異世界生活でチートな俺は平穏な生活をおくりたい!

きついマン

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巻き込まれ体質とリズナンド

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 「神の…夫!?」
 エリンが放った言葉を復唱する。
 「なんじゃ、信じられんか?」
 「信じるとかじゃねえ!なんだそのスキル!本当に『技術スキル』なのか?!」
 「馬鹿、お主。夫だって誰にでもできることじゃないんじゃぞ?育児に家事、仕事と夫婦で助け合うことを難なくやり遂げてこそ夫になれると言うものじゃ。」
 初めてお会いしてから今まで馬鹿なことしか言わない目の前の自称神は、世界で言う所のいい夫の説明をして俺に納得させようとしている。
 が。
 「いや騙されるか!!やっぱお前馬鹿だろ!?つまりお前がずっとついてくるって訳だろ?神じゃん、お前腐っても神じゃん!どうやって平穏に過ごすんだこれ!!」
 俺の望みだった『異世界生活で平穏に暮らす』と言う夢はどうやらもう叶うことは無いらしい。
 「そう馬鹿馬鹿言うでない…。わしだって…その…」
 「なんだよ。」
 うつむいてもじもじするエリン。姿だけ見れば母性改め父性が溢れ出そうだ。…中身はダメダメだが。
 もじもじするエリンがしばらくして、真っ赤な顔を上げてこう言った。
 「寂しかったんじゃもん…。」
 …神の『夫』って言うか、神の『親』だな。こりゃぁ…

