文字の大きさ
大
中
小
201 / 231
6章 ライゼン・獣人連合編
264話 再会
リトルフィンガー──世界に五つ存在する古代迷宮のひとつ、イズナバール迷宮を擁する街であり、現在は東にある国家「ライゼン」の管理下におかれている。
つい数ヶ月前までは迷宮探索で賑わっていた街ではあるが、今はその古代迷宮がひき起こした騒動による被害からの再建に忙しく、迷宮への侵入は高レベル探索者のみと規制がかかっている。
理由は二つ、中堅以下の探索者がギルドで依頼を受け、期日内に依頼を果たせなかったり迷宮内で死亡・行方不明にでもなられたら、各所への手続きや損失補填など色々と面倒くさいのが一つ、そしてもう一つは、今この街には迷宮探索よりも割のいい仕事があるからである。
大規模灌漑事業──ここリトルフィンガーは、イズナバール湖からライゼンまで水をひくための川を作る一大工事によって以前とは別の賑わいを見せている。
直線距離にして四00キロ弱、常識的に考えて数ヶ年計画で行われるはずの事業だが、着工から三ケ月ほどで既に残り半分近くまで進められている。
というのも、この世界には重機をはじめとした近代的な道具が存在しない代わりに、魔法という、ともすれば機械以上の働きをしてくれる力が存在するからだ。
土属性の魔道士──彼らさえいれば、地面をまるで耕し終えた畑の土の様に柔らかい状態にする事ができ、作業員がそれを運び出すだけで簡単に下地作りは出来る。その後、砂利などを選別して川底に敷き詰めたり、土嚢にして積み上げたりと仕事が捗る。
森林を切り開く場合も、1本々々伐採しなくとも土を柔らかくした後に引き倒してしまえば、例え大木であろうとも簡単に処理できてしまうのだ。
地味な印象を持たれがちな土属性の魔法ではあるが、こういった文字通り泥臭い場面では大変重宝されているため、土属性を操る魔道士の大半は、危険な冒険者などにはならず安定収入が約束された国のお抱えになっていたりする。
とはいえ、魔道士によって作業自体が楽になったとしても、土を運んだり川そのものを作る作業には大勢の人員を必要とする。
そういった直接の力仕事に用意されたのは、迷宮攻略時に共同戦線を張ったライゼン・獣人連合間で交わされた「協定」により、大量に雇用された獣人たちである。
種族によっては体力的に大きなアドバンテージを持つ獣人、彼等を一般人からも広く募集し現場の作業員として雇い入れる事で、ライゼンは事業の迅速化と費用削減、獣人連合側は雇用による外貨獲得と、お互いに旨味のある取引だった。
おまけに獣人連合にとっては、両国間の関係悪化の原因となっていた岩山地帯の土地まで手に入る、国を挙げての支援と言ってもよい規模で人員を動員していた。
そんな中、リトルフィンガーの探索者や冒険者は、昼夜を問わず作業を続ける彼等を魔物などから守るため、警護任務を請け負っている訳である──。
「はいらっしゃーい! よく効く軟膏から疲労回復、体調不良の薬まで各種──はい、毎度あり♪」
リトルフィンガーから八〇キロほど離れた作業員達の休憩所に、シンの景気のいい声が響く。
休憩所と言っても、千人単位で作業員が入れ替わり立ち代り休憩と仕事に出入りする場所である。また、工事が進むたびに休憩所の場所を動かさないといけないので、外から見れば柵で囲まれた簡易砦が一週間ごとに移動しているようにも見える。
そして当然、人が集まればそこには商売の種が生まれる訳で、食事に娯楽、夜になれば扇情的な服を着た色んな種族のお姉さま方の姿も見てとれる。
そんな中シンはと言えば、当然のように薬売りとして商売をしている。
むろん、ヴァルナに言われた「アギア・ガザルの実」を手に入れてこいという言葉を忘れている訳ではない、むしろその為に今こうやって走り回っていた。
──獣人連合は閉鎖的な国家である。
別に差別的な意味合いはなく、単に生活習慣が違ったり適した生活環境に差があるため、種族ごとに住み分けがされているだけなのだが、これが人間──ヒト種がその中に放り出されると、環境の違いや種族的なルールに戸惑って問題を起こすケースが後を絶たなかったため、仕方なく入国管理の際にヒト種は厳重に審査が行われるのだ。
つまり、経歴の裏付けが無いモグリのシンなど、審査されるまでもなくサヨウナラなのである。
その為シンは、こうやって出稼ぎに来ている獣人たちと仲良くなり信頼を得る事で、入国審査官へ口利きが出来そうな人物と渡りを付けようとしている。
要はコネ作りである。
「──おうシン、こないだの塗り薬だけど、四つばかしくんねえか? ちいとばかしウチの若いのがヘマしちまってよ」
「ハイハイ、軟膏を四つですね……ホイ、毎度あり♪ ヘマって、何かあったんですか?」
背負子を地面に下ろして中から薬を取り出しながら、シンは目の前に立っている熊獣人の男に声を掛ける。
薬を受け取りながら男が話すには、
「いやあ、土をかき出した後にデケエ岩があってな、ソイツをみんなで取り除こうとしたんだが、転がる岩に巻き込まれちまったのよ」
そのせいで四人が怪我、うち二人が足の骨を折ったそうだ。
「……それを塗り薬で完治された日には、薬師としては堪ったもんじゃないですねぇ」
「ガッハハハ! まあそう言うな、お前さんの薬の効き目がいいから治りが早えんだ、並の薬じゃ二晩はかかるからな!」
熊獣人の生命力恐るべしである。
薬を受け取ってその場を後にする男に背中を見送りながらシンは、
「……あのオッサンなら結構顔も広そうだし、もう少し仲良くなりゃあ大丈夫かな?」
そう呟きながら、ヨイショと背負子を担ぎながら、
「薬はいかがですか~、怪我から病気、夜遊びに効く薬もございますよ~」
などと陽気に声をかけながら休憩所の中を歩く。そこに──
「──お、ジンじゃねえか、どうしたんだ、こんな所で?」
「────────!!」
バッ──!!
シンが後ろを振り返ると、
「おおやっぱりそうだ。久しぶりだな、ジン!」
そこには、獅子・熊・ウサギ、そして蜥蜴と、多種多様な獣人の四人組が立っていた。
特に、その中でもリーダー格であろうか、平均よりも大きな身体をもつ蜥蜴人などは、喜びの証なのかその太い尻尾で地面をバンバンと叩きながら、目を細めて細い舌をチロチロと出し入れする。
背負った槍から発せられる魔力を周囲にまきながら、ツヤのある緑青の肌と深緑の鱗に身を包んだ蜥蜴人──ルフトは手を振りながら近付いてくる。
「え、えーと……ひ、人違いでは? 私はシンと申しまして……」
「あ? ……ああ、そういやあ向こうじゃあジンって偽名──」
「わーわーわーーー!!」
鬣のようにボサボサの頭髪と頬・顎鬚をくっつけた獅子獣人──オルバの言葉を遮るようにシンは大げさに両手を振ると、その口を手で押さえ込む。
「は・じ・め・ま・し・て! わたくし、旅の薬師でシンと申します」
「うえ? ……ん……んん……」
シンの笑顔の裏から伝わってくる圧力を感じ取り、首を大きく上下に振るオルバと、それを見て気まずそうに視線をそらす残りの三人。
そんな三人を疲れた目で睨んだシンは、大きなため息と共に彼等に釘を刺す。
「頼みますよ、ホントに……ところでみなさん、なんで俺の事が判ったんです?」
今のシンは髪も銀灰色から黒に戻し、服装も革鎧姿ではない。何より「シン」の姿を彼等が見たのは一度きりのはずである。
それなのに、なぜ迷う事無く一度見ただけで判ったのか、それがシンには不思議だった。
そんな、シンの疑問に対する彼等の答えは、
「臭い」
「足音」
「熱」
「………………………………」
