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仙界にて
7 龍の祝部候補
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慎也は部屋でそのまま何時間か待機させられた後、呼ばれた。
草履を借り、外に出ると、二人の男がいた。彼らが、他の候補であるようだ。
一人はラフなジーパン姿の目つきの悪い男。がっちりした体で、いかにも腕力に自信ありというタイプだ。
顔にある痣は、祥子にやられたものらしい。
祥子に促され、田上康則と名乗った。
もう一人は黒いスーツ姿と言って良いのか。暖かいので上着は脱いでいるのだが…。
背が高く、スラリとしていて、靴を含めて着ている物は高価そうだ。気障な感じで、ホストでもしているのか思っていたら、自分でホストクラブのホストだと言った。
こちらは、石井章介と名乗った。
田上は、慎也の持っている物より太い木刀を持っている。
石井は脱いでいる自分の上着を畳み持ち、木刀は手にしていない。
慎也も二人に続いて名乗り、祥子に従って二人の間近に移動した。
「これより三人で順番を決めよ。決まった後は、それぞれの部屋へ戻れ。
巫女との交合は明日の朝、日の出の時間じゃ。それまでは、勝手に部屋から出てはならぬ。
日の出三十分前に銅鑼をならす。それを合図に、あそこの階段を上がって儀式場へ集合じゃ。よいな」
祥子の説明が終わった。
彼女は、三人から少し距離を取った。
そして…。
「では、順番決めを始めよ!」
祥子の声と同時に、田上が、いきなり木刀を振り上げ、慎也に殴りかかってきた。
慎也は話し合いをしようとしていた。だが、口を開く隙も与えられない。避ける間も無く、ゴツイ木刀は慎也の右腕にめり込んだ。
ボキッ!!
鈍い、嫌な音。そして、激痛。
(痛い! 問答無用かよ!)
構わず二発目・三発目と、同じところに入れてくる。
慎也の右腕は、あらぬ方に曲がった。同時に、途轍もない痛みだ。
「俺が一番、こいつが二番、お前が三番だ」
木刀を肩に担いだ田上は、木刀を取り落として蹲る慎也に、そう宣言した。その隣では、石井がニヤニヤ笑っている。
(こいつら、もう談合してやがる。う、右腕が…。気が遠くなりそうだ)
「よし、決定だ」
二人の男は向きを変え、慎也を放置して、慎也の部屋の隣の二室に、それぞれ入って行ってしまった。
祥子は、それを見送り、動けない慎也に、哀れむような表情で近づいてきた。
「むごいのう。ここまでするとは…。こんな非道は初めてじゃ」
言葉をかけるが、助けようとはしない。
そもそも、あの念力で、止めてくれても良かっただろうに…。説明はするが、余計な干渉はしないということらしい。
そんな、見ているだけの薄情な祥子の隣に白い光が現れたのは、前触れも何もない突然のことだった。
「おう、巫女殿の登場じゃ」
初め小さかった光は、直ぐに人の背丈ほどの大きさとなる。その光が消えると、そこには、祥子ほどでは無いが長い黒髪の、女性…。
痛みを堪えながら、その女性の顔を見た慎也。祥子の年齢発言では耳を疑ったが、今度は、目を疑わざるを得ない事態となった。
現れたのは、まさかの人物…。
実際に会うのは初めてだが、よく知っている女性…。
いつも、テレビで見ていて、今朝もワードショーで大ニュースになっていた、慎也も大好きな超有名芸能人…。
間違いない!「隅田川乙女組」の、高橋舞衣だ!
――――
『隅田川乙女組』……。
いわゆるアイドルグループではあるが、少し異彩を放つ存在。
美女五十人の大所帯、お嬢様・お姉様的雰囲気の構成員が主で、高学歴で知的なメンバーが多いことでも知られる。
抜きんでた歌唱力を発揮したりとか、抜群の演技力を持っていたりとか、歴史・地理等専門分野での驚異的知識を有していたりとか、偉才の者も多数在籍。
映画・ドラマ・バラエティー・コマーシャルからファッション雑誌等に至るまで、毎日なにかしらで目にしない日は無いという、大人気のグループだ。
高橋舞衣は、これの中心的人物で、老若男女、知らない人はいないといった存在。
歌唱力と演技力での評価もまあまあ高いが、それより何より際立つのは、美しさ!
