【完】専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。

桜 鴬

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2巻

2-1

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  ◆本編3・Gazing at our roots


 もうすぐSランクにも手が届きそうだという、冒険者パーティーのホワイトハット。
 私はそのパーティーで、専属料理人として約一年間、可もなく不可もなく過ごしてきたつもりでした。しかしあと数日で契約期間も終わるというあの日、突如パーティーを追放されたのです。
 しかもダンジョン最下層のラスボス部屋の前に置き去りという、かなり手酷てひど餞別せんべつまでいただいてしまいました。
 もちろん無事に生還したからこそ今日の私がいるわけですが、ギルドでの断罪を終えおのれかえりみて、気が付きました。
 私はメンバーに対して仲間意識が持てていなかったのです。
 両親の思いが残る食堂を買い戻したい。だから我慢しなくちゃ……私が一年間我慢すれば全てが終わる……
 本来ならば仕事だと割り切って考えるべきところを、たとえ一年間とはいえ、専属になどなりたくなかったと思う気持ちを優先してしまったのでしょう。
 期間限定とはいえ私たちは仲間だったのです。私がホワイトハットのメンバーに遠慮をせず、資金繰りや食材についてざっくばらんにでも話をしていたなら、違う道があったのかもしれません。仲良く打ち解けていたなら、あの追放もなかったかもしれないのです。

