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第7話 伝説の始まり

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「ふぅ……見られちゃったよ……絶対変に思われたよ~……」

 男の生理現象を見られた恥ずかしさのあまり、膝を抱えてベッドの上で蹲るタック。
 せっかく優しそうな者たちに救ってもらったというのに、これで嫌われてしまったかもしれないと、激しく落ち込んでいた。
 だが、その時だった。

「ボーヤ。これは合意だわん」
「いいかにゃ?」

 突如天幕が開き、バターとプッシーが入ってきた。

「えっ? え、なんで?」

 まさか追いかけてこられるとは思わず、一瞬状況が分からなかったタック。
 だが急に先ほどのことを思い出して、顔を膝に埋めた。
 そんなタックの様子に二人はゴクリと唾を飲み込んだ。

「で、君は何でいきなり逃げ出したわん?」
「どうしてかにゃ?」
「うう~、ごめんなさい……その、あんなの見せちゃって……」

 逃げ出した理由。そんなこと分かっているはずだというのに尋ねられ、タックは唸った。

「……ふふ……スッケベな男の子だな」
「はうっ! ご、ごめんなさい……」
「ッ! スッケベ……は、否定しないのかにゃ?」
「いや! え、あの、でも……ううう……ごめんなさい……俺……否定できなくて……」

 その瞬間、バターとプッシーは目を大きく見開いた。
 やはり、タックはスケベな男だと。
 スケベな男。そして魅力的な逸物。
 『この世界』において、それほど魅力的な存在を前にして、ここで引き下がることができるはずなかった。
 例え誇り高い騎士でも、誘惑には勝てず……

「どこがスッケベなことになっているか、見る必要あるわん」
「そうそう、ね、ほら、じゃあ、脱がすにゃ」
「はい……へっ? あのっ! え、何で!?」

 バターとプッシーが同時にベッドの上に乗り、タックに覆いかぶさり、息を荒くさせながら服を脱がせていった。

「ちょっ、なな、何をするんですか! あの、ななにを!」
「こらこら分かっているから、ほら、脱ぐわん」
「可愛がってやるにゃん」

 口は穏やかな態度を装ようとしているが、明らかに荒く、そして手の動きも非常に乱暴になっている。
 脱がすというよりは破くかのようにタックの衣服を剥ぎ取り、そして……

「ッ……」
「はにゃあ……」

 彼女たちは、ウットリとしていた。
 この世界とタックの住んでいた世界とは、文化だけではなく男女の体つきにも違いがある。
 ましてや、タックのモノはエローナの手によって、タックの世界でも飛びぬけたモノ。
 
「……ワンダフル……」
「にゃんてことでしょう」

 どれもがこの世界に住む男とは異なっており、もはや彼女たちを止めることは誰にも出来なかった。

「男の子のくせに、ちょっと体つきが……少し筋肉もあるし、硬く引き締まっているにゃ……こんなセクシーな……」
「涎止まらないわん」
「いや、ん、なんでこんなことに! だめ、や、やめてください!」

 何が何だか分からずにジタバタするタック。だが、その反応は余計に二人を興奮させた。

「いやだいやだと言いながら、本当は、興奮しているわん」
「にゃんにゃん♪」

 明らかにおかしい。そもそも何でこんな流れになったのか? タックはこれまでの流れを思い出す。

(俺が天幕に逃げて……それで……ん? なんかおかしくないかな?! この世界の男と女ってどういう……なんか、女の子がすごいエッチじゃないか!? ……いや、それはエロ―ナお姉ちゃんもミルクお姉ちゃんも同じだけど……っていうか、どうしよう! 力ずくで抵抗しようとしても……)

 しかし、考える間もなく、興奮した二人の動きは余計加速する。

「ひゃあ、な、なにを!?」

 バターが横たわるタックの両足を上に持ち上げて、大きく股を開かせた。
 これは経験があった。
 ミルクやエローナにもよくやられていたものだ。

「見せてあげるわん。寝所のバター犬とまで言われた私のテクニック」
「にゃんごろごろごろごろにゃああああん」
「ッ、だめ、です! 俺、好きな人たちが居るんです! そ、のひとたち以外と無許可でエッチはぁ! 御願いですからぁ!」
「ここまでして我慢できるわけないわんっ!」
「ほ、本当にダメです! それに、俺とエッチしちゃうと、とんでもないことになっちゃんですぅ!」
「知らないにゃぁ! もう、我慢できないにゃぁ! いっただっきますにゃああ!」

