【完】専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。

桜 鴬

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【余談・by the way】

【二巻カット部・グレイとライラの内緒話編】

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【アリーが誘拐され戻って来た際に、ライラのお屋敷で匿われていた時のお話。ライラとグレイの掛け合いです】

後半が本編よりカットされたお話です。でもWeb連載にはなくて、改稿で追加した部分だった感じもします。

 今回お話が分かりやすいように、出だしを追加しています。

**********

 スキルの復活により、お部屋に逃げ帰ってきたアリー。ボロボロなアリーの姿を見てルイスが魔力を暴発させ、アリーのお部屋の天井に大穴をあけてしまう。グレイはそのルイスを叱咤し助けを呼びにいかせ、自身はアリーの看病をしていました。

 グレイは幼児姿でアリーを癒し、自身に取り込まれたアリーの魔力を返還していました。ルイスはライラに連絡をとり、ライラがアリーを匿う手配を任せます。ルイスがアリーの元に戻ると、眠るアリーの手を握りベッドサイドで見守るグレイ。

 「ようやく戻ったの? 怪我や体力は癒したし、魔力もかなり返還したから、アリーはもう大丈夫。暫く寝れば元に戻るよ。でもこれが邪魔だね。そろそろ限界なんだよ」

 「それは……魔力をを封じる指輪ですよね? 封じられているなら大丈夫なのでは? 」

 「もれてるの! 体内での魔力循環が間に合わなくなってるんだよ。つまりもうこの指輪は必要ないわけ。もしこれからも封じるなら、封じを強固にしなくちゃならない。でもそれは体に負荷がかかりすぎる。ならどうすべきかわかるよね? 」

 「封じをとき体に高魔力を馴染ませ、魔法を使用し適度に放出するしかありませんね……」

「封じてるのに漏れ出ている。その意味がわかる? 高魔力もちなら解ると思うけど、アリーの魔力は質も量も最高なんだ。その魔力に体が耐えきれなければ死んじゃうよ? 本当は僕が高魔力に慣らしてあげたいけど、人としての理を越えちゃうんだ……」

 「ならば私が! 」

 「…………どうやるか理解して言ってるの? 」

 「…………それは……理解してます! 決して不埒な思いで言ってるのではありません! アリーが心配なのです! 」

 「まあ……適役は他に居ないし……アリーとはどこまで?」
 
 「…………」

  「……ヘタレなんだね……ならキスまでだよ! 魔力暴走中もチュッチュしてたよね! 僕は恋人だと思ってたから黙ってたの! どさくさに紛れて先に進もうとしてたし! まさかあれがファーストキスだとは……」

 「…………思考を読まないで下さい。やはりあれは私の邪魔をしていたのですね。更に覗いていたとは……」

 「読みたくなくても読めちゃうんだよ! それに当たり前だよ! 意識のない女性に不埒なまねをするな! 付き合ってもいなかったんじゃない! 」

 「静かにしてください。アリーが寝ているんですよ」

 「ムッツリめ……はぃはぃ。これ以上は仕方ないから我慢するよ。でも本当にキスだけたからね! やり方はわかるよね? 」

 「これでも賢者を名乗らされていたのです。知識はありますから、心配しないでください」

 「賢者は関係ないじゃん……じゃあ任せるよ。絶対に……」

 「しません! お願いですから出ていてください……」

 「…………任せたよ? 」

 「任されました! 早くしないとライラが来てしまいます。お願いですから、出ていてください」

…………実はこれがアリーのファーストキスです。後程知ったアリーは、グレーな鳥さんだった頃の、クチバシちょんちょんなグレイとだと言っています。フォードで無かったことに安心したのは内緒です。

**********

 ライラのお屋敷に保護されたアリーは、二日も眠りようやく目を覚ましました。ではお風呂へ入りましょう。

 お風呂へ向かった後のお部屋では、ライラとグレイが言い争っていました。

「子供ぶっても駄目です! 人はその年齢では、すでに異性とお風呂には入りません」

「もう痛いなぁ。叩かないでよ。ならもっと小さくなれば良いの? それとも鳥さんになる?」

「どちらも駄目! アリーが良くても駄目! アリーがいつまでも警戒心が薄くても困るでしょ! 今回は大事にいたらなかったけど、結果的にあちらは奪われたのよね? ルイスのニヤケ顔が気持ち悪いくらいに物語っているわよ」

「慣らすためには仕方ないし、ルイスが一番適役だったからね。僕がしたら人間の理を越えちゃうから……」

「グレイは偉いわ。越えちゃえば長く一緒にいられるのに、アリーのことを一番に考えているのね。だから良いことを教えてあげる。あのね……」

(ゴニョゴニョ。聖獣になれば伴侶が認められるの。あら? これは知っているの? なら伴侶は人間でも可能なのは知っているのかしら? 人としての人生を終えた後の魂になら、聖獣からプロポーズ出来るそうよ。伴侶になった魂は聖獣と同等となる。同じときを生き同じ日に死ねる。これは古に公爵家に実際にあったとされるお話なの。数代後の子孫が困った時に、聖獣の伴侶となったご先祖様が助けに来てくれたと言い伝えが残っているわ。あなたの心が変わらなければ頑張ってみなさいな)

「…………そんなのまだまだ先じゃない。ルイスだけズルいよ。一緒に入っちゃ駄目なの?」

 「…………まあまだ思考が幼いから仕方ないのね。ならモコモコとやらのグレーの毛玉なら許してあげる。イタズラはしないのよ?」

 「わーい。はーい。(……ルイスに自慢してやる)モコモコになるよーーお風呂ー」

 「ライラ。お風呂お借りしました。着替えもありがとう。あれ? グレイはモコモコの毛玉になってどうしたの? なら頭か肩にのる? 」

 「「……………………」」

「グレイ……残念でした。さあ湯冷めしない内にご飯にしましょう」 
 
 なんだかやさぐれたようにポテポテと歩くグレイ。アリーはそっと両手のひらですくい肩に乗せ、食事をするために歩き出します。

 肩の上でもグレーな毛玉のまま、ポテポテと足踏みをする鳥さんの後ろ姿。何だかとても哀愁を感じてしまいます。でも何だかとても可愛いかも。

 *******
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