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隠れてヤっちゃう少年
囁く怪しいメスお兄さん
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「……あっ。じゃあこの人は、本当に血が繋がってるわけじゃなくて。近所の優しいお兄さん……って感じなの?」
「うんっ。シラカ兄ちゃんは、よく昔からおれと遊んでくれたんだ。特に兄ちゃん……、あ、ラフィールの兄ちゃんが色々忙しい時とかにさ。でも別の村に引っ越しちゃってから、ずっと会えてなくて……」
タオルで体を拭きながら、マサトから関係性を伺う。そうしてわかってきた、シラカという人物。
シラカさん……は、ずっと木陰からこっちを見ていた。そしてボクと目が合うと、陽気そうに手をヒラヒラと振る……。
「……なんかちょっと、変わってる人っぽいけど。大丈夫なの……?」
「うん。一応……。昔からこういう性格だから。色々困ったことも多いけど、まあその……大丈夫だよ。多分……。い、一応昔は、おれの家庭教師とかしてくれてたし……」
「そ、そう。……ううん。そうなのかなあ……」
よくわからない。マサトから聞く限り、悪い人じゃなさそうだけど……。なんていうかこう、飄々としている性格っぽい。ラフィールとはまた違った意味で。
「と、とりあえず。マサト。流石に知り合いの前でセックスするわけには……ね? だから続きは、また後で……」
「あれ、なんやぁ。続きせぇへんの? 勿体ない」
「わぁっ!?」
「せっかくの花火デートやのに~。浴衣でセックスなんて滅多にできひんよ? そういうのはシたい時にしとかんと、後悔するけどなぁ」
い、いつの間に側にっ。ていうか顔近いよっ……!
「かわいい男の子同士がセックスやなんて。目の保養になるわぁ~……♡ ほら、マサトっ。遠慮なんてせぇへんでええから。思いっきりこの子、犯してあげ……♡」
「えっ……。い、いやっ。でもっ……!」
「大丈夫大丈夫……♡ この子、口ではこんなこと言うとるけど。あっちの方は準備万端やから。……な♡」
「っ……!」
な……なんだ、この人。なんでこんな事言うんだ。わざわざマサトを焚き付けるみたいなこと。……それに、ぼ、ボクのこと……見抜いて……?
「素直になれんだけなんよな……♡ この手の子は、ちょっと強引にリードするぐらいが丁度ええんよ……♡ ……ほら、見てん? この子の顔……物欲しそうにしとるやろ……♡」
「うっ……♡ お、お姉ちゃんっ……♡」
マサトの耳元で囁く、シラカのお兄さん。マサトの内なる劣情を煽るように、肩に両手を添えながら……淡い声色でマサトを誘惑していく。
次第にマサトの目は、再びボクの体へと向けられていき……。浴衣の隙間から見えるボクの裸から、目が離せなくなっていく……けど。
それでも流石にこの状況で手を出すほど、マサトは冷静さを失っていなかったようで。マサトはシラカさんの手を振り払い、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら怒りを露わにした。
「もっ……もうっ! 止めてよシラカ兄ちゃんっ! ま、また前にみたいにっ……お、おれのオナニー見るつもりっ……!?」
「お、オナニー……??」
「ん~? いやいや、そんなつもりは。僕はな? マサトのしたいようにさせたいだけやから……」
「前もそうだったよねっ……。お、おれに、えっちな本見せてさっ。おれを焚き付けて……! ……もう、やめてよそういうの! 恥ずかしいんだからおれだって……!」
そ、そんな関係だったのか……。ていうか、やっぱりそれ危ない人じゃ……。
「いやあ。あの頃のマサト、めちゃめちゃ可愛かって。ついイタズラしとうなってなぁ。フフ……悪く思わんといて」
「本当にもうっ……! て、ていうか。シラカ兄ちゃん、なんでここに居るんだよっ! 別の村に住んでたんじゃないの……!?」
「いやあ、久しぶりにマサトの顔見たくなってなぁ。ちょうど祭りもあったことやし、ええ機会やと思って」
「またそんなこと言って……。ど、どうせまた、変なこと考えてるんじゃないだろうね……?」
「いやあ、まさかぁ。フフ、そんなことあるわけないやんか。まさかなぁ……?」
いや、絶対考えてるでしょ。その目。さっきからマサトとボクを交互に見てるし、絶対何か企んでる……。
「ま! 感動の再開はここら辺にして。花火見に行こか~。そろそろ始まる時間やし!」
「ムスッ……」
「ほらほらマサト。そんな怒らんと! この子とセックスしたいんやったら……帰ったあとで、たっぷりすればええやんか……♡ ……なんなら兄ちゃんが、手伝ってあげるから……♡」
「っ~……! し、シラカ兄ちゃんッッ!! からかわないでよっ!」
「おっと、なはは! 怖い怖い、マサトが怒った! ははは!」
「……あ、案外仲のいい二人なのか……???」
ともかくシラカさんのお陰か、マサトの性欲は……一旦落ち着きを取り戻しつつあるようだった。その頃にはボクも、事後処理とかを殆ど終わっていたので。とりあえず花火を見るために、ラフィールの所に戻ろうと歩く。
するとシラカさんが、マサトに見えないよう……コッソリとボクに近付いてきて。さっきと同じように、ボクの耳元に口を……。
「にしても、マサトにこんな素敵な恋人が出来とったやなんてなぁ。僕驚いたわ……♡」
「ぶっ!?」
「君……マサトとどこまで行ったん? まさかもう、結婚の約束しとったりして……」
「いっ……いやっ……! ま、まだ恋人とか、そういうんじゃっ……!」
「あれ、そうなん? な~んや、ビックリして損したわ。……でも、そうか。ほんなら僕にもまだ……チャンスはあるってことやな♡」
「ち、チャンス……?」
あ、ああ。マサトを狙うチャンスって意味かな。いやでも、困るよそれ。マサトは、マサトは……ボクの……。
「ひぁっ……!?」
「ん? お姉ちゃん?」
「……い、いやっ……! ……ご、ごめん。な、なんでも……ない……」
し、シラカさんが、ボクのお尻をっ……!? なんで撫でてっ……!
「あんなメスの匂い振りまいといて……。ただで済むと思わんほうがええよ……?」
「は、はぁっ……!? なにをっ……」
「ええからええから。こう見えて僕、色々慣れとるんよ。……ほら♡」
するとシラカさんは、自分の服をめくって……お腹をボクに見せた。そこには、シラカさんの……華奢で、柔らかな肉体があって……。そして胸の周りには、た、沢山の……。――キスマークが残されていた。
「(ごくっ……!)」
「今日だけで三人とシたかなぁ? 花火の日は、いつも客が多いからなぁ……。……フフ。君みたいなかわいい子やったら、タダでしてあげてもええで……?」
「……い、いやっ……そ、そういうのは、そのっ……!」
「大丈夫やって、優しゅうしてあげるから……♡ ……僕、得意なんよ? 君みたいな子に、メスを教え込ませるの……♡」
ほのかに漂う、ミステリアスな香り……。怪しくて危険な、大人の色香……。そしてボクをリードするような、少々の強引さ……。
予感があった。きっとこの人に抱かれたら、とっても気持ちよくなれる。だけどその代償としてボクは、何かを失う。
つまり……破滅だ。浮気。この人に抱かれたら、ボクは二人を失う。マサトも、ラフィールも。誰も居なくなって、ボクは……一人ぼっちになる。
「や、やだっ……やめっ……!」
「大丈夫……怖がらんでええよ。――とぉっても、気持ちよくしてあげるから……♡ ほら、こっちおいで。今ならバレへんよ……♡」
シラカはボクの口に指を入れて、ボクを抱きしめた。そしてそのまま物陰へ連れ込もうとして、ゆっくりとボクを引きずっていく。
抵抗しようとした。だけどなぜか、声が出なくて。ただされるがままで、抗うことすら出来なかった。叫ぼうとしても、マサトを呼ぼうとしても……。なぜか、無理。
嫌だ、怖い。そんなことを思いながら、少しずつマサトの背中が遠ざかっていく。や、やだ。やめてっ。マサトっ……! ……ラフィールっ……!
「――おい。……なにしてんだ、お前」
「ぁっ……! ら、ラフィールっ……!」
その時だった。突然聴こえてきたラフィールの声が、ボクとシラカの間を引き裂いた。
「兄ちゃんっ!?」
「あら……なんやぁ、ラフィール。来とったん? 案外早い登場やなぁ……」
「……御託はいい。何をしてんだって聴いてんだよ」
「やだなぁ。僕はちょっとからかっただけやんか。ウブな子を見ると、どうしてもな……♡」
ラフィールはボクをシラカから引き剥がし、抱き寄せた。そしてボクを抱きしめながら、牽制するようにシラカを睨みつける。
……あ、ああ。助かった。来てくれたのか、ラフィール。……よかった。怖かった……。ボク。二人を失うのかと……。
……温かい。ラフィールの体……。強張っていた体を、ほぐしてくれるみたいで……。
「あらあら、随分と仲のええことで。……かわいらしいなぁ、ますます奪いたくなるわ……♡」
「……下衆が。消え失せろ、お前に抱かれるようなメスは居ねぇよ」
「まあまあ、そう邪険にせんと。今日は本当に花火を見に来ただけなんやから。……なあ、マサト?」
「な、なに? シラカ兄ちゃん、何を……? もしかしてお姉ちゃんに何か……!?」
「いやあ。ただの勘違いやって。……でもなあ、隙だらけやったで? その子。そんな子を一人ぼっちにさせたら……あかんなぁ……♡」
ふと、シラカがボクを見つめ……舌なめずりをする。その時一瞬だけ見えた舌先は、まるで蛇のように長く……艷やかで。思わずボクは、背筋を凍らせながら……ラフィールの背中に隠れた。
「っ……」
「……まあ今日の所は、これで帰るから。安心してや。……次に会う時があったら……、油断せんほうがええけどな……♡」
「……フン」
「ほんじゃあまた会おうなあ、――ミノル……♡ ……花火、楽しんでな……♡」
シラカはそう言うと、手をヒラヒラと振りながら……人混みへと消えていった。煙のようにふわふわとしながら、どこかへと……。
……な、なんだったんだあの人。怖かった。色々なんていうか、不気味で……。……わからない……。
「……大丈夫か。何かされなかったか?」
「えっ。……あ、うん。大丈夫……一応」
「……そうか。ならいい。……今日は俺の側に居ろ、いいな?」
「う、うんっ……♡」
「ごめんお姉ちゃんっ! お、おれが側に居たのに。何も出来なくて……!」
「いやっ……いいんだよ。突然だったから……。……大丈夫。ありがとう、二人共っ……」
二人は心配そうに、ボクを見つめてくれていた。だけどボクは、大丈夫。ギリギリの所でラフィールが助けてくれたから……心配ない。
……とりあえず、余計な心配をするのはやめよう。マサトとラフィール、二人が居るんだ。あの人ももうこれ以上は、下手に近付いて来ないはず。
安心しよう。そうだ、今日は花火を見に来たんじゃないか。何よりもまず、それを見たい。この二人で、一緒に……。……そのほうが多少は、気が晴れるはずだ。
「ねえ、そろそろ花火上がるかなっ」
「え? あ、うん。そろそろだと思う――あ、お姉ちゃんっ。見て! 花火始まるよ!」
「えっ。……あ、本当だ……!」
ボクは空を見上げ、打ち上がる花火の軌跡を追いかける。すると次第に周りが騒がしくなってきて、今か今かという頃になった……その次の瞬間……。
『ピュー~~~~…………――パァンッ………!』
大きな花火が、夜空に弾けた。綺麗な赤色の光が、ぱらぱらと花のように舞い散って……。辺りは歓声と共に大きく沸き立つ。
「わあ……! 綺麗……!」
