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【記念日お礼・Thanks to everyone】

フラグだったんじゃない!②

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暫くして二人が出てきました。え?違う?二人じゃない?えー!?私とルイス?いえ、私はここにいます。

「これなら見分けがつかんな。当日は、リーダーと魔法使いに頼もう。この魔道具なら、あの二人に怪我をさせる心配もない。まあ手出しするバカはいないだろうが、ルイスの過去が少しキナ臭いからな!」

声からして、お兄ちゃんがルイスです。つまり私には、ルイスが変化してるのでしょう。でもルイスの過去って……。手当たり次第って奴よね?やはり手を出してたんじゃないの?ふーん。キナ臭いんだ?さすがのモテモテさまだね!

「私ばかりを責めないで下さい。フォードしかりですが、アリー信者もかなりの強者揃いですよ。私なんて、なんども闇討ちにあっているのです」

「ルイス?私にはまったく心当たりはございませんよ?」

「アリーは鈍いですからね。アリーは虫に気づかない。私は邪魔だと捻り潰す。どちらも虫は虫です。ですから過去はお互いなしにしませんか?私にはアリーだけですよ?」

…………

ふーん。過去はお互いなしですか?少々納得いきませんね。しかし私の姿でカッコつけられても、まったく説得力がありません。

やはりルイスが私に、お兄ちゃんがルイスに変化していました。しかもウェディングドレスに礼装です。まさかそれが宝箱に入っていたのでしょうか?

「衣装は変化による偽装だ。服装は想像で変化するそうだ。つまり本物を目前で見て変化すればよい。汚れても破れても偽装だから、瞬時に元に戻る。姿かたちが、本物と変わらぬ影武者だぞ。バッチリだ。ルイスは男だから構わんが、アリーに恥をかかせようとしている輩がいるんだ。それが中々捕まらん。なにせ一般の女性たちだ。しかも今はなにもしていないからな。」

それってもしかして……。と言うか、もしかしなくても彼女たちよ!ルイスをジーっと見ます。そしらぬ顔をしています。しかし私の顔なのでたちが悪いです。

「私は一般の女性に恨みを受ける覚えはございません。それからですね?過去はお互いなしにと言いますが、お互いさまにしましょう。ではないのですか?なしには出来ませんよ?」

ルイスがバツの悪そうな顔をしています。でもまだあるのです。

「でもお互いさまにするには、無理があることもあります。もちろん私には誓ってありません。ルイスは誓えますか?」

なんだか考え込んでいます。なにをそんなに考えるのでしょう?

「誓えますよ。私の愛する女性はアリーだけです。間違いはありません」

…………

誤魔化しましたね。残念です。グレイを呼びます。私がお願い事をすると、グレイはすぐに飛び立ちました。

私はインベントリからお菓子やお茶を取りだし、テーブルをセッティングします。これからお茶会をしましょう。ザックも暇だった様で、嬉々としてお手伝いしてくれます。

「おいアリー。イスが八個あるぞ。三つ多くないか?」

「お客様を呼びました。一人は、お使いを頼んだグレイです。あとのお二人は楽しみにしていて下さいね」

リーダーと魔法使いか?とささやく男性陣。そういえば、ルイスはまた変化したままですね。ではお客様が来る前に、イタズラをしてみましょう。

「きゃあ!ルイスごめんなさい!」

ドレスの裾を踏みつけ、ルイスもろとも転びます。大丈夫ですと、起き上がるルイス。

「ごめんなさい。お茶でも飲んで、座って待っててくれる?今お茶を……」

ティーポットから注いだ熱いお茶のカップを、ソーサーにのせ振り向きルイスヘ。

「キャー!ルイス大丈夫?ドレスにかかっちゃった!これってどうなるの?取りあえずふかなきゃ!」

フキンでゴシゴシドレスを拭きます。繊細なレースが傷み、ほつれてしまいます。ついにはビリリと……。

「どうしよう。破けちゃった……」

ルイスに変化していたお兄ちゃんが、元のお兄ちゃんに戻ります。私の頭を撫でながら、ルイスに話します。

「変化をとけば、ドレスは問題ない。見てもわかるが、アリーは大根だ。なのになぜ大根演技をしてるか理解できてるか?確かになしは無理だな。お互いさまもかなり無理がある。ほらお客様が来たぞ。その姿を見られる前に元に戻れ」

ルイスは変化をときました。良かったです。さすがに自分に文句はいえません。あっ、グレイが連れてきました。

「突然呼び出して本当にごめんなさい。美味しいお茶を淹れるので楽しんで下さいね。お菓子も私の自信作です。お席はこちらへ。グレイはルイスの隣で見張りを兼ねてね」

「はーい。ラブベリーある?」

「ちょっと待ってね。うーん。生はもうこれしか無いね。グレイへのお礼とお客様のケーキに乗せてあげる。ジャムはまだまだありますよ」

「わーい。紅茶にジャムー」

グレイは可愛いなぁ。ルイスはのジト目はスルーです。

*****

お茶会を開始します。さてルイスさん?目の前のご夫人に見覚えはありませんか?どうやらお兄ちゃんズは、気づいている様です。顔が怖いです。でも心配しないで。誤解はキチンと解いたのです。あ!頷いてくれました。大丈夫みたい。良かったです。調べていたみたいですからね。それなのに、気づきもせずに放置する。なにが虫は排除よ!たとえ過去でも、過ちは謝罪するべきです。そんなルイスに天誅です!さあ先ずは自己紹介です。

