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第11話 まずは一旦

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「わぁ! すごいなぁ! あの子……それに、珍しいものも見ちゃった! ハビリったら、最近になって心を入れ替えたって本当だったんだぁ……熱いなぁ」

「すごいわね、あの子。あれほどの力を秘めていたなんて。それをあんな下手くそな演技で鼓舞して引き出すあの男……その辺のザコザコとは違う……不器用だけど、面白そうな男ね」

「主よ……ご覧ください。ここに希望が……二人も」


 色々と面倒だったが、とりあえず前回と同じように、俺はネメスの力を引き出せたようだ。
 俺の生み出した赤い炎がネメスの光に飲み込まれて砕けた。
 だけど……不安しかねえ!

「こ、これが僕の力……」

 ネメスも知らなかったようで、自分でも戸惑っているようだが……今は本当にこれが限界のようだ。
 どうする?
 こいつはもっともっとヤバかったのに……だけど、今は……ええい、仕方ねえ!

「やればできるじゃねえか……最初からやれよ」
「……ッ……あの……せ……先輩!」

 先輩……そんな風に呼ばれなかったよな? 前回はこのこと以来から俺のことは呼び捨てで呼ばれてたし。
 まあ、そこはあんまり大きな意味にはならないだろうし……

「おい、先生方よぉ」
「ぬっ……」
「こいつは随分ととんでもない力を持っていたようだ。コレを本当に失格にしていいのか?」
「う、そ、それは……しかし……」

 そう、とりあえず今はこいつ本来の力を引き出すより、まずはこいつの失格を取り消すことが先決だ。


「だ、だが、規則は規則だ。既に彼は失格を言い渡されている……ここでやはり合格ということにすれば、既に失格になって帰された受験生たちと不公平だ……」

「ああ? メンドクセーなオイ! ったく、学園長! あんたも見ただろう、今のこいつの力を!」

「ぬ、むぅ、そうじゃが……しかし……確かにこれでは……大体何故君が……」

「おいおいおいおいおい!? 学園長まで何でそんな反応なんだよ!?」


 あれぇ? 前回はここで超法規的措置で合格になったのに、今回はそうはならない? 一度失格になってるから? 


「何言ってんすか! 規律? 不公平? この世が公平だったことなんてあるのかよ! 家柄だって才能だって皆バラバラだろうが! 大体、こんな受付がそんなに重要かぁ? ちゃんと実力示した奴が選ばれないなんておかしいぜ!」


 だが、それは困る。いや、こいつ選ばないと教職員も生徒含めて数ヶ月後ぐらいに全員死ぬぞ? だからこいつだけは何としても……


「うふふふ、試験を軽んじるのはダメだけど、ハビリがそこまで熱く説くなんてビックリだな~」

「「「「「ッッッ!!!???」」」」」

「でも、確かに彼をそのまま失格にするのは惜しいって私も思うよ?」


 そのとき、仰々し騎士の一団に囲まれて一人の女が現れ……嗚呼、そういえば前回も居たような……

「こ、これは!」
「なんと……トワレ姫ッ!?」

 その圧倒的な存在感、神々しいオーラ、そして微笑むだけで老若男女問わずに顔を熱くさせる。
 エメラルドの長い髪を靡かせ、その美しさと併せ持った豊満な胸と尻……まぁ、ソードやマギナほどではないがな。
 この帝国のお姫様にして、『奇跡の黄金世代』の一人。
 俺より一歳年下で何度か貴族のパーティー的なので関りはあったが……ある日を境にあんま話もしなくなったし、お姫様も俺を避けるようになったりしてたし、まぁ、俺もこんなんだから無理もねえけど。


――ほんと情けないよ……カッコ悪いよ……君は恥ずかしくないの?