「ね! ここのは有名なんだよ、一番大きいから……!」
まさに大迫力、の一言に尽きるそれだった。最初の一発の後を追うように、次々と他の花火も打ち上がって……空に鮮やかな模様を彩っていく。
……綺麗だ。前に見たものよりも、もっともっと綺麗で、素敵な……花火。だけどボクは、ふとそれがどうしてなんだろう、と疑問に思って……。すぐさまボクは、その答えに気がついた。
「あっ……」
二人が、手を繋いでいた。ボクの邪魔をしないように、そっと優しく……恋人繋ぎ。きっと安心させてくれようとしているんだろう、さっきのことがあるから。
そしてボクは、花火で明るく照らされる……マサトの顔を。ラフィールの顔を、今後に見た。
……ああ。ボクは今、とっても幸せなんだ。だからこんなに花火が綺麗に見えるんだ。
その答えに気がついた、次の瞬間。たまたま偶然……マサトと目が合う。だけどそれが、なんだか恥ずかしくて。思わず目を逸らそうとして、ラフィールの方を見てみると。今度はラフィールと目があってしまった……。
だからついボクは、何かを言おうとしてしまった。だけどボクは、それが野暮だとわかっていた。
……ただ今は、こうしていたい。二人と手を繋いで、花火を見ていたい。出来ることなら、ずっと一緒に。皆で一緒に居られることを願って……。
そしてそれを願う力が、あまりに強かったせいか。……気がつくまもなく、ボクは……本音を漏らしてしまっていた。
「……ああっ。……大好きだなぁ、二人共っ……!」
……失いたくない。この二人を。ずっと側に居てほしい。そんな叶うことのない夢を見ながら、ボクは花火を見ていた。ずっとずっと、花火が終わる……その時まで……。
「うんっ。シラカ兄ちゃんは、よく昔からおれと遊んでくれたんだ。特に兄ちゃん……、あ、ラフィールの兄ちゃんが色々忙しい時とかにさ。でも別の村に引っ越しちゃってから、ずっと会えてなくて……」
タオルで体を拭きながら、マサトから関係性を伺う。そうしてわかってきた、シラカという人物。
シラカさん……は、ずっと木陰からこっちを見ていた。そしてボクと目が合うと、陽気そうに手をヒラヒラと振る……。
「……なんかちょっと、変わってる人っぽいけど。大丈夫なの……?」
「うん。一応……。昔からこういう性格だから。色々困ったことも多いけど、まあその……大丈夫だよ。多分……。い、一応昔は、おれの家庭教師とかしてくれてたし……」
「そ、そう。……ううん。そうなのかなあ……」
よくわからない。マサトから聞く限り、悪い人じゃなさそうだけど……。なんていうかこう、飄々としている性格っぽい。ラフィールとはまた違った意味で。
「と、とりあえず。マサト。流石に知り合いの前でセックスするわけには……ね? だから続きは、また後で……」
「あれ、なんやぁ。続きせぇへんの? 勿体ない」
「わぁっ!?」
「せっかくの花火デートやのに~。浴衣でセックスなんて滅多にできひんよ? そういうのはシたい時にしとかんと、後悔するけどなぁ」
い、いつの間に側にっ。ていうか顔近いよっ……!
「かわいい男の子同士がセックスやなんて。目の保養になるわぁ~……♡ ほら、マサトっ。遠慮なんてせぇへんでええから。思いっきりこの子、犯してあげ……♡」
「えっ……。い、いやっ。でもっ……!」
「大丈夫大丈夫……♡ この子、口ではこんなこと言うとるけど。あっちの方は準備万端やから。……な♡」
「っ……!」
な……なんだ、この人。なんでこんな事言うんだ。わざわざマサトを焚き付けるみたいなこと。……それに、ぼ、ボクのこと……見抜いて……?
