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初めての村

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 まずはエリーが言ってた魔物すら入ってこない問題を解決しよっか。このままじゃ私の称号がダンジョンマスターからゴブリンクイーンになっちゃう。

 魔物が入ってこないのは外からゴブリン村が見えちゃう事。というわけでダンジョンを二階建てにする事にした。300ポイントかかるけどしょうがないか……。

 さらに少しだけポイントを払って今のゴブリン村を地下に移す。晴れて入口だけに原点回帰した1階は普通のダンジョンにしよ。

 2つの部屋と通路。部屋はそれぞれ家2軒分の広さにして……1階にはコボルト10匹とボスとして黒ウルフ5匹。

 あとは奥に宝箱をおいて終わり! 宝箱にはウチの名産とする予定のゴブリン印の魚の干物でも入れとこう。宝箱は時間が止まるらしいし。

 これで1階は立派なダンジョン! なぜかダンジョンを敵視する一般魔物も、2週間来場者0の冒険者も大喜び間違いなし!

 さぁ普通ならこれで終わりだけどウチのメインは地下。前までの小さな草原をうんと拡大して村2つぶんくらいにする。

 森も川も大きくなって、新たに湖まで付いたモンスターパラダイス。オプションで地面の下に岩塩とか粘土、鉄鉱石も追加しよっと。あと太陽光と青空も。

 マスター画面に表示された残りポイント欄を見ると……ここまででかかったのは1500ポイント。お金に直すと約7万5千コイン……いや私は何も見てないぞ何も見てない。

 ダンジョン環境を作り終えたから次は大事なモンスター達。主力商品にしようと考えてる食料系は農業も少し出来るホブゴブリンにする予定だけど……そのうち他のも作りたいしな~。

 「ねぇエリー。器用だったり賢くてポイントの安いモンスター知らない? 戦えなくていいからさ」
 
 「そうですね……黒エルフでしょうか? 彼ら賢いしそこそこ器用ですがとても安いですよ。1人2000ポイント。まともに物を作れる最安モンスターです」

 この村はめでたくホブゴブリン村になる事が決まった。18体のホブゴブリンと10匹のゴブリンを召喚。残りの220ポイントで斧とか釣り竿を渡してあげた。今日見たら魚を手づかみで採ってたもん。
 
 この子たちはこれからダンジョンもとい交易の大事な戦力だ。どれ、私が直々にありがたい挨拶でもしてあげよう。

 「オホン。ここのダンジョンマスターのアオバですっ。色々仕事はあるけどまずは挨拶から。ようこそ我がダンジョンへ。よろしくね」
 「ゴブゴブ!」「ゴブー」

 言葉が通じてる……かは微妙だけど喜んでるしいっか。うんうん4匹から数も増えて賑やかになってきたね。とりあえずここの子たちは生活の基盤だけ整えてもらってゴブリンに狩猟と採取してもらってと。

 「エリー。ホブゴブリンってどこまで出来るの?」
 「一部の農業やソーセージなどの食肉加工、ボロくはなってしまいますが建物を建てたり服も作れますよ」

 おぉすごい! さすが80ポイントもするだけあるね。ゴブリン達は葉っぱの家とかに住んでてかわいそうだったんだよね……。

 ソーセージとか作れるなら今度は豚とか買ってきてもいいかも。最初はどうなるかと思ったけど夢が広がるね~。

 さっそくゴブリン達は木を切りに、ホブゴブリン達は少しだけあった丸太で家を作りはじめた。総勢32匹。
 
 私は私で別の仕事がある。貧乏暇なし歩けよ乙女。近くの町でいいから残りの9万コインで馬と荷車を買ってこなくちゃ。行ってきまーす!