 そして、二人に唇を塞がれて、タックはこのまま二人がかりで食べられる……と思った、その時だった。

(あれ? なにこれ……これ、キスなのかな? 手とか、俺をエッチな気にさせようとしている? ……なんだろう……別にそこまで……)

 タックは発情した女二人がかりに攻められながら、少々首を傾げた。
 別に普通……

(……積極的だけど、このお姉さんたち、あんまり経験無いのかな? そんなにうまくないというか……キスもそんなに……)

 バターとプッシーは知らなかった。
 タックは毎日朝も昼も夜も関係なく、常に発情したド変態姉二人に食べられているということ。
 それこそ、ありとあらゆることを経験済みであり、さらに言えばタック自身のスキルも……

「あの……ん」
「「んむっ?!」」

 タックは自分に纏わりつく二人の後頭部に手を回して抱きしめて、されるがままだったキスを今度は自分からパワフルにやり返した。
 その瞬間、二人の女は一気に……

「ぷはっ、はあ、はあ、うぇ? え? わん?」
「にゃ!?」

 何が起こったか分からず固まる二人。
 そんな二人にタックは……

「俺だっていつまでもされるがままじゃない! この程度で食べられるぐらいなら……俺が二人を食べちゃう! 本当のキスと本当のエッチを見せてやるぅぅう!」

「「ッッッ!!??」」








「……いない……タックくんはどこに行った?」

 仕事を終えたオルガスは宴会の場をウロウロと歩き回り、タックの姿を探していた。
 バターとプッシーが護衛についているために、心配はないだろうとも思っていたのだが、探しても見つからないことに少し不安を感じていた。

「タックくんは心に大きな傷を持っている。あの子に必要なのは安らぎだ……少しは癒えているだろうか……ッと、私としたことが、先ほどからタックくんのことばかりだな」

 自分らしくないと嘲笑するオルガスだが、同時に口元に指を添えてあることを思い出した。
 それは、緊急事態だったとはいえ、タックにベロチュー呼吸をしてしまったことだ。

「今思えば……あれが私のファーストキス……うふふ……ッて、私は何を!」

 品の無いことを思い出してしまった自分を叱咤し、頭を横に振るオルガス。

「そんなのではない。そんなスッケベなこと……私はただ、あの子が心配なだけで……」

 タックが心配なだけ。ただそれだけだと自分に言い聞かせるオルガス。
 そんな独り言をしていたところ、ある天幕の前にたどり着いた。

「ひょっとしたら、もう天幕で休んでいるかもしれないな」

 そこは、タックを休ませていた天幕であった。
 ひょっとしたら、もうタックは宴会に出ずに、休んでいるのかもしれないと、天幕をそっと覗こうとした瞬間、
 


「ワンダフルぅぅぅ!」

「にゃんてことでしょう!」


 そして、狂ったように悲鳴を上げる二人の女……いや、もはや女ではない……盛りのついた雌。もはや獣の鳴き声が聞こえた。


「なっ、なんだ!? なにごとだ!?」

 
 突然の獣の鳴き声に驚愕したオルガスが慌てて天幕の中に入る。
 そこには、密な汗と生臭い匂い、そして半分白目、涙と鼻水と涎で顔がグシャグシャになり、まるで中毒者のように精神崩壊した顔で倒れている仲間二人がいた。
 目の前の信じられない光景に混乱して動くことの出来ないオルガス。

「あの? 二人とも、どうしたの? まだ……これからなのに……いいよね?」
「にゃあ!?」
「わん!?」

 三人はオルガスに気づいていない。それほど「戦い」に夢中であった。

 そう、これは伝説の始まりでもある。

 この大陸で初めて、男がエルフの女を追い詰めることに成功した、歴史的瞬間でもあった。
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