「素直になれんだけなんよな……♡ この手の子は、ちょっと強引にリードするぐらいが丁度ええんよ……♡ ……ほら、見てん? この子の顔……物欲しそうにしとるやろ……♡」
「うっ……♡ お、お姉ちゃんっ……♡」
マサトの耳元で囁く、シラカのお兄さん。マサトの内なる劣情を煽るように、肩に両手を添えながら……淡い声色でマサトを誘惑していく。
次第にマサトの目は、再びボクの体へと向けられていき……。浴衣の隙間から見えるボクの裸から、目が離せなくなっていく……けど。
それでも流石にこの状況で手を出すほど、マサトは冷静さを失っていなかったようで。マサトはシラカさんの手を振り払い、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら怒りを露わにした。
「もっ……もうっ! 止めてよシラカ兄ちゃんっ! ま、また前にみたいにっ……お、おれのオナニー見るつもりっ……!?」
「お、オナニー……??」
「ん~? いやいや、そんなつもりは。僕はな? マサトのしたいようにさせたいだけやから……」
「前もそうだったよねっ……。お、おれに、えっちな本見せてさっ。おれを焚き付けて……! ……もう、やめてよそういうの! 恥ずかしいんだからおれだって……!」
そ、そんな関係だったのか……。ていうか、やっぱりそれ危ない人じゃ……。
「いやあ。あの頃のマサト、めちゃめちゃ可愛かって。ついイタズラしとうなってなぁ。フフ……悪く思わんといて」
「本当にもうっ……! て、ていうか。シラカ兄ちゃん、なんでここに居るんだよっ! 別の村に住んでたんじゃないの……!?」
「いやあ、久しぶりにマサトの顔見たくなってなぁ。ちょうど祭りもあったことやし、ええ機会やと思って」
「またそんなこと言って……。ど、どうせまた、変なこと考えてるんじゃないだろうね……?」
「いやあ、まさかぁ。フフ、そんなことあるわけないやんか。まさかなぁ……?」
いや、絶対考えてるでしょ。その目。さっきからマサトとボクを交互に見てるし、絶対何か企んでる……。
「ま! 感動の再開はここら辺にして。花火見に行こか~。そろそろ始まる時間やし!」
「ムスッ……」
「ほらほらマサト。そんな怒らんと! この子とセックスしたいんやったら……帰ったあとで、たっぷりすればええやんか……♡ ……なんなら兄ちゃんが、手伝ってあげるから……♡」
「っ~……! し、シラカ兄ちゃんッッ!! からかわないでよっ!」
「おっと、なはは! 怖い怖い、マサトが怒った! ははは!」
「……あ、案外仲のいい二人なのか……???」
ともかくシラカさんのお陰か、マサトの性欲は……一旦落ち着きを取り戻しつつあるようだった。その頃にはボクも、事後処理とかを殆ど終わっていたので。とりあえず花火を見るために、ラフィールの所に戻ろうと歩く。
するとシラカさんが、マサトに見えないよう……コッソリとボクに近付いてきて。さっきと同じように、ボクの耳元に口を……。
「にしても、マサトにこんな素敵な恋人が出来とったやなんてなぁ。僕驚いたわ……♡」
「ぶっ!?」
「君……マサトとどこまで行ったん? まさかもう、結婚の約束しとったりして……」
「いっ……いやっ……! ま、まだ恋人とか、そういうんじゃっ……!」
「あれ、そうなん? な~んや、ビックリして損したわ。……でも、そうか。ほんなら僕にもまだ……チャンスはあるってことやな♡」
「ち、チャンス……?」
あ、ああ。マサトを狙うチャンスって意味かな。いやでも、困るよそれ。マサトは、マサトは……ボクの……。
「ひぁっ……!?」
「ん? お姉ちゃん?」
「……い、いやっ……! ……ご、ごめん。な、なんでも……ない……」
し、シラカさんが、ボクのお尻をっ……!? なんで撫でてっ……!
