成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 真剣な面持ちで触り比べていたビアンカの瞳はすぐに驚愕見開かれた。
 そんなビアンカの反応に、レジアンナやクラリーチェもおずおずとリアーヌの両腕に手を伸ばす。

「こ、これが、とぅるとぅる……!」
「――全然違います⁉︎」

 驚きの声を上げる二人に、リアーヌは営業をかけるセールスマンのようにスパの説明を披露していく。

「このお湯でお風呂に入り続けると、ずっと若い肌のままでいられるって話です」
「――ずっと……⁉︎」
「若い肌……」
「お風呂に入るだけ……」
「――こりゃ売れるぞ……!」

 リアーヌの言葉にビアンカたち女性陣がゴクリと唾を飲み込みながら洗面器に入ったお湯を見つめ、ゼクスがギラギラとした目つきで喜びを噛み締めていた。

「――わたくしの家でも【スパ】のギフト持ちを雇っても構わなくて⁉︎」
「わ、私に止める権利なんかないよ……」

 レジアンナに勢いよくたずねられ、リアーヌは少し身体を引きながら答える。

「お母様に探していただかなくては……」

 アゴに手を当てブツブツと呟き続けるレジアンナの隣で、ギュッと両手を握りしめたクラリーチェが意を決したように口を開いた。

「あのっ! このスクラブというものの作り方を詳しくお教えいただけませんか⁉︎」

 その言葉にリアーヌはニコリと笑顔を作り、おっとり頷いた。

(これは教えてもいいよって言われてるもんねー!)

「私が使ってるものはハチミツと塩を一対一の分量で混ぜるだけですけど、母はハチミツが多めでオイルを混ぜてたものを使っておりますの」

 ふふふっと微笑みながら首を傾げて答えるリアーヌ。
 その姿をチラリと見つめたビアンカは(ああ、この話題はの受け答えの練習は予習済みなのね……)と、軽く首をすくめながら、頭の中で今聞いたスクラブのレシピを復唱していく。

「……それを教えてくれたということは、やっぱりスクラブがボスハウト家の美の秘訣というわけではありませんのね?」
「……まぁね?」

 少し拗ねたようにたずねてくるレジアンナに、リアーヌは困ったように肩をすくめて見せる。
 しかし、心の中では必死に自分に声をかけ、注意を促していた。

(いいことリアーヌ! 誰になにを聞かれてもパールパックのことは絶対秘密よ! ビアンカにも言っちゃダメなんだから! ビアンカが察しちゃったとしても、私は絶対に認めちゃダメっ!)

 そんなリアーヌの態度にさらに唇を尖らせたレジアンナだったが、やがて大きく息をつきながら口を開いた。

「面白くは無いけれど……――スクラブは作り方まで教えてもらえたんですもの。 ――欲をかくのはやめておくわ?」
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