美女揃いのグループ内でも、特にずば抜けた美貌の持ち主で、その圧倒的な容姿と魅力は他のメンバーの追随を許さず、「絶対エース」と呼ばれている。
男性はもちろんのこと、憧れをもって見る同性ファンも非常に多く、まさに国民的アイドルなのだ。
最も、雑誌等のインタビュー記事によると、彼女本人は女優志望。「アイドル」と呼ばれるのに若干の違和感を持っているようだが……。
――――
草履を借り、外に出ると、二人の男がいた。彼らが、他の候補であるようだ。
一人はラフなジーパン姿の目つきの悪い男。がっちりした体で、いかにも腕力に自信ありというタイプだ。
顔にある痣は、祥子にやられたものらしい。
祥子に促され、田上康則と名乗った。
もう一人は黒いスーツ姿と言って良いのか。暖かいので上着は脱いでいるのだが…。
背が高く、スラリとしていて、靴を含めて着ている物は高価そうだ。気障な感じで、ホストでもしているのか思っていたら、自分でホストクラブのホストだと言った。
こちらは、石井章介と名乗った。
田上は、慎也の持っている物より太い木刀を持っている。
石井は脱いでいる自分の上着を畳み持ち、木刀は手にしていない。
慎也も二人に続いて名乗り、祥子に従って二人の間近に移動した。
「これより三人で順番を決めよ。決まった後は、それぞれの部屋へ戻れ。
巫女との交合は明日の朝、日の出の時間じゃ。それまでは、勝手に部屋から出てはならぬ。
日の出三十分前に銅鑼をならす。それを合図に、あそこの階段を上がって儀式場へ集合じゃ。よいな」
祥子の説明が終わった。
彼女は、三人から少し距離を取った。
そして…。
「では、順番決めを始めよ!」
祥子の声と同時に、田上が、いきなり木刀を振り上げ、慎也に殴りかかってきた。
慎也は話し合いをしようとしていた。だが、口を開く隙も与えられない。避ける間も無く、ゴツイ木刀は慎也の右腕にめり込んだ。
ボキッ!!
鈍い、嫌な音。そして、激痛。
(痛い! 問答無用かよ!)
構わず二発目・三発目と、同じところに入れてくる。
慎也の右腕は、あらぬ方に曲がった。同時に、途轍もない痛みだ。
「俺が一番、こいつが二番、お前が三番だ」
木刀を肩に担いだ田上は、木刀を取り落として蹲る慎也に、そう宣言した。その隣では、石井がニヤニヤ笑っている。
(こいつら、もう談合してやがる。う、右腕が…。気が遠くなりそうだ)
「よし、決定だ」
二人の男は向きを変え、慎也を放置して、慎也の部屋の隣の二室に、それぞれ入って行ってしまった。
祥子は、それを見送り、動けない慎也に、哀れむような表情で近づいてきた。
「むごいのう。ここまでするとは…。こんな非道は初めてじゃ」
言葉をかけるが、助けようとはしない。
そもそも、あの念力で、止めてくれても良かっただろうに…。説明はするが、余計な干渉はしないということらしい。
そんな、見ているだけの薄情な祥子の隣に白い光が現れたのは、前触れも何もない突然のことだった。
「おう、巫女殿の登場じゃ」
初め小さかった光は、直ぐに人の背丈ほどの大きさとなる。その光が消えると、そこには、祥子ほどでは無いが長い黒髪の、女性…。
痛みを堪えながら、その女性の顔を見た慎也。祥子の年齢発言では耳を疑ったが、今度は、目を疑わざるを得ない事態となった。
現れたのは、まさかの人物…。
実際に会うのは初めてだが、よく知っている女性…。
いつも、テレビで見ていて、今朝もワードショーで大ニュースになっていた、慎也も大好きな超有名芸能人…。
間違いない!「隅田川乙女組」の、高橋舞衣だ!
――――
『隅田川乙女組』……。
いわゆるアイドルグループではあるが、少し異彩を放つ存在。
美女五十人の大所帯、お嬢様・お姉様的雰囲気の構成員が主で、高学歴で知的なメンバーが多いことでも知られる。
抜きんでた歌唱力を発揮したりとか、抜群の演技力を持っていたりとか、歴史・地理等専門分野での驚異的知識を有していたりとか、偉才の者も多数在籍。
映画・ドラマ・バラエティー・コマーシャルからファッション雑誌等に至るまで、毎日なにかしらで目にしない日は無いという、大人気のグループだ。
高橋舞衣は、これの中心的人物で、老若男女、知らない人はいないといった存在。
歌唱力と演技力での評価もまあまあ高いが、それより何より際立つのは、美しさ!
美女揃いのグループ内でも、特にずば抜けた美貌の持ち主で、その圧倒的な容姿と魅力は他のメンバーの追随を許さず、「絶対エース」と呼ばれている。
男性はもちろんのこと、憧れをもって見る同性ファンも非常に多く、まさに国民的アイドルなのだ。
最も、雑誌等のインタビュー記事によると、彼女本人は女優志望。「アイドル」と呼ばれるのに若干の違和感を持っているようだが……。
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