の一貫なのだろう。
究極的にいえば、俺に迷惑をかけたくないのだ。

ランプの魔人という、異物。
これが存在することによる、不協和音。
それにより発生するマイナスの影響、その一切合切。

これを自らの主に被らせない。

それが、この男の足かせとなっているのだと気づいたとき。

馬鹿だなぁ、と思った。

そんなもの、原因となるものが世界にとっての異物でなくとも、大なり小なり発生するものだ。

それなのに、なにを遠慮しているのだろう。
変なところで気を遣う大馬鹿者に、説教をしてやろうかと思ったのだが。

たぶん、芯からは理解しきらない、そんな気がする。

なら、俺は俺で好きにすると決めた。
あいつはあいつで俺を振り回すのだから、これでおあいこってものだろう。

まずは俺の目の届く範囲では好きなことをしていいのだと、叩きこんでやる。
それが実感できれば、おのずと好きに遊び歩くだろう。

カラオケ、ゲームセンター、バッティングセンター。

遊園地だとか、映画館だとか、水族館だとか。

そういったところに連れて行ったとき。

どれだけ喜ぶだろうか、と想像するのは少し楽しい。

そんな計画を立てている俺自身、年の近い友達と遊び歩くような経験があまりなかったから、密かに楽しみなのだ。


そうして行き先も告げずに連れてきたのは都内でも有数の遊興施設。

静謐な空間の中に豊富な水を湛える、水族館。

ここに魔人を連れてきた。
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