『料理が旨いと幸せな気持ちになるよな』
美味おいしかった。次は子供や孫も連れてくるよ』

 そんなお客様のさりげない言葉が毎日の心の栄養だと常に話していた、今は亡き両親。
 そうです。これらの言葉は料理人にとって最高の賛辞さんじです。私もホワイトハットのメンバーもきっと、冒険者として、料理人としての、それぞれの初心を忘れていたのでしょう。
 ホワイトハットのメンバーには、一年間の反省期間が与えられました。
 一年後の再会を果たすときには、私もキチンとメンバーに謝りましょう。そして最後の晩餐ばんさんとなったあの皮肉なダンジョン料理ではなく、キチンとした最高の料理を振る舞いましょう。
 あ! もちろんあの料理も最高傑作ですよ。素晴らしいバフ(効果)も付きましたし、皆さんしっかりとおかわりもしてくれましたから。
 そして私はなぜかメンバーのうち二人を専属護衛とし、両親の食堂を開店させるという夢を叶えたのです。
 それと並行して、出張料理も頑張っています。
 食堂を開店するにあたり、出張料理はやめようかとかなり悩みました。しかし人手に渡ってしまっていた両親の食堂を買い戻す際の、多大な資金源となってくれたのが、出張料理のお客様たちなのです。
 貴族様がメインの顧客である出張料理では、多額の利益が生まれます。多くが町中の食堂に気軽に来店できるような方ではないので、私の料理が食べられなくなることを、皆様が大変惜しんでくれたのです。
 私は町中の両親の食堂が大好きです。その食堂を再開できたら嬉しい。それだけを目指して走り抜いてきました。
 でも、それだけではなかったのです。
 私はたくさんの人に美味おいしい料理を作りたい。私の料理で幸せを伝えたい。
 だから一つに絞ることをやめました。
 どちらもこなすには人々の協力が必要です。その協力をしてくれる人々が、私の周囲にはいるのです。
 私はもう間違えません。周囲から差し出される手に頼ろう。一年前のホワイトハットとの契約が、間違いだったとは思いたくないのです。自身の不足を知り、精神的にもたくさん勉強もしましたから。
 でももしあのとき、融資の手を差し伸べてくれていた商業ギルドさんや、出張料理常連の貴族の方々の言葉と気持ちをキチンと聞いていたならば……。借金はしたくないと意地を張り、かたくなにお断りしてしまった当時の私。それが自分ばかりではなく、商業ギルドや冒険者ギルドにまで迷惑をかけることになったのです。果てには魔物討伐をう辺境の方々にまで及び、本当に反省しきりです。
 こんな私を案じていてくれて、ありがとうございます。更にはこれからのサポートまで! 皆様には本当に感謝ばかりです。
 そんな皆様のご協力のおかげでころポックル亭も無事に開店し、毎日が忙しく過ぎてゆきます。
 今日のランチも満員御礼。多めに用意していたはずのメイン材料が品切れしそうになり、急遽きゅうきょザックに冒険者ギルドまで走ってもらうほどでした。品切れになる前に、ザックが戻ってきてくれてひと安心。貴重なお肉がまだ冒険者ギルドに残っていて、本当に良かったです。
 卸しに回されたあとでは各地の貴族様や商会に買い占められ、町のお肉屋さんまではなかなか回ってこない、あるいは高額すぎて入荷できない、それくらい貴重な食材を使用したのです。
 そうなのです! なんと今日のランチは……
 ドラゴンステーキ!
 実はこのドラゴンは、ホワイトハットの昇級試験のときのラスボスです。残念ながらあの昇級試験は出来レースで、予定通りホワイトハットは不合格となりました。これは、昇級試験官であったお兄ちゃんズが退治してくれたものです。
 ドラゴンが討伐されることはなかなかありません。つまり希少で、お高いのです。普通に仕入れたら、ランチでステーキとして提供などできません。
 そのため私は、通常では調理に手間がかかりあまり売れない部位や、肉質が固すぎて廃棄される部位などを、通常の部位と共にまとめてお安く大量購入したのです。
 特に今回は、絶対に売れる! そう判断して、通常はA、Bと二種あるランチをドラゴン料理のみに絞りました。
 他にはステーキサラダにブラウンソースの煮込み、ドラゴンカツなど、単品でも数種用意しましたので、少食な方でも安心です。
 煮込みには固くて廃棄されるような部位を使用しましたが、丁寧に下処理をし時間をかけて煮込んだため、とても柔らかくなりました。口に入れるとホロホロと崩れるお肉。手間はかかりましたが、そのぶんお安く提供できるのです。お子様にも評判です。
 中にはランチメニューのドラゴン料理全てを食べ尽くそうとした猛者もさも……
 確かにドラゴンは美味です。美味おいしくたくさん食べていただけるのは、料理人冥利みょうりに尽きます。しかしさすがに食べすぎは……
 案の定脂汗を流しながら、ラストのカツをじっと眺めるお客様。大丈夫でしょうか? お腹のベルトが弾けそうです。
 無理をしても美味おいしくは食べられません。失礼ながら一声おかけして、カツはサンドイッチにしてお持ち帰りしていただきました。
 それを見ていた店内のお客様たちから、我も我もとサンドイッチを頼まれ……ドラゴンのお肉が足りなくなってしまったのです。走ってくれたザックに大感謝です。
 さあ、ようやくランチの営業が終了です。さっと片付けて、まかないの準備を始めましょうか。下準備は済んでいるので、あとは焼いたり揚げたりするだけです。

「はぁ……ドラゴンを退治したときの、お兄ちゃんズの魔法は芸術だったよねー。魔法陣ってすごい……私にも魔力があればなぁ……」

 ドラゴンカツを油で揚げながら、いつの間にか思考が口に出ていたようです。ひとり言はさすがに恥ずかしいです。
 慌てて振り返ると、ザックとルイスはすでに席に座り、何やらヒソヒソ話をしています。二人はホワイトハットの剣士と賢者です。
 どうやら聞こえてはいなかったようです……ね?

「アリーに魔法はいらん。風のスキルだけでも十分すぎるのに、更なる凶器を持たせるな。ヘタすりゃ爆弾娘だ」

 聞こえていたんですね……しかしザック、その言い方はひどすぎませんか?

「そうですね。その通りです。アリーに魔力がなくて幸いでした。風のスキルであのレベルです。なんでも大ごとにしてしまうのがアリークオリティ。もしも魔力があったなら暴走娘と化し、抑えることが困難となるでしょう」

 ルイス、アリークオリティってなんでしょう?
 しかし二人はおバカなのですか? まだまだ私の性格を理解していませんね! これからまかないの時間なんですよ?
 ……先日広場で結界と風のスキルを使って悪人たちをらしめたのが、えげつないと? 無茶をしすぎだと? 無茶は確かに一理あるかもしれません。ですが!