 あんなことも言われたしな。
 だが、今日は初めてなんじゃないかと思うぐらい、俺にニッコリ微笑んで、そしてポカンとしているネメスの傍に。
 そういえば、このお姫様はネメスに惚れて無理やりネメスのクラスに権力駆使して編入してアプローチしてたんだよな。
 俺の知る限り最後はお姫様含めてネメスが皆をハーレムにしてんじゃねえかって感じでこいつの周りに皆居たような気もするが……


「我が国の、そして将来の人類の未来を背負う若き才能の様子を伺いに来たんだけど……うふふふ、面白そうなことをしていたから、最初から見てたよ。ハビリとこちらの彼のことを。教職員の皆さんの言うように規則や試験を軽んじるわけにはいかないけど、ハビリの言う通りそればかりに固執して、磨けば光る黄金を門前払いも融通性が無いと思うの」

「ひ、姫様……し、しかしそれではどうやって……」

「ですので、こうしよう。今日受付を通れなかった方々にはセカンドチャンス……すなわち、敗者復活試験を追加ってことで!」

「は、はい?」


 おっと、こういう流れになったか! そりゃ、このお姫様は「生前」から甘いところもあったし、勇者の女になるぐらいベタ惚れしてたっぽいし……そういえば……このお姫様のこと……どうしよう。

(おお……トワレ姫……流石の小生もこの方を見ると、色々と感慨深いものがあるな……前回……『あんなこと』があったからなおさら……)

 このお姫様、前回はネメスに惚れて魔法学園に無理やり編入し、その後に他国の魔法学園との対抗戦とか、姫様主催の学園イベントで大活躍し、ネメスと一緒に奇跡の黄金世代と呼ばれるようになるけど、その後に学園を襲撃してきた魔王軍に襲われ……

 
 ……死ぬんだよなぁ。

(小生だけではなく、マギナにとっても、ネメス殿たちにとっても……もっとも、あの悲劇と悲しみを乗り越えて、ネメス殿は更なる力を得たわけだが……)

 ある意味、そこから色々と変わるんだよな。
 親父や兄貴のことにも直結して。
 だから今回は……

「そうだね~、うん追加試験は―――――」
「いやいや、姫様、そ、そのようなこといきなり――――」
「でもね、まだまだ彼以外にも惜しい才能はいるかもしれないでしょ?」

 この姫も生かして……アレ? でも、そういう障害やらを乗り越えてネメスたちは強くなって、色々と救ったり守ったりして大勢の人が助かって……ん~?
 
 何だろう……多少なりとも先のことが分かっている所為なのか、俺が余計なことをしないままでいればいいかもしれねえし、余計なことをしようとすると結構面倒なことをしなければならなくなるんじゃ……?
 
 でも、親父と兄貴の件だってどうにかしたい。
 最近少しずつ仲も改善されていきそうな気もするし……


「というわけで、ハビリも良いよね?」

「え……え?! あ、いや、え?」

「んもう、ハビリは聞いてなかったの? だからね、一週間後に足切り失格生徒に再度チャンスを与えるってことで決まったからね。これも、君が試験官たちですら見抜けなかった眠れぬ才能を見出してくれたからだよ♪」


 俺が考えている間に話が決まったようで、姫様はニッコリ微笑んで俺の肩をポンと叩いた。
 そして、俺の顔をジッと覗き込んできて……


「んふふふ、何だかハビリの印象が変わったかな? 前までのハビリはちょっと苦手だったけど……今日のハビリは、うん、イイな~って思った」

「そ、そうすか……」

「あのね、君のお父さんやお兄さんも、何だかあなたのことを話題に出しててね、私もちょっと見てみたいな~って思ってたの。うん♪ 君を見る目がちょっと変わったかな!」


 そう言って、どこか嬉しそうに姫様はニコニコしながら行っちまった。

 何だかこうして二人で話したのは久しぶりかな? 

 まぁ、再試験ってのは前回無かった展開だが、ここまでやればネメスも――――

「あ、あの、先輩ッ!」
「ん?」

 すると、ネメスが何か決意したような表情で……


「その、急にこんなお願いをしてご迷惑なのは重々承知ですが……どうか僕を――――」


 ――――――へ?
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