967 / 1,038
966
しおりを挟む
「ーーでは、ザーム様はどうやってここに……?」
ザームにそう問いかけたのはフィリップだった。
不可解そうな顔つきでザームを見つめている。
ーーオリバーから聞いていないのであれば、自力でたどり着いたということだが、教養学科でも目も耳も持っていないはずのザームがどうしてここまで辿り着けたのか、気になったようだった。
「どうって……いつも通り姉ちゃんの匂い追って来ただけだけど?」
「あー……?」
フィリップはザームの答えに笑うか笑わないか迷うそぶりを見せながら、チラリとイザークに視線を向けるがーー
イザークが表情を取り繕うことすら忘れ、驚愕の表情をザームに向けているのを見て、軽く咳払いをしながらザームにもう一度たずねる。
「……その、匂いかい? それはーーその、なにかの比喩なのかな?」
「ひゆ……? 普通に姉ちゃんの匂いがするほうに来ただけた」
その言葉に今度はフィリップだけではなく、その隣のレジアンナやレオンとクラリーチェまでもがイザークに顔を向けるが、そこには呆然とザームを凝視しているだけだった。
そんなイザークに、隣に座っていたラルフは小声で「……ちなみに僕は甘いものが嫌いなんだけどさ……?」と語りかけていた。
その言葉を聞き頭を抱えてしまったイザークは混乱した様子でうわごとのように「ーー……いや、しかし……ーー肉体強化なら……?」と呟き続けていた。
「本当なのか……」
そんなイザークの様子に気の毒そうな視線を向けながらフィリップが呟いた。
そんな一同に内心では同意しながらも、リアーヌから多少はザームのことを聞いていたゼクスはリアーヌに説明を求めた。
「……そういえば弟くんは昔から鼻がいいんだったっけ?」
「そうですねー……ーー昼間にこっそり食べたお菓子の砂糖の匂いすら分かるヤツだったんで、私の匂いを辿るとか余裕だと思います……ーーあんたのそれギフト使ってたの?」
「……さぁ? かごうと思うと分かるようになるんだよ」
その答えを聞いてリアーヌはゼクスに向き直りながら頷いた。
「ーーギフトの力だと思います!」
「……俺もずっとここに居なきゃダメなのか?」
「……桜餅にはまだ間に合うよ」
「それは食うけどーーもうすぐ試験だから練習してぇ……」
シュン……と肩を落とす弟の様子にリアーヌはゼクスにたずねた。
「ーーザームはこの部屋の外に出ても大丈夫だったりしますか……?」
「いやいやいや、最悪の場合リアーヌの居場所が分かったって、大勢の生徒が押しかけてくることになるよ?」
「そ、れは……」
ゼクスの言葉にリアーヌは口ごもりながら視線を落とした。
ザームにそう問いかけたのはフィリップだった。
不可解そうな顔つきでザームを見つめている。
ーーオリバーから聞いていないのであれば、自力でたどり着いたということだが、教養学科でも目も耳も持っていないはずのザームがどうしてここまで辿り着けたのか、気になったようだった。
「どうって……いつも通り姉ちゃんの匂い追って来ただけだけど?」
「あー……?」
フィリップはザームの答えに笑うか笑わないか迷うそぶりを見せながら、チラリとイザークに視線を向けるがーー
イザークが表情を取り繕うことすら忘れ、驚愕の表情をザームに向けているのを見て、軽く咳払いをしながらザームにもう一度たずねる。
「……その、匂いかい? それはーーその、なにかの比喩なのかな?」
「ひゆ……? 普通に姉ちゃんの匂いがするほうに来ただけた」
その言葉に今度はフィリップだけではなく、その隣のレジアンナやレオンとクラリーチェまでもがイザークに顔を向けるが、そこには呆然とザームを凝視しているだけだった。
そんなイザークに、隣に座っていたラルフは小声で「……ちなみに僕は甘いものが嫌いなんだけどさ……?」と語りかけていた。
その言葉を聞き頭を抱えてしまったイザークは混乱した様子でうわごとのように「ーー……いや、しかし……ーー肉体強化なら……?」と呟き続けていた。
「本当なのか……」
そんなイザークの様子に気の毒そうな視線を向けながらフィリップが呟いた。
そんな一同に内心では同意しながらも、リアーヌから多少はザームのことを聞いていたゼクスはリアーヌに説明を求めた。
「……そういえば弟くんは昔から鼻がいいんだったっけ?」
「そうですねー……ーー昼間にこっそり食べたお菓子の砂糖の匂いすら分かるヤツだったんで、私の匂いを辿るとか余裕だと思います……ーーあんたのそれギフト使ってたの?」
「……さぁ? かごうと思うと分かるようになるんだよ」
その答えを聞いてリアーヌはゼクスに向き直りながら頷いた。
「ーーギフトの力だと思います!」
「……俺もずっとここに居なきゃダメなのか?」
「……桜餅にはまだ間に合うよ」
「それは食うけどーーもうすぐ試験だから練習してぇ……」
シュン……と肩を落とす弟の様子にリアーヌはゼクスにたずねた。
「ーーザームはこの部屋の外に出ても大丈夫だったりしますか……?」
「いやいやいや、最悪の場合リアーヌの居場所が分かったって、大勢の生徒が押しかけてくることになるよ?」
「そ、れは……」
ゼクスの言葉にリアーヌは口ごもりながら視線を落とした。
22
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる