成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 ーーユリアは招待状も持たないただの友人を王城のパーティーに同行させ、そして王家の許可も無しにパーティー会場に入れたのだと言う事実に。

「……え、そんなこと許されるんですか?」

(ワンチャン、ユリアが不敬罪に問われる可能性……)

「普通ーーというか、絶対に許されない行為よ! だってそんなことが罷り通ったら暗殺者なんて入れたい放題じゃないっ! こちらは王家の顔を立てて護衛の一人も連れて来ていませんのよ⁉︎」

 苛立ちのままに声を荒げるレジアンナ。
 普通であれば、すぐに誰かが宥めるような場面なのだが、その言葉が皆の心を代弁するかのようなものだったので、誰もレジアンナを止めようとはしなかった。

「……そんなに守護のギフト持ちは“特別”ですのね」

 ため息混じりに呟かれたクラリーチェの言葉に、部屋のそこかしこからため息じみた吐息が漏れた。

「――あんな方が王族に入る……? 冗談じゃありませんわ⁉︎ 考えただけで虫唾が走る!」

 そう声を上げたレジアンナがギリギリと手にしていたセンスを握り締め始め、ようやくフィリップがその手を握りながらレジアンナをは宥め始めた。

「君の怒りはもっともだと思うよ? でもそんなに強く握ったら……君が怪我をするなんて耐えられない……」
「けどぉ……」

 にかわにピンク色の会話を撒き散らし始めた二人バカップルを、慣れた様子でスルーしながら、会話を続けるリアーヌたち。

「ーーやっぱり王族入りするんですか?」
「こうなった以上……入る以外の道は無いように思うけど……」

 ゼクスは首を傾げながら、自信なさげに答える。
 ビアンカやパトリックたちも同じ意見だと伝えるように首を捻って見せた。

「レオン様……」
「大丈夫、これでいい。 守護のギフトを持っていようと、これであの女が国を揺るがすほどだと、多くの貴族に知れ渡ったーーいくら王妃が後ろ盾につこうと、国を揺さぶる者を貴族たちは決して認めないーーそうなれば……それは私の味方が増えるということだ」
「そう、ですね……ーーお支えいたします。 いつまでも……」
「クラリーチェ……」

 手に手を取りあい見つめあう二人に、リアーヌは驚いた様に口を開く。

「ーーぇ、増えた?」

 しかしその口は、ビアンカの足先への攻撃により、すぐさま閉ざされた様子だった。

(いやだって……真面目な話してる真っ最中にいきなり差し込んでくるから……ーーにしても……あれ? レオンやフィリップが攻略対象者でしたよね……? なんか……主人公に対する愛がカケラほども感じられておりませんが……ーーいやいまさら持たれても困るんだけど……なんだろうな……まだちょっとだけ、夢見てたかったな……)
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