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2章 ~エアリー視点~

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「エアリー王女、いつまでこんなこと続けるんです? そろそろ帰りましょうよ」

「だめよ。私はもうあの城には戻れない」

私は馬の背中に乗り、全身で振動を受けています。目の前は広い背中で視界が遮られています。

「これがバレたら俺の首が飛んじゃいますよ」

「大丈夫よ。適当なところで降ろしてくれたらいいわ。そうしたらレイはアーランドに戻れば問題ないでしょ」

「いやあ、エアリー王女をその辺に放り出して戻ったら、それこそ首ですよ」

レイは笑って言いました。


私がこの城にいてはいけない。そう確信した私は城を抜け出す決意をしました。定期的にデニスミールへ来て伝令の任務をこなしているレイに、ひとまず私を連れて城を離れるように言い包めました。レイは渋い顔をしながら了承してくれました。

「それで、どうして城から逃げ出そうと思ったのかは話してくれないんですよね?」

レイが首を中途半端にこちらへ向けて尋ねてきます。

「何度も言わせないで。まだ話せないの」

「まだですか。いつになったら教えてくれることやら」

レイはため息をついて前に向き直りました。私は服の上から太腿に軽く触れました。鋭い痛みが走ります。昨日付けられた傷が記憶を思い起こさせます。


昨日、自分の部屋で本を読んでいると、部屋のドアが少し開き、隙間から手紙が差し込まれました。ドアを開けて廊下を見渡しましたが誰もいません。私は床に落ちた手紙を拾い、机に置きました。椅子に座りじっくりと手紙を見つめます。厳重に封がされているその手紙をどうすればよいか悩みましたが、私宛なのだろうと安易に封を開けたのが間違いでした。

「痛っ!」

手紙の中から何かが滑り落ちてきて太腿に当たりました。それは刃物の破片でした。

「だれがこんなことを」

私は太腿に刺さった破片を注意深く抜き取ったあと、改めて手紙を確認しました。そこに書かれていた文章に驚愕しました。

『これは警告だ。今すぐ城を出ろ。おまえはロイス王子の妻にふさわしくない。資格無き者が指輪を手にしたら、その者と王家に不幸が訪れる』

私は背筋が寒くなりました。このような悪意に晒されるのは初めてでした。とにかく城を出なくてはならないと必死に考え、レイを頼る事を思いついたのです。


「とりあえず適当な宿に入りましょう。くすねてきた食料が底をつきそうです」

レイが前方を指差して言いました。湯気が小屋から立ち上っている集落があります。

「分かったわ。仕方ないものね」

私はレイが用意してくれた毛皮のフードを深く被って小さな集落へと向かいました。

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