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【余談・by the way】
【二巻カット部・フォード据え膳編】
しおりを挟む【大神殿での説法会で、フォードがアリーを部屋から連れ出し、アリーが身バレした部分です。神殿騎士さんよ去らば!】
やはり読みやすくなるように、前後に足しています。
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今日は朝からなんだか、大神官内部がガヤガヤと騒がしい。あぁ……月に一度の説法会か……くだらんな。
会を催す方もだが、来る方も頭の悪い者ばかり。本当に神に祈りを捧げたくて来る者などいるのだろうか?
神よ。なぜ私の祈りは届かないのだ?私の信心が足りぬのだろうか?
ドタバタと耳障りな足音が聞こえてきた。姉と呼ぶなと言われているが、呼びたくもない穢らわしい女。案の定金切り声をあげ、さっさと【祈りの乙女】を起動させろとやって来た。自身が聖女だと名乗るならば、己で起動させればよいだろう。それさえ出来ぬのに、虚栄心だけは有り余った人間。
私は家族に恵まれなかった。この大神殿は腐敗しすぎた。ルイスがいなくなってからは更に酷くなった。俺は大神官になり、大神殿を変えたかったんだ。しかし頑張ってもルイスには勝てない。だが!ルイスを目標に努力していたんだ!なのにアイツは望まれていながら、軽々と大神殿をぬけた……
許せなかった。
しかしすまん。まさかルイスが身売り同然に、大神殿に来たとは知らなかった。更には大神官と聖女に迫られていたとは……しかし自業自得でもあるんじゃないか?ポーカーフェイスすぎてわからんわ!
また話せるようになって良かった。アリーに感謝しかないな。私の見る目があったということだ。あの日たまたま部屋に戻る途中で、部屋を覗き込む若い神官たちを見かけた。またかと横目で流すと、部屋の中に意思の強そうな瞳に囚われた。普段なら絶対に近寄らない説法会後の部屋なのについ……
アリーには本当にすまなかったとしか言えない。しかし一目惚れは本当だぞ。ルイスさえ居なければ……
***********
睡眠薬で眠らせ担ぎ上げて来た生意気な娘を、自室へ運びベッドへ落とす。薬が効いているのを確認し、服を脱がして下着のみにした。さらに逃走されぬようにと念をいれ、両手を拘束して頭上に固定する。さて足はどうしようか?まるで抵抗がないのもつまらない。とりあえず一本は固定しよう。暴れられてまた蹴りあげられても嫌だからな。ん?なんだ不躾な。部屋の扉が開き護衛が入ってきた。
「フォード様! なぜ彼女がここにいるのですか?」
「おい! 貴様は俺様の護衛だろうか! 今までどこにいたんだ! いやそれよりノックくらいしろ!」
「すみません……」
「しかしなんだ?知り合いなのか?だが俺様がいただくぞ。説法会で祈りの乙女に惑わされぬ方の部屋にいた。まだ腕輪落ちしていないから文句はないはずだ。共有財産にはしないからな。残念でも他を探せよ」
「それはたしかに残念ではありますが……なんて違いますよ! そんなことではありません。この女性は聖女の血筋で、貴方とも親戚ににあたります。先日ダンジョンで逃げられたアリーですよ。午後から大神官様方との、話し合いのはずなのですが……」
「は? だが聞いている髪と目の色が違うぞ。まあ仮にそうだとしても俺様とはハトコくらいだろうし、婚姻には差し支えない。しかしそれが本当ならばラッキーじゃないか。俺様の大神官への道が揺るぎなくなるし、あのルイスが入れあげているんだろ? アイツの悔しがる顔は見物だ。本当に間違いはないのか?」
「失礼します。少し弄りますが怒らないで下さいよ。しかし相棒はくやしがるでしょうね。据え膳で逃げられたんです」
護衛の男はアリーの胸元に手を突っ込み、魔道具であるネックレスを引きずり出す。カチャカチャと弄るがなんの変化もない。試しに俺様も魔力を送り解除を試みるが、同じく何の反応も無かった。
「これはまた凄い魔道具ですね。持主識別機能つきで、第三者ではよほどの魔力がなければ解除出来ません。これが色彩を変化させているのでしょう。確認は出来ませんが私は手配書を何度も見ましたし、本人の顔も直接見ています。そして決して間違えようのないのがこれです!」
「な……なんだよ。さすがにその顔はゲスいぞ」
「フォード様に言われたくはないですね。しかしこれです!幼い顔に似合わぬこの双丘! しかもここの谷間にある黒子がヤバい! 気持ち良すぎ……」
「貴様! 俺様もまだなのに、先に顔を埋めるな! 羨ましすぎるだろうが! とにかくアリーなのは間違いがないんだな。ではさっさと既成事実を作らねば。貴様は部屋から出ろ!」
「う……んぅぅ……」
「フォード様! 目を覚まされたらスキルで転移し逃げられます。たぶん拘束も抜けますよ。ですから先に祈りの乙女を使用されては? 体から落とす必要もなくなります」
「それは妙案だ! 丁度良い。そこで下克上だ。話し合いとやらにはルイスも来るよな? 俺様に従順なアリーを見せつけてやろう。親父がそれを餌にしたらしいが、人形のアリーが欲しい訳ではないとかほざいたらしいからな。しかしそうなるとお預けかよ……」
「ご馳走は後ほどじっくりと堪能された方が良いかと……【祈りの乙女】の音で効果がないなら尚更です。ならばすげ替えと刷り込みで、最低二時間は必要ですよ。起きる前に早く脳に接続して下さい。手はずは解りますよね」
「なんども繰り返し刷り込みゃいいんだろ? 時間ギリギリだ。アリーのドレスを数着身繕い、着替えと化粧を施す侍女を手配しておけ。親父たちの話し合いの部屋も確認しとけよ」
「はぃ。全く人使いが荒いですね。では……」
さてと……では残念ではあるが、腕枕の添い寝で我慢だな。起こしてしまったら大変だ。【祈りの乙女】に睡眠効果が有っても安心は出来ん。魔道具に配線を繋ぎ、眠るアリーのこめかみに貼り付ける。己は毛布を引き寄せアリーの隣に潜り込み、アリーの頭を胸元に引き寄せ耳元で囁く。
「アリー、君だけを愛している。絶対に一人にはしない。俺様はもうアリー無しでは生きられないんだ。一生傍に居てくれ。好きだ……愛している……君だけを……いつまでも……」
「…………」
「アリーも俺様を愛してくれている。いつも朝晩のキスで伝えてくれるだろ? 恥ずかしがらないで、いつでもねだってくれて構わない。俺様の全てはアリーのものだ。アリーも俺だけのものだ。愛している。一生守ると誓う。俺様にも愛の言葉をくれ……」
しかしこれは辛いな……俺様まで眠ってしまいそうだ。少しくらいイタズラしても……ん?……うわっと!
「ムニャムニャ……私も……」
くっ。……おさわりは駄目か……。だがしがみついてくるとか卑怯すぎるだろう……据え膳で愛の言葉を囁き続けるだけかよ……地獄でしかないな……
こうして二時間……フォードは拷問のごとき時間を耐えましたが……
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