変装などという小手先のごまかしは、獣人には通用しなかった。
つい数ヶ月前までは迷宮探索で賑わっていた街ではあるが、今はその古代迷宮がひき起こした騒動による被害からの再建に忙しく、迷宮への侵入は高レベル探索者のみと規制がかかっている。
理由は二つ、中堅以下の探索者がギルドで依頼を受け、期日内に依頼を果たせなかったり迷宮内で死亡・行方不明にでもなられたら、各所への手続きや損失補填など色々と面倒くさいのが一つ、そしてもう一つは、今この街には迷宮探索よりも割のいい仕事があるからである。
大規模灌漑事業──ここリトルフィンガーは、イズナバール湖からライゼンまで水をひくための川を作る一大工事によって以前とは別の賑わいを見せている。
直線距離にして四00キロ弱、常識的に考えて数ヶ年計画で行われるはずの事業だが、着工から三ケ月ほどで既に残り半分近くまで進められている。
というのも、この世界には重機をはじめとした近代的な道具が存在しない代わりに、魔法という、ともすれば機械以上の働きをしてくれる力が存在するからだ。
土属性の魔道士──彼らさえいれば、地面をまるで耕し終えた畑の土の様に柔らかい状態にする事ができ、作業員がそれを運び出すだけで簡単に下地作りは出来る。その後、砂利などを選別して川底に敷き詰めたり、土嚢にして積み上げたりと仕事が捗る。
森林を切り開く場合も、1本々々伐採しなくとも土を柔らかくした後に引き倒してしまえば、例え大木であろうとも簡単に処理できてしまうのだ。
地味な印象を持たれがちな土属性の魔法ではあるが、こういった文字通り泥臭い場面では大変重宝されているため、土属性を操る魔道士の大半は、危険な冒険者などにはならず安定収入が約束された国のお抱えになっていたりする。
とはいえ、魔道士によって作業自体が楽になったとしても、土を運んだり川そのものを作る作業には大勢の人員を必要とする。
そういった直接の力仕事に用意されたのは、迷宮攻略時に共同戦線を張ったライゼン・獣人連合間で交わされた「協定」により、大量に雇用された獣人たちである。
種族によっては体力的に大きなアドバンテージを持つ獣人、彼等を一般人からも広く募集し現場の作業員として雇い入れる事で、ライゼンは事業の迅速化と費用削減、獣人連合側は雇用による外貨獲得と、お互いに旨味のある取引だった。
おまけに獣人連合にとっては、両国間の関係悪化の原因となっていた岩山地帯の土地まで手に入る、国を挙げての支援と言ってもよい規模で人員を動員していた。
そんな中、リトルフィンガーの探索者や冒険者は、昼夜を問わず作業を続ける彼等を魔物などから守るため、警護任務を請け負っている訳である──。
「はいらっしゃーい! よく効く軟膏から疲労回復、体調不良の薬まで各種──はい、毎度あり♪」
リトルフィンガーから八〇キロほど離れた作業員達の休憩所に、シンの景気のいい声が響く。
休憩所と言っても、千人単位で作業員が入れ替わり立ち代り休憩と仕事に出入りする場所である。また、工事が進むたびに休憩所の場所を動かさないといけないので、外から見れば柵で囲まれた簡易砦が一週間ごとに移動しているようにも見える。
そして当然、人が集まればそこには商売の種が生まれる訳で、食事に娯楽、夜になれば扇情的な服を着た色んな種族のお姉さま方の姿も見てとれる。
そんな中シンはと言えば、当然のように薬売りとして商売をしている。
むろん、ヴァルナに言われた「アギア・ガザルの実」を手に入れてこいという言葉を忘れている訳ではない、むしろその為に今こうやって走り回っていた。
──獣人連合は閉鎖的な国家である。