 あれから15日。商人との激しい交渉戦に札束で勝ち、無事馬車をゲットして帰ってきた。馬車の置き場もないからそのままルンルンでマスタールームへ。いや~いい買い物をしたよ。まず商人がね……。

 「マスター。ダンジョンに魔物が入ってきましたよ」
 「ほんと!? さっそくマスター画面で見よ見よ」

 エリーは私の自慢話3時間フルコースを回避して画面を見せてくれた。入ってきたのはボア2頭。さっそくコボルトにボコボコにされてポイントになった。うまうま。

 ちゃんとダンジョンと認識されて魔物も入ってくるようになったね。エリーによると他にもちょくちょく魔物が入ってきてるみたいだし。
 コボルトとウルフの補充をしたら次はゴブリン村。

 お~。15日のうちに家がたくさん建ってる! 8軒くらいかな? 他にも倉庫とか1隻だけど釣り用の船まで。ゴブリンがせっせと木を切って、ホブゴブリンが総出で建物を建てたみたい。
 
 どの建物もガタガタだけどダンジョンが発展するのを見ると感動しちゃう。

 「ゴブゴブ」

 村を見て回ってるとホブゴブリン達が手招きしてきた。向かう先は倉庫。中に入るといっぱい木とか木の実が置いてある。
 
 そして奥には……すごい。魚の干物がたくさん! 300匹くらいあるじゃん。

 聞くとどうやらゴブリン4匹の時代から貯めてきてたらしい。……ありがとう。
 あと隣には薪もそこそこ。もうすぐ寒くなってくるしこれは売れそう! ナイスゴブリン達!

 干物を指さして腕を大きく回すっていう私の必死のボディランゲージが通じたのかゴブリン達はちゃんと作ってくれたみたい。この干物たちにダンジョンの運命がかかってる。
 
 ゴブリン達の努力を無駄にしないためにも私が責任もって売り切ってみせるよ!

 さっそくエリーにも手伝ってもらって干物と薪を馬車に積み込んでいく。しっかり詰めるとまだまだ荷車の3分の1くらいしか使われてないけどそれでもうちの大事な名産だ。
 
 帰ってきたばかりだけど早速馬車に乗って外に出る。町まで遠いのにどこと取引するのかって? 
 私が行こうと思ってるのは周りにある小さな村々。

 人も100人とか数十人の本当に小さな村でギルドも無いから冒険者時代はご縁が無かったけども、このダンジョンの周りにもいくつかあるんだよ。
 
 交易でこういう村が発展したら冒険者とかも生まれてダンジョンに来るかもっていう淡い希望も持ちつつ、私はさっそく一番近くの村に向かった。

 ウルフじゃなくて馬車なのに、今までの長い旅路からは考えられない脅威の2日で到着。私の感覚がおかしくなってきた気がする……。
 
 村の周りは特に門とか衛兵もいなくて低い柵があるくらい。もちろん中から私が見えるわけで、近づいていくと村人が集まってきた。

 「馬車だなんてどこかの商人さんかねぇ」
 「この村にそんなん来るもんか。こんな街道も無い所に来るなんて道にでも迷ったのか?」

 馬車が珍しいのか近くの人たちが集まって来ちゃった。そっか街道も無くて危険だから商人は来ないんだ。村人達には悪いけれど私にとってはチャンス!
 まずはニッコリ笑顔で挨拶だよね!

 「初めまして。私はアオバって言います。この村と交易をしたいと思って来ました」
 「えぇ!? まさかそんな人がいるなんて……村長を呼んでくるよ」

 5分もしないうちに20代後半くらいの男の人が歩いてきた。えっ村長って言葉のイメージとだいぶ違う……どっちかというと軍隊にいそうなくらい。

 いやいや怖がっちゃだめだよアオバ。悪はどっちかというとダンジョンマスターの私の方だし。

 「初めまして。私はこのブラックリ村で村長をしております。ガルドと申します」

 そういって彼は私の倍はありそうな大きな手を差し出してきた。男の人の手の大きさにびっくりしながらも、しっかりと握り返す。商談開始だ。
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