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商談

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 「初めまして。アオバです」
 「これは丁寧に。こんな所でもなんです。私の家で話しましょう」
 「ありがとうございます。そうだウルフ。馬車をお願い」

 うちの幹部モンスターのウルフを呼び出すと馬車の荷台に乗ってグルルとうなる。

 「君は立派な剣も装備してるしテイマーには見えなかったが……」
 「あはは……この剣は盗賊を寄せ付けないためなんですよ。よく間違われちゃうんです」

 もうテイマーじゃないって疑われてる!? この人何者なの。ただの村長じゃ無さそう……これは警戒した方がいいのかも。

 「ワハハ。交易商さんは冗談が上手いなぁ」

 そんな懸念もどこへやら。村長さんは普通に良いひとだった。どうやら元は強い兵士だったらしいけど、故郷の貴族が重税を課してきたから、ここに新しく村を作ったらしい。

 「ふむ。交易商さんの売り物は魚の干物と薪か。うちは新しく出来た村だから食料や薪には苦労しがちなんだ。助かるよ」
 「これからも商品は出来るだけ増やしますよ。必要な物があったら言ってくださいね」

 「ありがとう。とりあえず今回は顔合わせって事で干物を200と薪を5キロほど買いたいな」
 「ありがとうございます。町で買うのと同じくらい安くさせてもらいますよ」

 なんたって私の所は人件費0だし。これだけ聞くとブラック臭がすごいけど……価格勝負じゃ負けないよ!

 「ほぉ。干物1匹で80コインか。驚いた。本当に安い。どうやって儲けるんだい?」
 「それはもちろん企業秘密です」

 商人としても秘密だしダンジョンマスターとしても絶対答えられないよ!

 「そりゃそうか。ごめんごめん。この村には交易商なんて来ないから本当に助かるよ。どれくらいの頻度で来てくれそうなんだい?」
 「しばらくは20日に1回くらいかと……」

 「そんなに!? ちなみに量は? 特に食べ物とか」

 うーん、最悪ダンジョンで狩猟とかもしたらたくさん運べるかな。

 「頑張れば馬車に満載くらいなら……いけます」
 「それは助かるよ! 本当にありがとう! 村長として村人を飢えさせる事だけはしたくないからな」

 そういうと村長さんがギューッと手を握ってきた。痛い痛い! 元兵士の筋肉量やばい!
 
 「どこから仕入れるんだ……とも聞けないな。それじゃあこれからもよろしく頼む」
 「はい! こちらこそよろしくお願いします!」

 こうしてダンジョン初めての交易は大成功。売上18000コイン。ポイントに直すと360ポイント。干物に使う塩代とかその他考えても大儲けだよ!
 
 見てよエリー。この美しく輝く銀貨を……。っていかんいかん。見惚れてる場合じゃない。もっとお金を稼がなければ。

 次の村も同じような感じで話が進んで干物と薪の残りを全部買い取ってくれた。聞いたらあと2つ、少し遠出すればさらに3つ村があるけど、どこも交易商がほとんど来ないみたい。4か月に1回とか。みんな町に行っちゃうらしい。
 
 これはうちのダンジョンの時代来ちゃったかも! とりあえずダンジョンにもどろ~。



 「ただいまエリー。ねぇ聞いて。540ポイント近く儲かったよ!」
 「おぉ。マスターの案が成功する日が来るとは。びっくりです」

 「どういう意味よそれ。2つ目の村で全部売り切れちゃった。他の村にも行きたいし商品も増やしたいし。どうしよ~」
 「そういうと思って干物と薪はまた大量に準備していますよ。保存食があまり無いので干物は便利です」

 そうなんだよね~。とりあえずゴブリンを増やして量でも増やそ。目指せ馬車満載。
 ゴブリン村に降りると村がさらに立派になっていた。家は15軒くらいに増えて川には船がいっぱい。

 「あんなに漁師になるほど人数いたっけ?」
 「ちょうど今はゴブリン達がどんどん増えてるんですよ。食べ物にも困らず土地が広くて、他の魔物もいないゴブリンパラダイスみたいな物ですし。10匹近く生まれたとか」

 ほんとだ。よく見たら水汲みとか干物づくりみたいな簡単な作業には子供ゴブリンがいっぱい。ここも本当に村って感じになってきたね~。
 
 とりあえず今ある物を近くに売ってこよ。村の人たちに覚えてもらう事が大事だしね。これを売ったら在庫は無くなるから村の事も頑張ろうかな。


 
 10日後。無事に干物200と薪5キロが売り切れてダンジョンに帰ってきた。まだまだ村々は物不足っぽいししばらくは買ってくれそうだね。
 
 でも今日はダンジョンの発展につかおうかな。最初のブラックリ村に行くまでにあと数日。交易で稼いだ880ポイントとその他の220ポイントで1100ポイント。楽しくなってきたね~。

 まず私の一番の悩みを解決しよっか。それはゴブリン達と言葉が通じない事! 今までだって”干物作っ”と”薪を貯めて”の2つ伝えるのに3時間かけてるからね!?
 
 それにどんどんゴブリンは増やしていく予定だから賢いやつを呼んでゴブリン村を管理してもらいたいってのもある。

 「さぁおいで! ゴブリンキング!」

 私は500ポイントを使ってゴブリンキングを召喚した。この子はゴブリンより弱いのにこんなに値段が高いのには理由がある。もちろん賢いってのもあるけど、まずは人間とゴブリンの言葉、他にもコボルトの言葉だって簡単に話せること。

 もう私としては話せるってだけで1000ポイントでも払える気分だけど、この子はさらにスキル”カリスマ レベル1”を持ってる。

 このスキルがあると支配下のゴブリン全員が3%動きが早くなるっていう万能な子なのだ。ビバ万能児!

 「お初にお目にかかりますマスター。なんなりとお申し付けください」
 
 おぉ~本当に話してる。泣きそう。よし、名前をつけてあげよう。

 「うむ。くるしゅうない。そなたには特別に名前を付けてやろう。安直だが今後はキングと名乗るがよい」
 「急にどうしちゃったんですかマスター。いつものバカっぽい話し方を忘れましたか?」

 エリーめ。だれがバカっぽいだ。たまにはかっこつけてもいいじゃん。
 私たちのレベルの低い争いを華麗にスルーしてキングは私の前にひざまずいた。

 「ありがたき幸せ……。このキング、マスターのために力を尽くしましょう。して、私が治める国はどれでしょうか?」
 
 さすがゴブリンキング。ゴブリンなのに気品がただよってる。しかももう自分の役目を分かって覚悟があるなんて。これなら大役を任せられるね。

 「うん。じゃあそこの村の管理をお願い。ゴブリン40匹くらいの」
 「はっかしこまり……村? 500匹ほどのコロニーを率いられる私が……? いえなんでもありません。それでは務めを果たしましょう」

 なんか……ごめんね?
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