鬼に飼われて生きる少女 ~異世界転移し、鬼と一緒にヒトを食べて生きています~

しんいち

文字の大きさ
46 / 66
鬼の仲間として

46 新年

しおりを挟む
 お正月です!
 あちらの世界と同じように、新年の挨拶を交わします。

「スマイザゴウトデメオテシマケア」

 これが、その挨拶。
 そして、この日ばかりは、住み込みの鬼さん勢ぞろいでリューサさん中心に同じ食卓を囲みます。

 お雑煮は…。ありません。お米が無いですからね。餅も無いのです。
 但し、サトイモのお汁が出ましたね。これがお雑煮替わりみたいな感じです。
御椀じゃなく、洋風の食器にでして、やっぱり、何だか奇妙ですが。

 他の御馳走は…。基本肉ですね。
 メインはニンゲン。ですが、イノシシとか鳥、それからウサギとかいった、他の肉も結構出てきました。これは助かります。
 ウサギって初めて食べましたよ。感想?う~ん、そんな特徴はないですかね。でも、ニンゲンでないなら何でもいいです~。

 あ、リューサさんは、カナリノお金持ちですが、ニンゲンの丸焼きはしません。
そんな野蛮な食べ方は好まないってことみたいです。部位ごとにキチンと調理した方が絶対美味しいからって、食材のことを尊重した意見。ニンゲンとしては感謝です。

 お酒も有り、皆注ぎ合ってなごやかにお食事です。
あ、私は、お酒は飲みません。まだ未成年ですから。
 もっとも、この世界では年齢によるお酒の制限なんてものは存在しません。
ですから飲んでも問題ないのですが、もうちょっと大人になってからにしておきます。

 あら、イマさん、席の端っこの方に居るキズミさんのところへ行っていますね。お酒を酌み交わして、楽しそうに笑って話してる。
 へえ~、キズミさんってあんな笑いかたするんだ。可愛らしい…。

 そのキズミさん、私の視線に気付き、「フン」て感じで目を逸らしました。
 なんですか、新年早々そんな邪険にしなくても…。ちょっと凹みます。


 午後からは、リューサさんは留守。年始の挨拶に行くんだそうです。イマさんカリさんもお供です。こういったところは、「秘書」なんですね。
 もう一人のナンバー2であるナユさんは「姫初め♡」なんていって、オシゴト(?)にいそしんでいます。
 イヤ~ン……。


 翌日は、リューサさんが新年のあいさつを受ける日になっています。
 次から次へと御客様。他の鬼さん、特に男の鬼さんに会うのは怖いですので、私は部屋に閉じこもります。が、リューサさんから呼び出しを受けました。
 呼びに来てくれたイマさんと一緒に応接室に行きますと…。

 お客様。お、男鬼……。

 「狩猟本能が呼び覚まされる」なんて言って、ニンゲンを苦しめて喜ぶ凶悪で最悪の存在…。
と思っていましたが、イメージと、ちょっと、いや、全く違います。
 ヒョロッとしていて、ナヨナヨッとしていて、頼りない感じ……。

「イシライワカトンナ。ンゲンニノイレガタナア、オオ」

「スマシウモト『ミク』。スマイザゴウトガリア」

 あ、わけ分かりませんよね。通訳します。「あなたが例のニンゲン。なんと可愛らしい」と言われましたので、「ありがとうございます。美玖と申します」と返しました。

「ハトルセナハガゴウヨ。イシラバス」

「素晴らしい、妖語が話せるとは」と、おっしゃって頂きました。ややこしいので、以降は、要約します。


 この鬼さんは、リューサ牧場がニンゲンを卸している食肉卸売会社の社長さん。ニンゲン肉を販売するに当たって動画を付けるというのを発案し、渋るリューサさんを上手いこと言って説き伏せ、動画撮影させてきた諸悪の根源!
 この動画を付けて肉を販売するというの、なんと、始まりはリューサ牧場だったのですよ。

 今ではそうするのが鬼社会の当たり前となり、どこの牧場でもやっていること。ですので、止めるにやめられないばかりか、更に凶悪な内容を要求される始末……。
 やっぱり、男鬼はたちが悪い…。

 想像していた凶暴で、暴力的で、ニンゲンを見つけたら即座に喰らいついて来るってような感じとは全く違いましたが、別の意味で怖い。
 どう言ったら良いのでしょう。陰湿で小ズルイって感じ?いや、ちょっと違うかな。あ、オタクっぽい。そうそれ!
 オタクっぽくてネッチリした感じで、ストーキングでもしてきそう。とにかく、キモイんです!

 で、そのキモイ鬼さん曰く、この前出荷した男の子の屠殺動画が素晴らしかったとのこと。
ニンゲンがニンゲンを殺す、そのシュチュエーションが最高に良いんですって。

 ニンゲンがニンゲンを殺す……。これって、私のことですよね…。
何でも人間側から肉を捧げられるように感じて、それがソソルですってよ…。

 ううううう~っ!止めてください。内容もだけど、話し方や表情までも、ホントキモイ!

 前回卸した肉は注文品であったために値が上がることは無かったみたいですけど、以降は間違いなく今より高く売れるとのこと。この調子で、今度は更に痛めつけ、残虐にお願いしたいだなんて……、冗談じゃありません!!

 年末限定で、それも安楽死させられる男の子だからと引き受けた仕事だったのです。
まあ、こうなったら以後も屠殺のお手伝いさせてもらうのは構いませんけどね。残虐にって、それは嫌!
 まったく、この変態、何考えているんだか!
 あんた、やられるニンゲンの身になってみなさいよ!


 お客様が帰られてから、リューサさんに正直に言いました。

「なんですか、あのキッモイの!
男鬼って、もっとゴツくて凶暴で乱暴ってイメージだったんですけど、全然違いますよね」

「なあに、それ。どこ情報からのイメージよ」

「いや、イマさんカリさんです」

「あ、ああ~。男嫌いの、あの二人か。ナルホド……。
まあ、今の男鬼なんてあんなモノよ。狩猟本能がどうとかこうとかいうけどね。出来もしないコトの無い物ねだりなのよね。そんなことが出来たらなんて、憧れなのかもね。
どっちかっていうとね、女の方が豪快なのが多いよ。こんなふうにね」

 リューサさん、自分を指差します。う~ん、豪快って言うか、姉御肌? あとは、結構イジワルだったりもします…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...