 そんなやりとりをしながら俺たちはツタまみれの危ない場所を抜けて、獣道の様な場所を歩いていた。少なくとも先程の場所よりは安全だろう。
 「ところで俺たちこれから何をしたらいいんだ?」
 とりあえず移動はしたがこれから何をすればいいかわからない。
 「お主はこの世界で生活したいんじゃろ?ならまずはお金が必要になるんじゃないかの?」
 「そうだな、先立つものが無いと、衣食住揃えようにも揃えられんな。エリンさん?お前神様なんだろ?持ってないのか?」
 仮にも神様なんだから…持ってるだろう。と一縷の望みをかけてみる。
 「いや、神故に俗世の物は持ってない。使い道がないからな。」
 ことごとく使えん神様だ。
 「お金を稼ぐにはどうしたらいいんだ?」
 「そうじゃのう、冒険者稼業はどうじゃ?」
 キタキタキタキタ!!冒険者稼業!!男児なら憧れ恋い焦がれ夢にまで見る冒険者!!これは期待大だ!!
 「いいじゃんそれ!!やろうぜ!!」
 「それじゃあ、この先の街じゃの。この国の最大都市じゃから大きいはずじゃよ。」
 「早速向かおうぜ!」
 俺たちは職を求め、エリンの言う街へと歩き始めた。
 まるで道と呼ぶには程遠い様な獣道を数分歩くと、舗装された道が見え始めた。舗装されている意味は人が集まっている場所、つまり街が近いと言うことだ。
 その舗装された道を歩き始め少し楽になった俺は、エリンにこの世界のことを聞いた。
 「この世界はのぅ、五つの大陸に四つの兵国と二つの派国、それと一つの軍国という七つの国家がある。その軍国というのが全国の中で最大の軍事国家じゃな。他の兵国と戦争をしておる。」
 なるほど…、結構荒々しい世界なんだな。…ことごとくこの神は俺に平穏をくれないらしい。
 「ふむふむ、現在はどこなんだ?」
 「現在わし達が位置する国は、エルマール大陸の一番南、リズナンド派国じゃな。戦争地域からは遠くもなく近くもない場所じゃ。」
 さらにエリンが説明を加える。
 「エルマール大陸はこの世界の最大の大陸、最北に軍国が鎮座しておる。エルマールの北にはシサ大陸、寒い地域じゃな。西はハマバリア大陸、東はアンアリア大陸になっておる。つまりここはこの世界全体でも南の方になるのう。あとは島を除けば海よ。」
 うーん、これまた地球とかなり違うな。つまり海を中心に東西南北に大陸があり、そこにそれぞれ国があると。
 地球ほど多くの国はないが、おそらくアメリカの様な州分けはあるだろう。
 「お主、前を見ろ。見えてきたぞ。」
 「おっ!?なんだ?」
 いつもの癖で俯いて考え事をしていると、突然のエリンの声に驚いた。
 「あれが…リズナンド派国…!!」
 視界の先に現れたまだ遠く離れたその国の外観は、これからの生活の期待に胸を膨らませるには申し分ない程の異世界感を醸し出していた。
 「なんだあの高い壁はぁぁぁ!!ここからでも馬鹿高い事がわかるぞ!」
 「あれはリズナンド城の城壁じゃな。なにぶんこの世界はあちらの世界よりも物騒じゃから、軍国や兵国以外の国も城塞都市となっているのじゃよ。」
 なるほど、と納得していると、道の先から悲鳴が聞こえた。
 「誰か!!助けてくれ!!」
 声のトーンや大きさで察するに、かなり緊迫した状態である事がわかる。これは助けなければなるまい。
 まあ、俺自身はこの世界の力を持ってる分けじゃないんだけどな。
 「それでも放ってはおけないよな!!行くぞエリン!」
 「お主が言うならついて行くのじゃ!」
 俺たちは声のした方へとすぐさま向かった。
 見えてきたものは馬車とおっさんそれと魔物の群れ、どうやら行商人の荷車に群がっている様だ。
 「あの魔物はなんてやつだ?」
 走りながらエリンに尋ねる。
 「あれはリズナンド名物のリズヘルムじゃな。そっちの世界でいうなら狼の頭がめちゃくちゃ硬いバージョンみたいな奴じゃ。普段は温厚なんじゃが、おそらく何かやんごとない事情があったんじゃろうな。」
 俺たちに気づいた行商人がこちらを向いて手をバタバタと振る。
 「き、君たち!助けてくれ!!」
 おお、異世界感強いな。まあ、俺自身は何も出来ないが。
 「主人よ、やって良いのか?」
 「頼むよ。」
 エリンは「うむ。」と言ってその場からめちゃめちゃなスピードで行商人の目の前まで移動した。
 ああ~~目立つなぁ~~、実に目立つ…。
 「おいお前、何をしたらこうなるんじゃ?」
 エリンはおっさんに問いかける。
 「い、いやあ…その…」
 「…ふん、さしづめ奴等の子供を捉えて売り物にでもするつもりだったんだろうのう。」
 なんだと?あの行商人、結構クズみたいだな。
 「高く売れるんだ!!早く助けろ!!」
 「早く子供を逃すがよい。さすれば命は助かるじゃろう?」
 しかし、行商人は渋る。
 「苦労して捕まえたんだ!!金はやる!早く追い払ってくれ!!」
 あれはダメだな、前世でも利益だけを考え身を滅ぼした考え無しが居たが、あいつもその部類のようだ。
 「エリン!多分荷車にいる子どもを逃してこっちに戻ってきてくれ!!」
 助ける気が失せたので、エリンに子どもの解放だけを頼むことにした。
 「了解じゃ。」
 「や、やめろ!!!」
 エリンは頷き、遮る行商人を押しのけてから荷車に入っていった。
 荷車の中には大量の荷物があり、その真ん中に子どもの入った檻が置かれていた。
 エリンはその檻を目の前に、指を天にあげた。おそらく俺をツタから助けた時の魔法だろう。
 檻はエリンの魔法?により、ツタ同様切り刻まれた。
 「キャン!!」
 自分の入っていた檻が突如野菜の様に切り刻まれ、子どもは驚きと安堵、それに疑問が混ざった様な表情を浮かべ、とりあえず首を傾げていた。
 「それ、逃げるのじゃ。」
 エリンが促すと子どもリズヘルムは外のリズヘルム群に向かって飛ぶように走っていった。子どもの無事を確認した群れは、やはり温厚な様で、誰も傷つけず森へと帰っていった。
 よかったよかったと頷いていると、行商人が喚きながらこちらへ向かってきた。
 「おい!!貴様ら!どうしてくれるんだ!!俺の収入源を…!!」
 前世では良く見たが、まるでクレームをつける客の様な奴だ。
 「いいじゃないか、助かったんだから…。なぁエリン?」
 いつのまにか横に戻ってきていたエリンに同意を促す。
 「全くじゃ。そもそも、リズナンドではリズヘルムに危害を加える行為は懲罰ものじゃろ?」
 まさかの犯罪者でありましたか!助ける必要皆無だったじゃん。
 「う、うるさい!!この依頼は『三権』から受けたものだ…!知らないぞお前たち!!」
 捨て台詞の様なものを吐いた行商人は、馬車を走らせ猛スピードでその場を去っていった。
 三権ってなんだったんだ?
 「エリン、三権って何か知ってるか?」
 「ん~…簡単に説明すると、リズナンド国王が表覇権。三権が裏覇権じゃな。裏世界のものじゃ。」
 奇跡に近いレベルで俺の平穏が何処かへ消え去っていく。逆に運が良いのでは?
 「まあ、大丈夫じゃろ!それより、早く国内に入らんと!夜になるぞ!」
 「夜になるとまずいの?この調子で行くとおそらく日が暮れると思うけど…」
 見た目でもまだ数キロは離れている。空は夕方だ。
 「わしがいるから問題ないが、アンデットが湧くぞ。」
 つまり?
 「つまり天然おばけ屋敷(屋外)じゃの。」
 それはまずい。俺はお化けが大嫌いだ。
 「は、早く行きましょうエリンさん。」
 俺たちは大急ぎでリズナンドへ向かった。
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