「アリー師匠は何もおかしくないのです! やられたら倍返しは、みみ族でも当然のおきてなのです。普段の私たちだったなら、アイツらはフンドシ一丁で市中引き回しの上、はりつけの刑に処すのです。おかしいのは悪人たちなのです!」
「「恐るべしみみ族……」」
「ミリィちゃん。助っ人ありがとう。でもフンドシってなぁに?」
「「「……」」」

 あら? みんな黙っちゃった。聞いたら駄目だったの?
 私の代わりに二人を怒ってくれたミリィちゃんは、猫みみ族の女の子です。以前、種族固有スキルを狙って襲われていたところを助けてから、私のお弟子さん一号となりました。
 それより、まかないは熱々のうちに食べましょう。お兄ちゃんたちも来たので、みんなでそろって少々遅いランチです。

「さぁ、ミリィちゃん。熱々をどうぞ」
「ドラゴンステーキなんて初めてなのです! うわー。スッと切れちゃいます。はふっはふぅー。めっちゃ柔らかくて美味おいしいのですー」

 ミリィちゃんの可愛いお耳がピンと立ち、尻尾しっぽがフリフリと揺れています。よほど気に入ってくれたのですね。美味おいしいという言葉とあふれる笑顔は、料理人にとって最高の賛辞さんじです。

「ステーキ?」
「ス……ステーキなのでは?」

 はい。ステーキですよ?
 テーブルに並べたランチを前に、なんだかルイスとザックの様子がおかしいですね。お兄ちゃんたちはもうお皿に手を伸ばしていますよ?

「「すごいな……さすがアリーだ。このしたたる肉汁と焼き加減。塩と胡椒こしょうの加減もバッチリだ。もちろんこの煮込みも美味い! 普通なら破棄される、あの筋だらけの固い部位がこうなるとは……」」
「丁寧に筋切りをし、あまりに太く固い筋は取り除くの。更にじっくりコトコト煮込めば、残った筋まで柔らかくなるわ。作業の際に細かくなってしまったお肉は叩いて挽き肉にすれば、ハンバーグにしてパンに挟んで売店で販売してもいいし、パテ風にしてカナッペみたいにしてもお洒落しゃれよね。今度の出張料理でも出すつもり。でもそれはお茶会だから、さすがにステーキを出すのはね?」

 ……お兄ちゃんたちが、ルイスとザックをチラリと見て目配せしてきます。
 わかってますよ。もう……仕方ないですね……
 実はお兄ちゃんたちとルイスとザックに出したものは別のメニューなのです。お兄ちゃんたちには普通のドラゴンステーキを、ルイスとザックには、ステーキと名の付くハンバーグステーキを提供しました。

「ルイス、ザック、ステーキですよね? しかも特大ですよ」
「「反省しました。普通のでお願いします」」
「わかりました。でもそのビッグハンバーグステーキは食べてね。お残しは許しません。ソースの種類をたくさん用意してあるから、色々なお味が楽しめるわよ。次のおかわりは普通のステーキを出しましょう」

 二人はようやく食べ出しました。
 まったくもう! 毎回毎回憎まれ口を叩くからよ!
 ん? お兄ちゃんたち、二人に何をモソモソ話してるの? 風のスキルで聞き耳立てちゃうぞ。
 ~風よ、音を拾い拡散せよ~

『まったくバカなやつらだな。思ったことを正直に口に出すな。大人になれ。アリーはまだまだガキだから、ついつい意地悪で返してくるんだ。口は災いの元だ』

 声を風にのせ部屋中に拡散します。丸聞こえです。お兄ちゃんたち……

「違うのです! アリー師匠はガキではありませんし、意地悪でもないのです! 意地悪を言うのはその二人なのです! 無礼を働くならば私が成敗するのです!」

 ミリィちゃんナイスよ!

「ミリィに俺が成敗できるのか? みみ族は身体能力が高いと聞くが、森で盗賊に追われたときは逃げるので精一杯だったんだろ?」
「ザックさん……ならば私と一対一で勝負をしてみるのです! あの森では怪我人をかばい、わざと木々の深い奥地に逃げ込みました。密集した木々が邪魔をして動きがにぶりましたが、みみ族はひらけた平地なら野生の動物くらいには負けないのです。イノブー数匹なら素手で倒せますし、魔物もグリズリー系やウルフ系ならば、ホークの武器さえあれば一発で倒せるのです! どうです? やります? 中庭に出るのですか?」
「……いや……すまん……」


 なぜ私の周囲の男性たちは、こう遠慮がないのでしょう。

「あのね、私は意地悪をしているのではないの。思ったことを正直に話すのは悪いことではないけれど、少し話し方に配慮してほしいのよ。わかりましたか?」

 私は机をバンと叩いた反動で席を立ち、四人に向かって話します。

「お兄ちゃんたちの次のおかわりは、普通サイズのハンバーグステーキと、ビッグハンバーグステーキ、どっちがいいかしら? ぜひともたくさんのソースを味見してもらいたいんだけど……」
「「ふ、普通のでお願いします……」」
「アリー師匠、私もドラゴンハンバーグステーキが食べたいのです! 三人前焼かせてください!」
「ではミリィちゃん、お願いします。丸めて保管庫に入っているから、教えた通りに焼けば大丈夫。よろしくね」

 ミリィちゃんがエプロンを締め直し、キッチンへと向かいました。私はクルリと振り返り、残った四人に続けます。

「ちなみにドラゴンの通常の部位では、安価なメニューであるハンバーグなんてとてもじゃないけど作れないわ。ハンバーグとステーキが同じ値段なら、大人はたいていステーキを食べるわよね? でも子供たちはハンバーグが大好きだし、大人の懐事情もあります。安くて美味おいしいドラゴンのハンバーグを食べたら、なんだか子供たちの夢も広がりそうじゃない。だから手間と時間をかけてまで、安い部位で作っているの。キチンと味わって食べてくださいね?」
「「「「はい!」」」」

 そんなことをしている間に、ハンバーグを持ったミリィちゃんが戻ってきました。

「アリー師匠ー。ハンバーグ美味おいしいのですぅー。モグモグ……チーズソースもホワイトソースもブラウンソースも、どれをかけても美味おいしい……こ、これは! すりおろしリンゴのソースなのですか? すりおろされたリンゴの酸味が、ドラゴンハンバーグの脂に絡みサッパリと食べられちゃうのですー。噛むと感じるリンゴの甘味がたまりません! トマトソースもハニーマスタードソースもレモンバターソースも……どれをかけても――」
「黙って食え!」
「い……痛いのです! ザックさんのバカー!」

 ミリィちゃんが叩かれた頭を押さえている隙に、ザックが彼女のお皿に自分のハンバーグをのせています。

「あれ? お皿のハンバーグが増えているのです! なら今度はこのニンニクソースで食べちゃうのです。んー、頬っぺたが落ちちゃうにゃ。美味おいしーにゃぁん」

 あら? ミリィちゃん、今にゃんって言ったかしら?
 ルイスもこちらを見ていますね。ザックは下を向きプルプルと震えていますが、どうしたのでしょう?
 ルイスがザックをのぞき込み、呆れた様子でお手上げのポーズを取りました。……あ! そういえばザックはモフモフ好きでしたね。
 ミリィちゃん、可愛いは正義です。しかしザックの前では……危険です。
 ザック、その膝の上でワキワキと握った手で触れては駄目です。いくらナデナデしたくても、モフモフは許可を取ってから! 以前に注意されたはずですよ。
 こら! ハンバーグをさりげなくミリィちゃんのお皿に移さない! ……『可愛くてハンバーグも減って、一石二鳥?』こらザックー!

