成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 恐る恐るたずねたリアーヌに、フィリップは困ったようにレオンやレジアンナたちと顔を見合わせながらため息混じりに答える。

「いやーーすでに君は安全な場所に辿り着いてしまっているんだ……なんの妨害もなく」
「……どういう?」
「例え学生といえど、我々の家は顔がきく。 そんな我々の制止を押し切ってまでリアーヌ嬢を捕えようとする騎士も役人もこの国には存在しない」
「……ここに辿り着いちゃったから?」
「ああ。 あの招待状は一種のーー賭け、のようなものだったんだ。 王妃側の追手を振り払って、万が一にでも学院に到着出来たなら、うちの名前で少しの時間ぐらい稼げるかもしれない。 そうすれば君の家の使用人たちがうちのサロンに駆け込んでくる可能性もゼロではないとーー……まさか優雅なカテーシーまで披露できるほどの余裕と共にやって来るとは……想像もしていなかったよ」

 リアーヌはその言葉に首を捻りながらそっとカチヤたちが控える壁際を振り返る。
 そして小声で「ーー実は人知れず守っていただいていたり……?」とたずねていた。
 話しかけられたカチヤたちは少し困ったように顔を見合わせるとふるふると首を横に振る。
 そして、そう答えてもなお前を向かないリアーヌにさらに困ったように視線を絡め合うと短く答えを返した。

「そのようなことは……」
「なんの問題もございませんでしたわ?」

 そんなメイドたちにフィリップが声をかける。

「もしよければ貴女方の意見を聞かせてはくれないか? 子爵様の様子はいかがだっただろう?」

 フィリップに声をかけられたことに戸惑うカチヤたちだったが、リアーヌに本当にそんな危機が迫っているのであれば見過ごせないと、視線を交わし合いお互いに頷きながら口を開いた。

「ーー子爵様も奥様もヴァルム様も、いつもの変わらないご様子だったように思います」
「……追跡してくる馬車も者も見かけませんでしたし……ーー馬車乗り場では少しお声がけをする時間すらございました」

 その言葉にフィリップはイザークに視線を流し、イザークは小さく頷いて見せる。
 それはその言葉にウソは無いという意味でもありーーそのことで一同はさらに首を捻ることになるのだった。

「……つまり私は無事……?」

(だって、流石に私が投獄暗殺エンドになりそうだったら父さんが反応してくれると思うし……ーーいやでもユリアはギフトが無くなったって騒いでるっぽくて……)

 リアーヌもそこまで考えて大きく首を傾げた。

わたくしたちもそこが知りたいんですわ……?」

 リアーヌの首に合わせるように首を傾けたレジアンナも困惑した声を上げる。
 
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