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地獄の底で君を思う
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「あら。その花、本当に持ってきてくれたのね。随分早いこと。」
白い花を渡すと、女は嬉しそうに笑う。
記憶の中の通りの、美しい笑顔だった。
「なるべく早く来いって言ったのは貴方よ。だから最短ルートで来たんだけど。」
不貞腐れたように言うと、女は笑って、そうね、そうだったわね。と言った。
暫く花を眺めたあと、なんとなーく気まずい空気が流れた。あれから早20年。色々あったし、話したいこともたくさんあった。でも、言葉が出てこなかった。
ただ、貴方に会いたかった。愛されたかった。それが叶わない願いだとしても。
「お父さん、ごめんねって言ってたよ。愛してる、だって」
女は何も言わなかった。ただ、つるりとした面のような顔で、そう。とだけ言った。
彼女の中に、もう父への愛はないのだ。
あるのはきっと、煮凝りのような怒りと憎しみだけ。
「イザヤと出会ったわ。」
「そう。良かったじゃない。それで?」
「何か変わるかと思ったけれど、駄目だった。多少の揺らぎはあったけど…それもすぐに消えたわ。」
隣の母は愉快そうに笑った。
「ふふ…そうでしょうね。あなたは私の呪いを母乳にして育ったのだから。その煮えたぎるような破壊衝動と、愉悦を求める本性は変えられないわ。」
そっと母はわたしの頬に両手を添える。
真正面から目が合う。同じ色。同じ業。
私達は親子。私達は生き写し。
…イザヤ。貴方と同じ景色を見たかった。
なーんてね。
白い花を渡すと、女は嬉しそうに笑う。
記憶の中の通りの、美しい笑顔だった。
「なるべく早く来いって言ったのは貴方よ。だから最短ルートで来たんだけど。」
不貞腐れたように言うと、女は笑って、そうね、そうだったわね。と言った。
暫く花を眺めたあと、なんとなーく気まずい空気が流れた。あれから早20年。色々あったし、話したいこともたくさんあった。でも、言葉が出てこなかった。
ただ、貴方に会いたかった。愛されたかった。それが叶わない願いだとしても。
「お父さん、ごめんねって言ってたよ。愛してる、だって」
女は何も言わなかった。ただ、つるりとした面のような顔で、そう。とだけ言った。
彼女の中に、もう父への愛はないのだ。
あるのはきっと、煮凝りのような怒りと憎しみだけ。
「イザヤと出会ったわ。」
「そう。良かったじゃない。それで?」
「何か変わるかと思ったけれど、駄目だった。多少の揺らぎはあったけど…それもすぐに消えたわ。」
隣の母は愉快そうに笑った。
「ふふ…そうでしょうね。あなたは私の呪いを母乳にして育ったのだから。その煮えたぎるような破壊衝動と、愉悦を求める本性は変えられないわ。」
そっと母はわたしの頬に両手を添える。
真正面から目が合う。同じ色。同じ業。
私達は親子。私達は生き写し。
…イザヤ。貴方と同じ景色を見たかった。
なーんてね。
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