「すごいのです! ドラゴンハンバーグは増えるのです! なら食べるのみです! んー頬っぺが落ちちゃうにゃあん!」

 ……ザック、さすがにストーップ! 可愛らしいからって駄目です! ミリィちゃんの言葉がにゃん語になってしまいます!


 さて、今日はころポックル亭の定休日。私がころポックル亭と出張料理の料理人として再出発してから、初めての出張料理のお仕事です。
 現在私とルイスの二人でとあるお屋敷を訪問しています。しかしなぜか、ルイスと同じ護衛のはずのザックはいません。ちなみにミリィちゃんは、移住したばかりのみみ族の村に里帰りしています。

『定休日でも、ころポックル亭の売店を必要としている冒険者はたくさんいるはずだ! 俺はやつらのためにも、留守を預かる!』

 とか申し開きをして、最後には、俺は絶対に嫌だと逃げ出したザック。
 貴族様が苦手なのかと思いましたが、どうやら違ったようです。ルイスいわく、ザックはどうしても、商業ギルドが作ってくれた制服が嫌なんですって。確かにこの制服は、着る人を選んでしまうかもしれません。商業ギルドのお姉様たちが、萌えを追求したデザインなんだとか……
 実は食堂の制服も商業ギルド製です。私はとても気に入っていて、ダンジョンへもぐる際の服も作ってもらいました。どちらもかなりの高性能なんです。
 しかし……このデザインでは、確かにザックには辛いかもしれませんね。ルイスは妙にはまってますけど……
 出張料理の際には、商業ギルドから毎回お手伝いの方々が来てくれます。皆さん即戦力になる方ばかり。商業ギルドでは、若者の人材育成にも力を入れているのです。
 つまり私は会場へ行って料理をし、指示を出すだけ。
 商業ギルドさんとは、両親が生きていた頃からのお付き合いです。本当にお世話になっています。


 さあ、いよいよお茶会スタートです。
 今回のご依頼主は、私がまだ屋台で販売をしていた頃からのお得意様の辺境伯です。お茶会のテーマは、元気の出るお茶会。
 主役である辺境伯のお嬢様は、先月二十歳のお誕生日を迎えられました。そしてビックリです。同日に二人目のお子さんが誕生したのです。本日はその赤ちゃんのお披露目ひろめと、育児に疲れ気味のお嬢様を元気付けるためのお茶会なのです。
 お嬢様は二十歳にして二人の子供のお母さんです。本当に幸せそうなご家族です。しかしこれまでにたくさんの苦労があり、辛い経験をされてきました。それらを乗り越えてつかんだ幸せ。まばゆい笑顔に乾杯です。
 私もいつか、幸せな家族を得たいです。亡き両親のように笑い合える、温かい家庭を持ちたいのです。しかし、自分がそうなるイメージはまだまだわきません。やはり恋愛偏差値というものが低いのでしょう。
 というのも、先日、虫退治に忙しくて目が回ると騒いでいるルイスとザックに、何かお手伝いできるか聞いたのです。そうしたらそろいもそろって同じことを!
 二人して私はまだまだお子様脳だから! と前置きした上で……

『虫の意味がわからないアリーには無理!』

 く、悔しいです。私だって虫が指すものくらいわかります。
 私にわくかは微妙ですがさすがのお二人、退治に忙しいとは本当にモテモテですね。特にルイスがすごいんです。売店の売り子をしてもらうと、女性に囲まれ黄色い声が飛びまくり、売り上げにもかなり貢献してくれています。まるでアイドルのようですね。
 そういえば、毎年夏に看板娘コンテストが開催されるのですが、商業ギルドが後援しているので景品がとても豪華なのです。出場者は基本的に女性ですが、ルイスなら難なく優勝できそうですね。これはぜひとも出場してもらいましょう。さすがに女装は嫌がりそうですから、すその広がったキュロットか、浴衣ゆかた辺りが無難そうです。これはめっちゃ楽しみです。ニヤリ。
 私も十八歳になり、成人しました。十六歳で結婚もできるんです。お酒も飲みましたし、もう立派な大人の女性なんですよ?
 しかしお店のお客様まで、私を子供扱いするのです。やはりこれは色気というものが足りないのでしょう。ダンジョンでは、下着のことで散々笑われましたからね。早々に下着を買いに行かねばなりません。
 ……なんてついつい余計なことを考えてしまいました。会場のセットが完了して安心してしまったからでしょう。さあ、頭を切り替えてお茶会に意識を戻します。
 全体的にパステルカラーのメルヘンチックなお茶会会場。元気な様子をイメージした原色に近いポップな感じも捨てがたかったのですが、今回は赤ちゃんのイメージを考慮して、パステルに決定しました。
 中庭と繋がるメイン会場のお部屋には、円形の大きなテーブルが三台。お茶会中は開放される中庭でもくつろげるようにと、イスと小さめのテーブルが随所に設置されています。お料理はスイーツタワー三台がメインで、全て室内に用意しました。
 一つ目は色とりどりのマカロンタワーです。生クリームでマカロン同士を接着し、数種のベリーをトッピングして高く積み上げました。
 次は、色とりどりのクリームを巻いたロールケーキタワーです。
 中のクリームはクリームチーズをベースとして、クリームのお色とお味を変えました。レモン果汁入りのクリームチーズで白、苺のピンクやオレンジの橙、ブルーベリーの紫にキウイフルーツの緑などをクルリと巻きました。使用した果物のジャムやソースも、トッピングとして用意しています。こちらのロールケーキもタワー状に積み上げてフルーツを飾り付け、ラストは上から粉砂糖を雪のように振りかけました。
 最後はシュークリームタワーです。小振りなシュークリームはカスタードクリームとバナナ入り。積み上げて、仕上げに溶かしたチョコレートを垂らしました。パリッとしたチョコとバナナの相性が抜群です。
 今回は大神殿裏の聖なるダンジョンで採れたフルーツが大活躍しました。海産物も、オードブルやサラダになって大人気。雷白鳥らいはくちょうの卵で作ったプリンは足りなくなり、急遽きゅうきょ厨房ちゅうぼうをお借りして追加しました。
 ルイスの提案してくれた巨大白ころだけのサラダとグラタンも好評で、ころポックル亭でも新たに提供する予定です。
 グラタンは大きな白ころだけを器に見立ててポテトとホワイトソースを詰め、チーズをたっぷりとかけて焼き上げました。
 さすがにそのままでは大きいので半分にカットし、ホウレン草を練り込んだスパゲティーを添えて取り分けます。カットするとチーズがトロリとあふれて見た目も最高です。
 添え物をマッシュポテトにし、スパゲティーを中に入れても美味おいしそうですね。まだまだ改良の余地ありです。
 通常のお茶会ではお客様がほぼ女性のため、提供するお料理は甘いお菓子がメインとなります。
 しかし今回は赤ちゃんのお披露目ひろめも兼ねているので、男性も多く参加しているのです。
 そのため、軽食を増やすべく、ここでドラゴンのお肉の登場です。ドラゴン肉のパテをのせたカナッペや、ドラゴンカツサンドにドラゴンハンバーガーなど……全てをお茶会仕様に小さめに作ったのです。珍しいドラゴン料理に皆さん驚き、そして喜んでくれました。
 しかしやはりお茶会なので、男性方にもスイーツを楽しんでほしいのです。
 そこであのダンジョン産の巨大なコーヒー豆です。中の豆を取り出し乾燥までは自分でできましたが、さすがに大きすぎるので、るのは商業ギルドにお願いしました。今後自分で加工したければ、風味は多少落ちますが、豆を砕いてっても大丈夫とのことです。でもやはり美味おいしいのが一番! また頼みに行きすので、そのときはよろしくお願いいたします。
 このコーヒー豆を使って、コーヒーゼリーにムース、クッキーにミニケーキとティラミスもどき。ついついハッスルしてしまい、甘さ控え目な大人のスイーツタワーまで作ってしまいました。


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