「あんなメスの匂い振りまいといて……。ただで済むと思わんほうがええよ……?」
「は、はぁっ……!? なにをっ……」
「ええからええから。こう見えて僕、色々慣れとるんよ。……ほら♡」
するとシラカさんは、自分の服をめくって……お腹をボクに見せた。そこには、シラカさんの……華奢で、柔らかな肉体があって……。そして胸の周りには、た、沢山の……。――キスマークが残されていた。
「(ごくっ……!)」
「今日だけで三人とシたかなぁ? 花火の日は、いつも客が多いからなぁ……。……フフ。君みたいなかわいい子やったら、タダでしてあげてもええで……?」
「……い、いやっ……そ、そういうのは、そのっ……!」
「大丈夫やって、優しゅうしてあげるから……♡ ……僕、得意なんよ? 君みたいな子に、メスを教え込ませるの……♡」
ほのかに漂う、ミステリアスな香り……。怪しくて危険な、大人の色香……。そしてボクをリードするような、少々の強引さ……。
予感があった。きっとこの人に抱かれたら、とっても気持ちよくなれる。だけどその代償としてボクは、何かを失う。
つまり……破滅だ。浮気。この人に抱かれたら、ボクは二人を失う。マサトも、ラフィールも。誰も居なくなって、ボクは……一人ぼっちになる。
「や、やだっ……やめっ……!」
「大丈夫……怖がらんでええよ。――とぉっても、気持ちよくしてあげるから……♡ ほら、こっちおいで。今ならバレへんよ……♡」
シラカはボクの口に指を入れて、ボクを抱きしめた。そしてそのまま物陰へ連れ込もうとして、ゆっくりとボクを引きずっていく。
抵抗しようとした。だけどなぜか、声が出なくて。ただされるがままで、抗うことすら出来なかった。叫ぼうとしても、マサトを呼ぼうとしても……。なぜか、無理。
嫌だ、怖い。そんなことを思いながら、少しずつマサトの背中が遠ざかっていく。や、やだ。やめてっ。マサトっ……! ……ラフィールっ……!
「――おい。……なにしてんだ、お前」
「ぁっ……! ら、ラフィールっ……!」
その時だった。突然聴こえてきたラフィールの声が、ボクとシラカの間を引き裂いた。
「兄ちゃんっ!?」
「あら……なんやぁ、ラフィール。来とったん? 案外早い登場やなぁ……」
「……御託はいい。何をしてんだって聴いてんだよ」
「やだなぁ。僕はちょっとからかっただけやんか。ウブな子を見ると、どうしてもな……♡」
ラフィールはボクをシラカから引き剥がし、抱き寄せた。そしてボクを抱きしめながら、牽制するようにシラカを睨みつける。
……あ、ああ。助かった。来てくれたのか、ラフィール。……よかった。怖かった……。ボク。二人を失うのかと……。
……温かい。ラフィールの体……。強張っていた体を、ほぐしてくれるみたいで……。
「あらあら、随分と仲のええことで。……かわいらしいなぁ、ますます奪いたくなるわ……♡」
「……下衆が。消え失せろ、お前に抱かれるようなメスは居ねぇよ」
「まあまあ、そう邪険にせんと。今日は本当に花火を見に来ただけなんやから。……なあ、マサト?」
「な、なに? シラカ兄ちゃん、何を……? もしかしてお姉ちゃんに何か……!?」
「いやあ。ただの勘違いやって。……でもなあ、隙だらけやったで? その子。そんな子を一人ぼっちにさせたら……あかんなぁ……♡」
ふと、シラカがボクを見つめ……舌なめずりをする。その時一瞬だけ見えた舌先は、まるで蛇のように長く……艷やかで。思わずボクは、背筋を凍らせながら……ラフィールの背中に隠れた。
「っ……」
「……まあ今日の所は、これで帰るから。安心してや。……次に会う時があったら……、油断せんほうがええけどな……♡」
