758 / 1,038
758
しおりを挟む
しみじみと言う店主の言葉に、リアーヌは照れ臭そうにしながらも、ほんの少し感じていた不安を口にした。
「ーーでも、全部一緒になっちゃうから……つまんないでしょ?」
以前、どこかのお茶会で、出された食器を見せられながら『ここの職人は遊び心があって、どの絵柄も少しづつ変えていて……ほらリアーヌ様のカップにはウサギがいますけれど、私のカップは小鳥でしょう? ーー楽しいですわよね⁉︎ ……これに慣れてしまうと、全く同じ絵柄はつまらなくて……』と言われたことを覚えていて、そこから『食器の絵は全部違う方が楽しく、良い食器』と覚えていたのだ。
「……? ここまで綺麗に揃った絵は中々見ねぇ。 たくさん買って並べておきたいって客は多いと思うぜ? 手書きでこれをやろうとしたら大仕事になるからな?」
「それはーーそうなのかも……?」
「うちとしちゃ、頼まれた絵柄を頼まれた数頼まれた日までに仕上げられそうで万々歳だ。 本当にありがとな? 旅行前で忙しかっただろうに……」
肩を落とし申し訳なさそうに言う店主に、リアーヌは慌てて声をかける。
「だから今日は予備日だからなにも予定無い日なんだって!」
「予備日?」
リアーヌの言葉に反応したのはヨッヘムだった。
「んーなにやってもいい日? 今日みたいに予定外の用事をちゃんと済ませられるように抑えてある日なの」
「そんな日が……なにもやんなくていい日かぁ……良いな? 俺らも取り入れた方が良いんじゃないか?」
「ばかいえ、お嬢たちの相手はお貴族様なんだよ」
漫才のようなやり取りにクスクスと笑いながらリアーヌは頷く。
「だね。 主にお貴族様用に予定を開けてる日。 相手によっちゃ「ごめん無理!」なんて言えないから」
「……お貴族様でも言えねぇのか……」
顔をしかめながら言うヨッヘム。
それに合わせるように顔をしかめて、リアーヌも答える。
「……うち子爵だもん。 下から数えた方が早いし……」
(と言うか、下には男爵しかありませんよ……)
「大変なんだなぁ……?」
同情的な視線をリアーヌたちに向けるヨッヘムに、店主はケラケラと笑いながら「けど明日からは楽しい避暑旅行だぜー?」と、おどけるように声をかける。
「お、良いねぇ? いつ出発だ?」
「……明日?」
「おう……そりゃーー運がいいのか悪いのか……」
ヨッヘムはなんとも言えない顔を店主に向けながら言った。
「なんとかなったんだから悪くはねぇだろ。 ーーネルリンガの牛はうめぇって評判だ。 しっかり食ってこいよ?」
前半はヨッヘムに返し、後半の言葉はリアーヌたちにかけながら、ニカッと笑顔を浮かべる店主。
「ーーでも、全部一緒になっちゃうから……つまんないでしょ?」
以前、どこかのお茶会で、出された食器を見せられながら『ここの職人は遊び心があって、どの絵柄も少しづつ変えていて……ほらリアーヌ様のカップにはウサギがいますけれど、私のカップは小鳥でしょう? ーー楽しいですわよね⁉︎ ……これに慣れてしまうと、全く同じ絵柄はつまらなくて……』と言われたことを覚えていて、そこから『食器の絵は全部違う方が楽しく、良い食器』と覚えていたのだ。
「……? ここまで綺麗に揃った絵は中々見ねぇ。 たくさん買って並べておきたいって客は多いと思うぜ? 手書きでこれをやろうとしたら大仕事になるからな?」
「それはーーそうなのかも……?」
「うちとしちゃ、頼まれた絵柄を頼まれた数頼まれた日までに仕上げられそうで万々歳だ。 本当にありがとな? 旅行前で忙しかっただろうに……」
肩を落とし申し訳なさそうに言う店主に、リアーヌは慌てて声をかける。
「だから今日は予備日だからなにも予定無い日なんだって!」
「予備日?」
リアーヌの言葉に反応したのはヨッヘムだった。
「んーなにやってもいい日? 今日みたいに予定外の用事をちゃんと済ませられるように抑えてある日なの」
「そんな日が……なにもやんなくていい日かぁ……良いな? 俺らも取り入れた方が良いんじゃないか?」
「ばかいえ、お嬢たちの相手はお貴族様なんだよ」
漫才のようなやり取りにクスクスと笑いながらリアーヌは頷く。
「だね。 主にお貴族様用に予定を開けてる日。 相手によっちゃ「ごめん無理!」なんて言えないから」
「……お貴族様でも言えねぇのか……」
顔をしかめながら言うヨッヘム。
それに合わせるように顔をしかめて、リアーヌも答える。
「……うち子爵だもん。 下から数えた方が早いし……」
(と言うか、下には男爵しかありませんよ……)
「大変なんだなぁ……?」
同情的な視線をリアーヌたちに向けるヨッヘムに、店主はケラケラと笑いながら「けど明日からは楽しい避暑旅行だぜー?」と、おどけるように声をかける。
「お、良いねぇ? いつ出発だ?」
「……明日?」
「おう……そりゃーー運がいいのか悪いのか……」
ヨッヘムはなんとも言えない顔を店主に向けながら言った。
「なんとかなったんだから悪くはねぇだろ。 ーーネルリンガの牛はうめぇって評判だ。 しっかり食ってこいよ?」
前半はヨッヘムに返し、後半の言葉はリアーヌたちにかけながら、ニカッと笑顔を浮かべる店主。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
315
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる