リス獣人の溺愛物語

天羽

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【本編】5さい

8話 居場所sideラディアス

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子リスと目が合った瞬間、あまりの綺麗さに僕は息を飲んだ。

透き通る様な儚さとそれでいて奥には芯の強ささえ感じとれるようなブロンドの瞳はとても美しく暫く目を離すことが出来なかったが、僕に対して怯えながら威嚇をする子リスを見て我に返り、僕はできるだけ優しい声音で話かけたのだった。


それでも未だ警戒する子リスに、駄目元で昼に食べ損ねたサンドイッチあげてみると、思いの他食い付きが良く、頬袋にまで可愛く詰め込んでいた。


(リスって木の実なんかを食べるイメージだったけど、肉や野菜も食べるんだな)



そう思いながらも、美味しそうに食べる子リスを見ていると細かい事などどうでも良くなり、手際よくサンドイッチを一口サイズにちぎって子リスに渡していった。




食べ終わり満足すると、直ぐに僕の指へと擦り付き懐く子リスの姿に、人懐こい可愛らしさを感じると同時に誰にでもついて行ってしまいそうで、僕は不安を感じ、苦笑するのだった。


ふと気付いて、スカーフに刺繍されている文字を読むと、子リスは愛らしい声でまるで人間のように返事をした。

この子リスは『リツ』と言うらしい。

小さくて可愛いこの子にピッタリだと思ったと同時に、リツは飼い主とはぐれてしまったのかと考える。


(リツの身体が完治したら、飼い主を探してあげよう。
出来れば一緒にいたかったけど、リツは飼い主に会いたいと思うから……)


僕は少し寂しい気持ちになりながらリツの頬をスルリと撫でた。




お腹も満たされ安心したのか、子リスは船をこき始め直ぐに眠りにつく。




御者の男に聞いた話によると、子リスは森から勢いよく出てきたようだった。



(リツが飛び出して来た森は、確かユリの森だ。ユリの森自体は動物や植物も多く生息して比較的安全だけど、問題はその奥にある、……草木は枯れ、魔獣が住み着く森で危険だから冒険家や騎士団が魔獣討伐を行う時以外足を踏み入れない所だ。リツみたいな子リスが入って生き延びれる場所ではないし……)


そう考えるも、リツの身体の状態を見ると完全には否定出来なかった。


(……もしかして、リツは魔の森へ捨てられたんだろうか……。
何も食べずに、誰かに助けてもらえることをただ願ってここまで歩いてきたのだろうか……こんな小柄の子供が……。
ーーーーもしそうなら、絶対に許せない……)


僕は拳を握りしめる。


こんなに可愛くて人懐こいリツを傷つけた奴がいるのなら、僕は全力でそいつに報復し、リツを守りたいと思った。


周りからは、たかが野生のリス1匹でって思われるかもしれない。でも僕は初めてリツを抱き上げた時、瞳が合った時、ご飯をあげた時、これまでで一番心が満たされたのだ。

これまで何にも興味が湧かなかった。
やれと言われた事をただ義務のように淡々と行い、学ぶ毎日。

可愛いげの無い子供だと師匠に言われた事もあるし、母様や父様が、そんな僕を心配している事も分かっていた。


僕は何のために頑張っているのだろう……。

そう思う事も何度もあった。


でも、リツと一緒にいる為なら……今の僕はどんな事も頑張れる様な気がする。

もしも、リツに行く宛てがないのなら、僕がリツの居場所になろう。


リツが暮らしやすい様に、リツが寂しい思いをしないように……この気持ちは、父様が家族や民を守る気持ちと一緒なのだろうか?


そう思うと無意識に笑みが溢れる。

僕は気持ち良さそうに眠るリツを優しく撫でたのだった。

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