「このお二人は、教会のお料理教室で知り合ったの。女性の年令は内緒ね。娘さんのリズちゃんと、お母様のララさんです」

私はテーブルに座る人物をざっと紹介し、お客様に信頼できる人たちだと伝えます。お二人は納得してくれました。

「ここで信頼できないのはルイスだけー。娘さんは無理でも、お母さんのことも思い出せないの?悪気がない?でも過ちは罪だよ。過ちを気づかずに、誰かを幸せに出来るの?与えていると思う幸せが、実は己のエゴだとは思わない?自分が幸せになりたいなら尚更だよ。真実を知るべきだよね」

グレイがラブベリーを食べながら、ルイスにいい放ちます。ルイスは再度、お二人を見つめます。しかし思い出せない様です。

「思い出せません。申し訳ございません」

ルイス……。多分ルイスにとっては、大勢の中の一人だったんだろうね。でも娘さんにとっては……。ララさんが話をさせて欲しいと、私に目配せをしてきます。

「ララさんがお話をしたいそうなの。ルイスはなにも言わないで聞いてね」

皆が無言で頷きます。ルイスも困惑顔をしていますが頷きました。ララさんが立ち上がりました。

「この様な席に呼んで戴き、本当に有り難うございます。先日のお茶会では、アリーさんには大変ご迷惑をかけました。私のために女性たちが暴走し、アリーさんに悪戯をしかけたのです。本当に申し訳ございません」

そうなの。実は先月の孤児院のバザーとお料理の後に、略式のお茶会があったの。月末の収支がだいぶ黒字になりました。その為十歳以上の子を対象に、マナー教室を開いたのです。

先生役には、ライラやボランティアのお嬢様たちが来てくれました。もちろん、お茶会のお茶請けは、すべてが私作です。ただしお菓子は商業ギルドを通しての買取りです。安く仕入れて、皆でお茶会のテーブルをセッティングする。お茶の美味しいいれ方を学ぶ。そこからのお勉強にしたのです。

ララさんは娘さんのリズちゃんの付き添いで、このお茶会に参加していました。このお茶会で私は、とある失態をさらす羽目になりました。もちろん解決はしました。すべてはララさんの知り合いによる、誤解と偏見による二次被害だったのです。

「その節はリズが、本当にご迷惑をおかけしました。まさかリズがルイスさんを、未だに父親だと思っているとは思いもしませんでした。しかもアリーさんに嫉妬して、あんな子供じみた悪戯をするなんて……」

ガタン!とイスが鳴ります。呆然と立ち上がり、口をポカンと開いたルイス。思い出そうとしているのでしょうか?ララさんとリズさんを交互に見ています。

「さすがに私に、こんなに大きい子は無理でしょう?しかも全く身に覚えはございませんよ?」

ルイス……。

「アリーさん!ごめんなさい!私が悪いの!ルイスさんは悪くないの!私がしっかり覚えてなくて、かってに勘違いしてたの。なのに一度も会いに来てくれないし、誰かと結婚するからって……だから皆にそそのかされたの……」

リズちゃんが立ち上がり、私に頭を下げてきます。まだ十歳になったばかり。当時は五歳位です。しっかりと覚えていなくても、仕方がありません。

「リズちゃん?そのことはもう解決したよ。キチンと謝罪してくれたでしょ。だから謝らないの。今日はルイスに反省させる会なの。リズちゃんをそそのかした女性たちも、ルイスに酷いことされたのよね?それがたとえ故意では無くても、事実は知るべきよね?」

私はリズちゃんの頭を撫でながら席に促します。グレイがちょこんと、リズちゃんの膝の上にとまりました。

「あ!そうだ!ちょっと待ってね」

お隣に小さめのテーブルとイスをセッティングします。クッキーやマカロンをお皿にのせ、温かい紅茶にラブベリージャム。さらにはインベントリから幾つかの材料を取りだし、ささっとデザートを盛り付けてゆきます。ミルクプリンの上にも生クリームを絞り、最後のラブベリーを飾れば出来上り!

「アリー特製、ミルクプリンアラモードの出来上り!ラブベリーは本当にこれで最後だよ。リズちゃんは、グレイをおもてなししてくれるかな?お茶は熱いから気を付けてね」

「はい!この間習ったから大丈夫。でもグレイは鳥さんだよ?」

グレイが幼児に変化しました。

「さっき迎えに行ったのが僕だよ。早くお茶いれてくれる?アイスがとけちゃうよ」

「はーい。でもさっき迎えに来た人は、もう少しかっこ良かったよ?こんなに小さくなかったし……」

グレイが少年姿に変化しました。

「そうこの人!ルイスパパに似てる!あ……ごめんなさい……」

「大丈夫。ルイスは怒らないわ。それより早く食べて。グレイパパと一緒にね」

「どう見ても兄妹だよね。まあ構わないけど。リズも早く食べよう。ラストのラブベリーは特に味わおう。アリー特製ミルクプリンアラモードを、僕にまで有り難う」

いえいえ。どういたしまして。

「ラブベリー甘ーい」

私の作ったお菓子とお茶を嗜みながら、成りゆきを見まもってくれている面々。ルイスだけは、なにも言えずに呆然としている様です。

でも思い出せないって……

思い出せないほどの数なの?

正直聞きたくないかも。

*****
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