別に差別的な意味合いはなく、単に生活習慣が違ったり適した生活環境に差があるため、種族ごとに住み分けがされているだけなのだが、これが人間──ヒト種がその中に放り出されると、環境の違いや種族的なルールに戸惑って問題を起こすケースが後を絶たなかったため、仕方なく入国管理の際にヒト種は厳重に審査が行われるのだ。
つまり、経歴の裏付けが無いモグリのシンなど、審査されるまでもなくサヨウナラなのである。
その為シンは、こうやって出稼ぎに来ている獣人たちと仲良くなり信頼を得る事で、入国審査官へ口利きが出来そうな人物と渡りを付けようとしている。
要はコネ作りである。
「──おうシン、こないだの塗り薬だけど、四つばかしくんねえか? ちいとばかしウチの若いのがヘマしちまってよ」
「ハイハイ、軟膏を四つですね……ホイ、毎度あり♪ ヘマって、何かあったんですか?」
背負子を地面に下ろして中から薬を取り出しながら、シンは目の前に立っている熊獣人の男に声を掛ける。
薬を受け取りながら男が話すには、
「いやあ、土をかき出した後にデケエ岩があってな、ソイツをみんなで取り除こうとしたんだが、転がる岩に巻き込まれちまったのよ」
そのせいで四人が怪我、うち二人が足の骨を折ったそうだ。
「……それを塗り薬で完治された日には、薬師としては堪ったもんじゃないですねぇ」
「ガッハハハ! まあそう言うな、お前さんの薬の効き目がいいから治りが早えんだ、並の薬じゃ二晩はかかるからな!」
熊獣人の生命力恐るべしである。
薬を受け取ってその場を後にする男に背中を見送りながらシンは、
「……あのオッサンなら結構顔も広そうだし、もう少し仲良くなりゃあ大丈夫かな?」
そう呟きながら、ヨイショと背負子を担ぎながら、
「薬はいかがですか~、怪我から病気、夜遊びに効く薬もございますよ~」
などと陽気に声をかけながら休憩所の中を歩く。そこに──
「──お、ジンじゃねえか、どうしたんだ、こんな所で?」
「────────!!」
バッ──!!
シンが後ろを振り返ると、
「おおやっぱりそうだ。久しぶりだな、ジン!」
そこには、獅子・熊・ウサギ、そして蜥蜴と、多種多様な獣人の四人組が立っていた。
特に、その中でもリーダー格であろうか、平均よりも大きな身体をもつ蜥蜴人などは、喜びの証なのかその太い尻尾で地面をバンバンと叩きながら、目を細めて細い舌をチロチロと出し入れする。
背負った槍から発せられる魔力を周囲にまきながら、ツヤのある緑青の肌と深緑の鱗に身を包んだ蜥蜴人──ルフトは手を振りながら近付いてくる。
「え、えーと……ひ、人違いでは? 私はシンと申しまして……」
「あ? ……ああ、そういやあ向こうじゃあジンって偽名──」
「わーわーわーーー!!」
鬣のようにボサボサの頭髪と頬・顎鬚をくっつけた獅子獣人──オルバの言葉を遮るようにシンは大げさに両手を振ると、その口を手で押さえ込む。
「は・じ・め・ま・し・て! わたくし、旅の薬師でシンと申します」
「うえ? ……ん……んん……」
シンの笑顔の裏から伝わってくる圧力を感じ取り、首を大きく上下に振るオルバと、それを見て気まずそうに視線をそらす残りの三人。
そんな三人を疲れた目で睨んだシンは、大きなため息と共に彼等に釘を刺す。
「頼みますよ、ホントに……ところでみなさん、なんで俺の事が判ったんです?」
今のシンは髪も銀灰色から黒に戻し、服装も革鎧姿ではない。何より「シン」の姿を彼等が見たのは一度きりのはずである。
それなのに、なぜ迷う事無く一度見ただけで判ったのか、それがシンには不思議だった。
そんな、シンの疑問に対する彼等の答えは、
「臭い」
「足音」
「熱」
「………………………………」
変装などという小手先のごまかしは、獣人には通用しなかった。
感想 497
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。