「……フン」
「ほんじゃあまた会おうなあ、――ミノル……♡ ……花火、楽しんでな……♡」
シラカはそう言うと、手をヒラヒラと振りながら……人混みへと消えていった。煙のようにふわふわとしながら、どこかへと……。
……な、なんだったんだあの人。怖かった。色々なんていうか、不気味で……。……わからない……。
「……大丈夫か。何かされなかったか?」
「えっ。……あ、うん。大丈夫……一応」
「……そうか。ならいい。……今日は俺の側に居ろ、いいな?」
「う、うんっ……♡」
「ごめんお姉ちゃんっ! お、おれが側に居たのに。何も出来なくて……!」
「いやっ……いいんだよ。突然だったから……。……大丈夫。ありがとう、二人共っ……」
二人は心配そうに、ボクを見つめてくれていた。だけどボクは、大丈夫。ギリギリの所でラフィールが助けてくれたから……心配ない。
……とりあえず、余計な心配をするのはやめよう。マサトとラフィール、二人が居るんだ。あの人ももうこれ以上は、下手に近付いて来ないはず。
安心しよう。そうだ、今日は花火を見に来たんじゃないか。何よりもまず、それを見たい。この二人で、一緒に……。……そのほうが多少は、気が晴れるはずだ。
「ねえ、そろそろ花火上がるかなっ」
「え? あ、うん。そろそろだと思う――あ、お姉ちゃんっ。見て! 花火始まるよ!」
「えっ。……あ、本当だ……!」
ボクは空を見上げ、打ち上がる花火の軌跡を追いかける。すると次第に周りが騒がしくなってきて、今か今かという頃になった……その次の瞬間……。
『ピュー~~~~…………――パァンッ………!』
大きな花火が、夜空に弾けた。綺麗な赤色の光が、ぱらぱらと花のように舞い散って……。辺りは歓声と共に大きく沸き立つ。
「わあ……! 綺麗……!」
「ね! ここのは有名なんだよ、一番大きいから……!」
まさに大迫力、の一言に尽きるそれだった。最初の一発の後を追うように、次々と他の花火も打ち上がって……空に鮮やかな模様を彩っていく。
……綺麗だ。前に見たものよりも、もっともっと綺麗で、素敵な……花火。だけどボクは、ふとそれがどうしてなんだろう、と疑問に思って……。すぐさまボクは、その答えに気がついた。
「あっ……」
二人が、手を繋いでいた。ボクの邪魔をしないように、そっと優しく……恋人繋ぎ。きっと安心させてくれようとしているんだろう、さっきのことがあるから。
そしてボクは、花火で明るく照らされる……マサトの顔を。ラフィールの顔を、今後に見た。
……ああ。ボクは今、とっても幸せなんだ。だからこんなに花火が綺麗に見えるんだ。
その答えに気がついた、次の瞬間。たまたま偶然……マサトと目が合う。だけどそれが、なんだか恥ずかしくて。思わず目を逸らそうとして、ラフィールの方を見てみると。今度はラフィールと目があってしまった……。
だからついボクは、何かを言おうとしてしまった。だけどボクは、それが野暮だとわかっていた。
……ただ今は、こうしていたい。二人と手を繋いで、花火を見ていたい。出来ることなら、ずっと一緒に。皆で一緒に居られることを願って……。
そしてそれを願う力が、あまりに強かったせいか。……気がつくまもなく、ボクは……本音を漏らしてしまっていた。
「……ああっ。……大好きだなぁ、二人共っ……!」
……失いたくない。この二人を。ずっと側に居てほしい。そんな叶うことのない夢を見ながら、ボクは花火を見ていた。ずっとずっと、花火が終わる……その時まで……。
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